IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第016話:入学前のお願い

 ~永遠 Side~

 

 今ワシは束さんのロケットを使ってIS学園の校門前に来とる

 事の発端は束さんが織斑千冬にワシの事をバラしてしもうたのが原因じゃ

 まあ。土下座して謝ってきたから軽く説教して束さんは許したんじゃが、問題はその後じゃった

 束さんは仕方なくワシの情報を学園に送ったんじゃが、それからすぐにワシにもIS学園に入学しろと言う連絡が来たんじゃよ

 建前はワシの身を守るためとか言うとったが裏で何を考えているのやら

 そんな事を考えていると…

 

「すまない、待たせてしまったか?君が火ノ兄永遠君で間違いないか?」

 

永遠

「ん?そうじゃが。」

 

 スーツを着た二人の女性がやってきた

 

千冬

「私は織斑千冬。こちらは山田真耶。この学園で教師をしている。」

 

永遠

「ああ、おんしがちーちゃんか?」

 

千冬

「渾名で呼ぶな!織斑先生と呼べ!」

 

永遠

「入学もしとらんのに先生をつける必要はなかろお。」

 

千冬

「…確かにそうだが入学したら先生をつけろ…それとちーちゃんは止めろ!」

 

永遠

「承知した。して今日は何の用じゃ?」

 

千冬

「…ああ、簡単な筆記試験と面接、ISによる模擬戦をして貰う。」

 

真耶

「後、火ノ兄君の制服を作るので採寸をとらせて貰います。」

 

永遠

「さよか…面倒じゃな~…」

 

 さっさと帰って畑の手入れをしたいのお…

 

千冬

「面倒でも何でもこれからお前はここに通うんだやる気を出せ!」

 

永遠

「はいよ。…まったく織斑一夏とか言う奴のせいでとんだ迷惑じゃ!」

 

千冬

「………弟がすまん…」

 

永遠

「織斑さんが悪い訳では無かろぉ。」

 

 奴に会ったら一発ぶん殴ってくれる!

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

 私は今、目の前にいる二人目の男性操縦者の事を考えていた

 元からなのか老人のような変な話し方をするがブリュンヒルデと言われた私を相手にしても全くひるまず話してくる

 その上私たち教師がいるにも拘らず面倒だ何だと言う始末だった

 束といたからなのか元からなのか分からんが変わった奴だな

 とりあえず今日の予定を教えとくか

 

千冬

「今日の予定だが初めに筆記試験を行う。それが終わったら昼食を挟んでまずは服の採寸、面接、最後に模擬戦となっている。何か質問はあるか?」

 

永遠

「特に無いのぉ。ただ入学する代わりに2つ頼みがあるんじゃがいいかの?」

 

千冬

「内容にもよるが…」

 

永遠

「まず一つは入学したら織斑一夏に一撃入れさせて欲しい!あやつのせいでワシの生活は壊されたんじゃからな!」

 

真耶

「ちょ、ちょっと待ってください!入学早々暴力事件を起こす気ですか!」

 

永遠

「じゃからこうやって前もって頼んどるんじゃろ。」

 

真耶

「それなら織斑君も同じじゃないですか!」

 

永遠

「ワシと奴が同じなわけなかろぉ!」

 

 まさか一夏を殴らせろと言うとはな、さてどうするかな?コイツの言う事も一応分かる

 …待てよ…これはもしかしたら丁度いいかもしれんな

 

千冬

「…ちなみに何をするつもりだ?」

 

永遠

「そうじゃな普段なら拳骨じゃが…奴にはパイルドライバーを食らわせてやるかの。」

 

千冬

「………ジャーマンスープレックスにしてくれ…」

 

真耶

「織斑先生!何言ってるんですか!自分の弟にプロレス技かける許可を出すなんて!?」

 

千冬

「…いや、火ノ兄の言う事も分かる。それに、いい機会なんですよ。」

 

真耶

「いい機会って何がですか?」

 

