IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第046話:更識簪

 ~永遠 Side~

 

 ただ今ワシはセシリアと食堂で食事中じゃ

 今回は弁当ではなく食堂の料理を食っとるぞい

 セシリアと雑談しながら食べていると…

 

本音

「ひののん、セッシー~一緒に食べてい~い?」

 

永遠

「ん?本音か、構わんぞ。…と、誰じゃ?」

 

 本音が初めて見た女子とやって来た

 

本音

「この子はかんちゃんって言うの~♪」

 

「本音!渾名で呼ばないで!…えっと、更識簪です。1年4組の生徒です。一応日本の代表候補生もしてる。」

 

永遠

「これはご丁寧に。ワシは火ノ兄永遠じゃ。一応二人目の男の操縦者じゃ。」

 

セシリア

「セシリア・オルコットですわ。イギリスの代表候補生です。お見知り置きを。」

 

永遠

「…セシリアと同じ代表候補生か…う~む?」

 

 メガネをかけた赤い眼と水色の髪の娘か…なんかどっかで見たような気が…?

 

「…な、何?」

 

セシリア

「永遠さん…更識さんの顔を見て何を唸ってるんですか!」

 

永遠

「ああ、すまん!…いや更識さんの顔、どこかで見た気がしてのぉ…」

 

セシリア

「…そう言われると、どこかで…」

 

 どこじゃったかな~…

 

「…多分それは私のお姉ちゃん…私は更識楯無の妹…」

 

永遠

「更識楯無…ああ思い出した!ワシが試験の時に戦った相手じゃ!」

 

セシリア

「そうですわ!忘れてましたわ!」

 

 ガシャン!

 

永遠

「ん?」

 

 何か倒れた音がしたのぉ?

 音のした方を見たが誰もおらんな…なんじゃったんかのぉ?

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

楯無

(あ、危なかった~…もう少しで見つかる所だったわ!…でもあの二人…)

 

 火ノ兄君とオルコットちゃんを睨みながら…

 

楯無

(私の事忘れてたなんて酷いわよ!…それにしても…)

 

 私は一緒にいる簪ちゃんに視線を向けた…

 

楯無

(何で簪ちゃんが一緒にいるのよ!私だって一緒にご飯食べたいのに!)

 

 私は二人に嫉妬の念を送りながら監視をしていた

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

永遠&セシリア

「!?」

 

本音

「どったの二人共~?」

 

永遠

「いや…何か妙な視線が…」

 

セシリア

「…何でしょうか、これは?」

 

 二人は視線が気になるのか周りをきょろきょろしている…

 

本音

「私は分からないけどな~?かんちゃんは~?」

 

「…私も分からない…気のせいじゃないの?」

 

永遠

「気のせいではないのぉ…殺気の類では無いんじゃが…」

 

セシリア

「そうですわね…」

 

 …まさか!

 

「…ごめん…」

 

永遠

「何じゃいきなり?」

 

「…多分それ、私のお姉ちゃん…」

 

永遠&セシリア

「は?」

 

「…お姉ちゃんが監視してるんだと思う…」

 

永遠

「何じゃと!」

 

「………」

 

 お姉ちゃん…何してるの…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~楯無 Side~

 

楯無

(やばいバレた!?)

 

 私は簪ちゃんが教えるとは思わず動揺していた

 だけどそれ以上に…

 

楯無

(でも何で!気配は消してる筈なのに!いきなり視線で気づくってどういう事!いつもと変わらないのに!?)

 

 私の視線だけで気づいたあの二人に警戒を強めていた

 

楯無

(…今日はもう無理ね…引き上げるしかないか…)

 

 私はそう判断し、食堂を後にした

 後日、二人が私の視線に気づいた理由を聞いた時、私は自分で自分を殴りたくなるほど恥ずかしかった

 

 ~楯無 Side out~

 

 

 

 ~簪 Side~

 

永遠

「む!視線が消えた…」

 

セシリア

「…そうですわね。」

 

 …そんな事まで分かるの!この二人?

