IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

73 / 155
第069話:剣刃(つるぎ)

 ~ラウラ Side~

 

 アリーナに着いた私はすでにISを解除していた二人目の男を見ていた

 

ラウラ

「…【ライン…バレル】…」

 

 私はさっきまで目の前で行われていた模擬戦が信じられなかった

 私の【シュヴァルツェア・レーゲン】はドイツの技術の粋を集めて開発された機体だ

 だが、あの【ラインバレル】とか言う全身装甲(フルスキン)のISは明らかに私の機体を遥かに上回る性能を持っていた

 あれほど高出力のビーム兵器を搭載している上に、あの二つの特殊能力…ワープと自己再生だと…そんな事が可能なISが存在していたなんて…

 

ラウラ

「くっ…何なんだアレは!?」

 

 ~ラウラ Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

 一夏達にISのエネルギー補給をさせている間私はかつての教え子の事を考えていた

 ラウラの奴…【ラインバレル】の力に動揺していたが…

 問題を起こさなければいいんだが………多分無理だな…

 火ノ兄の奴、ラウラに完全に目をつけられたみたいだからな…

 とりあえず授業の続きをするか…

 アイツが火ノ兄に何かしても返り討ちに会うのが目に見えてるしな…

 

千冬

「【ラインバレル】の能力も大体分かったな…さて次は専用機持ちをリーダーにしたグループで実習を行う。全員別れろ。」

 

 私がそう言った途端、一夏、火ノ兄、デュノアの所に人だかりが出来た

 

生徒達

「第一印象から決めてました!よろしくお願いしまーす!」

 

千冬

「この馬鹿共が!出席番号順に別れろ!!」

 

 私が怒鳴りつけるとそれぞれの前に移動し始めた

 

千冬

「全く、最初からそうし「ひののーーーん!?」…ん?」

 

 ひののん?…確か布仏が火ノ兄を呼ぶ時のあだ名だったな…何かあったのか?

 よく見ると火ノ兄の班だけ整列せずにいるな

 

セシリア

「どいて下さい!!本音さんどうしたんですか!?」

 

本音

「セッシー…ひののんが…ひののんがいきなり倒れた…」

 

 何だと!?

 

セシリア

「そんな!?永遠さん?…永遠さんしっかりしてください!?」

 

本音

「ひのの~ん…起きてよ~…」

 

千冬

「落ち着け!!布仏、火ノ兄が倒れる時どんな状態だった!」

 

本音

「え?…えっと………あ!そう言えば欠伸してた…」

 

千冬

「欠伸だと?…まさか?」

 

 私は火ノ兄の口元に耳を近づけると…小さいが寝息が聞こえて来た

 

千冬

「これは…寝てるのかコイツ!?」

 

セシリア&本音

「え?」

 

「寝てるんですか?」

 

一夏

「何だ脅かしやがって!」

 

シャルル

「そんなに眠かったのかな?」

 

ラウラ

「フン!」

 

真耶

「何言ってるんですか!明らかにおかしいですよ!何の前触れも無く寝るなんて!!」

 

 その通りだ…もしかして…

 

千冬

「オルコット、凰、確かお前達は【ラインバレル】を使った火ノ兄と訓練をしたと言っていたな?その時もコイツはこんな風になったのか?」

 

セシリア

「いえ、このような状態になった事はありません!」

 

「はい!何時間も【ラインバレル】で訓練した後、そのまま畑に向かったくらいです!」

 

シャルル

「…畑?」

 

千冬

「【ラインバレル】が原因で無いなら何が原因なんだ?」

 

セシリア

「…そう言えば永遠さん…今日は遅刻しましたわね。」

 

「え!?そうなの?」

 

千冬

「そう言えばそうだったな…確か寝坊したと…寝坊?…そして今のコイツは眠っている?…共通するのは寝るという事………夢でも見てるのか?」

 

セシリア

「夢………!?」

 

「セシリア?どうしたの?」

 

セシリア

「あ、いえ………鈴さん、本音さん、織斑先生、後、山田先生もちょっと…」

 

 オルコットが呼んだメンバー…火ノ兄の事を知っている者達だな…

 

千冬

「(何だ?)」

 

セシリア

「(多分ですけど…暫くすれば目を覚ますと思います。)」

 

本音

「ホント!?」

 

「(本音!シッ!)」

 

千冬

「(どういう事だ?)」

 

セシリア

「(実は、以前永遠さんをこの世界に送った神様が夢に出て来たっていう話を聞いた事があるんです。)」

 

千冬

「(何?)」

 

真耶

「(本当ですか!)」

 

セシリア

「(はい。その時は追加データを貰ったと言っていたので…)」

 

「(今回もそうだって言いたいの?)」

 

セシリア

「(…はい…)」

 

