~鈴 Side~
鈴
「ぐすっ…ひっく…」
私は蹲りながら泣いていた…
鈴
「…馬鹿…一夏の大馬鹿………何で…何で分かんないのよ…」
一夏は私の約束を思い出した…それは嬉しかった…
でも、アイツはその意味が全く分かって無かった…
私はもうどうすればいいのか分からなくなっていた…
永遠
「鈴!」
鈴
「…永遠~…」
私が泣いていると永遠とセシリア、千冬さんがやって来た
鈴
「…何でココに…」
セシリア
「鈴さんの声が聞こえたからですわ。何かあったと思って探しに来たんです。」
鈴
「…私の声…聞こえたの…」
千冬
「あんな大声を出せば誰だって気付く。」
鈴
「…そっか…」
永遠
「で、何があったんじゃ?また織斑じゃろ?」
鈴
「…うん………アイツ…思い出したの…だから告白しようとしたら…アイツ…言葉通りの意味で受け取って…私に…プロポーズみたいって…私がそんな事言う筈無いって…」
永遠
「何じゃと!!」
セシリア
「最っ低ですわね!!」
千冬
「い~ち~かああぁぁーーっ!!」
鈴
「…うっ…ううっ…」
セシリア
「…鈴さん…」
鈴
「!?…セ、セシリア?」
セシリアは私を優しく抱きしめてくれた
セシリア
「…鈴さん…今迄良く頑張りましたね…もう我慢しなくていいんですよ…」
千冬
「…そうだぞ…泣きたかったら思いっきり泣けばいい…」
永遠
「…ココにはワシ等しかおらん…気兼ねせず泣いていいんじゃよ…」
鈴
「うっ…うううっ…うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!!!」
私は永遠達の優しさで泣いた…一夏への悔しさで泣いた…セシリアは泣き続ける私をあやす様に優しく撫でてくれていた
鈴
「うえええええぇぇぇぇぇーーーーーん!!!」
永遠
(織斑一夏…殺す!!)
セシリア
(鈴さんを泣かせた罪…思い知らせて差し上げますわ!!)
千冬
(弟とは言え容赦はせん…地獄に叩き落としてやる!!)
私が泣き止むまで3人はずっと傍に居続けてくれた
この3人が何を考えているのかも知らずに…
暫くして泣き止んだ私に永遠達は聞いて来た
永遠
「…鈴…お主はこれからどうしたいんじゃ?」
鈴
「…私は………一夏を叩きのめしたい!それに…アイツは私以外にも沢山の女の子達を泣かせてきた!その子達の分もアイツを殴り飛ばしたい!!」
永遠
「どういう事じゃ?」
私は永遠とセシリアに小中学校時代の一夏に無自覚にフラれた女の子達の事を話した
鈴
「………こういう訳よ。」
永遠
「…織斑先生…鈴の言っとる事は本当か?」
永遠は私が言った事が信じられないのか、千冬さんに確認した…
千冬
「本当だ…アイツの鈍さのせいでどれだけ多くの子達が泣いて来た事か…」
セシリア
「本当に最低な人ですわね!!」
千冬
「…私も恋愛は個人の自由という事で今迄は黙認してきたが…いい加減止めなければならんな…」
永遠
「そうじゃな…これ以上あの馬鹿の被害者を出す訳にはいかん!鈴には悪いが、泣くのは鈴で最後にせねばならん!」
セシリア
「永遠さんの言う通りです!…それでどうしますか?」
永遠
「…まずは協力者を増やす!」
千冬
「協力者だと?一体誰を………まさか!?」
永遠
「そのまさかじゃ!」
千冬
「しかし、いいのか?」
永遠
「構わん!…それにそろそろ…」Prrrrr「来たか…」
永遠が電話をスピーカーに変えて出ると…
永遠
「はい!」
束
『話は聞いてたよ!束さんもリーちゃんに協力するよ!』
鈴
「た、束さん!?」
千冬
「相変わらずの地獄耳だな。だが、お前が手を貸してくれるのはありがたい!」
束
『フフン♪任せてよ!束さんもクーちゃんもさすがに腹が立ったからね!それでとーくん、どうするの?』
永遠
「まずは鈴を徹底的に鍛え上げる!そっちで鈴の訓練用の設備を用意する事は?」
束
『出来るよ~♪準備に1日ほどかかるけど。』
永遠
「なら頼みます!次に織斑先生に二つ頼みがある!」
