IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第018話:父と母の謎

 ~セシリア Side~

 

 わたくしは彼の過去を聞いてもう一つ聞きたい事がありました…

 

セシリア

「もう一つ聞いてもよろしいですか?」

 

永遠

「何じゃ?」

 

セシリア

「…ご両親の事を…どう思ってますか?」

 

永遠

「ワシの両親?…あまり覚えておらんが…じゃが…優しい父と母じゃったよ。…いつもワシに笑いかけてくれとった。…二人の仲もとてもよかった。…ワシの記憶にはいつも笑顔の両親の姿しかないのぉ。」

 

 両親の事を話す彼の顔はとても優しい表情をしていました

 わたくしはあんな表情で自分の両親の事を話す事はできませんわね

 

セシリア

「…羨ましいですわね…」

 

永遠

「何が羨ましいんじゃ?」

 

 彼は自分の両親に誇りを持ってる…ですが、わたくしは彼の様に自分の両親に誇りを持つことが出来ない…それが、凄く羨ましい

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 この娘さっきからワシの過去の事を聞いてくるが一体何を知りたいんじゃ?

 考えるのも面倒じゃし直接聞くかの

 

永遠

「のう、オルコットさん。お主ワシの何が知りたいんじゃ?言っとくがワシの昔話なんぞ何の面白味も無いぞい。」

 

セシリア

「!?…は、はい…少し思う所がありまして………ヒノエさんの過去を聞いたのですからわたくしも話しますわね。」

 

永遠

「いや、ワシは別に…」

 

セシリア

「いえ!聞いて下さい!?…聞いて欲しいんです…」

 

永遠

「そうか…ならその前に場所を変えんか?いつまでも立ちっぱなしでは疲れるじゃろ?」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

 ワシ等はとりあえず休憩室に移動して自販機で飲み物を買うと、備え付けの椅子に座るとオルコットさんが自分の両親の事を話し始めた

 家を守り大きくするために尽力した母とその母に対して卑屈な父を見て育ったこと、その為、母は尊敬しているが父に対しては憤りを感じていた

 しかし、ある時、両親を列車の事故で亡くしてしまい、それ以来勉強を重ねて周囲の大人たちから両親の遺産を守る為に頑張っていたことを話してくれたんじゃ

 

セシリア

「…わたくしは母はともかく父には誇りが持てません。…ですから、母だけでなく父にも誇りを持っているヒノエさんが羨ましいんです。」

 

永遠

「…誇りって程でもないがのぉ…」

 

セシリア

「ヒノエさんがそうは思わなくてもわたくしにはそう思えます!…わたくしもヒノエさんの様に胸を張って父と母の話をしてみたいですわ。」

 

永遠

「そうか…」

 

 しかし、彼女の両親…もしや?

 

永遠

「…のう、オルコットさん。いくつか聞いても構わんか?」

 

セシリア

「はい、いいですけど。」

 

永遠

「話を聞く限りお主の両親は仲が悪かったんじゃよな?」

 

セシリア

「ええ、母は父を見下し、父は母に屈服してましたわ…」

 

永遠

「それは、何時からじゃ?」

 

セシリア

「何時からと申されても…わたくしが物心つく頃にはそうなってましたわ。」

 

永遠

「つまり何年もの間、仲が悪いにも拘らず離婚もせずに一緒にいたと言うわけじゃな?」

 

セシリア

「?…そうですわね…」

 

 間違いないかも知れんな…後で束さんに調べてもらうかの

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

 ヒノエさんがしてくる先程からの質問、一体どういう事なんでしょうか?

 ですが、今までの質問から彼が導き出した答えにわたくしは耳を疑いました

 

永遠

「フムッ………オルコットさん。…これはワシの予想なんじゃが、お主の両親は仲が悪いフリをしていたのではないか?むしろ夫婦仲は良かったんじゃないかのぉ?」

 

セシリア

「えっ!?…で、でしたら何故、仲の悪いフリなど…」

 

永遠

「…おそらく…お主を守る為か…お主の家に擦り寄る輩を排除する為、ではないかの?」

 

セシリア

「わ、わたくしを!?」

 

永遠

「そう考えると辻褄が合うんじゃよ。お主の両親が仲が悪いにも拘らず一緒に居続けた理由にも説明がつくんじゃ。」

 

セシリア

「!?」

 

永遠

「多分じゃが…お主の父は、自ら道化や餌になっておったんじゃろ。…不甲斐ない父親を演じる事でお主の家に群がる連中の目を自分に向けさせる事で、そやつらをお主から遠ざけたんじゃろ。…そして父親に近寄ってきた所を母親が駆除しておった…そんな所だと思うんじゃが?」

 

 そ、そんな………だとしたら…わたくしは…お父様になんて事を…

 

永遠

「最初にも言うたがあくまで予想じゃ。…じゃが、ワシの予想が当たっていたとしたら………オルコットさん、お主は両親に愛されておったと言う事じゃよ。」

 

セシリア

「!?…お父様…お母様…」

 

永遠

「お主はさっき父を誇りに思えないと言うとったが…もし予想通りなら、自慢の父親ではないかの?…家族を守る為に自分を犠牲にし続けた…立派な父親ではないのかのぉ。」

 

セシリア

「あ…ああっ…うあああああぁぁぁぁっ………お父様ああぁぁーーっ!………お母様ああぁぁーーっ!…」

 

 ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!お父様、お母様、ごめんなさい!

 わたくしがバカでした!ごめんなさい!?

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 弱ったのぉ…

 

セシリア

「うえええええぇぇぇぇぇーーーーん!!」

 

 泣かすつもりは無かったんじゃがな…

 とはいえ、今は好きなだけ泣かせておくかの…

 

永遠

「…好きなだけ泣きんさい…溜めこんどったモンも全部出しんさい…」

 

セシリア

「!?…う、うわあああああぁぁぁぁぁーーーーんっ!!」

 

永遠

「うおっと!…よしよし…」

 

 抱き着いて来るとは思わんかったが…まあ、よいか…

 とりあえず背中をさすっとくかの…

 この娘も苦労しとったんじゃな…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

セシリア

「うわああああああぁぁぁぁぁぁーーーーんっ!!」

 

 火ノ兄に模擬戦の説明をしようと探していたんだが…今は出て行かない方がいいか…

 それにしてもセシリア・オルコットか…火ノ兄の推測通りだとしたら、彼女にとっては自慢の両親だな…私達の親とは比べ物にならん

 しばらくこのままにしておいてやるか…

 

真耶

「あっ!織斑先「シッ!」っ!?」

 

千冬

「(静かにしてください!)」

 

真耶

「(すみません…一体どうしたんですか?)」

 

千冬

「(あれを…)」

 

 私はやってきた山田先生に泣いているオルコットとそれをあやす火ノ兄を見るように施した

 

真耶

「(!?…何かあったんですか?)」

 

千冬

「(色々あったんですよ。…今はそっとしておきましょう。)」

 

真耶

「(…そうですね。でも、この後あの二人は試合なんですけどどうします?)」

 

千冬

「(試合の順番を最後にしてください。理由は火ノ兄は試合内容の説明の為、オルコットはISの調整の為という事にしておいてください。)」

 

真耶

「(フフッ、分かりました。任せてください!)」

 

 私と山田先生が休憩室を後にする時、火ノ兄がこちらに向かって僅かだが頭を下げていた…気づいていたのか

 フッ…さて、他の連中を説得してくるとするかな

 

 ~千冬 Side out~

 

 




 次回『第019話:父と母の真実』


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