もう、またかくれんぼ?
いいよ!まずは私が鬼ね!
い~ち、に~い、さ~ん…きゅーじゅーきゅー…ひゃく!
…ハドレッドみ~つけた!
もう~、夕方に成るから終わろうね、ハドレッド!
明日は絶対負けないよ!
ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!…
「うぅ~ん…もう朝かぁ~。今日はどんなことして遊ぼうかな?そうだ、昨日の夜絶対に見つからない場所思いついたんだ!試さないと♪」
私はいつもの様に起き、いつもの様に支度を終えてハドレッドといつものように遊ぶために外へ出た。
施設自体は正方形で外部には窓がなく、替わりに中庭がたっぷりある構造だった。私達は
いつもそこで鬼ごっこやかくれんぼをして遊んでいた。
そんな日が続くと思っていた。
どれだけ経っただろうか…1年…2年…?外の情報が隔離されているため明確な時間の感覚がない。
そんなある日、ハドレッドが突然姿を消した。
「あれ?ハドレッド…?部屋かなぁ…」
私は部屋を見に行き、居ない事を確認すると施設中を探し研究員の人を適当に捕まえ聞いてみる。
「せんせ~、ハドレッド知らない?」
「知らないなぁ、どうしたんだい?」
「ハドレッドがどこにも居ないの。」
「…きっとすぐに戻ってくるよ。」
研究員の人は私の頭をポンと叩き、微笑んで去っていった。
私もすぐに帰ってくるだろうと思い、今日のところは諦めようと部屋に戻る。
しかし…ハドレッドは返ってくることはなかった…
成長した私は現在もやっている仕事、アイドル兼始末屋の仕事に任命された。表の顔はアイドル、裏の顔は研究所の不始末を後始末する…という作業だった。
主には施設を調べようとした調査員を命までは取らないまでも、追い込むような事をしていた。
楽しいことも当然あった。アイドルとして皆の前で歌っていた時は、このまま表で過ごしたい…そう思ってもいた。
「そういえばハドレッドも私の歌…好きだったなぁ。もう一度…会えないかなぁ…」
そんな思いが募っていたある日、いつもと違う任務を与えられた。暴走龍…施設で試験中に失敗し暴走してしまった龍族が逃げ出し、周囲に被害をもたらしているというものだった。
「標的は…」
部屋に入るなり私はいつもの様に聞くと、1枚の写真を取り出し私に見せる。
「これよ。クローム・ドラゴン…という試験体よ。」
「クローム・ドラゴン…」
そこで気付いた。左角に幼少期ハドレッドにプレゼントしたスカーフがついていることに。
「うそ…うそよ!だってこれ…この子は…」
「…そう。あなたが幼少期共に過ごした、ハドレッド。」
「ハドレッ…ド…なんで!なんでこんなことに成ってるの!」
私は両手に装着された双小剣を振り、机をたたき問いただした。
机の一部が切れ、破片が飛び散る。
「あの時、本当はあなたが被験体に選ばれるはずだったの。だけど、彼がどうしてもと…」
「嘘よ!…だって…ハドレッドはしゃべらないじゃない!」
その答えは無言だった。
ハドレッドは市街地、森林…いろいろな場所に出現し、何かを探しているようにも思えた。
私は龍祭壇のあるアムドゥスキアへ行き、休憩をすることにした。
ふと思い、ハドレッドの好きだった歌を歌う。
ラ~ラ~ララ~ラ~ラ~ラ~ラ~ラ~ラ~ララ~―――
歌の途中で突然空間が歪み、ダーカーが現れる。
「っ!!」
完全に不意を突かれた私は駄目かもしれないと一瞬思った。
しかし、再度空間が歪みもう一体…中型の影が現れる。
「グォォォォォオ!!!!」
雄叫びとともにダーカーを一瞬で屠り、私の前に立ち尽くす。その姿は間違いなくハドレッドだった。
「ハドレッド…一緒に…帰ろ?」
「…」
「ハドレッド…またかくれんぼするの?駄目だよ…もう…見つけちゃったよ?今度はハドレッドが探す番なんだよ?」
「…」
私の声にハドレッドは答えてくれなかった。姿を消し、またどこかへ飛び立つ。
「…ばか…ばぁ~か!!ハドレッドの馬鹿!誰が望んだそんなこと…誰がやってほしいって言った!私が一度でも音を上げたか?私が…一度でも嫌って言ったか?勝手に解釈するんじゃない!たとえ死に繋がるような命令を受けても…私ならもっと、も~っと上手く立ち回れるんだよ!馬鹿!私はお姉ちゃんなんだぞ…?体がでかいからって…調子に乗るな!!」
ひとしきり叫び、目元の涙を拭き、再度捜索に入る。さっきの様子からハドレッドは既に手遅れなことを悟り、もう始末しなければいけないという現実を再認識しながら。
私はあとは探してない場所…龍祭壇の内部に行くことにした。
ほのかに壁が光り、内部の様子は暗くないようだった。
「ハドレッド…」
突然背後で空間が割れる。ダーカーかと思ったが、そこに立つのはスカーフ付きのクローム・ドラゴンだった。
「ハドレッド!」
「…グォォォオ!」
「わかる…わかります…。言葉がなくても、私には分かります。思えば私達は喧嘩もしませんでしたね。あなたが喋れないのも理由の一つでしょうけど…仲は良かったのだと思います。」
「…」
ハドレッドは無言のままだったが、心なしか小さく頷いた気がした。
「ハドレッド…もう…終わりにしよう?…お姉ちゃんが…終わりにしてあげる…」
腕をあげ、紋様を表示させ、名乗る。始末屋としてやっておかなければならない作業だった。
「ハドレッド…あんたはこのクーナの弟なんだから、最後の最後くらいびっくりするくらい大暴れしてみせなさい!」
ハドレッドの雄叫びが龍祭壇内に響き渡る。
そこからの戦闘はあっけなく終わってしまった。ハドレッドは今までの消耗を隠せず、私の双小剣を数発浴びるだけで横たわってしまった。
横たわるハドレッドが必至に何かを伝えようとしている。
呪縛が一部解け、自我を取り戻したようだった。
「っ…ハドレッド…!!何が言いたいの?」
「モウイチド…アノウタヲ…」
「…初めて覚えた言葉が…それなの?…馬鹿…馬鹿だよあんたは…本当に…本当に…!」
立ち上がって改めて言う。
「あぁ…良いともさ…。一度と言わず何度でも…歌ってあげる!」
私はその後何度も歌った。ハドレッドの目には光るものが浮かんでいるようだった。
ハドレッドの始末報告は無事に問題なく受理された。アムドゥスキアの龍族たちと話し、特別に許可を得てアムドゥスキアの浮上大陸の一角にお墓を作らせてもらった。当然遺体はそこにはないけど、替わりにハドレッド消滅時に残ったスカーフを埋めることにした。
「ハドレッド…ごめんね…?私がもっとちゃんとしていれば…」
ふと風にあの時の香りが漂ってきた気がした。
―――お姉ちゃんみ~つけた!―――