千冬
「聞こう!」
永遠
「一つは鈴を対抗戦まで学園を休ませて欲しい事、二つ目は対抗戦の初戦を鈴とあの馬鹿で組んで欲しい事、この二つじゃ!」
千冬
「フム…どちらも難しいが何とかしよう!まずは学園長に掛け合って鈴の長期外泊許可を貰うとするか…組み合わせの方は後で何とでもなる…だが、何故初戦なんだ?」
永遠
「鈴はともかく、あの馬鹿が鈴とぶつかるまで勝ち進めるとはワシには思えん!それなら初戦でぶつけた方が確実じゃ!」
千冬
「…確かにそうだな…分かった…そっちもやっておこう!」
鈴
「いいんですか!?」
千冬
「任せておけ!束、そっちの準備に1日かかると言っていたな。明日のこの時間までには間に合うか?」
束
『大丈夫だよ♪』
千冬
「頼むぞ!鈴、お前は数日泊まれる為の準備を明日までにしておけ!向こうに着いたら訓練の事だけ考えておけばいい!こっちは私や火ノ兄、オルコットで対処しておく!」
鈴
「は、はい!」
束
『それじゃあ、束さんは今から準備に取り掛かるよ!リーちゃん明日来るの待ってるよ!』
鈴
「はい!お願いします!」
永遠が電話を切るとセシリアが思い出したように聞いてきた
セシリア
「そう言えば永遠さん…簪さんと本音さんには伝えないんですか?」
永遠
「簪達には伝えん。事情を話せば手を貸してくれるじゃろうが、簪には専用機の完成に集中して欲しいからの!」
セシリア
「そうですわね。」
千冬
「確かに更識達にはそっちの方が大事だからな。」
鈴
「うん!私の我侭に簪達まで巻き込む事は出来ないわよ。」
永遠
「その事じゃが…鈴よ、ワシは簪の機体開発の手伝いもするから向こうでお主との訓練は余り出来んかも知れん。構わんかの?」
鈴
「それでいいわよ!簪の力になってあげて!」
永遠
「スマンな…と言っても帰りがいつもより少し遅くなるだけじゃから軽い模擬戦くらいなら出来る筈じゃ。」
鈴
「そこまでしてくれなくていいわよ。アンタには畑仕事とかもあるんだし。何なら私が手伝ってもいいよ。」
永遠
「それはいかん!お主は訓練の事だけ考えておればいいんじゃ!」
鈴
「う、うん…分かった。」
千冬
「学園長には何とか許可を貰っておくから、お前は今から準備だけでもしておけ。」
鈴
「はい!」
私は準備の為にすぐに自分の部屋に戻って行った
~鈴 Side out~
~千冬 Side~
千冬
「さて、私は学園長の所に行ってくるかな。」
永遠
「スマンが織斑先生…実は後一つ頼みが…鈴の前では言えんかったんじゃが…」
千冬
「ん?何だ?」
永遠
「織斑をアリーナに呼んで欲しい。説教を兼ねてボコる!」
確かに鈴の前では言えないな…
千冬
「…そうだな…鈴との試合の前に少し痛い目にあって貰うか…」
セシリア
「その方がいいですわね!自分が何をしたのか少しは分からせないといけませんわ!」
今の内に私達の怒りを一夏に叩きつけてやるか…
~千冬 Side out~
~一夏 Side~
一夏
「………何で鈴の奴怒ったんだろ?」
俺は言われた通り鈴との約束を思い出しただけなのに…何で怒鳴られないといけないんだ?
一夏
「…何か変な事言ったかな?」
あれから言葉には気を付けてるつもりなんだけど…
一夏
「…ん?…メール?千冬姉か…えっと…『一夏…ISスーツに着替えて第2アリーナに来い。火ノ兄が模擬戦をしてやるそうだ。』か…丁度いいや。火ノ兄に聞いてみるか。」
この後、俺は自分の身に何が起きるのかも知らずに呑気にそんな事を考えていた…
~一夏 Side out~
~千冬 Side~
私達は第2アリーナで一夏が来るのを待っている
火ノ兄はすでに【戦国龍】を展開してアリーナの中央にいる
暫くして着替えた一夏がピットにやって来た
千冬
「………来たか…」
一夏
「待たせたかな?」
千冬
「…火ノ兄がアリーナで待っている。とっとと逝ってこい!」
一夏
「千冬姉?」
呑気に話しかけて来るな…コイツ自分が何をしたのかやはり分かって無いな!
