IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第108話:緊急作戦会議

 

 ~永遠 Side~

 

 今度は何が起きたんじゃ?

 学園から離れてまで面倒事に巻き込まれたくはないぞい…

 

千冬

「それでは状況を説明する!」

 

 そう思ってもワシ等は無情にも巻き込まれてしもうた…

 ワシ等は現在、旅館の奥にある一室に集まっておる

 この部屋は色々な機材を持ち込んで作った即席の指令室となっとる

 そんな部屋に織斑先生の指示されたワシ等専用機持ちがいる訳じゃ…じゃがこの中には篠ノ之もおるんじゃよな~…『専用機持ち』と言った以上篠ノ之もその中に入ってしもうたんじゃよな~…

 また頓珍漢な事口走らなければいいんじゃが…不安しか無いの~…

 っと、それより話を聞かんと…

 

千冬

「現在、アメリカとイスラエルが共同で開発した軍用IS【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】…取り合えず【福音】と呼ぶが、それが稼働実験中に制御不能となり暴走飛行を始めたとの事だ。」

 

セシリア

「織斑先生…何故それをわたくし達に話すのですか?それではまるでわたくし達が【福音】の暴走を止める事になるように聞こえるのですが?」

 

千冬

「まるでも何もその通りだ…さっき学園からお前達で止めるように指示が来た…」

 

全員

「はぁ?」

 

 何じゃそりゃ?

 

永遠

「何故にワシ等がそげな事をせにゃならんのじゃ?」

 

千冬

「それがな…【福音】の進行方向を計算したところこのまま進むと此処から2Km離れた海上を通過する事が分かった。」

 

ラウラ

「それで我々に指示が来たと?」

 

千冬

「そう言う事だ。」

 

永遠

「んなもん無視すればよかろう?真上を通ると言うなら話は別じゃが、そんだけ離れとるなら通過するのを持っとればいいじゃろ?大体こう言うのは【福音】とやらを造ったアメリカとイスラエルが責任を持って止めるのが筋じゃろうが?それが何故に只の学生のワシ等が連中の失敗の尻拭いをせにゃならんのじゃ?アメリカとイスラエルは子供に尻拭いさせる恥知らずの国なんか?」

 

専用機持ち達(箒以外)

「うんうん!!」

 

 他の者達も同じ気持ちの様じゃのぉ

 まあそりゃそうか…好き好んでトラブルに首突っ込む物好きはそうはおらん…ましてやそれが国家間の問題ともなれば余計になぁ…

 

千冬

「言うな!私だって同じ気持ちだ!!だがその2国が委員会を通じてIS学園に依頼してきたんだ…こうなってしまっては私達がやるしかない…」

 

永遠

「チッ!ほんに面倒な事を…じゃが織斑先生、ワシ等はあくまで学生じゃ。失敗したからと言ってワシ等に責任取れとか言わんよな?」

 

千冬

「無論だ!私も指令を受けた時に生徒の安全を第一に考えると言ってある。学園の方も当然として了承した。後でその事を委員会を通じてアメリカとイスラエルに伝えるそうだ。失敗しようが成功しようが連中が何か言って来ても感謝以外の言葉は全部突っぱねてやるから安心しろ!!」

 

真耶

「そもそも火ノ兄君の言う通り学生の皆さんに暴走した軍用ISを止めろと言う向こうの方が無茶を言ってるんです。失敗したからと言って文句を言ったら恥の上塗りでしかありませんよ。」

 

永遠

「ほぉ…セシリア、簪、山田先生の言っとる通りか?」

 

 ワシは隣におるセシリアと簪に聞いた

 2人はそれぞれイギリスと日本の代表候補生じゃからな

 

セシリア

「ええ、そうなると思いますわ。」

 

「学生の私達にこんな事させてる時点で既に問題…各国に知られたら今の時点でも後ろ指差されると思う…」

 

永遠

「さよか。」

 

 鈴やラウラ、シャルロットも同意するように頷いておるし、その辺は大丈夫そうじゃな…

 

永遠

「じゃったら死なん程度にやるしかないのぉ…メンドイ…」

 

全員(箒以外)

「はぁ~…」

 

 ワシ等は揃って溜め息をついた…あ~本当に面倒臭い…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 火ノ兄の言う通り本当に面倒臭い…何で私達がこんな事しないといけないんだ!

