ところで皆さん、ベタって飼った事ありますか?
今回はやや長めなので飽きられるかどうか心配です(冷や汗)
昔々…海底の「人魚の王国」の王さまの御殿に美しい6人の姫が住んでいました。お妃は早くに亡くなったので、姫たちのお世話はおばあさまがしてきました。
一番下の姫は…………
「だぁああああああああらっしゃぁああああああああああああああい!!!!!!!!」
「グボグォアアアアアアアア!?」
大の戦闘狂でした。
「グルル……」
「おや、まだサメがいたのかい?イイゼェ…」(ポキポキ
どの姉達よりも喧嘩っ早く、その癖美しく……。
「1…2…沢山か。上等じゃねぇか!!!来な!!!纏めてぶちのめしたらぁあああああああ!!!」
また姉達と違い、バk…オツムの弱い子でした。
「ただいま〜」
「あら…ってまただすか姫様‼︎喧嘩なんて女子のする事じゃないだすよ?」
「っせぇババァ。それより、早く飯食いたいぜ。オレは蛸が食いたい」
「あらあら妹よ。そんな下品な事をしてはいいお婿に巡り会えませんわよ?」
「っせぇ!マグロ食ってるような弱い奴は黙ってろ!」
「それよりお婆様…お話の続きをお聞かせ下さいませ」
人魚達は15歳になるまでは、海の上へ浮かび出ることが許されません。なのでお婆様から聞かされる海の上のお話はとても貴重な物でした。
「なんと…そんな素敵な殿方が陸にいらっしゃるのですか!?」
「まぁ…素敵な話です事…」
「王子様×大臣…今夜のオカズは決定ですわぁ…捗りますわぁ…」
「お医者様〜三女がまた拗らせてしまいましたわ〜」
「わたくしも早く海に上がりたいですわ…」
「なぁ!陸上にオレ達の城の近衛兵より強ぇえ奴いる!?」
やがて15歳になった姉から順に一人ずつ海上に上がって来ては、土産話をします。今では夕方に姉たち5人で手を組んで水の上へ上がり、嵐が来かけると船のそばへ泳いでいって「海の底は美しいから沈むのを怖がらなくていいのよ」と歌を歌ってやるのでした。
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「末っ子の妹…15歳の誕生日おめでとう」
「姉として誇らしい話ですわ」
「早速海の上を見ていらっしゃい。きっと素敵な世界が…ブフォォ!?」
「お医者様〜!!!お姉様にお薬を〜」
「気を付けて行くのよ?危ないと思ったらすぐ帰りなさい。よろしくて?」
「一々うっせぇやい!いっぱい見て来てやる!ハハハ!!!」
末の姫も15歳になって、海の上へ行く事になりました。昇っていきますと、夕闇の中に大きな船が見えます。
船室の窓の所まで泳いでいき、窓ガラスを透かして中を覗きますと、大勢の着飾った人がいましたが…
「ちぇー…みんなモヤシみてーで弱っちそうだなぁ」
末の姫はその華奢な身体に興味を持ちませんでした。とくに目立っていたは、目の大きな若い王子で、この王子のお誕生日お祝いをしているのでした。
「んあ?嵐か……ってそういやオレらが出ていいのは嵐の日だけだったな。忘れてたぜ」
その時、嵐が強さを増して船が傾き始めました。
「おい…これってヤバくないか!?」
それに気付いた末の姫は急いで船の側面に体を押し付け全身に力を込めました。
「倒れんじゃねぇぞおおおおおおおおおおおおおお!!!!おりゃあああああああああああああ!!!」
その怪力によって船は何とか倒れる速度が遅れ、人々は小船を幾つも作り脱出に成功しました。しかし、1人だけ……あの王子様だけが乗り込むのに失敗したのか海に落ちて沈んで行きました。
「あんのバッキャロオオオオオオオオイ!!!」
沈んで行くところを見た姫は、空になった船から手を離して潜行し王子様を救い、砂浜に上がりました。
「オラッ!起きろッ!」(ドゴォ
「ふぐふぉぉ!?」(バシャァ
砂浜に上がった末の姫は王子様に腹パn…介抱しました。
「う……」
「全く、これが人間で一番美しい男って奴なのか?聞いて呆れるぜ」
「なん…だ……君は……?」
末の姫は頬を叩いて意識を覚醒させるとその顔にずいと自分の顔を近付けました。
「オレに文句があるってんならもっと強くなってから言うんだな。モヤシ」
“いたぞ!あそこに人が倒れているぞ!”
