IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第138話:姉妹の絆!ファントム・グルゼオン!!

 

 ~クロエ Side~

 

 兄様からの突然のサプライズには本当に驚きました

 ですが、私がココに来た本来の目的をまだ果たしてませんからそろそろ本題に入りましょう

 

クロエ

「では気を取り直して…貴方のISを見せましょう。」

 

ラウラ

「ハ、ハイ!!」

 

 私がそう言うと視線をコンテナに向けました

 そこには翼をマントの様にして覆っている漆黒のISがありました

 

クロエ

「コレが貴方の第5世代…【ファントム・グルゼオン】です。」

 

ラウラ

「【ファントム…グルゼオン】…」

 

 このISは兄様から提供して貰った【ドットブラスライザー】の中にあった【グルゼオン】と【ファントム】と言うLBXを元に開発しました

 ぶっちゃけて言えば【グルゼオン】に【ファントム】の翼を取り付けて名前も繋げただけなんですけど…これが中々様になってるんですよね…

 それに【グルゼオン】の頭って『黒い兎』に見えるんですよね…

 

ラウラ

「…これ程の性能とは…」

 

 渡した【ファントム・グルゼオン】のデータを見てその性能に驚いてますね…

 自分で造っておいて何ですが…私自身も出来上がったこの機体の性能に驚いてるんですからね…この2体のLBX…相性が良すぎますよ…

 

クロエ

「このISに貴方のISのコアを移植します。よろしいですか?」

 

ラウラ

「…それはありがたいのですが…本当によろしいのですか?私はドイツの軍人です。この機体の事を隠しておく事は出来ませんよ?」

 

クロエ

「構いません。教えた所でこの国に出来る事など何もありませんからね。」

 

ラウラ

「え?」

 

 ラウラの疑問も尤もですけど…そんな事初めから想定内なのですよ!!

 

クロエ

「この子にはセシリア様の【ハルファス・ベーゼ】と同じ【自己再生能力】を持たせています。」

 

ラウラ

「【ハルファス・ベーゼ】と同じ!?」

 

クロエ

「と言っても他の機能を優先させた為に再生速度は【ハルファス・ベーゼ】の更に半分しか持ちません。それでもこの機体は【ラインバレル】や【ハルファス・ベーゼ】と同じく『メンテを必要としない』機体に仕上がっています。」

 

ラウラ

「…メンテを…必要としない?」

 

 コレが私の対策!!メンテが必要無いなら整備マニュアルも必要無いんですよ!!

 

クロエ

「そうです。それにこの機体は本音様の【ワイバーン・ガイア】と違って私と束様しかアクセス出来ないように厳重にロックがかけられてます。無理にこじ開けようとすればデータは全部消えて、機体もコア諸共自壊するようにしてあります。勿論そうなっても束様から新しいコアが用意される事はありません。その事を伝えておけば彼らも下手な事はしないでしょう。」

 

ラウラ

「確かに…」

 

クロエ

「それに機体の解析が出来なければ整備と称してバラす事なんて出来ないでしょう?もし力づくでバラそうとしてもこの子は自身の能力で瞬時に再生します。つまり分解自体出来ないんですよ。」

 

 私が笑顔でそう言うとラウラは目が点になっていました

 コレでドイツは【ファントム・グルゼオン】に手出しが出来なくなります

 私と束様しかアクセス出来ず、無理に調べようとすればコア諸共消滅、更に構造を調べようとばらしても即座に再生…

 そんなリスクと無駄な事をこの国がする筈ありません…

 現状ではイギリスしか持っていない第5世代を世界でも一二を争う強欲で傲慢な国であるドイツがやる筈ありませんよ…

 

クロエ

「以上の事からこの国は第5世代を『ただ持っているだけ』になります。イギリスと違って束様が交渉した訳でもありませんし予備のコアを渡してもいませんから優遇される訳でも無いんですよ。あくまでラウラ・ボーデヴィッヒがいたのがたまたまこの国だったと言うだけなんです。もし、【ファントム・グルゼオン】で各国に圧力をかけたら今言った事を教えてあげますよ。そうすればこの国は恥をかくだけですからね。」

 

ラウラ

「………」

 

 それに束様が簪様の【打鉄弐式】を第5世代に改造する研究を行っていますし、他にも目をかけている方はいます

 ドイツが偉そうに出来る時間は僅かしかないんですよ…

 まぁ、イギリスの手前そんなに大っぴらには出来ないでしょうけどね…

 イギリスが【ハルファス・ベーゼ】で各国に圧力をかけたりすればドイツも同じ事が出来るでしょうけど生憎とイギリスはドイツと違って恥知らずではありませんし、そう言った事は絶対にしない誇り高い国です

 結果的にセシリア様のいるイギリスが最初に第5世代を持った国で安心しましたよ…本音様は日本人ですが国家代表でも候補生でも無いので関係無いですからね

 

クロエ

「では作業を始めたいと思います。貴方のISを貸して貰えますか?」

 

ラウラ

「あ、ハイ!!」

 

 私がそう言うとラウラは慌てて自分のIS【シュヴァルツェア・レーゲン】を展開しました

 私はすぐに【シュヴァルツェア・レーゲン】にアクセスするとコアの切り離しに取り掛かりました

 