火ノ兄もアリーナからこっちを睨んでいるしな
一夏はそんな事にも気づかず【白式】を展開して飛んで行った
永遠
「………」
一夏
「丁度よかった!まだ学園にいたんだな。話を聞いてほしいんだ。」
永遠
「………」
一夏
「…オイ!聞いてるのか!」
永遠
「…貴様が言う事なんぞ分かっとるわ!」
一夏
「え?」
千冬
『それではこれより火ノ兄と織斑の
一夏
「…字が違ってないか?」
永遠
「余所見とはいい度胸じゃな!!」
一夏
「え?…ゲホッ!」
火ノ兄の拳が一夏の鳩尾に入って吹き飛ばされた
一夏
「ゴホッゴホッ…グウゥッ…」
永遠
「ウオオオオオォォォォォーーーーーッ!!!」
一夏
「ガハッゴハッグフッ…や、やめ…グエッゲハッンガッ…」
分かってはいたが初めから一方的な展開だった…火ノ兄の拳と蹴りを一夏は全て喰らい続けていた
永遠
「………」
一夏
「…な、何で…こんな事………俺が…何したってんだ…よ…」
永遠
「…分からんのか!!…貴様、また鈴を泣かせたな!!言葉に気を付けろと何度言えばわかるんじゃ!!」
一夏
「うっ!?…そ、それは…で、でも俺はちゃんと約束を…」
永遠
「黙れ!貴様、大切な人を守るとかぬかしておいて、貴様がやった事は何じゃ!!」
火ノ兄は一夏の言葉を遮ると腰の刀を抜いて構えた
一夏
「な、何言ってんだよ…」
コイツは本当に分かって無いのか…
永遠
「貴様の様な無自覚に人の心を傷つける奴の言う事なんぞ聞く耳持たん!何を言っても言い訳にしか聞こえんわ!!」
一夏
「そ、そんな!無自覚ってなんだよ!俺が誰を傷付けたってんだよ!」
永遠
「…貴様と言う奴は…ここまで言っても分からんのかあああぁぁぁーーーっ!!」
一夏
「ひっ!…うっ…うわああぁぁーーっ!!」
一夏は叫びながら火ノ兄に斬りかかった…
火ノ兄の気迫に押されてやけくそになったか…
永遠
「【龍巻閃・山嵐】!!」
火ノ兄は一夏の剣を回転しながら避けるとそのまま回転し続け、まるで竜巻の様に一夏と周囲を巻き込みながら切り裂いていった
一夏
「ぐあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」
上空に打ち上げられた一夏の両足を掴むと火ノ兄は一夏の頭を下に向けるようにした
セシリア
「何をする気でしょう?」
千冬
「分からん!」
私達の疑問をよそに火ノ兄はさらに自分の両足を一夏のわきに入れ両腕を広げた状態にした
更に尻尾で体を締め上げて動けない状態にした
と言うかあの態勢は…
千冬
「…まさか!」
私の予想通り火ノ兄はそのまま地面に向かって一夏を頭から落としていった
千冬
「パイルドライバーか!!」
セシリア
「アレが!?」
永遠
「死いいぃぃねええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!」
一夏
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!」
ドゴオオオォォォーーーンッ!!
火ノ兄の物騒な雄叫びと一夏の悲鳴が上がると同時に凄まじい衝撃音と砂煙が上がっていた…
永遠
「トウッ!」
中から火ノ兄が出て来ると、しばらくして砂煙が晴れたが、そこには、火ノ兄のパイルドライバーを受けて頭を地面に突き刺した一夏の姿があった
永遠
「馬鹿は滅びた!」
千冬
「自業自得だな!」
セシリア
「いい気味ですわ!」
ちなみにこの後、そのままにする訳にもいかないので一夏を掘り起こして、保健室に放り込んでおいた…後から保険医に聞いたら暫くの間、脈が無かったらしい
この時の一夏の姿を偶々来ていた新聞部が写真に撮っていたらしく、後日、校内新聞に『織斑一夏の八○墓村(笑)』と言う見出しで掲載された
~千冬 Side out~
~一夏 Side~
一夏
『…あれ?ココ何処だ?』
目を覚ました俺がいたのはどこかの河原みたいな場所だった
?
『おお~~~い!一夏~…』
一夏
『ん?………じ、じいちゃん!ばあちゃん!』
俺を呼ぶ声がしたからそっちを見ると、川を挟んだ向こう岸に昔死んだじいちゃんとばあちゃんが手を振っていた
向こう岸はこっちと違って綺麗な花畑が広がっていた
一夏
『…じいちゃん…ばあちゃん…会いたかったよ~~~!』
俺は嬉しさのあまり川に飛び込もうとしたら…
じいちゃん
『一夏~まだこっちに来るんじゃないぞ~…』
一夏
『何でだよ!折角会えたのに!』
ばあちゃん
『ココはまだお前が来るところじゃないんだよ…さ、早くお帰り…』
一夏
『ま、待ってくれよ!もっと話したい事が沢山あるんだよ!じいちゃん!ばあちゃん!』
ばあちゃん
『一夏…アンタのその鈍感な性格を早く治すんだよ…』
ばあちゃんのその言葉を最後に、俺は再び意識を失った…
~一夏 Side out~
次回『第056話:完成!打鉄弐式』