「チッ…陸上じゃブが悪いか……じゃ、あばよ!!」
そして、目を離すと再び海中へと潜って消えて行きました…。
近くの白い建物から一人の若い娘が王子さまを見つけ、驚いて人々をつれて来たからです。
「大丈夫ですか(あらやだイケメン♡)?」
「………」
「よかった。無事だ。おい、お医者様を呼べ!すぐに治療するんだ!!!」
「うるさい!僕は平気だ!!!1人で歩ける!!!」
やがて家に戻った末の姫は姉達に事の次第をやや大袈裟に語って聞かせました。その話が事実である事は海底に沈んだ船によりすぐに証明されました……。
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王子の城
「フンッ!フンッ!フンッ!フンッ!」
“99‼︎100‼︎101‼︎まだだまだだ‼︎お前の体をイジメ抜け!!!!”
「あの…王子様……?」
「ウーッ…ハァッ!!!!」
あれから王子様はひたすらに己を鍛えていました。オツムの弱そうな女に助けられた事…その女にバカにされた事が彼の中で何かを覚醒させたのです。毎日、全身を鍛え筋肉の塊になっていく王子様を見て多くの戦士が慄き…多くの女が鼻血を流しました。
「で…話とは?」
「はい、近頃獰猛な魚が次々と怯えて大人しくなっているとの報告を受けました。恐らく、例の人魚かと…」
「そうか…」
王子様は現状では末の姫との戦いで互いに対等な戦いが出来ない事を理解していました。よって、彼女が何らかの方法で陸に上がってくるだろう…そう予想を立てました。
「如何致しますか?捕獲するという手も「ならん!奴は必ずここに来る!」何故それが分かるのですか!?」
配下の兵士の問いに彼は振り向く事無く告げた。
「極めた者だけが到達出来る“勘”…だな」
人魚の王国
「ふぅ……」
人魚の国の武闘会の晩、姫は御殿をぬけだし、海の魔女のところへ行きました。
「おい、ババァ」
「陸に上がりたい…じゃろう?」
「何故それを…?」
魔女は、姫が来たわけをすべてお見通しで、尻尾が消えて二本足になる薬を調合すると請け合いました。
「じゃがそれを飲めば鋭い剣で斬り刻まれる痛みを伴うじゃろう…よろしいかの?」
と魔女は小瓶をチラつかせながら告げました。それに対して姫は無言でそれを奪い、飲む事で応えました…。
その夜、浜辺に裸の女が泳いで上陸し、それを察知していた王子様によって回収されたのでした。
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王子様の城
「悪いな。こんな美味い飯を食わせてくれて」
「構わない。戦いの前の晩餐だ。好きなだけ食うがいい」
人間の姿となった姫は、王子様と共に豪華な食事に手を付けていました。野蛮に手掴みでご馳走を食い荒らす人魚と、筋肉達磨ながらも繊細な手付きでご馳走を口に運ぶ王子様。2人きりの時間が嵐の前の静けさを生み出していました。
「やはり足を付けて上がってきたか」
「お前こそ、モヤシからよくこんなオンデンザメみてぇにデカくなったなぁ!オレ様も鼻が高いぜ!」
「正直に言おう。僕の人生は…あの嵐の日から狂った」
王子様は不意にナイフとフォークを置くと話を始めました。元々、行儀のなっていない姫は空気を読まずに肉にむしゃぶりついています。
「頭の悪そうな女に助けられた上に罵られたあの日の屈辱から僕は肉体を鍛え上げる事で払拭しようとした。専属の者も付けて幾重にも鍛え上げた肉体を見ろ」
王子様はいきなり上半身に力を込めました。ただでさえパツパツの服は瞬く間に砕け散り、中から筋肉という鎧に覆われた熊のような肉体が現れました。おぉ…と感嘆する姫の前で王子様は続けます。
「この体は謂わば憎悪と羞恥と怒りで出来ている。明日執り行う決闘でこの因縁…晴らそうぞ」
「その言葉、待ってたぜ」
「だが、肝心の姫。お前の足は出来たばかりなのだろう?」
「なぁに!出来たすぐに泳いでここまで来たんだ!どうって事ないぜ!」
こうして、2人の時間は過ぎて行きました……。
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朝…姫が早起きすると、あれ程響いていた音が1つも聞こえてきません。あるのは『闘技場で待つ』という書き置きのみ……すぐに姫は察しました。
「オレの戦いを邪魔させない為に王族関係者全員豚箱に突っ込んだのか……色々と気を遣わせる奴だ」
そう悪態を吐きながら、末の姫は胸や下半身に巻いていたサラシを締め直し、戦場へと向かいました。これで2人の戦いは誰も邪魔されない神聖なモノとなったのです…。
闘技場
そこに辿り着いた姫は、目の前で胡座を掻いている王子様に対峙しました。自分が今までに感じた事のない確かなプレッシャーと執念を肌で感じた姫もまた、プレッシャーをぶつけ返しました。ゆっくりと立ち上がる王子様……2人の間には火花が散っていました。静かな闘技場の戦いは…我慢出来なくなった姫の突進から始まりました。
「オレ様の攻撃だ!受けてみやがれ!!!」
彼女の先制攻撃は……王子様の腹に刺さりましたが、鋼鉄のような体にはビクともしません。
「なっ!」
「もらったぁ!!!」
「!?」
王子様から反撃として振るわれた拳が彼女の右頬を打ち抜き、姫は大きく吹き飛ばされました。土の上を2、3転がった姫はゆっくりと立ち上がると腕で口から流れる血を拭きました。
「面白れェ……やっと出会えたぜ!!!オレより強い奴にな!!!」
そして、裸足で土を蹴ると再び突っ込みました。馬鹿の一つ覚えと王子様はカウンターの構えを取りましたが、その動きに驚きました。確かに放った筈のパンチ…それを姫は腕を交差させる事でラグを生じさせて確実に顎に拳を打ち込んだのです!!!
