~一夏 Side~
生徒1
「織斑君、おはよ~♪ねえ、転校生の話って聞いた?」
朝、教室に入るなりクラスメイトの一人が話しかけてきた
一夏
「転校生?この時期に?」
入学してまだ1ヶ月も経ってないのにか?
生徒2
「うん、なんでも中国の代表候補生だってさ。」
一夏
「…中国か…」
中国と聞いて…俺は中国に帰ったもう一人の幼馴染の少女のことを思い出していた
セシリア
「あら皆さん。朝から賑やかですが、どうかなさいましたの?」
生徒1
「あ!セシリア!」
生徒2
「隣の2組に転校生が来たらしいんだよ!しかも、中国の代表候補生なんだって。」
セシリア
「代表候補生ですか?」
生徒1
「セシリアはどう思う?」
セシリア
「…そうですわね…やはり実力が気になりますわね。」
生徒2
「やっぱりそこが気になるんだ。」
箒
「このクラスに転入してくる訳ではないのだろう?騒ぐ程の事でもあるまい。」
まあ確かにそうなんだけど…しかし…
一夏
「…どんな奴なんだろうな?」
箒
「…気になるのか?」
一夏
「ああ、少しな。」
箒
「フンッ…」
何でいきなり不機嫌になるんだ?俺何か怒らせる様な事言ったかな?
箒
「お前にそんな事を気にする余裕はあるのか?もう少しでクラス対抗戦だろう?」
一夏
「うっ!そうだった…」
そうだ、俺それに出るんだよな…
俺なんかより遥かに強い奴が二人もいるのになぁ…
セシリア
「それでは、対抗戦に向けてより実戦的な訓練をいたしましょう。織斑さんの機体は燃費が悪いですから、エネルギー切れの自滅をしない様にしませんと。」
一夏
「じ、自滅!?」
セシリア
「その様な負け方はしたくないでしょう?」
一夏
「はい!お願いします!」
箒
「………チッ!」
何で舌打ちするんだ?
所でこの対抗戦、実は優勝したクラスの全員には学食デザートフリーパス半年分が配られるらしく、その為代表の俺に掛かる期待は結構大きい
一夏
「まぁ、やれるだけやってみるか。」
本音
「やれるだけじゃダメだよ~。」
生徒1
「織斑くん、勝ってね!」
生徒2
「フリーパスの為にもね!」
生徒3
「クラスみんなの幸せは織斑くんに託された!」
みんなが俺の勝利を願ってる
甘いの好きな人にはたまらない景品だもんね。
生徒1
「まぁ、専用機持ちって1組と4組しか居ないから楽勝だよ!」
へぇ~、4組にもいるのか…
?
「その情報…古いわよ…。」
突然聞こえてきた聞き覚えの無い声
いや聞いた事のある声がした
俺は声がした方を向くと…
?
「2組も専用機持ちが代表になったから。そう簡単には勝てないわよ!」
そこにいたのは俺のもう一人の幼馴染
一夏
「鈴…お前、鈴か!?」
鈴
「そうよ!中国の代表候補生【凰鈴音】!今日は宣戦布告に来たわ!」
鈴はそう言って小さく笑った…でも…
一夏
「何やってんだ、すげぇ似合わないぞ。」
鈴
「んなっ…何て事言うのよあんたは!?」
鈴の雰囲気が元に戻ったら、ちょうど火ノ兄がやって来た
永遠
「はよ~っす!」
鈴
「ん!」
永遠
「ん?」
鈴
「お、男!?」
永遠
「誰じゃお主?」
鈴
「な、何で一夏以外に男がいるのよ!?」
永遠
「何でと言われてものぉ………む!」
火ノ兄は急いで自分の席に座った…どうしたんだ急に?
鈴
「ちょっと!こっちの質問に答えなさいよ!」
?
「おい。」
鈴
「何よ!」
スパン
千冬
「凰、クラスへ戻れ!それと入口に立つな、邪魔だ。」
鈴がいきなり現れた千冬姉に出席簿でシバかれた
アイツ、千冬姉が来たのを察して席に座ったな
鈴
「千冬さん…」
千冬
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ。それとも…」
千冬姉は再び出席簿を構えた
それを見た鈴は素直に引き下がった
鈴
「わ、分かりました!じゃあ一夏、後でね。逃げないでよ!?それからアンタの事も聞かせて貰うからね!?」
そう言い残すと2組へ戻って行った
永遠
「………だから誰なんじゃ?」
千冬
「では、SHRを始める。織斑、号令!!」
こうして今日も授業が始まった
けど、何故か箒が授業に集中できなかった為、千冬姉達に何度も注意を受けていた
~一夏Side out~
~鈴 Side~
私は凰鈴音!中国の代表候補生で織斑一夏の幼馴染よ!
