IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第062話:鈴の決意

 ~一夏 Side~

 

 俺は話があると言う鈴の後を着いて歩いていた

 一体俺に何の用だろう?

 そう言えば、鈴も千冬姉達みたいに俺に冷たくなった気がするな…

 鈴の話が終わったら聞いてみるか…

 

「………ココでいいか…」

 

一夏

「え?」

 

 俺が考え事をしながら歩いていると、気付いたら俺達は学園の屋上に来ていた

 

一夏

「なあ鈴、話ってなんだ?」

 

「………」

 

 鈴は俺に背中を向けたまま何も言わなかった

 鈴が話さないなら俺の聞きたい事を先に聞こうと思った時…

 

「…一夏…」

 

 鈴が口を開いた

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

 ワシ等は鈴の事が気になり後をつけておった

 二人は屋上に上って行ったところでワシ等は後をつけるのはやめる事にしたんじゃ

 

セシリア

「鈴さん…」

 

本音

「リンリン…大丈夫かな…」

 

永遠

「…さてな…鈴が何を考えておるのかは大体分かるが…」

 

「あの最低男にそれが伝わるかだよね?」

 

永遠

「確かにそうじゃが…最低男は言い過ぎな気が…」

 

「どこが?」

 

セシリア

「彼は最低ですわよ?」

 

本音

「うんうん!」

 

永遠

「………そうじゃな…」

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

「…一夏…」

 

一夏

「何だ?」

 

「…アンタさ…なんで私が怒ったのか…ホントに分からないの?」

 

一夏

「え?………ああ、俺、あれから言葉には気を付けているつもりなんだけど、お前を怒らせる様な事を言った覚えが無いんだけど…」

 

 鈴の話ってその事だったのか?

 

「…そっか…分からないんだ…」

 

一夏

「鈴?」

 

「なら教えてあげるよ。…あの時、アンタ約束を思い出したからって私に確認しに来たよね?もう一度その約束言ってくれない?」

 

一夏

「え?…ああ…『料理が上達したら毎日私の酢豚を食べてくれる?』…だよな?」

 

 これで間違い無い筈だけど…

 

「それで合ってるよ。」

 

 良かった!間違ってなかった!…でもそれなら何を怒ってるんだ?

 

「あれね…私の告白だったんだよ。」

 

一夏

「………え?」

 

 …今なんて言った…告白?

 

「日本にはさ…『毎日お味噌汁を食べて欲しい』って言うプロポーズがあるんだよね?私、中国生まれだからそれを中国風にしてあの日アンタに伝えたんだよ。」

 

一夏

「…え…え?」

 

 …ちょっと待て!…なら俺があの時、鈴に言った事って…

 俺は火ノ兄に臨死体験させられた日に鈴に言った言葉を思い出した

 

一夏

『それにしても、まるでプロポーズ『()()()』な約束だけど…まあ、鈴が『()()()()』を言うわけないか♪』

 

 だ、だから火ノ兄は…

 あんなに怒って…俺を半殺しにしたのか…

 

一夏

「あ…ああ…お、俺…」

 

「あの時は私なりに勇気を振り絞って言った言葉なんだけど…アンタには告白として聞いても貰えなかったのね…」

 

一夏

「!?…俺………鈴に…」

 

 …なんて事を…言ったんだ…

 

「…一夏…私ね…アンタが好きだったんだよ…でも………もう無理…」

 

一夏

「え!?」

 

「…アンタには愛想が尽きた…」

 

一夏

「!?………り、鈴?」

 

「…だから、アンタはもうただの幼馴染…ただの友達でしかない………そう言う訳だからこれからは友達としてよろしくね。」

 

一夏

「ぅ…ぁぁ…スマナイ鈴!!」

 

 俺は地面に頭を擦りつけて土下座をした…頭より先に体が反応していた…

 

一夏

「…俺が…俺が悪かった!!」

 

「………」

 

一夏

「お前の言う通りだ!…悪いのは全部俺の方だった!…火ノ兄達に言われた事を俺は何一つ分かって無かった!」

 

 今の俺には謝る事しか出来なかった…

 