クロエ

「…一応ロックは掛けてあるみたいですね?」

 

 まあ、この程度のセキュリティなど私や束様にとっては子供だましですね

 そんな事を考えている間にロックはアッサリ解除出来ました

 

ラウラ

「…こんなに早く…流石姉上です!!」

 

 妹に褒められるのは思いのほか嬉しいですね…

 もしかしたら兄様も同じ気持ちを味わっていたのかもしれません…帰ったらその辺りも聞いてみましょう

 

クロエ

「よしっと…後はこれを【グルゼオン】に移すだけですね。」

 

 私は取り外したコアをそのまま【ファントム・グルゼオン】に移植しました

 

クロエ

「ラウラ…【グルゼオン】に乗って下さい。初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を行います。」

 

ラウラ

「分かりました!!」

 

 私の指示に従いラウラが【グルゼオン】に触れると【グルゼオン】は輝き、ラウラの身体に纏わりました

 そして、私は初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)の作業を始めました

 【ハルファス・ベーゼ】の時は【ブルー・ティアーズ】を直接改造した物でしたから初期化(フォーマット)は必要無かったのですが【グルゼオン】の場合はコアを移し替えましたから最適化(フィッティング)だけでなく初期化(フォーマット)も行う必要があるんですよね…

 まあ、そうなるだろうと思って特性のソフトを用意してますから予定より早く終わるんですけどね…

 

 ~クロエ Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

 姉上は私の第5世代の調整をあっと言う間に終わらせてしまった…正直、横で見ていた私は姉上が何をしていたのか全く分からなかった

 

クロエ

「後はコアが馴染むのを待つだけですね。」

 

ラウラ

「どの程度で終わりますか?」

 

クロエ

「そうですね~…今日中には終わると思いますよ?」

 

 私の質問に姉上は少し考えた後、答えてくれた

 今日1日…たった1日で終わるのか…

 

ラウラ

「姉上…私のISの事…本当にありがとうございます!!大切に使わせて貰います!!」

 

クロエ

「そう言って貰えると造った甲斐がありましたよ。ただ申し訳ないんですが…」

 

ラウラ

「はい?」

 

クロエ

「実はコレ…まだ『未完成』なんですよ…」

 

ラウラ

「………え?」

 

 今、姉上は何て言った?

 

ラウラ

「コ、コレが…未完成!?」

 

クロエ

「未完成と言っても機体本体は完成してます。」

 

ラウラ

「へ?」

 

 あ~良かった…機体の方は出来上がっていたのか…

 これ以上性能が上がるようなら私では使いこなせるか分からなかったからな…

 しかし…

 

ラウラ

「では未完成と言うのは?」

 

クロエ

「武装です。これに搭載する装備の1つがある理由で完成してないんです。今は束様がそれの研究をしていますから完成次第【グルゼオン】にも搭載する予定なんですよ。」

 

 そう言う事か…

 本体は完成していても武装が全て揃っていない…だから未完成と言ったのか…

 私からすればすでに完成された物にしか見えないんだがな…

 

クロエ

「未完成の物を持って来て申し訳ないのですが急いで渡した方がいいと思い持ってきました。本当にすみません…」

 

ラウラ

「あ、謝らないで下さい!!これ程の物を頂かる私の方が謝らないといけない程です!!」

 

クロエ

「そう言って貰えると気が楽になりますね…さて、これで私が出来る事は終わりました。私はそろそろ戻ります。」

 

ラウラ

「…そうですか…」

 

 折角和解出来たのだからもっと話をしたかったのだが仕方ないか…

 姉上は今、この基地に不法侵入している形になっている…これ以上長居していては見つかる可能性があるか…

 

クロエ

「時々IS学園に行きます。あそこなら気兼ねせず会えますよ。」

 

ラウラ

「!?…ハ、ハイ!!!」

 

 そうだ!IS学園なら何のしがらみも無く姉上と話せるんだ!!

 学生になってこんなに嬉しいと思ったのは初めてだ!!!

 

クロエ

「では私はこれで………おや?分身が敗れたようですね…丁度いいタイミングですね…」

 

ラウラ

「え!?」

 

 【裂空丸】の分身が倒された?つまりクラリッサ達が勝ったのか…

 姉上はクラリッサ達の戦況を言うとそのまま【裂空丸】に乗り込んだ

 

クロエ

「ラウラ…無理はしないで下さいね?」

 

ラウラ

「うっ…き、気を付けます…」

 

 姉上は最後に私に忠告をすると…

 

クロエ

「では…」

 

 ブゥゥゥゥゥゥゥン…

 

ラウラ

「!?」

 

 【裂空丸】の姿が消えた

 そして、一度だけ風が巻き起こったがアレは【裂空丸】が飛び立った時のものだったのだろう…

 

ラウラ

「………」

 

 私は暫くその場に立ち尽くしていた

 アレはもしかしたら幻だったのかと思ったが私の横には姉上が託してくれた【ファントム・グルゼオン】が確かにある

 だからあれは…夢でも幻でも無いんだ!!!

 

 ~ラウラ Side out~

 


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