IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第080話:制限時間

 ~千冬 Side~

 

 火ノ兄達と【ワイバーン・ガイア】を調べる為に整備室に向かっていると…

 

永遠

「織斑先生…ちといいかの?」

 

千冬

「何だ?」

 

永遠

「デュノアの事じゃ。」

 

 火ノ兄が話しかけてきたが、内容はデュノアの事か…という事は

 

千冬

「…奴が女だという事か?」

 

永遠

「気付いとったか。流石じゃな。」

 

千冬

「当然だ!それに一夏もその事を知っているな?」

 

永遠

「うむ。一昨日の件で確信したわい。」

 

千冬

「私もだ。」

 

 アイツが馬鹿なお陰ですぐに分かった

 

永遠

「それで束さんに調べて貰ったんじゃが、あの娘の本当の名はシャルロット・デュノア。デュノア社の現社長と愛人の娘じゃ。」

 

千冬

「愛人?…余り気持ちのいい言葉ではないな。」

 

永遠

「あやつの目的は織斑の【白式】のデータじゃ。」

 

千冬

「そういう事か…その為にわざわざ男装してくるとはご苦労な事だな。…だが、何故そんな事をした?」

 

永遠

「デュノア社は今経営危機に陥っとる。そこからの巻き返しの為じゃろう。」

 

千冬

「その為に自分の娘にあんな事をさせているのか!」

 

 チッ!胸糞悪い話だ!

 

永遠

「いや、デュノアをココに送り込んだのは社長の本妻の方らしい。」

 

千冬

「何!?」

 

永遠

「あの会社は今、本妻が取り仕切っとる。父親である社長は飾り物扱いじゃ。」

 

千冬

「…娘はその事を知っているのか?」

 

永遠

「恐らく知らん。自分を送り出したのは父親じゃと思うとる筈じゃ。」

 

千冬

「そうか…どうするつもりだ?」

 

永遠

「デュノアが今後何をしたいのか、織斑が何を考えておるのかを問い質すつもりじゃ。」

 

千冬

「…確かにそうした方がいいな。」

 

永遠

「恐らく今日にでもデュノアはワシに接触する筈じゃ。束さんとの関係がバレたからな。その時に織斑と一緒に放課後の屋上に呼び出すつもりじゃ。それで織斑先生にもその場に来てほしいんじゃよ。」

 

千冬

「私もか?」

 

永遠

「織斑先生がおればあの二人も誤魔化そうとはせん筈じゃ。」

 

千冬

「私は自白剤か?…だがいいだろう。それで会うのはお前一人か?」

 

永遠

「そのつもりじゃ。わざわざセシリア達を連れて行く必要は無いからのぉ。」

 

千冬

「そうだな。」

 

 それから私達は整備室で山田先生と合流し布仏に【ワイバーン・ガイア】にアクセスして貰った

 だが…

 

真耶

「な、何ですかこのスペックは!?」

 

 【ワイバーン・ガイア】は第5世代と言うだけあって機体性能が現在のどのISをも遥かに上回っていた

 武装だけでも、両腕に装備された連射型のレーザー砲【アーム・カノン】

 口にも高出力レーザー砲【レーザー・ブレス】

 近接武装として翼そのものがブレードになっている【ウイング・ブレード】

 尻尾の先端にも大型ブレード【テール・ブレード】

 背中には12連装のミサイル発射管が左右に取り付けられている

 その上火ノ兄の造った【剣刃(つるぎ)】を既に装備している…

 【夢幻の天剣トワイライト・ファンタジア】…全体が金色で鍔の部分が赤い宝玉とその周りを小さな青い宝玉が回っている様な形をした【剣刃(つるぎ)】か…

 しかもこの機体は水中潜行が出来る上に、【ウイング・ブレード】を回転させる事でドリルの様にして地面に潜る事まで可能にしている

 

千冬

「束の奴…とんでもない物を造ったな!」

 

真耶

「本当ですよ~~~…」

 

千冬

「見た目から頑丈そうだとは思ったんだが…いくら第5世代とはいえ、この巨体で第3世代以上の機動性を持っているとはな…その上火ノ兄の機体と同じとまでは行かないがISスーツは手足だけでいいとは…」

 