 

「…本当にごめん…」

 

 …なんでお姉ちゃんは私の邪魔ばかりするの…

 

永遠

「更識、お主が謝らずともよい。」

 

セシリア

「そうですわ。更識さんが悪い訳ではありませんもの。」

 

「…ありがと二人とも…」

 

永遠

「カカカッ、気にせんでいい。」

 

「あの!…名字で呼ばれるの嫌いだから名前でいい…さんもいらないから…」

 

永遠

「む!そうか、なら簪で。それからワシも永遠でいいぞい。」

 

セシリア

「では、わたくしは簪さんで。わたくしも名前でいいですわ。さんも必要ありません。」

 

「…うん…改めてヨロシク…永遠、セシリア…」

 

永遠

「それにしてもあの生徒会長は何考えとるんじゃ?人の食事を覗くとはストーカーか?織斑と言いこの学園には犯罪者みたいな変態がおるな?」

 

セシリア

「本当ですわね!迷惑な方です!」

 

「………」

 

セシリア

「…簪さん…言っておきますけど、わたくし達は貴方を責めてる訳ではありませんよ。」

 

「え?」

 

永遠

「ワシ等は生徒会長の更識楯無に迷惑しとるんじゃ!お主は更識簪じゃろ?姉が迷惑かけたからと言って妹のお主が気にせずともよい。関係無いお主には何とも思っとらんよ。」

 

 …更識簪…この二人は私を一人の人間として見てくれるの…

 

永遠

「じゃからお主が気にする必要は無い。そうじゃな、今度会ったらワシ等を覗いとった理由を問い詰めてやるかの!」

 

セシリア

「そうですわね。内容によっては永遠さん、お説教をお願いしますわ。」

 

永遠

「カカカッ任せとけい!思いっきり凹ませちゃる!」

 

 …永遠とセシリア…優しいな~…でも私の事を知ったらなんて思うかな…

 

本音

「ひののんもセッシーもありがとね~♪」

 

永遠

「何故お主が礼を言うんじゃ?」

 

本音

「私はこれでもかんちゃん専属のメイドだからね~♪だからお礼を言ったんだ~♪」

 

永遠

「メイド!お主が?」

 

「…気持ちは分かる…でも本当の事。」

 

セシリア

「意外でしたわね~!」

 

本音

「む~みんな酷いよ~!」

 

永遠

「カカカッ、すまんすまん!…そう言えば本音、何か用でもあったんか?」

 

本音

「ほえ?」

 

永遠

「お主は初日しか来なかったからな、ワシ等に何か用でもあるのかと思うたんじゃが?」

 

本音

「あ~そうだった~!用があったのは私じゃなくてかんちゃんだよ~♪」

 

「ほ、本音!?」

 

永遠

「フム、簪の方じゃったか。用件は何じゃ?」

 

 どどどどうしよ!…何て言えばいいんだろ!?

 

「あ、あの…と、永遠のIS…」

 

永遠

「ワシのIS?【戦国龍】と【ドットブラスライザー】の事か?」

 

「う、うん…」

 

永遠

「アレに興味あるんか?お主が興味を引く様な物かのぉ?」

 

セシリア

「…永遠さん…本気で仰ってます?」

 

永遠

「無論じゃ!」

 

セシリア

「ハァ~…いいですか永遠さん!あなたの機体はどちらも全身装甲のISです!それだけでも珍しいんですのよ!しかも【戦国龍】はあの外見です!そして【ドットブラスライザー】は変形と合体まで出来る機体です!そのような機体に興味を持たない人などいません!」

 

「そうだよ!!」

 

永遠&セシリア

「!?」

 

