IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第133話:クロエの決意

 

 ~永遠 Side~

 

 【イグニッションプラン】の事件をニュースで知ったワシ等は参加しているであろうセシリアとラウラの心配をしとった

 事件の事を知ってすぐに連絡をしたんじゃが向こうも混乱しておる様子で連絡が付かんかった

 仕方なく今は束さんが情報を集め終わるのを待っとる状態じゃが全員が気が気でなかった…

 織斑も訓練に集中出来とらん…かく言うワシもじゃ…畑はともかく鍛練に身が入らん…

 他のもんも同様じゃ…

 織斑先生も学園には戻らず束さんの調査を待っとる…学園よりも束さんの方が速くて正確な情報が手に入るからのぉ…

 皆が心配しとる中…

 

クロエ

「………」

 

 一番心配しとるのはクロエの様じゃの?

 心ここにあらずと言った所かの?

 ワシがそう思うとると…

 

「皆!!向こうの様子が分かったよ!!!」

 

全員

「!?」

 

 束さんが居間に駆け込んで来た

 

千冬

「それで状況は!?」

 

「うん…簡単に言うと…最悪と言っていい状況だね…」

 

千冬

「最悪だと!?」

 

 どうやら向こうはこちらの想像以上に酷い有様の様じゃの…

 

「イギリスの【サイレント・ゼフィルス】が奪われたのは皆ニュースで知ってるよね?その【サイレント・ゼフィルス】の追跡部隊が出されたそうだけどまだ見つかってないらしいよ。」

 

千冬

「そうか…だが…犯人はどうやってISを盗んだんだ?よりにもよってオルコットのいるイギリスを狙うとは…」

 

 確かにの…セシリアじゃったら襲撃犯なんぞ返り討ちに出来る筈じゃ…にも拘らずISを奪えたとなると…

 

永遠

「…犯人はセシリアがおらんタイミングを狙ったと言う事じゃな?」

 

千冬

「何!?」

 

「うん…事件が起きた時、セーちゃんはイギリス政府で打ち合わせをしてたらしいよ。」

 

千冬

「それではどうしようもないか…」

 

 現場におらんのではさしものセシリアでも何も出来んか…

 しかし…

 

永遠

「…そうなると犯人はセシリアの行動を知っておった可能性があるのぉ…」

 

全員

「!?」

 

「どう言う事!?」

 

永遠

「犯人にとって一番の障害は第5世代を持つセシリアじゃ…【サイレント・ゼフィルス】に限らず【イグニッションプラン】に出されておるISを狙うのならセシリアの行動を把握する必要がある筈じゃ…」

 

千冬

「言われてみるとそうだが………まさか!?」

 

「セーちゃんの行動をリークした奴がいるかもしれないって事?」

 

永遠

「あくまで可能性の話じゃ…じゃがそうでも考えねばあそこ迄手際よく行くとも思えん…」

 

千冬

「確かに火ノ兄の言う事にも一理あるな…束、そいつが居たと仮定して探す事は出来るか?」

 

「難しいね…電話やメールならともかく手紙や口頭で連絡を取り合ってたら流石の束さんでもお手上げだよ…」

 

千冬

「そうか…」

 

 そうじゃよな…手紙の内容なんぞ開ける時まで分からんし、イギリスにいる人間全ての会話を調べる事なんぞ誰にも出来ん…

 

「一応後でとーくんが言った事をセーちゃんには伝えておくよ。そうすれば向こうの方で怪しい動きをしていた奴を見つけられるかもしれないからね。」

 

永遠

「既に手遅れかもしれんがな…」

 

全員

「………」

 

 【サイレント・ゼフィルス】を奪う事に成功した以上リークした奴が何時までもおるとは限らん…いや、下手をすれば口を封じられておる可能性もあるのぉ…

 

「それとね皆…その…」

 

 ん?他にも話す事があるみたいじゃが…随分言いにくそうな顔をしとるの?