真耶

「着替えが楽ですね~…」

 

千冬

「全くだ…」

 

真耶

「………でも、これが篠ノ之博士の夢の第一歩なんですね…」

 

千冬

「………そうだな…少々やり過ぎな気がするが…」

 

真耶

「あはは…」

 

永遠

「まあ心配せんでも次に造る奴はもっと小さくなっとるはずじゃ。本人も最初にデカいのを造ってそれから小さくしていくと言うとったしな。」

 

千冬

「そうあって欲しいな…こんなサイズの機体はコイツだけで十分だ。………次?」

 

本音

「どうしたんですか~?」

 

 次の機体…アイツまさか!?

 私はある考えが浮かびオルコットを見た

 

セシリア

「?…わたくしに何か?」

 

「織斑先生?」

 

千冬

「…オルコット…確かお前の機体は今は束が持ってるんだよな?」

 

セシリア

「え?…はい、そうですけど…それが何か?」

 

永遠

「あ~~~…そういう事か…」

 

 火ノ兄も気づいたな…

 

「永遠もどうしたの?」

 

永遠

「さっき魔改造すると言うたじゃろ?束さん…【ブルー・ティアーズ】を第5世代に魔改造する気じゃ。」

 

セシリア&簪&本音&真耶

「ええっ!?」

 

千冬

「【ブルー・ティアーズ】はオルコットに着いて行かなくなっている。生半可な強化ではオルコットはすぐに追いついてしまう。そうならない様にするには第5世代にするのが一番手っ取り早いからな。」

 

セシリア

「そんなまさか…」

 

千冬

「束がお前の機体を持ってくれば分かる事だ…」

 

セシリア&簪&本音&真耶

「………」

 

 取り合えず【ワイバーン・ガイア】の調査を続けた…

 アイツ今度はどんな物を造る気だ…

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

 …第五世代型【ワイバーン・ガイア】………あの機体のデータが手に入れば…

 でも、火ノ兄君はあの機体にアクセス出来るのは篠ノ之博士か布仏さんしか出来無いって言ってた…

 …ここは火ノ兄君に篠ノ之博士の事を聞こう

 多分僕以外にも聞かれてるだろうから怪しまれないだろうし…

 

シャルル

「…ひ、火ノ兄君…ちょっといいかな?」

 

 …そう思っていたら…

 

永遠

「…何用じゃ?………()()()()()()()()()()()()

 

シャルル

「!?」

 

 な、何で…僕の名前を!?

 

永遠

「こっちもお主に用があった。放課後に織斑と屋上に来い。そこで話を聞いてやるわい。」

 

シャルル

「わ、分かった…」

 

永遠

「ではな。」

 

シャルル

「………」

 

 …火ノ兄君にバレた…しかも一夏も連れて来いって事は、一夏が僕の正体を知っている事にも気づいてる…どうしよう…

 

 ………

 ……

 …

 

 放課後になると僕は一夏と屋上に向かっていた…

 その途中で僕の事がバレた事も一夏が知っている事も話した…

 

一夏

「…火ノ兄の奴、いつ気付いたんだ?」

 

シャルル

「…分からない…でも僕の本当の名前を知ってる時点で僕にはこの呼び出しを拒否する事は出来ないよ…」

 

一夏

「シャルル…だ、大丈夫だ!アイツが何かしてきたら俺が守ってやるから!」

 

シャルル

「…一夏…その言葉は嬉しいけど彼に勝てるの?」

 

一夏

「うぐっ!?」

 

 火ノ兄君は生身でISに勝てる人間…しかも彼自身もISを持ってる…たった二人じゃ勝てる訳ないよ…

 そんな話をしているうちに屋上に着いた

 屋上にはすでに火ノ兄君が来ていた

 

千冬

「これで全員だな。」

 

一夏&シャルル

「!?」

 

 後ろを振り向くと屋上の入り口に織斑先生がいた

 

一夏

「ち、千冬姉!何でココに!?」

 

千冬

「織斑先生だ!と言いたいが今はいい。お前達の事を火ノ兄から聞いてな、私がいれば正直に話すだろうという事で呼ばれた。」

 

シャルル

「………」

 

