~永遠 Side~
う~む…今まで静かにしとったから放っておいたがどうやら我慢の限界に来てしまったようじゃのぉ…
まあ篠ノ之にしてはもった方か…この娘…恐ろしい程短気じゃからなぁ…
束
「何箒ちゃん?」
箒
「私のISは!!」
やはり束さんに頼んでおったか…
束
「あ~それね?『一応』造ったけどさ~…」
箒
「い、一応!?私のISが一応だと!?」
束
「まぁいいや、それじゃあおいで~…」
束さんが頭上を見上げてそう言うと…
ズドォォォンッ!!
コンテナがもう一つ落ちて来た
じゃが【ハルファス・ベーゼ】のコンテナより一回り小さいのぉ…
箒
「コレが…」
束
「そうだよ、コレが箒ちゃんの専用機…『
コンテナから出て来たのは赤いISじゃった
じゃがこのIS…【ハルファス・ベーゼ】と違って
それに第4世代と言うとったのぉ…
箒
「だ、第4世代だと!?」
束
「そだよ?それがどうかした?」
箒
「何故第5世代じゃないんですか!!」
こやつ…束さんが用意するISを第5世代と思っておったか…
じゃがなぁ…
束
「何故って…箒ちゃんが
箒
「なっ!?」
束さんも分かっておったか…どう考えてもこやつには第5世代を使いこなせるだけの技量があるとは思えんのじゃよな~…
束
「実はね?箒ちゃんが専用機を造ってくれって連絡が来た後にちーちゃんに頼んである物を送って貰ったんだよ。」
箒
「…ある物?」
束
「IS学園での箒ちゃんの成績だよ。」
全員(千冬以外)
「え?」
篠ノ之の成績って…それは個人情報の漏洩になるのではないのか?
束
「それを見る限り成績はすこぶる悪いね?特にIS関係の成績は学業も実技も下の下…クラスどころか学年全体で見ても同じだね。」
箒
「うぐっ…」
下の下って…つまり最下位って言っとるようなものではないか
今迄のこやつを見る限り成績はかなり下じゃろうとは思っておったがまさかそこまでとは思わんかったのぉ…
束
「そんな成績しか出せない子に最新鋭にして超高性能な第5世代を任せられる訳無いでしょ?相手が妹だからってそこまでの贔屓は束さんも流石にしないよ。」
箒
「ぐっ…」
束
「だから箒ちゃん、束さんが箒ちゃんの頼みを聞くのはこれが『最後』だからね。」
箒
「…え?さ、最後!?」
束
「束さんはね?箒ちゃんの何でも屋じゃないんだよ?箒ちゃんの言う事なら何でも聞くイエスマンじゃないんだよ?箒ちゃんの只の姉でしかないんだよ?」
箒
「!?」
確かにそうじゃな…じゃが篠ノ之のあの顔は納得しとらん顔じゃな…束さんは何も間違った事は言っとらんのじゃが…コイツ相手に正論を言っても無駄か…
束
「それにね?本当ならこの【紅椿】だって本当は造ろうかずっと悩んだものなんだよ。箒ちゃんには
箒
「資格が…無い!?」
束
「そうだよ。いっくんは理由が分かるよね?」
一夏
「………前に…鈴に言われましたから…」
ほぉ、覚えておったか…コイツなら忘れているかもと思ったんじゃが…
束
「うん♪ちゃんと覚えてたね♪それで合ってるよ♪」
箒
「………」
束
「箒ちゃん…箒ちゃんはさ、セーちゃんやかんちゃん、リーちゃんの様な代表候補生じゃないでしょ?リーちゃんがいっくんに言った事聞いてなかったの?専用機って言うのはね?それぞれの国や企業で自分の実力が認められた人にだけ与えられる物…いわば努力の結晶なんだよ。箒ちゃんは束さんに頼む以前に自分で手に入れるだけの努力をしたの?」