「永遠の【ドットブラスライザー】は凄いよ!武器が変形してカッコ良かった!機体も変形してパワーアップした時は吃驚した!単一仕様(ワンオフ・アビリティー)で合体までした時は驚きを通り越して感動したよ!その上、必殺技まであるなんて最高だよ!!」

 

永遠

「か、簪?」

 

「…はっ!…ごごごごめん…」///

 

永遠

「………【ドットブラスライザー】が気に入ったんか?」

 

「………うん…」///

 

本音

「かんちゃんはね~、ロボットアニメとか特撮ヒーローとかが大好きなんだよ♪」

 

永遠&セシリア

「は?」

 

「本音!」

 

永遠

「…ロボット…確かに【ドットブラスライザー】は見た目は完全にロボットじゃからな…」

 

「う、うん…それで…つい興奮しちゃって…」///

 

セシリア

「なるほど…」

 

「…それに…」

 

永遠

「ん?」

 

「…永遠とセシリアの試合…凄く感動した…【ドットブラスライザー】には確かに興奮したんだけど…でも、二人の試合そのものにも感動したの…」

 

永遠&セシリア

「………」

 

「…セシリアは永遠と戦う為に自分を鍛え続けたんだよね?…同じ代表候補として見てもセシリアの実力は本物だった…たった一人と戦う為にそこまでしたなんて信じられなかったけど…でも、永遠はそれが分かったからセシリアと本気で戦ったんだよね?」

 

セシリア

「…そうですわね。…永遠さんと正々堂々と本気で戦う…それがわたくしと永遠さんの約束であり目標でしたから…」

 

永遠

「…ワシもじゃよ。セシリアとISを纏って向かい合った時、約束を果たせる事が嬉しかったんじゃ…そしてセシリアはその約束の為に強くなっとった…じゃから、ワシはワシ自身とISの全ての力をもって答えたんじゃよ…」

 

セシリア

「永遠さん♪」///

 

「…いいなぁ…そんな風に認め合えるなんて…」

 

永遠

「…どういう意味じゃ?お主の言い方じゃと、まるで認めてもらった事が無いみたいな言い方じゃぞ?」

 

「………」

 

セシリア

「簪さん…言いたくないならそれでも構いません。ですが、言わなければ誰にも伝わりませんよ。態度だけで分かるほどわたくし達は器用ではありません。」

 

「…うん………少し…考えさせて…」

 

永遠

「構わんぞ…ワシ等はお主が自分から言ってくれるのを待つだけじゃよ…」

 

セシリア

「そうですわね。」

 

「…ありがとう…」

 

永遠

「…簪…一つ言っとくぞ。お主が何を抱えとるのかは知らんが、ワシ等で良ければ力になる。それだけは覚えておくんじゃぞ。」

 

セシリア

「ええ♪いつでも相談して下さい。」

 

「…うん………」

 

 …なんで…この二人は…会ったばかりの私にこんなに優しいんだろう…

 …一番優しくして欲しかった人は…私を『無能』と切り捨てたのに…

 …この二人といるほうが…凄く落ち着くな…

 

 ~簪 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ん?…簪のこの表情…もしや…

 

永遠

「………簪…」

 

「…な、何?」

 

永遠

「…間違っておったら謝るが…お主…勘違いしかけとらんか?」

 

「え?」

 

永遠

「ワシ等は確かに力になるとは言った。じゃが、お主が依存する存在になる気は無いぞ!」

 

セシリア

「永遠さん?」

 

永遠

「力を貸すがそれはお主の悩みを解決する手伝いをする為じゃ!お主の逃げ込み先になるつもりは無い!」

 

「!?」

 

 当たっとったか…危なかったな…

 

永遠

「やはりそう考え始めておったな!もしそのつもりなら今言った事は無しじゃ!今後ワシ等に話しかけるな!!」

 

「そんな!?」

 

永遠

「…お主が抱えとるもんと向き合う気になったら話しかけて来い!それ以外はワシは関わらんぞ!セシリア!お主も分かったな!」

 

