ご飯を食べるのも、寝るのもお風呂に入るのも、いつも一緒。いつも俺と遊んでくれて、傍にいてくれた。
そんなある日、アイツは髪の長い女を好きになった。その人は、凄く本が大好きだった。あいつも本が大好き。俺にいつも色々な話を聞かせてくれた。
そんな時、アイツは机に向き出した。気になり机を覗くと、アイツは紙にひたすら文字を書いていた。
アイツは俺に言った。
『この本を書いて、作家になろうと思ってんだ。
お前、応援してくれよ』
俺は応援した。アイツが書いている時、俺はお気に入りの場所に座り静かにした。時々彼女が来て、料理を振る舞ってくれた。彼女が作る料理は、天下一品!
何杯でも食える。あいつも嬉しそうにご飯を口一杯に頬張った
『何か二人共、兄弟みたい!』
面白おかしく笑う彼女は、そう言った。彼女に釣られて俺達も笑った。
書き始めて、数ヶ月後……
突然、彼女から別れを告げられた。理由は分からない……彼女は涙を流して、部屋を出て行った。アイツは彼女を追い駆けず、ただそこに座っていた。
その日の夜、枕に顔を埋め泣き喚いていた。俺はアイツの傍にいる事しかできない……声を掛けるが、アイツは怒鳴り俺を追い払った。泣き喚くアイツを見ていられず、俺はアイツの足に攻撃して表へ飛び出した。
それから数週間、家に帰らなかった……
雪の降る日、俺はアイツの元へ帰った……
だが、俺がいない間に部屋はすっかり荒れていた……溜まったゴミ袋。洗っていない食器に蝿が集っていた。
『お前……帰って、ゲホゲホゲホゲホ!』
アイツは突然咳を出し、その場に倒れた。俺はすぐに駆け寄り、呼び掛けた。あいつは苦しそうに息をしながら起き上り、机に置いていた紙の束をまとめ茶色い封筒に入れると、よろよろと歩き出し家を出た。
心配しながら、俺は一緒に歩いた。辿り着いた場所は、赤い屋根の建物だった……
『ちょっと待ってて……これ……出して、来るから』
そう言うと、アイツは建物の中に入った。それからしばらくして、建物の前に白い車が止まった。その中にアイツは運ばれて行った。俺はすぐに、アイツの元へ行き彼の上に飛び乗った……だが、アイツの傍にいたものが、俺を引き離した。車のドアが閉められ、走り出した。
俺はすぐにその車を追った……どれくらい走っただろう……車はいつの間にか見失った。
トボトボと家へ買った……帰って来るまで、待っていよう。
部屋の中のお気に入りの場所に座り、静かに待った。あいつが帰って来るのを……
長い月日が流れた……
部屋に置かれていた家具は、全部知らない奴等に持っていかれた。残されたのは、俺と白い封筒だけ。
封筒に掛かれた字を見た……その字を見た瞬間、俺はそれを持ち部屋を飛び出した。
野良犬や野生動物に襲われ、足に怪我をした……それでも走り続けた。
知らない子供に石をぶつけられ、体に怪我を負った……それでも走り続けた。
カラスに襲われ、顔や頭に怪我をした……それでも走り続けた。
どれくらい時間が経ったんだろう……
辿り着いた場所……そこはおしゃれなお店の前だった。俺はドアの前に付いたが……急に意識が遠退きその場に倒れた。
何かに気付いたのか、お店のドアが開いた。中から出てきたのは、彼女だった。
俺はドアについていた鈴の音で、目を開け持っていた封筒を彼女に渡した。彼女は封筒を受け取り、中に入っていた紙を開き読んだ。
『ごめんね……ごめんね』
謝りながら、彼女は大粒の涙を流しながらその場に泣き崩れた。一滴の涙が俺の頭に当たった。
『ありがとう……ありがとう』
お礼を言いながら、彼女は俺を抱き上げ頬を摺り寄せた。俺は一安心したせいか、気が緩んだ……そして意識が遠退いた。
どれくらい時間が経っただろう……
目を開けると、何も無い草原にいた。起き上がり辺りを見回した……
草原の向こう……そこにいたのは、アイツだった。
『迎えに来たよ……
ごめんな。寂しい思いをさせて』
そう言いながら、アイツは俺を抱き上げ頭を撫でてくれた。俺はめいいっぱい甘えた……
『ありがとうな……手紙、送ってくれて。
お前なら、送ってくれると思ってたよ……
クロ』
俺の体を撫でるアイツの手……懐かしい。
段ボールの中で捨てられていた雨の日……俺を拾ってくれた。
礼を言うのは、俺の方だ……
ありがとう……