「私の事はもういいわよ………でもね…試合の時にも言ったけど、アンタは私以外にも無自覚に沢山の女の子達の想いを踏み躙って来たのよ…」

 

一夏

「そ、そんな!?」

 

「…ホントに鈍感ね…言っとくけどアンタは小中学校の頃から、沢山の子達に好意を寄せられてたのよ。」

 

一夏

「え?」

 

「…でもアンタはその異常なまでの鈍さのせいで、誰の想いもアンタには届かなかった…私みたいに告白しても気付かなかった…アンタは無自覚にみんなを泣かせてきたのよ。」

 

一夏

「…ぁ…ぁ…ぁぁっ…」

 

 …信じられなかった…鈴の言った事が俺には最初理解出来なかった…でも…だとしたら俺は…

 

「今更過ぎた事をとやかく言うつもりは無いわ…でもね、アンタは自分に想いを寄せていた子達を悲しませてきた…傷付けてきた…それだけは…絶対に忘れないで!!」

 

一夏

「………」

 

「私の話は終わりよ…じゃあね…」

 

 鈴はそう言って俺の方に歩いてきた

 そして、未だに土下座をしている俺の横を通り過ぎる時…

 

「…サヨナラ…一夏…」

 

一夏

「!?」

 

 その一言に振り向いた時には鈴は屋上を後にしていた…

 この時、俺は気づいた…鈴は、一度も俺と顔を合わせようとはしていなかった…

 俺はそのまま力なく項垂れて…

 

一夏

「………俺は…最低だ…」

 

 込み上げてくる罪悪感に苛まれて、その場を動く事が出来なかった…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

「………」

 

 屋上から降りてきた鈴は近くにおるワシ等にも気づかずに下に降りて行った

 ワシはセシリア達に目配せすると全員分かっとったのか頷くと鈴を追いかけて行った

 残ったワシはどうしようか考えとると…

 

千冬

「…終わったのか?」

 

 織斑先生がやって来た

 

永遠

「そのようじゃ…篠ノ之は懲罰房に放り込んだんか?」

 

千冬

「ああ、反省するかは微妙だがな…」

 

永遠

「じゃろうな…あやつは謝るという事を知らんようじゃしな…」

 

千冬

「確かにな………オルコット達は?」

 

永遠

「鈴を追いかけて貰った…今は一人にした方がいいかもしれんが…」

 

千冬

「そうだな…アイツらにも世話をかけるな………それにお前にも…」

 

永遠

「ワシが勝手にやっただけじゃよ。」

 

千冬

「本当にスマンな…お前達には弟の事でも迷惑をかける…」

 

永遠

「じゃな…まあ、鈴との一件であの馬鹿も少しは分かったじゃろ…」

 

千冬

「だといいがな…」

 

永遠

「そう言われると不安じゃな…織斑先生…奴はまだ上におるから…少し覗いてみんか?」

 

千冬

「ふむ…そうだな…一度見ておくか。」

 

 ワシの提案に織斑先生も乗ってくれた

 そのままワシ等は屋上への階段を昇って行った

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~鈴 Side~

 

 一夏と別れて私はいつの間にか学園の海岸に来ていた…

 

セシリア

「…鈴さん…」

 

「セシリア、簪、それに本音も………聞いてたの?」

 

「…ううん…聞いてないよ…でも何を話してたのかは分かる。」

 

本音

「…リンリン…その…」

 

セシリア

「…もういいのですか?」

 

「…うん…言いたい事は全部言って来た…」

 

セシリア

「…そうですか…」

 

「あ!?」

 

 セシリアはあの時と同じように優しく抱きしめてくれた

 

「セシリア………!?」

 

 すると簪と本音も私を抱きしめた

 

セシリア

「いいんですよ…泣いても…」

 

「見られたくないなら私達が隠すから…」

 

本音

「だから…ね…リンリン…」

 

「…セシリア…簪…本音………うっ…うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーん!!!!」

 

 …私の恋は終わった…

 …でも、私には大切に思ってくれる人達がこんなにいてくれる…

 …私にはそれだけで十分だった…

 …ありがとう…皆…

 

 ~鈴 Side out~

 

 




 次回『第063話:MA・DA・O』


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