セシリア

「…分かりましたわ…」

 

「………」

 

本音

「…かんちゃん…」

 

「…くっ………」

 

本音

「かんちゃん!?」

 

 …行ってしもうたか…

 

本音

「ひののん!何であんな事言ったの!」

 

永遠

「言った通りの意味じゃ。下手すると簪は織斑の様な甘ったれになってしまうぞ!」

 

本音

「え?」

 

セシリア

「…あんな風になるのはさすがに不味いですわね…」

 

永遠

「じゃからああ言った。後は簪次第じゃ。本音、お主も簪を思うなら相談に乗る程度にしておくんじゃ。」

 

本音

「…何で?」

 

永遠

「一週間前と昨日の織斑を思い出してみい。奴は自分で言った事を理解せず、困った事があればすぐに周りに頼る。まず自分で考えて行動するという事をしとらんかった。…下手をすると簪も周りの人間…ワシやセシリアに頼りっぱなしの人間になりかねん。…そうなったら戻すのは大変じゃぞ!」

 

本音

「………」

 

永遠

「織斑は昨日ワシがシバいて説教してトドメに半殺しにしてようやっと分からせたんじゃぞ。奴はそこまでせんと分からん程に手遅れじゃった。じゃが、簪は口で分からせる事が出来る位置にまだおる。」

 

本音

「…おりむー…手遅れだったんだ…」

 

永遠

「周りの環境も原因かもしれんが、アイツは色んな意味で馬鹿じゃからな…口で言って分かるんじゃったらあの時に気付いておる!」

 

セシリア

「…そうでしたわね…」

 

本音

「…おりむー…」

 

永遠

「…環境と言う意味では簪も同じかもしれんが、織斑よりはまだマシじゃろう。」

 

セシリア

「…恐らくそれが簪さんの悩みなんでしょうね…」

 

永遠

「うむ!じゃから簪はまだマシなんじゃよ。」

 

本音

「何で?」

 

永遠

「簪と織斑の一番の違いはな、さっき言った環境を本人が受け入れているかどうかの違いなんじゃよ。」

 

本音

「?」

 

永遠

「いいか?織斑は自分の環境を完全に受け入れそれが当たり前だと思っとる。自分が困った事があれば周りが助けてくれる。特に重要な事、大事な事は自分は考える必要なない。周りが考えてくれる。そげな考えを持っとるからあんな風になったんじゃ。」

 

本音

「………」

 

永遠

「じゃが、簪は自分を取り巻く環境に疑問を持っとる。もし、簪が依存出来る存在に出おうたら織斑の様になるじゃろう。」

 

本音

「…かんちゃん…」

 

永遠

「分かったか本音?それとも、簪もあんな風になって欲しいんか?」

 

本音

「………」フルフル

 

永遠

「よろしい。」

 

 さて、今のを聞いて柱の陰で立ち聞きしとる奴はどう考えるかの…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

一夏

「………俺…そこまで酷い状態だったんだ…」

 

 穴を塞いで急いで昼食を取りに来たら、火ノ兄達とのほほんさんの会話が聞こえて来た

 言われてみると思い当たる節はある…自分で考えて行動した事なんて…中学の頃、生活費を稼ぐ為にバイトした位だ…

 

一夏

「………あ!?」

 

 そういえば…昨日…

 

一夏

『…どうすればさ…大切な人を守れる男になれるのかな…』

 

千冬

『…お前は自分で考える事を知らんのか!』

 

 試合の後…千冬姉に聞いた事…十分大事な事じゃねえか…それを…

 自分で考えず千冬姉にすぐに頼ってしまった…火ノ兄の言う通りだ…

 

一夏

「………本当に手遅れじゃねえか…」

 

 ………俺自身で何とかしないと…

 

 ~一夏 Side out~

 

 




 次回『第047話:歓迎会と来訪者』

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