IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第084話:戦国龍、墜つ【戦国龍VS偽暮桜】

 

 ~千冬 Side~

 

千冬

「【暮桜】だと!?」

 

真耶

「織斑先生!ボーデヴィッヒさんのあの変化ってまさか!?」

 

千冬

「【ヴァルキリー・トレース・システム】だ!!」

 

 ドイツ軍め…あのシステムをボーデヴィッヒの機体に組み込んでいたのか!

 

真耶

「やっぱり!?ですがアレは危険過ぎるシステムの為、どの国も企業も使用する事は禁止されている筈です!」

 

千冬

「その通りだ!!」

 

 【Valkyrie Trace System】…通称【VTシステム】…

 過去の【モンド・グロッソ】優勝者…つまり私の戦闘パターンをデータ化し、そのまま使用者に再現・実行させるシステム

 だが、搭乗者に『能力以上のスペック』を要求する為、肉体に莫大な負荷が掛かり、場合によっては生命の危険すらある

 現在は山田先生の言う通り条約によって使用はおろか研究すら禁止されている代物だ

 それをドイツの研究者どもめ!

 

千冬

「アイツ等!?私の教え子になんて物を!!」

 

 私が怒りに震えていると…

 

セシリア

「織斑先生!!」

 

 オルコット達4人が管制室に入って来た

 

千冬

「お前達!勝手に入って来るな!今は緊急事態だぞ!!」

 

セシリア

「処罰は後で受けます!ですが今は…」

 

 コイツ等、それを覚悟で来たのか…

 どっかの馬鹿に聞かせてやりたい台詞だな…

 って今はそんな事はどうでもいいな

 

「織斑先生…アレはもしかして【VTシステム】じゃ?」

 

千冬

「…そうだ…しかも使われているのは【モンド・グロッソ】で優勝した時の私のデータだ!」

 

「【モンド・グロッソ】の時の千冬さんって…【ブリュンヒルデ】になった時のですか!?」

 

千冬

「ああ…」

 

本音

「どうするんですか~?」

 

千冬

「幸いと言っていいのかは分からんが、奴の目の前には火ノ兄がいる。アイツならあんな紛い物には負けはしないだろう。」

 

セシリア&簪&本音&鈴

「はい♪」

 

真耶

「織斑先生!その火ノ兄君から通信です!アレは何だと聞いてきてます!」

 

千冬

「分かった!私が説明する!」

 

 ~千冬 Side out~

 

 

 

 ~永遠 Side~

 

永遠

「何じゃこれは?」

 

 ワシは今、目の前におる異形の物体となったチビッ子を見とる

 これが何か全く分からんから先生方に連絡して教えて貰おうと思うたんじゃが…

 

千冬

『火ノ兄!私だ!』

 

 織斑先生が通信に出て来た

 

千冬

『簡単に言うぞ。ボーデヴィッヒの機体には【VTシステム】と呼ばれるものが搭載されている。このシステムは過去の実力者、今回は私のデータを使って私自身の力を再現している。』

 

永遠

「お主の再現?…何となく分かったがそげなシステムを使ってチビッ子の体は大丈夫なんか?」

 

千冬

『大丈夫な訳がない!【VTシステム】は使用者の能力以上のスペックを要求するシステムだ!使えば体に膨大な負担がかかる上に最悪使用者が死んでしまうものだ!』

 

永遠

「何でそげな物騒なもんをチビッ子が?」

 

千冬

『あのシステムは条約で使用、開発、研究の全てが禁止されている!それをドイツの研究者の馬鹿共が取り付けていたんだろう!』

 

永遠

「そいつ等にとってチビッ子は実験動物とでも言うつもりか?胸糞悪いシステムじゃ!!」

 

千冬

『全くだ!そう言う訳で火ノ兄!悪いが…』

 

永遠

「分かっとる!チビッ子を一刻も早く救い出すんじゃろ?」

 

千冬

『頼む!』

 

永遠

「【六道剣(りくどうけん)】を使っても構わんか?」

 

千冬

『ああ、これは試合では無いからな!』

 

永遠

「承知した!!」

 