 アメリカとイスラエルの連中、実験するならもっと考えてからしろよな!

 だがそうは言ってもやるしかないか…取り合えず【福音】を止める作戦を考えるとするか…

 

千冬

「それで【福音】についてだが先ずあの機体にはアメリカのテストパイロット…『ナターシャ・ファイルス』が搭乗している。だが向こうが通信を送っても連絡が付かないらしく現在は意識を失っていると思われる。」

 

 先ずは搭乗者の現状を伝えておくか…

 それにしても【福音】のパイロットがアイツとはな…

 アイツは…今どんな気持ちなんだろうな…アイツは私と話す時もISで空を飛ぶ事は楽しいと笑顔で語っていたからな…

 だからナターシャは自分を空に連れて行ってくれるISを兵器として見てはいなかった…ISは空を飛ぶ為の翼だと私に言っていた…アイツなら今の束と気が合うかもな…無事に救出されたら束も誘って一杯ひっかけるのも悪くないかもな…

 

永遠

「意識不明か…そうなると無理な止め方は出来んのぉ…」

 

「うん…無茶な止め方をして体に変な負担がかかるかもしれない…」

 

セシリア

「安全に救出する為にもまずは相手の事をよく知る必要がありますわね…織斑先生、機体のスペックを教えて頂けるのですか?」

 

 おっと、私がナターシャの事を考えている間にコイツ等の方で話が進んでいたか

 

千冬

「可能だ。だが、仮にも国家機密に相当するから情報が漏洩した場合、全員に査問委員会による裁判と2年以上の監視が付くからな。それを覚えておけ。」

 

永遠

「自分達のやらかしたヘマを押し付けといて機密も何も無いと思うがのぉ?」

 

全員

「うんうん!!」

 

千冬

「………」

 

 私も火ノ兄の言う通りにしか思えん…

 取り合えず私は提供された【福音】のデータをモニターに表示した

 

セシリア

「広域殲滅型の機体ですか?」

 

「セシリアの【ブルー・ティアーズ】が一番近い感じかな?」

 

シャルロット

「うん、後気になるのはこの特殊武装だね?どんな物か分からないけど曲者っぽいよ?」

 

ラウラ

「ああ、それにこのデータには【福音】の近接性能が載っていない。接近戦は賭けになるかもしれないな…教官!偵察は可能ですか?」

 

千冬

「偵察は無理だな…目標は今も超音速飛行を続けている…接触できるのは1回だけだろうな。」

 

「1回だけか…なら誰が行くかですね…一番いいのは…」

 

 鈴のその言葉に全員の視線が火ノ兄に集まった

 だが…

 

千冬

「残念だが火ノ兄は無理だ。まだ怪我が治りきっていない。」

 

「ですよね…なら…やっぱりセシリアかな?」

 

セシリア

「ですがわたくしの機体は…」

 

シャルロット

「あ!そうだった、まだ最適化(フィッティング)が終わってなかったね?確か1,2時間かかるって話だけど…」

 

ラウラ

「教官、【福音】が最接近する場所まで後どのくらいの時間が掛かりますか?」

 

千冬

「およそ50分後だ。」

 

「それじゃあセシリアも無理…」

 

 そう、この作戦には最も成功率が高い火ノ兄とオルコットが参加する事が出来ないんだ

 火ノ兄は怪我の為に戦闘は無理…オルコットは機体の調整がまだ済んでいない…クソッ!!こんな事になるなら先に【ハルファス・ベーゼ】の調整をするように束に言えばよかった…