千冬

「(なるほど…その話が本当ならコイツがいきなり眠った理由も分かるな。)」

 

真耶

「(ですね…)」

 

千冬

「(なら暫く様子を見るか。)」

 

セシリア&鈴&本音&真耶

「(はい!)」

 

一夏

「な、なあ…何ヒソヒソ話してるんだ?」

 

千冬

「何でも無い。暫く様子を見て目を覚まさないようなら病院に連れて行くと話していただけだ。」

 

一夏

「あ…そう…」

 

 出来れば早めに目を覚まして欲しいが…このままでは本当に病院に送る事になるな…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

『ん?…ここは…またか………とっとと出てこんか!』

 

天照大神

『あら分かってたの?』

 

永遠

『分からいでか!!前回と全く同じじゃろ!!』

 

天照大神

『あはは…そうね~今度は趣向を変えるわ♪』

 

永遠

『やめんか!と言うか人の夢にもう出てくるでないわ!!』

 

天照大神

『あら酷い!折角あなたに新しい力を与えようと思ったのに!』

 

永遠

『んなもんいらん!!』

 

天照大神

『そんな事言わずに♪』

 

永遠

『いらんっちゅうとろうが!!』

 

天照大神

『残念だけどここに私が来た時点で追加されてま~す♪』

 

永遠

『ふざけんなーーーーーっ!!!』

 

 前回はガンダムのデータじゃったが…今度は何をしたんじゃ!

 

天照大神

『それじゃあ貴方の新しい力、存分に使ってね~♪』

 

永遠

『誰が使うかーーーっ!!!』

 

天照大神

『そうそう追加されたのは【戦国龍】だからね♪』

 

永遠

『人の話を聞けーーーーーっ!!』

 

天照大神

『それとこの能力は少し扱いが難しいから一度レクチャーするわね♪目を覚ましたら実行する様にしてあるからね~♪じゃ!まったね~♪』

 

永遠

『二度と来るなーーーっ!!!』

 

 ワシは叫ぶと同時に意識を失った…

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~セシリア Side~

 

セシリア

「…永遠さん…」

 

 わたくしは目の前で眠り続ける永遠さんを心配していました…

 恐らく永遠さんが眠っているのは以前教えて頂いた神様が永遠さんに会いに来ていると考えました…

 以前それでデータが追加されたと聞かされましたから…

 だから目を覚ますと思うのですが………!?

 

セシリア

「と、永遠さん?」

 

 永遠さんが薄っすらとですが目をあけましたわ!

 

千冬

「火ノ兄!目を覚ましたか!」

 

本音

「ひののん…よかった~…」

 

「ホントよ!」

 

セシリア

「…永遠さん?」

 

 何かおかしいですわね?

 目を覚ましたかと思ったらゆっくりと立ち上がって…

 もしかして寝ぼけてるのでしょうか?

 

千冬

「お、おい!ホントに大丈夫か?」

 

 織斑先生も心配してますが………!?

 

「ちょ、ちょっと永遠!アンタ何する気!?」

 

 永遠さんは腰の刀を抜いて【戦国龍】を展開しました

 

セシリア

「【戦国龍】!?永遠さん!いきなりどうされたんですか?」

 

永遠

「………」

 

 永遠さんは【戦国龍】の腰の刀を抜いてそれを左手に持ち帰ると【戦国龍】の周囲が光り出しました

 

千冬

「今度は何だ!?………何っ!」

 

 光が収まるとそこには水の入った石の水槽、金属の台、そして右手にはハンマーを握っていました

 

セシリア

「何ですのこれは?」

 

千冬

「これは…まさか!?」

 

セシリア

「織斑先生!アレが何か知ってるんですか?」

 

千冬

「…あ、ああ…コレと似た物を見た事が…だが…」

 

セシリア

「それは一体…」

 

 ゴオオオオオオォォォォォォーーーーーーッ!!!!

 

全員

「!?」

 

 永遠さんは突然【戦国龍】の口から炎を吐いて左手に持った刀に浴びせ始めました

 

シャルル

「な、何してるの…」

 

 カンッ!

 

 炎を浴びた刀が真っ赤に染まると、今度は目の前の金属の台において右手のハンマーで叩き始めました

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 ゴオオオオオオォォォォォォーーーーーーッ

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 永遠さんはハンマーで暫く刀を叩くと再び炎を浴びせまた叩くという事を繰り返していました

 

一夏

「ち、千冬姉…コレってまさか…」

 

千冬

「ああ、間違いない…コイツは刀を造ってるんだ!」

 

全員

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

セシリア

「刀って!永遠さん初めから刀を持っていたじゃないですか!」

 

千冬

「その通りだが、今アイツがしている事は刀を造る鍛造と呼ばれる作業だ!」

 

セシリア

「…鍛造…」

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 ゴオオオオオオォォォォォォーーーーーーッ

 

 カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…カンッ…

 

 その後も永遠さんは刀を打ち続けていました

 ですが突然刀を打つ手が止まりました

 

全員

「?」

 

 すると今度は横に置いてあった石の水槽の中に刀を入れました

 

 ジュオオオオオオォォォォォォーーーーーーーッ!!!!