 織斑先生まで呼んでいたなんて…これじゃあ誤魔化す事も出来ない…

 

千冬

「やはり女だったか。」

 

一夏

「………いつ…気付いたんだよ…シャルルが女だって…」

 

千冬

「初めて会った時から違和感を感じていた。確証を持ったのは一昨日の医務室の前での一件だ。」

 

シャルル

「あ、あの時!?」

 

千冬

「そうだ。一夏、お前は私がいたのにデュノアにボーデヴィッヒを渡そうとした。火ノ兄から男は入るなと言われた直後にだ!」

 

一夏

「うっ!」

 

永遠

「あの状況で間違えたとすればお主は男女の区別も出来ん程の大馬鹿という事になる。じゃが、デュノアが女だと知っていたなら話は別じゃ。」

 

千冬

「そしてデュノアも疑問も持たずにボーデヴィッヒを受け取ろうとした。それでお前が女だと確信出来た。」

 

 最初から警戒されてたんだ…それをあの時の一件で完全にバレてしまったんだ…

 

永遠

「さて、シャルロット・デュノア…お主が男装してまでココに来た目的は織斑の…【白式】のデータを盗む為じゃな?」

 

シャルル

「…そこまで分かってるんだ…」

 

永遠

「男装してまで織斑と接触しようとするなら理由はそんな所じゃろ。もっともお主の本名は束さんに調べて貰ったがな。」

 

 篠ノ之博士か…確かにあの人ならその位調べるなんて簡単だろうね…

 

シャルル

「…そうだよ。僕の目的は一夏のデータを盗む事、そうするように父から命令されたんだよ。」

 

千冬

「父から…か…」

 

一夏

「待ってくれ!!シャルルは父親に命令されて嫌々ここに来たんだ!それにここにいれば3年は手出し出来ないんだ!その間に解決策を考えれば…」

 

千冬

「驚いたな!お前がそれに気付いていたとは…どうやら少しは勉強しているようだな。」

 

一夏

「俺ってどんな風に見られてるんだよ…」

 

千冬

「頭で考えるより先に無責任な事を口走る鈍感男だが。」

 

一夏

「………すみません…」

 

 一夏って織斑先生からそんな風に見られてたんだ…しかも否定しないって事は自覚があるんだ…

 

永遠

「デュノア…お主が今言った言葉には一つ間違いがあるぞ。」

 

シャルル

「?」

 

永遠

「お主を送り込んだのは父ではない。本妻の方じゃ。」

 

シャルル

「………え?」

 

 僕を送り込んだのが…本妻の方?

 

シャルル

「そんな!僕は確かに父からIS学園に入って一夏のデータを盗む様に言われたんだよ!」

 

永遠

「束さんの調査によるとデュノア社を実際取り仕切っとるのはその本妻の方じゃ。お主の父はただの飾り物になっとるらしい。」

 

シャルル

「父が…飾り物!?」

 

永遠

「そんな人間に発言権があると思うとるんか?」

 

シャルル

「じゃ、じゃあ…あの時、僕に出した命令は…」

 

永遠

「父親の口を通して本妻から出された命令という事じゃ。」

 

シャルル

「そんな…」

 

永遠

「まあ、お主の父親が何を考えておるかは分からんがな。もしかしたら別の思惑があるかもしれんし、本妻と同じ考えかもしれん。それは本人に聞くしかないのぉ。」

 

シャルル

「………」

 

一夏

「シャルル…」

 

永遠

「お主の間違いを一つ正した訳じゃが、デュノア、これからお主はどうしたいんじゃ?」

 

シャルル

「ぼ、僕は…僕はここにいたい!…でも…どうすればいいのか…」

 

永遠

「さよか。それが聞ければワシは何も言わん。まあ織斑が言った通り3年以内に何とかするんじゃな。今のままじゃと国に戻ればお主は任務失敗で消されるじゃろうからな。」

 

シャルル

「!?…消される…」

 

永遠

「まあ、方法が無い訳では無いがな…余りお勧めは出来んが…」

 

一夏

「本当か!?どんな方法だよ!?」

 

永遠

「国を捨てればいい。」

 

シャルル

「く、国を…捨てる!?」

 

千冬

「つまりどこかの国に亡命しろと言う事か。確かにそうすれば狙われる事は無くなるな。」

 