箒
「………」
束
「してる訳無いよね?そうじゃなきゃあんな成績な訳無いもんね?」
箒
「ぐっ!」
その通りじゃ…コイツのやっとる事はいわばセシリア達代表候補生の努力を侮辱する行為…ワシや織斑の様な特殊な場合とも違うし、本音とも違う…
束さんとの血縁関係を利用したいわゆる裏技とも言うべき方法じゃ…じゃがこの方法は専用機を持つ者、専用機を与えられなかった者達にとっては許せん方法じゃろうな…
現に…
生徒1
『篠ノ之博士の言う通りよね!』
生徒2
『何の努力もしないで専用機を手に入れるなんて最低!』
生徒3
『それに篠ノ之さんって博士とは何も関係無いっていつも言ってたわよね?』
生徒4
『それをこんな時だけ頼るなんてそんな事して恥ずかしく無いのかしら?』
こっちのやり取りを見とる他の生徒達の篠ノ之に対する反応は明らかに悪いのぉ…
まあその通りじゃから弁護のしようが無いのじゃが…
箒
「ぐぅっ…(あいつ等!!)」
今の声が聞こえておったようで篠ノ之は更に苦い顔をしとるのぉ…
ワシがそう思っとったら…
箒
「…なら…なら布仏はどうなんですか!?アイツは候補生じゃないでしょう!!」
本音
「ほえ?」
本音に眼を付けおったか…確かに本音は束さんから直々にISを貰ったからな…
束
「のんちゃん?確かにのんちゃんは代表でも候補生でも無いね。でものんちゃんの【ワイバーン・ガイア】は第5世代の1号機、そのデータ収集を依頼すると言う事であげたんだよ。つまりのんちゃんは専用機を持つ代わりに束さんの依頼を受けると言う『等価交換』がされてるんだよ。」
箒
「くっ!」
束
「それに対して箒ちゃんは違うよね?ただ束さんの妹だからって言う理由だけで専用機を手に入れようとしたでしょ?束さんの妹だから専用機を貰えるのは当たり前とでも思ったの?」
箒
「ぐぅっ…」
ぐうの音も出ないとはこう言う事を言うんじゃろうなぁ…
箒
「…でしたら…布仏の【ワイバーン・ガイア】を私に下さい!私がデータ収集をします!!」
束
「ハァ~…それは無理だよ…」
コイツそこまでして第5世代が欲しいんか?
束さんまで呆れ始めとるぞ…
箒
「な、何でですか!?」
束
「何でって箒ちゃんとのんちゃんじゃISの知識も技術も違い過ぎるもん。2人を比べたらどっちを【ワイバーン・ガイア】に乗せるか一目瞭然だよ。それにさっきも言ったでしょ?箒ちゃんじゃ第5世代を使えないって。乗っても【ワイバーン・ガイア】を歩かせる事も出来ないよ。」
箒
「!?」
束
「第一【ワイバーン・ガイア】はのんちゃん用に調整されてるんだよ?もし箒ちゃんに合わせて調整をやり直したら今迄のデータも全部消さないといけないんだよ?そんな事する訳無いじゃん。」
箒
「うぅぅぅっ…」
まあ普通はデータを消してまでそんな事せんわな…
しかし…
生徒1
『今度は布仏さんの機体を寄越せって言ってるわよ!?』
生徒3
『そうまでして第5世代が欲しいのかしら?』
生徒2
『第4世代が手に入るだけでも凄い事なのにね。』
今ので周りからの心象が更に悪くなったのぉ…コイツわざとやっとるんと違うか?