 

セシリア

「そうなると後は…本音さん?」

 

本音

「私?」

 

千冬

「【ワイバーン・ガイア】か…恐らくだが布仏では無理だ。」

 

全員

「え!?」

 

千冬

「【ワイバーン・ガイア】は確かに第5世代だがあの巨体のせいか機動性が一番低い…お前達の機体よりかは上なのだが、【福音】の速度は恐らく第3世代最速…【ワイバーン・ガイア】では一歩遅れていると思う…」

 

 データを見る限り【ワイバーン・ガイア】でも追い付く事は無理だろうな…【ハルファス・ベーゼ】なら問題は無いのだが…

 くそっ…折角の第5世代が現状では使えないという事か…アメリカとイスラエルめ…面倒な物を造りおって…

 

永遠

「う~む…そうなると残る手段は織斑に任せるしかないのぉ…」

 

 やはりその手段しかないか…だが…

 

一夏

「え!俺!?」

 

「そうよ、アンタの【零落白夜】で【福音】のSEを一気に0にするのよ。」

 

一夏

「一気に?」

 

「そう、一気によ。【白式】のSEを可能な限り【零落白夜】に回して一撃で終わらせるの。でもそうなると…」

 

ラウラ

「可能な限りエネルギーを温存する必要があるから誰かが一夏を目標地点に運ぶ必要があるな…」

 

シャルロット

「それを誰がするかだね…」

 

 コイツ等もそこに気付いていたか…

 そうだ、一夏に任せる場合、【零落白夜】に出来る限りエネルギーを回した一撃を入れる必要がある…だがその為には一夏を輸送する人員が必要だ…だがそれが可能なのは…

 

千冬

「………」

 

 私は周囲にいる専用機持ち達を見渡してその人物を探した

 まず火ノ兄とオルコットは作戦に参加出来ないから無理だ…

 次に鈴とラウラ、デュノア、更識の4人のISではスピードが足りん…

 後は布仏だが…【福音】の速度を考えると少し厳しいか?

 それと…

 

「………」

 

 私はこれまで一切会話に入っていない奴に視線だけ向けた

 コイツの【紅椿】は第4世代だが束がリミッターをかけているから性能がかなり下げられている…リミッターを外せばいけるか?…いや駄目だ!そんな事をすれば暴走するのが目に見えている…

 しかしどうすれば…最悪の場合、火ノ兄の【ラインバレル】で一夏を【福音】の前にピンポイントで転移させるしかないな…

 私が誰に任せるか考えていると…

 

「私がやる!!!」

 

全員

「は?」

 

 あろう事かその箒が名乗りを上げた

 

「私の【紅椿】なら一夏を目的の場所まで運べる!私のISは第4世代だ!図体だけの第5世代とは違う!!」

 

全員

「………」

 

 コイツ、さっきまで自分が何を言っていたのか忘れたのか?

 その図体だけの機体を寄越せと騒いでいたのは何処のどいつだ…この変わりよう…いっそ清々しくさえ感じるな…

 だが…

 

千冬

「お前のISはリミッターがかけられているだろ?無理だ。」

 

 コイツに任せると更に面倒が起きそうだからな…

 

「今は緊急事態何でしょう!!でしたらリミッターを外して下さい!!」

 

千冬

「ぬぅ…」

 

 悔しいがコイツの言う事にも一理ある…こうなれば仕方無い…

 

千冬

「…束!!出て来い!!」

 

 私は声を少し大きめにそう言った

 すると…

 

「ニャハハハ…やっぱり分かってた?」

 

 天井から束が出て来た

 やはりいたか…

 

千冬

「核心は無かったがな…お前なら聞き耳くらい立てていると思っていた。それで話は聞いていたな?」

 

「聞いてたけど…リミッターを外すの?」

 

千冬

「今考えているがその前に一つ聞きたい。リミッターを外せば【紅椿】は【白式】の輸送が可能なのか?」

 