この学園に来たのは私が好意を寄せている一夏が初の男性操縦者として入学したのを知って追いかけて来たからよ!
けど、驚いたわ!2組に戻って聞いたら一夏以外にも男の操縦者がいるんだって!
しかも、そいつはあのブリュンヒルデと言われた千冬さんより強いらしく、千冬さん自身も認めているらしい
とにかく一夏の事も合わせて詳しく聞いた方がいいかもしれないわね
それで今は休み時間の食堂よ!
鈴
「待ってたわよ!一夏!」
食券販売機前で仁王立ちして待ってたのよ!(ラーメン装備)
一夏
「何が待ってただよ。そこに居ると食券出せないだろ。」
鈴
「わかってるわよ。あんたが来ないのがいけないのよ。」
私がどいたら食券を買って料理を持って一夏と一緒のテーブルに座ったわ
一夏
「久し振りだなぁ。お前、いつの間に日本に帰ってきたんだ?おばさん元気?いつ代表候補生になったんだ?」
一夏が矢継ぎ早に質問してきた
鈴
「質問ばっかしないでよ!あんたこそなんでIS使ってるのよ?ニュース見て吃驚したわよ。」
一夏と会話していると一緒に着いて来た黒髪ポニーテールの生徒が説明を求めて来た
箒
「一夏、そろそろどういう関係か説明をしろ!」
鈴
「関係って…///」
箒
「まさか付き合ってるのか!?」
突然付き合ってるなんて言われて顔を真っ赤にしてしまった
鈴
「べべべ別に付き合ってる訳じゃあ。」
一夏
「そうだぞ。ただの幼馴染みだよ。」
コイツは!1年ぶりに会っても変わってないわね!
一夏
「なんだよ?なんで睨むんだよ。」
鈴
「ふん、なんでも無いわよ。」
箒
「幼馴染だと?お前の幼馴染は私だけの筈だろ!?」
一夏
「えーと、箒が引っ越したのが、小4だろ?鈴はその後に来たんだ、で中2の頃に中国に帰ったから大体1年ぶりだな。」
この子も一夏の幼馴染?…そう言えば昔言ってたわね
一夏
「で、こっちが箒、前に言ったろ?俺の通ってた道場の娘だよ。」
鈴
「そう言えばそんな事言ってたわね。」
一目見て分かったわ!この子は私と同類、ライバルだわ!
鈴
「初めまして、よろしく。」
箒
「あぁ、よろしく。」
互いに握手をしたけどその瞬間、私達の間で戦いのゴングが鳴ったのが確かに聞こえた
でも今はやりあう時じゃないわ…それにもう一人の事も聞かないと
鈴
「所で一夏!もう一人の事を教えてよ。ココに来るまでに二人目がいるなんて聞いた事無いんだけど?」
一夏
「火ノ兄の事か?…アイツは何というか…一言でいうなら…千冬姉以上の化け物だよ…」
鈴
「化け物って…クラスの子達も言ってたけど千冬さんより強いってホントなの?」
一夏
「…ああ…千冬姉本人がそう言ってた…俺も最初は信じられなくて千冬姉の言葉に反論したんだ…けどな…」
鈴
「けど…どうしたのよ?」
一夏
「その後そいつと試合したら…俺、一発も当てる所か掠らせる事も出来ずに…」
鈴
「一夏?」
一夏
「…ボコボコにされて説教されてトドメに半殺しにされた…」
鈴
「半殺し!…マジで?ISを纏ってたんでしょ!」
一夏
「…ああ…でもさ、アイツの攻撃、殆どが絶対防御を突き破って来てさ…俺の専用機も新品だったのがアッと言う間にスクラップ寸前にされたんだよ。」
鈴
「絶対防御を突き破ってスクラップ寸前!どうやったらそんな事出来るのよ!」
一夏
「分からねえ…ただ最後に喰らった技…馬鹿デカいクレーターが出来たらしくてな…俺も地面にめり込む程潰されたんだよ…」
鈴
「…アンタよく生きてたわね…」
一夏
「ホントにな…後から千冬姉に聞いたら、実力の3割も出してなかったんだってよ…」
鈴
「3割!?たったそれだけの力しか出してない相手に負けたの!」
一夏
「ああ…心も体もボロボロにされたよ…」
鈴
「心もって…そう言えば説教されたって言ってたわね。どういう事?」
一夏
「…すまん、それは聞かないでくれ…アイツの説教、ホントに堪えてるんだ…」
鈴
「一体何を言われたのよ?」
一夏
「…今迄の俺がどれだけ酷かったのかを言われたんだよ…アイツの言った事…何一つ否定出来なかったんだ…悪い…これ以上は言いたくないんだ…」
鈴
「一夏………ねえ!アンタクラス代表なんでしょ?なら今度の対抗戦に出るんだよね!私がISの操縦を教えてあげようか!」
一夏
「え?」
バンッ!