 織斑先生との通信を終えると【六道剣(りくどうけん)】を出そうとしたら…

 

一夏

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 ワシの後ろから織斑が生身で突っ込んできた

 

永遠

「何しとるんじゃお前は?」

 

 流石に生身ではヤバそうじゃから、織斑の首根っ子を掴み上げて問い質したんじゃが…

 

一夏

「離せ火ノ兄!!アイツは…アイツは千冬姉の!!」

 

永遠

「姿と動きを真似とるのぉ…」

 

一夏

「そうだ!!アレは千冬姉の剣だ!!それを…」

 

永遠

「…許せんのは分かるが、生身で挑むつもりか?」

 

一夏

「ぐっ!…な、ならすぐに【白式】の補給をしてくるから、それまで…」

 

永遠

「馬鹿か貴様?」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「自分が倒すからそれまで待ってろとでも言うつもりか?ふざけとんのか貴様?」

 

一夏

「で、でもアイツは…」

 

永遠

「貴様を待っとる間にチビッ子が死んでもいいのか?」

 

一夏

「…え?」

 

永遠

「あのままの状態では中のチビッ子は死ぬと言うとるんじゃ!!じゃから一刻も早くあの中から引きずり出さんといかん…それを貴様は何て言おうとした!!」

 

一夏

「………そ、それは…」

 

永遠

「貴様の我儘と人一人の命…どちらが大切だと思うとるんじゃ!!」

 

一夏

「!?」

 

永遠

「分かったら引っ込んどれ!!」

 

 ワシはそう言うと織斑をデュノアの方に放り投げた

 

一夏

「グッ!」

 

シャルル

「一夏、大丈夫!?」

 

一夏

「…ひ、火ノ兄…」

 

永遠

「…単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)起動!!」

 

一夏&シャルル

「!?」

 

永遠

「来たれ!【六道剣(りくどうけん)】!!」

 

 ワシの周りに現れた6色の光の柱、その内の一つ、赤い柱に向かって手を差し伸べると、中に封印されておる剣の名を呼んだ

 

永遠

「燃え上れ!猛き炎の剣【炎龍刀オニマル】!!」

 

 ワシの声に反応する様に赤い柱から一振りの剣が出てくるとワシはそれを掴み構えた

 

 ~永遠 Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

シャルル

「い、一夏…何なのあの剣!?」

 

 そう言えばシャルルはまだ見た事無かったな…

 

一夏

「…アレが【戦国龍】の単一仕様(ワンオフ・アビリティー)…【六道剣(りくどうけん)】だ…」

 

シャルル

「【六道剣(りくどうけん)】!?…アレが!?」

 

一夏

「…【六道剣(りくどうけん)】はその名前の通り全部で6本ある刀の総称なんだ…その内の一本があの【炎龍刀オニマル】だ…」

 

シャルル

「…【炎龍刀オニマル】…」

 

 …シャルルは【オニマル】に驚いてるけど…俺はそれどころじゃなかった…

 さっき火ノ兄が言った言葉が頭にこびり付いていた…

 

永遠

『貴様の我儘と人一人の命…どちらが大切だと思うとるんじゃ!!』

 

 そんなの決まってる…ラウラの命の方が大事だ…

 俺は…いくら知らなかったからって…何て事を言おうとしたんだ…

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~三人称 Side~

 

 ≪管制室≫

 

セシリア

「【炎龍刀オニマル】…赤の剣ですか…」

 

「…そう言えば…【戦国龍】の【六道剣(りくどうけん)】も【剣刃(つるぎ)】に入るのかな?」

 

「…多分入るんじゃない。…あの6本は永遠が今まで造った【剣刃(つるぎ)】を遥かに上回るって言ってたし…」

 

千冬

「そうだな…恐らくあの6本が【剣刃(つるぎ)】の頂点に立つんだろう。」

 

本音

「ならアレを使えばひののんは負けないね~♪」

 

セシリア

「そうですわね♪」

 

「本音の言う通り♪」

 

 セシリア達は【オニマル】を使う永遠が負ける筈無いと確信していた

 

 

 

 ≪アリーナ≫

 