「…出来るよ。リミッターを外した【紅椿】はスピード()()は【ワイバーン・ガイア】を超えるからね。尤も【ハルファス・ベーゼ】には全ての面で遥かに劣るよ。」

 

「チッ!」

 

 露骨に舌打ちしたな…そんなに自分の機体がオルコットの機体に劣っている事が気に入らないのか…まあ今はいいか…

 さて…どうするか…

 

「リミッターを外すだけならすぐに出来るよ。掛け直す事も同様だよ。それからリミッターを外してもちーちゃんに渡した停止スイッチは問題無く動くよ。」

 

「チッ!」

 

 また舌打ちか…リミッターと一緒に停止スイッチも機能が停止すると思っていたのか?

 全く…コイツがそんな事する訳無いだろうに…

 

「それでどうする?リミッターを外せって言うなら()()()()特別に外してあげるよ。その辺の判断はちーちゃんに任せるよ。」

 

 後は私に任せるか…

 ええい、やむをえん!!

 

千冬

「【紅椿】リミッターを外してくれ!織斑の運搬は篠ノ之に任せる!」

 

「千冬さん!!」

 

千冬

「織斑先生だ!!!」

 

 ガンッ!

 

「ぐほっ!?」

 

 取り合えず名前で呼んできたコイツを1発ぶん殴っておいて…

 後は…

 

千冬

「聞いての通りだ!作戦は織斑と篠ノ之の2人で行う!他の者はバックアップに回れ!!」

 

全員

「了解!!!」

 

千冬

「………」

 

 全員が返事をしたが…やはり篠ノ之に任せるという事に不安があるようだな…

 私も同様だから何とも言えん…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 箒に運んでもらう事になった俺は束さんに【白式】を再調整して貰った

 それと同時に箒の【紅椿】のリミッターも解除された…リミッターの外された瞬間、箒は笑みを浮かべていた…でも、何だろ…不安しか感じないんだよな…

 そして俺と箒は今は浜辺で出撃準備をしている

 その時…

 

千冬

『一夏、聞こえるか?』

 

一夏

「え?千冬姉?」

 

 指令室の千冬姉から通信が入った

 

千冬

『そのまま聞け。これはプライベートチャンネルで話しているから箒には聞こえん。いいか、簡単に言うぞ?()()()()()()()()()。』

 

 千冬姉は態々プライベートチャンネルを使って俺だけに話しかけて来た

 内容は箒の事だった…それを聞いて…

 

一夏

「…千冬姉もそう思うか?」

 

 千冬姉も俺と同じ事を思っていたようだった

 

千冬

『ああ、正直アイツには不安要素しかない。だから作戦続行が無理と思ったらすぐに引き返してこい。こちらは火ノ兄を待機させておく。』

 

一夏

「火ノ兄を?でもあいつはまだ…」

 

千冬

『戦闘は無理だ。だが【ラインバレル】の【転送】なら使える。退却が無理と判断したらすぐに連絡を寄越せ。火ノ兄を回収に向かわせる。』

 

一夏

「分かった。」

 

 そうか…アイツの【ラインバレル】ならいざと言う時にも離脱出来るな…

 そう思うと少し気が楽になった

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「それでは作戦を決行する!!」

 

一夏&箒

『了解!!!』

 

 私の合図と共に一夏は篠ノ之の背に乗って飛び出していった…私は飛び去ったその姿に不安しか感じなかった…

 

「ちーちゃん…」

 

千冬

「束…すぐに【ハルファス・ベーゼ】の最適化(フィッティング)に取り掛かってくれ。」

 

 この作戦が失敗した場合、【福音】を止められるのはオルコットの【ハルファス・ベーゼ】だけだからな…保険は掛けておかんとな…

 

「分かったよ…セーちゃん行くよ!」

 

セシリア

「はい!!」

 

 出来れば…オルコットの出番が無い事を祈るが…

 

 ~千冬 Side out~

 


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