シャルル

「でも…その方法は…」

 

永遠

「二度と故郷の土は踏めんじゃろうな。お主の母の墓参りも出来んから事前に墓を移さねばならんのぉ。じゃからお勧めはせんと言うたじゃろ?…それは最後の手段と言ってもいいからのぉ。」

 

シャルル

「最後の…」

 

永遠

「まあ、亡命するのか、それとも別の方法を取るのかはお主の自由じゃ。じゃが、一度は父親と話す事を勧めるぞ。本妻のおらん所でな。」

 

シャルル

「…父さんと…」

 

永遠

「後は織斑と相談するんじゃな。それからデュノア、お主の用件とは束さんの事じゃろ?悪いがワシは何も言わんぞ。」

 

シャルル

「!?…う、うん…分かった…」

 

 …それも分かってるんだ…

 …僕が…これからどうしたいか…か…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

永遠

「次に織斑、お主は何を考えとるんじゃ?」

 

一夏

「お、俺!?」

 

永遠

「そうじゃ。デュノアの正体も目的も知ってなお庇う様な事をしとるのは何故じゃ?…また考え無しに俺に任せろとでも言ったんか?」

 

一夏

「そ、そんな事無い!さっきも言っただろ3年もあるんだ!その間に解決策を考えればいいんだって!」

 

永遠

「結局は後回しにしただけじゃろ?それを考え無しと言うんじゃ。」

 

一夏

「ぐっ…」

 

永遠

「それにさっきから3年3年と言うが本当にデュノアを3年間も今の状態にしとくつもりか?」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「本当にデュノアの事を思うなら一日でも早く解決策を考えてやるもんじゃろ?お前の言っとる事はデュノアを無駄に長く悩ませとるだけじゃぞ。」

 

一夏

「うっ!?」

 

永遠

「それにその規則には大きな穴があるんじゃぞ。」

 

一夏&シャルル

「穴?」

 

永遠

「確かにその規則通りならデュノアに手出しは出来ん。じゃが、それはあくまで別の国や組織に対してだけじゃ。」

 

一夏&シャルル

「え?」

 

永遠

「デュノア…お主はフランス国籍の人間じゃ。故に国からの帰還命令の類が出れば拒否する事は出来ん。ましてや代表候補生の立場ともなれば余計にな。そう言った物に対してその規則は何の役にも立たん。」

 

シャルル

「あ!?」

 

永遠

「織斑…どうする気じゃ?」

 

一夏

「どうするって…どうすればいいんだよ!?」

 

永遠

「知らん!デュノアを助けると言ったのはお前じゃろ?お前が何とかしろ!!」

 

一夏

「そんな言い方しなくていいだろ!」

 

千冬

「一夏…お前は何時もそうだったな?…誰か困っている人がいれば俺に任せろ、俺が何とかする…そう言っていたな?」

 

一夏

「千冬姉…それがいけないのかよ!」

 

千冬

「別に悪いとは言わん。だが、今までお前はそう言って自分で解決した事があったのか?」

 

一夏

「!?」

 

千冬

「お前の困っている人を助けたいと言う気持ちは分かる。だがな、そうやってお前は相手に無駄な期待をさせては碌に何もしていないだろ。何時も見かねた私や束が解決していたんだぞ。」

 

一夏

「………」

 

千冬

「今回のデュノアの件もそうだな?お前は任せろと言いながら時間が3年あるからと言って何も解決策を考えていない。デュノアの事情を昨日知ったばかりの火ノ兄でさえ最終手段とは言え亡命と言う方法を考えたぞ。だが、それ以前から知っていたお前は何か考えていたのか?」

 

一夏

「………」

 

千冬

「いいか一夏!!自分で対処出来ないなら初めから任せろ等と口にするな!!相手にも周りにも迷惑だ!!!」

 

一夏

「!?………ううっ…」

 

 …千冬姉の言う通りだ…俺は任せろって言って…何もしてない…何も考えてない

 今まで解決してきたのは千冬姉と束さんの二人だ…それを俺は…自分が解決したみたいに…

 

永遠

「…織斑…一つ聞く…何故他の者に頼まんかった?」

 