 アリーナでは【オニマル】を構えた永遠が【偽暮桜】と向かい合っていた

 

永遠

「(チビッ子の体がどこまで持つか分からん…速攻で片づけんといかんな!)ならば!!…【戦国龍】!!全能力開放!!」

 

 ラウラを早く助け出す為【戦国龍】の力を解放した

 

一夏

「ぜ、全能力開放だって!?」

 

 永遠がそう叫ぶと、【戦国龍】の鎧の羽に更に大型の翼が追加され、左手に持っていた槍も穂先が変化し、頭部や胸当ての鎧の形状も変化した

 

<オオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーンッ!!!!!>

 

 ザワザワ…

 

シャルル

「これが【戦国龍】の…」

 

一夏

「全ての力を解放した姿!?」

 

 姿の変わった【戦国龍】の姿に一夏とシャルル、そして観客席にいた人たちもその姿に驚きを隠せずに騒めいていた

 

永遠

「一瞬で終わらせる!!」

 

 永遠はそんな周りの騒ぎを気にもせず、【オニマル】と槍を構え【偽暮桜】に向かって行った

 

永遠

「はあぁぁっ!!」

 

 ガキィィンッ!

 

 永遠の【オニマル】と【偽暮桜】の刀がぶつかった

 そのまま鍔迫り合いになるが、力は【戦国龍】の方が上だった

 

永遠

「ぬんっ!」

 

 そのまま【偽暮桜】の刀を払いあげ、刀を持っている右手を槍で突き刺した

 

永遠

「今じゃい!!」

 

 永遠はガラ空きになった懐に【オニマル】で表面を斬り裂いた

 斬り込みの入った胴体に槍を手放し、左手を突っ込むと…

 

永遠

「出て…こーーーい!!」

 

 中のラウラを力づくで引きずり出した

 ラウラを助け出した永遠はラウラを抱え直すと【偽暮桜】から離れた

 永遠はすぐにラウラの安否を確認すると…

 

ラウラ

「ぅ…ぅぅ…」

 

 無事だったので、永遠は肩から力を抜いたのだが…

 

 ドシュッ!

 

 何かを突き刺す音が永遠の耳に聞こえてきた

 永遠が自分の胸元を見ると自分の体を貫いた血に濡れた剣が目に映った

 

永遠

「…な…に…」

 

 しかも体を貫いている剣が淡く光っていた

 

永遠

「コレは…まさか【零落白夜】…」

 

 それは一夏の【白式】と同じ【零落白夜】の光だった

 そのまま後ろを振り向くと、搭乗者のラウラがいない筈の【偽暮桜】が永遠を後ろから突き刺していた

 

永遠

「ぐっ!…織斑ーーーっ!デュノアーーーッ!」

 

一夏&シャルル

「!?」

 

永遠

「受け取れえええぇぇぇーーーっ!!」

 

 永遠は苦痛な声を上げながらラウラを二人の方に投げ飛ばした

 二人は慌ててラウラを受け取った

 

一夏

「ひ、火ノ兄!?」

 

永遠

「…早く…逃げろ…」

 

シャルル

「で、でも…」

 

永遠

「行けえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」

 

 ズシュッ!

 

永遠

「ぐはっ!」

 

 永遠の叫び声と共に二人はラウラを連れて避難した

 それとほぼ同時に【偽暮桜】は永遠の体から刀を抜いた

 

永遠

「ぐううっ!…はああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 永遠は痛みに耐えながら【オニマル】で斬りかかったが…

 

 ガキィン!

 

永遠

「何っ!?」

 

 【偽暮桜】はいつの間にか持っていたもう1本の刀で永遠の攻撃を受け止めていた

 

 ザシュゥッ!!

 

 そして【偽暮桜】は空いていた刀で永遠を斬り裂いた

 

永遠

「!?…ぁ…ぁぁ…」

 

 斬り裂かれた【戦国龍】の斬り口から鮮血が飛び散った

 永遠はそのまま仰向けに倒れ…【戦国龍】の目から光が消えた…

 

 ~三人称 Side out~

 

 




 次回『第085話:進化の時!我が名は戦国龍皇!!』


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