箒
「必要ない!一夏に教えるのは私の役目だ!頼まれたのは私だ!そうだな一夏!」
鈴
「外野は黙ってなさいよ!私は一夏に聞いてるのよ!」
箒
「何だと!」
一夏
「…あ~悪いけど鈴…間に合ってるんだわ。」
鈴
「え!?コイツで十分だっていうの!」
箒
「フフン♪」
この勝ち誇った顔ムカつくわね!
一夏
「いや、箒じゃないんだ。」
箒
「え?」
一夏
「コーチはオルコットに頼んでるんだよ。千冬姉からもそうしろって言われてるし。」
箒
「…い、一夏…」
鈴
「オルコット?」
一夏
「セシリア・オルコット…イギリスの代表候補生だよ。俺達のクラスメイトなんだ。」
鈴
「イギリスの代表候補生!だったら同じ候補生の私でもいいじゃない!」
一夏
「…それがな、オルコットは火ノ兄と互角に戦えるぐらいに強いんだよ。うちのクラスで一番強いのが火ノ兄で次がオルコットなんだよ。」
鈴
「納得出来ないわよ!そいつがどれだけ強いか知らないけど私より強い訳ないじゃない!」
一夏
「いや~多分お前でも勝てないと…」
鈴
「何ですって!!!」
永遠
「お主ら五月蠅いぞ!場所を弁えんか!」
一夏
「ひ、火ノ兄!?それに、オルコット!?」
鈴
「アンタは二人目!」
永遠
「何じゃその呼び方?ワシの名は火ノ兄永遠じゃ!お主の名は?」
鈴
「…凰鈴音よ!鈴でいいわ!」
永遠
「ならワシも永遠で良い。それからお主らさっきから声が大きいぞ!周りの者達に迷惑じゃ。少しは声を小さくして喋らんか!」
一夏
「…ご、ごめん…」
鈴
「…悪かったわよ…」
箒
「フンッ!」
永遠
「ハァ…ではな…」
一夏
「ちょっと待ってくれ!鈴、この子が俺のコーチをしてくれているセシリア・オルコットだよ。」
セシリア
「?」
鈴
「アンタがセシリア・オルコットね!」
セシリア
「はい、わたくしがセシリア・オルコットですわ。よろしくお願いしますね。凰さん。」
鈴
「鈴でいい………アンタ!私と戦いなさい!」
セシリア
「はい?」
永遠
「何じゃいきなり?」
セシリア
「理由を聞いても宜しいですか?」
鈴
「アンタが一夏にコーチしてるって聞いたからよ!一夏は私よりアンタの方が強いって言って私のコーチを断ったのよ!だから私の方が強いって証明するのよ!」
セシリア
「なるほど…織斑さん…」
一夏
「は、はい!」
セシリア
「わたくしと永遠さん、そして織斑先生は言いましたよね…考えてから物を言う様にと…何故わたくしが今日会ったばかりの人に喧嘩を売られなければならないんでしょうか?貴方はわたくしの事をどう説明したのですか?」
一夏
「そ、それは…」
鈴
「アンタ、3人に同じ事を言われたの!?」
永遠
「織斑…貴様はまだ分かっとらんかったか…もう一度潰されてみるか?」
一夏
「そ、それだけは!?」
永遠
「…お主が馬鹿をやるのは勝手じゃ!じゃがワシ等を巻き込むな!やるなら一人でやれ!」
一夏
「…はい…」
これが一夏が言ってた説教か…確かに厳しいみたいね…
永遠
「それから鈴!」
鈴
「な、何!」
永遠
「お主の善意はありがたいんじゃが、こやつにものを教えるのは対抗戦が終わってからにしてくれんか?」
鈴
「え?」
永遠
「この馬鹿は1組の代表じゃ。お主は2組の代表じゃろ?試合前にそんな事すると互いの手の内を明かす事になりかねんぞ。」
鈴
「あ!」
永遠
「分かったか?すまんがそういう訳じゃから大会が終わるまでは我慢してくれ。」