 

 アレだけ炎を浴びていたので水につけた途端凄い勢いで中の水が蒸発していきました…ですが

 

 カッ!!!

 

 暫くすると、水槽の中が光り出しました

 

セシリア

「今度は何ですの?………あれは!」

 

 光が消えると刀を持っていた左手には見た事も無い剣が握られていました…すると…

 

永遠

「…はっ!?………ふざけんなああああぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

全員

「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」

 

 永遠さんが意識を取り戻したような反応をするといきなり怒鳴り声を上げたんですわ…

 

 ~セシリア Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「………」

 

 今日のコイツは本当にどうしたんだ?

 いきなり倒れて眠ったかと思ったら、目を覚ませば唐突に刀を打ち始めるし、刀が出来れば今度は怒鳴り声をあげる

 

千冬

「…火ノ兄…本当に大丈夫か?」

 

永遠

「ん?…ああ大丈夫じゃ!…やっと体の自由が戻ったわい!!」

 

千冬

「は?…体の自由って…お前意識があったのか?」

 

永遠

「うむ、意識はハッキリしとったんじゃが、目を覚ましてから体が勝手に動いとったんじゃよ。」

 

千冬

「何だそれは?もしかしてさっきまでお前がやっていた作業が原因か?」

 

永遠

「恐らくそうじゃろ。全く、妙な能力が追加されたもんじゃ!まあお陰でどんなものかは良く分かったわい…まさか【剣刃】を造る能力とは…」

 

 火ノ兄はそう愚痴りながら出来たばかりの剣を地面に突き刺すと【戦国龍】を解除した

 

セシリア&本音

「永遠さ~~~ん(ひのの~~~ん)!!」

 

永遠

「ぬお!?」

 

 オルコットと布仏が火ノ兄に抱き着いたか…それも仕方ないか…ここに更識がいても同じことをしただろうしな

 

千冬

「お前が倒れてからずっと心配していたんだ。そのくらいは許してやれ。」

 

永遠

「…そうじゃな…心配をかけたようじゃな…セシリア、本音…ワシは大丈夫じゃよ!」

 

セシリア

「本当ですか?何処も悪い所は無いですか?」

 

本音

「う~~~心配したんだよ~!!」

 

永遠

「…ほんにスマンかったの…」

 

「オホン!アンタたち何時までやってんのよ!」

 

セシリア

「あ!ススススミマセン!」///

 

本音

「えへへ~…つい…」///

 

「まあ分からなくはないから仕方ないけど…所で永遠?この刀って結局何なの?」

 

 鈴がそう言いながら火ノ兄が造った刀を指さした

 全体的に青みがかった刀身と蒼い柄、そして刀身に巻き付くように複数の龍の装飾が施されている

 一目でかなりの業物だと分かる出来だな…

 

永遠

「【大倶梨伽羅(おおくりから)】…」

 

「え?」

 

永遠

「この刀の名前じゃよ。【大倶梨伽羅(おおくりから)】と言うんじゃ。」

 

「【大倶梨伽羅(おおくりから)】…(これを造るのが神様から貰った力なの?)」

 

永遠

「ん?…(気付いとったか。)」

 

 どうやらオルコットの予想は的中したようだな

 

千冬

「(火ノ兄…実際はどうなんだ?やはり神とやらの仕業か?)」

 

永遠

「(うむ…【戦国龍】に刀を造る能力を追加したそうじゃ。しかも、コイツの造り方を体に覚えさせる為にワシの体を勝手に動かしたんじゃ!)」

 

セシリア

「(そんな事が出来るんですか!?)」

 

永遠

「(そうらしい!いい迷惑じゃ!!)」

 

セシリア&千冬

「(本当ですね(だな)…)」

 

 詳しい話は後で聞くとして今はこの刀を調べるか

 

千冬

「…織斑…倉庫に行って【打鉄】の近接ブレードを2,3本持って来い。」

 

一夏

「え?何で?」

 

千冬

「この【大倶梨伽羅(おおくりから)】と言う刀の切れ味を試す。」

 

一夏

「何で俺が行くの?」

 

千冬

「お前が目に入ったからだ!いいからさっさと持って来い!」

 

一夏

「理不尽だーーーーーっ!!」

 

 一夏は叫びながらも倉庫に向かって行った

 

 




 次回『第070話:二振りの青の剣刃』

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。