一夏

「え?」

 

永遠

「出来もせんのに相手を助けようとしとるなら、何故出来る者に事情を話し協力を頼まんかったと聞いとるんじゃ。お前の周りなら織斑先生じゃな。」

 

一夏

「そ、それは…」

 

永遠

「答えられんか?それならそれで構わん。大よその見当は付くから答えんでいいわい。」

 

一夏

「え?」

 

 見当が付くってどういう事だよ…

 

永遠

「まあ、それはいい…それからお前、時間は3年『も』あると言うておるが、実際は3年『しか』ないんじゃぞ。」

 

一夏

「え?…3年しか…」

 

永遠

「はぁ…まさかとは思うが気づいとらんのか?そもそも、デュノアの事だけを考えれば3年は十分な時間じゃ。だけならな。じゃがそれ以外にもやらねばならん事が沢山あるじゃろ!お前が日々しなければならん事の中でデュノアに割ける時間がどの程度あると思うとるんじゃ!」

 

一夏

「あ!?」

 

 そうだ…火ノ兄の言う通りだ…シャルルの事だけなら時間は十分ある…

 でも、他にもする事は沢山あるんだ…全部やれば3年なんてすぐに…

 

永遠

「それに…3年言うんはデュノアだけの制限時間ではないんじゃぞ?」

 

一夏

「シャルルだけじゃないって…他に誰がいるんだよ!」

 

千冬

「…お前の事だ!」

 

一夏

「お、俺?」

 

永遠

「お主がこの学園に入れられたのはココが治外法権だからじゃ。ココにおればテロリスト以外はおいそれと手出しは出来ん。お主は日本人じゃが、男の操縦者という事もあるからデュノアと違って日本政府ですらココにおれば手が出せん。じゃがココから出ればお主をモルモットにしようと世界中の国や組織から狙われる事になる。」

 

一夏

「そ、そんな…」

 

永遠

「はぁ…呆れたのぉ…織斑先生がこの学園に入れたのはお主を3年とはいえ守る為じゃ。少し考えれば分かる事じゃろうに、んな事も気づいとらんかったんか?」

 

一夏

「俺の…為に………そんな…」

 

千冬

「2年前の事件の事を忘れたのか?あんな事が起きた時の為に、この3年の間にお前には自衛手段を身に着けて貰おうと思っていたんだがな…」

 

一夏

「あの時の!?」

 

千冬

「お前…あの時みたいに私が必ず助けに来てくれると思ってるのか?」

 

一夏

「!?…それは…」

 

千冬

「お前は私に死ぬまで守って貰うつもりか?そんな事が出来るとでも思ってるのか?だとしたらお前はとんだ甘えん坊だな。」

 

一夏

「………」

 

 千冬姉の言う通りだ…

 俺は…知らずに千冬姉に甘えてたんだ…

 あの時みたいに千冬姉が助けてくれる…守ってくれるって…思い込んでたんだ…

 それは俺が自立も出来ない甘ったれって事じゃないかよ…

 実際はそんな事…出来る筈ないのに…

 

千冬

「私は言った筈だぞ?自分で自分を守れるくらいに強くなれと?お前は私の言った事の意味を理解していなかったのか?」

 

一夏

「………」

 

 あの時言った言葉はこういう意味でもあったんだ…

 

千冬

「デュノアの事を気にかけるのは別に構わん。だが、お前自身にも時間が無いという事を理解しておけ。3年と言う限られた時間の中でお前が何をすべきかを考えろ。」

 

一夏

「………はい…」

 

 3年…それが俺に残された時間………って!?

 

一夏

「ちょっと待ってくれ!?なら火ノ兄は!アイツだって俺と同じじゃないか!?」

 

永遠

「ワシを自分と重ねるな。お主と違ってそんな連中は全員返り討ちにしてやるわい。」

 

千冬

「そうだな。火ノ兄にはそれだけの力がある。だが一夏、お前にはそれが出来るのか?」

 

一夏

「うっ………出来ない…」

 

 そうだ…火ノ兄は生身でISに勝てるくらい強いんだ…その為の努力をずっと続けてきたんだ…しかもアイツの専用機はどれも化け物じみた物ばかりで、それを完全に使いこなしてる…俺とは違って狙われても返り討ちに出来る…