束
「いい箒ちゃん?何度も言うようだけど箒ちゃんには第5世代を使うだけの技術は無い。それに専用機を持つ資格も無い。代表でも候補生でも無い箒ちゃんに専用機を渡すのはその人達の努力を侮辱する行為になるけど、それでも箒ちゃんは束さんの大事な妹だからね、最新技術を込めた第5世代と各国で開発中の第3世代の中間にあたる第4世代を用意する事にしたんだよ。そしてこれを最後に束さんは箒ちゃんの我儘を聞くのを止める事にしたんだよ。分かった?」
箒
「ぐっ、くぅぅっ…分かり…ました…」
ここまで言われてようやっと大人しくなり始めたか…
~永遠 Side out~
~千冬 Side~
ハァ~…まさか布仏の【ワイバーン・ガイア】を寄越せとまで言うとは思わなかった…
昔から短気でよく我儘を言っていたが、あの頃はまだ子供の我儘と言えばまかり通るレベルではあった
だが今のコイツはその時より明らかに酷くなっている…まるで中身はそのままで体だけデカくなったような状態…いや、子供の持つ幼さや子供心が無くなった事と自分の立場…『束の妹』という立場が加わって酷さが増している
その束も昔から我儘だったがアイツの場合はもっと根本的に違っていたからそう言う物だと私も周囲も割り切れていた…それに火ノ兄のお陰で今は随分と改竄されているし私から注意する事も無くなってきているから束に関しては問題無いと見てもいいだろう
だが箒の場合はそうはいかない…コイツの我儘は他の人間と同じタイプの物だが、その中でもかなり酷い部類に入るものだ…いや、私の知る限り一番酷いと言ってもいいかもしれない…
何でもかんでも自分の思い通りにしないと気がすまない人間になっている…しかも自分のやってる事が全て正しいと思い込んでいるから余計に性質が悪い…こっちが何を言っても口では分かったと言っても心の底から理解していない…
このままコイツを放置するとそれこそ取り返しのつかない事になりかねんぞ?…ってそう思ったらコイツはすでに火ノ兄の【戦国龍皇】を盗むと言う犯罪を犯していた…既にコイツは危険な状態にまで行っていたんだ
コレは後で束と本気で相談する必要があるな…
私がそんな事を考えていると…
束
「それからこの【紅椿】は第4世代ではあるけどリミッターを掛けてあるから今の性能は第2世代後半ぐらいまでしか出ないからね。」
束は【紅椿】の説明を始める前にそんな事を言って来た
アイツそんな仕掛けをしていたのか…だがこれでは第4世代と言うのは名ばかりの第2世代のISになってしまうな…まあコイツには丁度いいか…コイツ自身は納得していないようだがな…
箒
「な、何でそんな事までするんですか!?」
案の定反発したか…分かり易い奴だ…
束
「当たり前でしょ?今の箒ちゃんじゃ第5世代どころか第4世代に乗っても機体に振り回されるだけだよ。だから今の箒ちゃんの実力から少し上のレベルに設定したんだよ。」
箒
「…それが…第2世代後半だって言うんですか!!」
束
「そうだよ。」
私もそのくらいでいいと思うな…
一番いいのはコイツに専用機を与えない事だと思うのだが…多分【紅椿】を用意していなかったら今度はオルコットの【ハルファス・ベーゼ】を盗み出しかねんからな…その辺りも考えて束はコレを用意する事にしたんだろうな…
束
「それからちーちゃんにはコレを渡しておくね。」
すると束はポケットから取り出した物を渡してきた
それは手の平サイズのスイッチだった
千冬
「…何だこれ?」
束
「【紅椿】の『
何?【紅椿】の?
箒
「!?…どう言うつもりですか!!リミッターだけでなくそんな物まで用意するなんて!!」
私の手にあるスイッチを見ながら箒が再び怒鳴り声をあげた
束
「…箒ちゃん…とーくんの【戦国龍皇】を盗んだよね?」
箒
「!?」
束
「その【戦国龍皇】…じゃなくて『ツルちゃん』だったね。あの子に拒絶されたから束さんに専用機を造れって言って来たんでしょ?【戦国龍皇】が手に入らなかったから?」
箒
「ぐっ!」
やはり束も何故コイツがこのタイミングで専用機を要求したのか分かっていたか
コイツは【戦国龍皇】…いや、ツルに完全に拒絶されたからな…
束
「そんな事する子だから幾つもの予防策をかけておくんだよ。このスイッチとリミッターはその為だよ。」
箒
「………」
正論だな…コイツに何の制限もなくISを持たせても碌な事にはならん
正直、リミッターよりもこの停止スイッチの方が私としてはありがたいな…
束
「という訳だからそれはちーちゃんが持っててね。そのスイッチを押すと【紅椿】は自動で近くの地上に移動して待機状態に戻る様になってるから。その後は機体が展開出来ないように機能を停止するからね。」
千冬
「分かった。…ところでこのスイッチの効力はどのくらい続くんだ?」
束
「もう一度押さない限りそのままだよ。ただ、機能を止めてすぐに押しても戻らないからね。最低でも1時間は空けないと復旧しないよ。」
千冬
「ああ、分かった。」
束
「それから箒ちゃん?このスイッチは箒ちゃんが押しても機能しないからね。それにスイッチを壊したら【紅椿】は強制停止状態になるからね。壊したら最後、束さんが再起動するまで【紅椿】が動く事は無いからそのつもりでいてね。」
箒
「ぐっ!」
コイツ考えていたな?