セシリア
「その後でしたら変わりますわ。わたくしも色々と忙しいですし、鈴さんが代わりに指導してくれるならありがたいですわ。」
鈴
「え、いいの?」
この二人が言ってる事は至極真っ当な事だ…さっきは頭に血が上ってたけど落ち着いて考えてみるとその通りだった
セシリア
「…鈴さん…ちょっとこちらに…」
鈴
「な、何よ!?」
セシリアに呼ばれて私達は部屋の隅に移動した
セシリア
「鈴さん…心配しなくてもわたくしは織斑さんに興味はありませんわ。」
鈴
「え?」
セシリア
「織斑さんが好きなんでしょう?だからわたくしに怒ったんですよね?」
鈴
「セ、セシリア!」///
セシリア
「フフッ♪大丈夫です。わたくしが織斑さんになびく事はありません。断言してもいいですわ!」
鈴
「…アンタ…もしかして永遠が?」
セシリア
「はい♪ですがこれは内緒でお願いしますね♪わたくしも言いませんから♪」
鈴
「…うん♪分かったわ♪」
セシリア
「お願いしますね♪」
鈴
「…でも、今度私と勝負して!どっちが強いのか知りたいのは本当だから!」
セシリア
「フフッ♪分かりましたわ。その時はお相手いたしますわ!」
鈴
「約束よ!」
セシリア
「約束ですわ!」
鈴
「………でも良かった…アンタが一夏を好きじゃなくて…」
セシリア
「はい?」
鈴
「セシリアが相手じゃ勝てるかどうか分からないんだもん!」
セシリア
「では、篠ノ之さんなら勝てると?」
鈴
「少なくともアンタよりかは勝てる確率は高いわよ!」
セシリア
「篠ノ之さんが聞いたら怒りますわよ。」
鈴
「聞かれなかったら平気よ。だから言わないでね!」
セシリア
「フフッ分かりましたわ♪」
私たちは笑い合うと一夏達のいる席に戻っていった
セシリア
「永遠さん、お待たせして申し訳ありません。」
永遠
「気にせんでいい。織斑、ワシ等はもう行くぞ。久しぶりに会って嬉しいとはいえ、声はもう少し下げて話すんじゃぞ。」
一夏
「…はい…気をつけます…」
セシリア
「それでは鈴さん、また♪」
鈴
「うん!またねセシリア!永遠!」
永遠
「ああ、ではな。」
セシリア
「失礼します。」
二人は食事を取る為、違う席に向かった…
一夏
「…オルコットと何話してたんだ?随分仲良くなってたよな?」
鈴
「大した事は話してないわよ。今後勝負しようって約束したくらいよ。」
一夏
「そ、そうか…」
鈴
「一夏…良い奴等ね…あの二人…」
一夏
「え?」
箒
「何処がだ!あいつ等は一夏を散々馬鹿にした挙句に火ノ兄は半殺しにしたんだぞ!」
一夏
「いや、それは…」
鈴
「…何か理由があったんでしょ?」
一夏
「あ、ああ…その、訳は言いたくないんだけど…」
鈴
「ならそれでいいわよ。軽く話しただけでもあの二人、相手を陥れる様な事しそうに無いし。」
一夏
「それは確かにな。」
箒
「………」
箒は永遠とセシリアが嫌いみたいね
あの二人そんなに嫌われる事したのかな?
そんな事する様な奴には見えなかったんだけどな?
…そう言えば試合をしたって言ってたわね
千冬さんに頼んでその時の映像を見せて貰えないか頼んでみるか
そして次の日、クラスに来ると私が一夏の幼馴染と知ったクラスメイトから一夏の噂を聞いて自分の耳を疑った!
鈴
「…そ、そんな…アイツが…一夏が…ホモオオオオォォォォォーーーーーッ!!!」
~鈴Side out~
次回『第049話:簪の闇』