 束さんにしては珍しい…何かクロエをちらちら見とるが…

 ん?クロエ?

 という事は…

 

永遠

「…ラウラに何かあったのか?」

 

クロエ

「!?」

 

「…うん…その子、【イグニッションプラン】に参加しててね…襲撃犯を捕まえようとして返り討ちにあったそうなんだよ…」

 

千冬

「何だと!?」

 

 やはりラウラの事じゃったか…

 クロエとラウラの関係は束さんも知っとるからな…

 

クロエ

「………」

 

 じゃが肝心のクロエは複雑な表情をしとるの…

 吹っ切れたとはいえクロエ自身もラウラとどう接すればいいのかまだ決めかね取るからのぉ…

 

「怪我はしたけどラウラって子は無事だよ…」

 

千冬

「そうか…良かった…」

 

 織斑先生は安心しとるの…

 さて…

 

クロエ

「………」

 

 問題はクロエじゃな…

 仕方が無い…いい機会じゃ…クロエがラウラとどうなりたいか聞くとするか…

 ラウラの方は既に決めとるしな…と言うか外堀から埋めに来とるし…

 

永遠

「クロエよ…主もいい加減決めたらどうなんじゃ?」

 

クロエ

「に、兄様!?」

 

永遠

「正直に言って今の主は見てられんぞい?」

 

 今迄は当人達の問題じゃからと思うて口出しせんかったが…ココまで悶々としとると流石に放っておけんわい…

 

永遠

「ラウラが心配なら会ってきんさい…どうでもいいならそげな顔するでない…」

 

クロエ

「うっ…」

 

 ワシがそう言うと黙り込んでしもうた

 じゃが…

 

一夏

「なぁ?今のどういう事だ?ラウラとクロニクルさんって仲悪かったのか?」

 

 この中で二人の関係を知らん織斑が口を挟んできおった

 

千冬

「そう言えばお前は知らなかったか…」

 

一夏

「え?何が?」

 

千冬

「う~む…クロニクル…コイツに教えてもいいか?」

 

クロエ

「…はい…」

 

 織斑先生がクロエに許可をとったか…

 じゃが、ワシの言った事を考えておるのかから返事じゃな…

 その間に織斑は姉からクロエとラウラの素性を説明されとった

 

千冬

「………という訳だ。」

 

一夏

「…ラウラとクロニクルさんにそんな事情が…」

 

千冬

「分かってると思うが言いふらすなよ?」

 

一夏

「分かってる!!誰にも言わねえよ!!!」

 

 ふむ…あの様子では大丈夫じゃろう…

 さて…となると…

 

クロエ

「………」

 

 いよいよクロエの事なんじゃよな…

 未だにワシの言った事を考えとるみたいじゃし…

 どうするべきかな…

 と思っとると…

 

クロエ

「束様…兄様…」

 

 クロエが顔を上げてワシと束さんの名を呼んだ

 

永遠

「何じゃ?」

 

「な~に?」

 

クロエ

「…私は…今でもあのドイツと言う国が許せません…吹っ切れた今でもそれは変わりません…」

 

全員

「………」

 

 まあ、そうじゃよな…

 【VTシステム】の事と言い…クロエやラウラの生まれの事と言い…あの国はほんに碌な事をせんのぉ…

 

クロエ

「ですが…あの子自身には…もう何も蟠りはありません…」

 

永遠

「ではどうしたい?」

 

クロエ

「まだ分かりません…ですが…今はあの子に会って…安否を直接確認したいです!!!」

 

永遠

「よく言った!!!」

 

「行ってきなよ!!!」

 

クロエ

「ハイ!!!」

 

 ワシと束さんが最後の一押しをするとクロエは力強く頷いた

 そんなクロエを簪や本音、織斑姉弟も微笑んでおった

 そして…

 

クロエ

「では行きますよ!!【裂空丸】!!!

 

 クロエは自分の専用機の名を呼んだ

 

 ~永遠 Side out~

 


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