しかし束の奴、そこまで手を回していたか…確かにコイツなら私の隙を狙って停止スイッチを盗むなり壊すなりするだろうからな…そんな事させるつもりも無いがな…
束
「じゃあセーちゃんの【ハルファス・ベーゼ】と一緒に調整を…って行きたいけど先に【紅椿】の方をしておこっか。」
千冬
「ん?何故一緒にやらない?お前なら同時に作業が出来るだろ?」
束
「そりゃやろうと思えば出来るけど作業内容が違い過ぎるからね。【紅椿】なら10分もかからずに終わるけど【ハルファス・ベーゼ】は軽く見ても1,2時間はかかるよ。」
箒
「!?」
千冬
「そんなに差があるのか?」
束
「そりゃそうだよ。のんちゃんの【ワイバーン・ガイア】だって
なるほど、言われてみると納得出来るな…
千冬
「確かにそれなら別々にやった方が効率がいいか…【紅椿】は
束
「そう言う事!じゃあ箒ちゃん、【紅椿】に乗って。」
箒
「…分かりました…」
箒は渋々と言った様子で【紅椿】に乗り込んだ
だがあの顔…文句を言いたい顔だな…大方、オルコットのISの方が手間がかかる事に不満と言った所か…まあ言った所で意味は無いか…
事実だからな…
………
……
…
束
「終わったよ~♪」
その後…と言うか本当に10分と掛からず束は【紅椿】の調整を終わらせた
束
「じゃあ箒ちゃん、試しに飛んでみて。」
箒
「………はい…」
それから箒は言われた通り飛び上がり、【紅椿】の武装である二本の刀…【
何でもあの武装は刀の形状をしているが中距離武器らしくそれぞれ刀身からエネルギー状の刃やレーザーを撃てるらしい…【ハルファス・ベーゼ】と違いビーム兵器では無いとの事…まあオルコットならともかくコイツにビーム兵器なんて持たせるのは危険極まりないからな…
それからこれは束がコッソリ教えてくれたのだが【紅椿】には【展開装甲】と言う武装も内蔵されているらしい…その名の通り装甲を展開させ攻撃、防御、スラスターとして使う事の出来る万能兵装なのだそうだが…【ワイバーン・ガイア】や【ハルファス・ベーゼ】と比べると霞んで見えるのは私の気のせいか?
私がそう言うと束は露骨に目を逸らした
コイツ…自分で造っておきながら同じ事を考えていたな…
それでその【展開装甲】だが、この事は箒には教えないとの事だ
私が理由を聞くと箒にはあの二本の刀だけで十分だし使いこなせないだろうとの事だ…その為【紅椿】のリミッターと連動して封印してあるとの事だ
そしてもう一つ…
【紅椿】の
それも【絢爛舞踏】を使いこなせればほぼ無尽蔵にエネルギー供給が可能と言うとんでもない能力だ
だがこちらも箒では荷が重いとの事で封印したとの事だ
…封印するくらいなら初めから付けなければいいと思うのだが…
私がそう思っていると箒が地上に降りて来た
それとコレは束が後で話してくれたのだが、この【展開装甲】と
だがその話を聞かされた時、私はその封印が解かれる事は無いだろうと感じていた…恐らく束自身も…
~千冬 Side out~