「!?!?」
「オレ様命名『クロス・カウンター』だ。この技を見せるのはオメェが最初だ!喜べ!!!」
「ほぉ…面白い!」
確かな衝撃にフラつく王子様でしたが、すぐに体勢を立て直して逆に突撃を行いました。幾つも放たれる蹴りを姫は軽々と避け確実に腹に打ち込んでいきます。いくら鋼の肉体とはいえ連続で打たれ過ぎれば内臓にもダメージが蓄積します。
「だがなぁ!!!」
王子様は懐まで一気に飛び込むと姫の髪を掴み
「!!」
「負けられんのだ!!!」
そのまま放り投げ、続けて放たれた跳び蹴りを受けて再び姫の体は吹き飛び、壁に叩きつけられました。
「かはっ!?」
全身を鈍い衝撃が走り、血を吐く姫でしたが、続けて跳躍しながら振るわれた拳を何とか避けました。拳は壁に叩きつけられ、岩壁が大きく凹みました。
「マジかよ…本気で殺す気だぜ……!」
ゆらりと立ち上がる王子様に姫は身軽なフットワークをアピールして強がります。再び襲い来る重戦車に対して姫が出した答えは
「おぉおおおおおおおおおおおお……!?」
「一か八かだ!うぉりゃああああああ!!!」
体を屈めてショルダースルーでその力を流したのです!!!力を十分い放出し切れなかった王子様は変な体勢で土に叩きつけられ、思わず吐き気を催しました。しかし、すぐ眼前に姫の拳が飛んできた為に飛び上がって避けます!鈍い衝撃が大地を震わせ姫の連続した蹴りが腹に刺さりました。
「ぐぼぁ!?」
「確かに腕は良いがヨォ!!!」
続けて懐に飛び込んだショルダータックル。怯んだ隙に鳩尾ストレート。連続したボディへの攻撃が続きます。
「オメェは打たれ弱い!いくらスパーリングをやらせてもだれもオメェに怪我させようと全力で掛かって来ねぇんだ!!!」
続けたアッパーカットによって王子様は意識の半分を刈り取られ、大地に倒れ伏しました。
「……オレの勝ちだな」
「いや…まだだ……!!」
王子様は諦めず、ゆらりと立ち上がりファイティングポーズを決めました。姫は再び突撃を警戒して回避する体勢を取ります…。
「僕はまだ…自分を負け犬と認めてはいない!!!」
「!!!」
立て続けに打ち込まれるパンチの1つを避けられず、姫の下腹部に直撃。堪らずその場で嘔吐してしまいました。
「ごぼっ…!!!女の大切なモン叩くタァ…いい度胸してるじゃねぇか……!!!」
「もうお前に対して正々堂々など言っていては負ける!どんな手を使ってでも倒す!!!」
「見境無く…だが!!!」
姫は拳を腹で受けると、カウンターを顔面にぶつけます!!!行け!人魚姫!!!
「所詮、負け犬の足掻きなんだよオラァアアアアアアアアアア!!!」
続け様に放った姫の全体重を掛けた一撃が王子様の顎を打ち抜き、その熊のような体はドウと土の上に倒れ、下腹部へのダメージが大き過ぎた為か姫もその隣に座り込みました。
「やっべ…卵巣出そう…」
「下品だぞ…人魚姫……」
そうして、暫く体力を回復させていると姫が口を開きました。
「因縁は晴れたか?」
「まぁ…な。おかげで清々しい」
「そっか……」
そう言うと、姫はゆらりと立ち上がり歩き始めました。彼女の目標は既に決まっていたのです。
「待て、何処へ行く?」
お約束のような問いに姫はニッと白い歯を見せて微笑みました。
「オレより強い奴に会いに行くんだよ」
こうして、姫は多くの強い敵と戦う為に旅を始めました。カモメを通じて人魚の王国へ届く手紙には末の姫の武勇伝がやや大袈裟に書かれていたのでした。
めでたし、めでたし…?
燃え上がる戦いは語り部すら暴走させるのだ(迫真)
やっぱり童話を弄るのは最高だ…!