IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第132話:最期の会話

 

 ~三人称 Side~

 

 【イグニッションプラン】の事件が起こる数日前…

 セシリアがイギリスに帰国した時と同じ頃…

 

シャルロット

「…着いた…か…」

 

 シャルロットもフランスへと帰国していた

 だが、シャルロットの場合はセシリアと違い誰かが迎えに来ている訳では無かった

 更に言えば、セシリアと違いテンションまで低かった

 

シャルロット

「…コレが…最後になるのか…」

 

 その理由はこれがシャルロットにとって『最後の帰郷』になるからだった

 

シャルロット

「…しっかりとこの景色を目に焼き付けよう…」

 

 そう呟くとシャルロットはゆっくりと歩きだした…

 

 ~三人称 Side out~

 

 

 

 ~シャルロット Side~

 

シャルロット

「…あっと言う間に着いちゃったな…」

 

 僕はデュノア社の前に来ていた…

 これから報告と言う名の最期のお別れを言う…

 いや、もしかしたら父さんとは会えずに終わるかもしれない…

 それでも…僕は最期にお父さんに会いたい!!

 僕は意を決して会社へと入って行った

 

 ………

 ……

 …

 

デュノア社長

「報告を聞こう。」

 

シャルロット

「………」

 

 意気込んで来た割りにアッサリとお父さんの前に通されちゃった…

 とは言っても二人きりじゃない…お父さんの隣には本妻もいるし、その取り巻きもいる…

 それでもこんなに簡単に会えるなんて…

 僕が今の状況に追い付いていないと…

 

デュノア社長

「聞こえてるのか!!」

 

シャルロット

「!?」

 

 お父さんが怒鳴った

 いけない…コレは僕が悪い…ちゃんと報告はしないと

 

シャルロット

「す、すみません!!では報告します!!」

 

デュノア社長

「うむ…」

 

 それから僕は学園での活動を報告して行った

 一夏に正体がバレている事とかは流石に言えないから嘘を混ぜて報告していった

 

シャルロット

「………以上で終わります。」

 

デュノア社長

「ふ~む…織斑一夏…思ったよりガードが堅い様だな…」

 

シャルロット

「ハ、ハイ…」

 

 どうやらお父さんは僕の報告を信じてくれたみたいだ

 すると…

 

デュノア社長

「ではもう1人については?」

 

 火ノ兄君の事を聞いて来た

 でも…

 

シャルロット

「すみません…彼に関しては織斑一夏以上に何も分かっていません…接触の機会が極端に少ないので…」

 

デュノア社長

「…どう言う意味だ?」

 

 彼についてはデータを盗む以前の問題なんだよね…

 

シャルロット

「実は…彼は他の生徒と違い自宅通学をしています。その為、放課後から翌朝までは学園にいないんです。」

 

デュノア社長

「何?あそこは全寮制の筈だぞ?」

 

シャルロット

「家庭の事情らしく、理事長に特別に許可を貰っているそうです。」

 

デュノア社長

「…では何故彼の家の調査に行かなかった?」

 

シャルロット

「無理言わないで下さい…彼の住んでいる場所はISを使う程離れてるんです。ですから彼はISを使って登下校をしてるんです。後を付けるにはこっちもISを使わないといけません。許可なくISで外に出る事なんて出来ません。」

 

デュノア社長

「そ、そうか…確かにそれでは無理か…」

 

シャルロット

「それに彼が住んでいる場所は私有地だそうです。勝手に入り込んだら捕まってしまいます。」

 

デュノア社長

「ぬ~…」

 

 僕から火ノ兄君について聞いたお父さんは顔を顰めていた

 それは傍にいる本妻や取り巻き達も一緒だった

 捕まるのを覚悟で行って本当に捕まったら国際問題になりかねないからね…

 流石にそこまでのリスクは負う事は出来ないか…

 

デュノア社長

「分かった…報告ご苦労…」

 

シャルロット

「ハ、ハイ…あの…それで【イグニッションプラン】への参加は…」

 

デュノア社長

「無理だな…データが足りん…今回は諦めるしかないな…」

 

シャルロット

「…そうですか…」

 

 そうだよね…そもそも僕がデータを持ってきたとしても数日で新型を造るなんて出来ないよね…

 お父さん達もそれは分かっていたみたいで悔しそうにはしてるけど割と簡単に受け入れているみたいだ…

 

デュノア社長

「…もう下がっていいぞ。」

 

シャルロット

「ハイ…あ、あの…」

 

デュノア社長

「何だ?」

 

シャルロット

「い、いえ…失礼…します…」

 

 駄目だ…本妻達の前で迂闊な事は言えない…

 でも…一目でももう一度会えた…言葉を交わす事が出来た…それで良しとしよう…

 僕が自分でそう結論付けて部屋を出ようとした時…

 

デュノア社長

「少し待て。」

 

シャルロット

「ハイ?」

 

 お父さんに呼び止められた

 何だろ?何か問題があったのかな?

 

デュノア社長

「社を出る前に『開発部』に寄って行け。」

 

シャルロット

「開発部ですか?」

 

デュノア社長

「そこにお前のISを預けてから帰れ。」

 

シャルロット

「ハイ…分かりました…いつ取りに来れば?」

 

デュノア社長

「一度、データの洗い直しとばらして総メンテを行う予定だから1週間以上はかかる。後で学園に送っておくからこのまま日本に戻れ。」

 

シャルロット

「………」

 

 ISを置いて日本に行け?

 それって…

 

デュノア社長

…頑張るんだぞ…シャルロット…

 

シャルロット

「!?」

 

 小さな声で…でもハッキリ聞こえた…

 だから僕はそれ以上何も言えなかった

 

シャルロット

「…失礼します…」

 

デュノア社長

「………」

 

 僕は込み上げて来る物を必死に我慢して部屋を出た

 そして、急いで【ラファール】を開発部に預けるとそのまま会社を飛び出した

 

 ………

 ……

 …

 

 それから僕は走り続けて会社から十分に離れると…

 

シャルロット

「うっ…ううっ…お父…さん…お父さ~~~ん!!!」

 

 僕は泣いた

 お父さんの気持ちが伝わったから…

 ISを預けさせたのは僕が日本に亡命した時に余計な問題を起こさせない為だ…【ラファール】が原因で国際問題を起こさない単にお父さんはISを置いて行くように言った…

 何よりも…あの最後の言葉…

 

 …頑張るんだぞ…シャルロット…

 

 本妻達に聞かれるかもしれないのに…

 僕に…頑張れって…シャルロットって…言ってくれた…

 

シャルロット

「ううっ…うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

 

 だから僕は泣き続けた…

 

 涙が枯れるまで…

 

 人目も気にせず…

 

 泣き続けた

 

 ~シャルロット Side out~

 


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