 それに引き換え俺は…俺には襲ってきた奴を返り討ちにする力はない…する為の努力もしてない…【白式】も全く使いこなせてない…俺は何処まで馬鹿なんだ…そんな事も分からないなんて…

 

一夏

「………」

 

永遠

「どうするかは自分で決めるんじゃな。まあ、まずはデュノアの件を片付ける事じゃ。自分で手を貸すと言ったんじゃ。最後まで責任を取るんじゃな。」

 

千冬

「デュノアに任せろと言ったのはお前だ。相談や調べもの程度なら手を貸してやるが、今回は最後までお前が自分で片付けろ!私も束もお前の尻拭いはせんぞ!!」

 

一夏

「!?………分かった…」

 

永遠

「それから最後に言うておくがデュノアに残されとる時間は実際には3年も無い。よくて2カ月と言った所じゃ。」

 

一夏

「な、何でだよ!?」

 

永遠

「お前…ワシと違って学校行っとったんじゃろ?」

 

一夏

「当り前だろ!!」

 

永遠

「なら7月になったら何がある?」

 

一夏

「え?…7月?………夏休み…か?」

 

永遠

「そうじゃ。デュノア…お主、夏休みの間この学園にずっとおるつもりか?代表候補生が長期の休みに国に帰らんでいいのか?」

 

シャルル

「………帰らないなんて…出来ないよ…」

 

一夏

「そんな!?」

 

永遠

「そう言う事じゃ。…さて、ワシの用件は終わりじゃ。わざわざ呼びつけてスマンかったな。織斑先生も申し訳なかった。」

 

千冬

「何、気にするな。」

 

 火ノ兄はそう言って屋上を後にしていった

 千冬姉も続いて屋上から出ようとした時…

 

千冬

「一夏…いい加減姉離れしろ!」

 

一夏

「!?」

 

シャルル

「…一夏…」

 

 本当のタイムリミットは2カ月…その間に何とかしないといけないのかよ…

 それに…姉離れか…その通りじゃねえか…

 どうすればいいんだ…

 

シャルル

「………」

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「…火ノ兄…さっき一夏が私に相談しなかった理由に見当がつくと言っていたがそれは何だ?」

 

 私はさっき火ノ兄が言っていた事が気になっていた

 一夏が私に相談しない理由を聞かれた時アイツは答えなかった…

 火ノ兄はそれだけで分かったみたいだが、私には分からなかった…

 だから聞いてみたんだが…

 

永遠

「………大方、自分で言った手前お主に頼るのはカッコ悪い、迷惑をかけたくないとか、そんな理由じゃろ?」

 

 それは予想以上に情けない理由だった…

 

千冬

「何だそれは?つまりアイツは自分のプライドを優先させたと言うのか?」

 

永遠

「恐らく無意識の内にその考えが浮かんだんじゃろ。じゃからお主に相談せんかった。それしかワシには思い当たる節が無いんじゃよ。奴の本心かは分からんがな。」

 

千冬

「いや、お前の予想は当たっているだろう。アイツは変な所で無駄にプライドが高いからな。」

 

永遠

「まあ、流石にデュノアの前では言わんほうがいいと思うて黙っといたんじゃが…」

 

千冬

「確かにな…自分のプライドを優先させていたなんて知ればデュノアはさらに追い込まれる…全くアイツにもお前ぐらいの気遣いが出来ればいいんだが…」

 

 アイツは…気遣いは出来ない…考えるより先に口が出る…無責任な事は言う…その上、鈍感…

 この3年の間にどれか一つでも治ればいいんだが…

 

永遠

「そうじゃな…まあ、ワシはこれ以上デュノアの件に関わらんよ。あの娘がココにいたいと言うなら何も言わん。どうやって残るかは織斑の脳味噌、もとい頑張り次第じゃがな。」

 

千冬

「そうだな…デュノアには悪いが…あれだけ追い詰めればアイツも現実の厳しさが分かるだろ…」

 

 念の為、束に調査だけでもやっておいてもらうか…

 その後、私達は別れたんだが…そう言えばアイツに言っておく事があったな

 

 ~千冬 Side out~

 




 次回『第081話:未練』

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