千冬

「…実は、一夏の奴、男の自分がISを動かした事で、一種の被害妄想の様なものを持ち始めてるみたいなんですよ。」

 

真耶

「…被害妄想ですか?」

 

千冬

「ええ、アイツはこの火ノ兄と同じでこの学園に強制入学する事になってます。そのせいか、自分が望んでココに来た訳じゃないと、自分は被害者だと考えているようなんです。」

 

真耶

「そんなまさか…」

 

千冬

「私にはそう見えるんです。だからアイツの腐った根性を叩き直すにはいい機会だと思ったんですよ。一夏によって被害を受けた火ノ兄ならアイツも文句は言えないでしょうから。」

 

永遠

「ほ~…なら()ってもいいんじゃな?」

 

真耶

「…字が違いませんでしたか?」

 

永遠

「気のせいじゃよ。」

 

 いや、明らかに殺すと書いて()ると言ったなコイツ

 

千冬

「叩き直すとは言ったが、後に響かない程度で頼む。それと、弟との確執はそれを最初で最後にしてくれ。」

 

永遠

「初めからそのつもりじゃ。ただし、奴が気に入らん事をするようなら容赦はせんがな!」

 

千冬

「ああ、それで構わん。私の場合は教師と身内の間に挟まれて動けない時もあるからな。…それで二つ目は何だ?」

 

永遠

「この学園は全寮制と聞いた。放課後になったら家に帰りたいんじゃよ。」

 

千冬

「なんだと!?…お前の住んでる島からこの学園までバスや電車を乗り継いでも数時間かかる筈だぞ!」

 

 コイツ本当に何考えてるんだ!?

 

永遠

「片道8時間はかかるの。じゃがISなら1時間程度で行く事が出来るじゃろ。」

 

千冬

「ISで学園に登下校させて欲しいというのか?…理由は?…ただ家で寝泊まりしたいだけというならこの場で却下するぞ!」

 

永遠

「一応それもあるんじゃが、一番の理由は畑と田んぼじゃ。」

 

千冬

「畑と田んぼ?」

 

永遠

「そうじゃ、ワシの住んどる島には幼い頃から作り育てた大事な田畑があるんじゃ。こんな所に監禁されとったら10年かけて作った大切な畑も田んぼもダメになってしまうからの。」

 

真耶

「何も自分でやらなくてもご両親に頼むとか…」

 

永遠

「ワシに家族はおらんぞ。5歳の頃から今の島で一人で暮らしとるからな。」

 

真耶

「す、すみません!?失礼な事を言って!」

 

永遠

「気にせんでいいぞい。まあそういう訳じゃ。政府がやってくれるなら別じゃがまずやらんじゃろ。じゃから夕方になったら家に帰りたいんじゃよ。無論、朝になったら学園には戻ってくるからの。」

 

千冬

「………それは私には答えられんな。理事長に話を通しておくから少し待っていてくれ。」

 

永遠

「よろしく頼む…それと山田さん、さっきワシと織斑は同じじゃと言うとったが今もそう思うんか?」

 

 山田先生は横目に私を見ながら答えた

 

真耶

「…違いますね。…織斑先生には悪いですが火ノ兄君と織斑君では暮らし方が違いすぎます。火ノ兄君はここに入ったら帰る場所が無くなるかもしれませんから…」

 

千冬

「…山田先生の言う通りですよ。火ノ兄の事情に比べたらうちの弟は恵まれていますよ。生活出来る家があるんですから。」

 

 …火ノ兄が一夏に一撃入れたいと言った気持ちも分かるな…

 

千冬

「火ノ兄、とりあえず弟に一撃入れる話は許可する。アイツが何か言っても私が黙らす。二つ目のISの登下校は理事長の判断を待つことになる。」

 

永遠

「承知した。出来れば二つ目も早めにお願いする。」

 

千冬

「分かっている。」

 

 こいつは私達と違ってたった一人で生きてきたのか…

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第017話:セシリア・オルコット』


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