IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第089話:クロエとラウラ

 ~ラウラ Side~

 

 私は今、自分の姉と呼べる人と共に屋上に来ている…

 教官と火ノ兄に言われたように二人だけで話す為だ………だが…

 

ラウラ

「………」

 

 …一体何を話せばいいんだ…

 私が話のキッカケに悩んでいると…

 

クロエ

「…ラウラ様…」

 

ラウラ

「!?…は、はい!」

 

 向こうから話しかけてくれた…だが…

 『ラウラ様』…か…

 

クロエ

「まず先に言っておきます。私は貴方が嫌いです。私の存在理由もそうですが、永遠兄様をあのような目に合わせた貴方を私は許す事が出来ません。」

 

ラウラ

「………そう…ですね…」

 

 この人の言う通りだ…

 オルコット達でさえ私を許さないと言ってるんだ…

 火ノ兄の妹でもあるこの人が許すわけが無い…

 

クロエ

「兄様は私に始めて家族と言うものを教えてくれた方です。」

 

ラウラ

「…家族…」

 

クロエ

「そうです。その兄様を…よりにもよってもう一人の私とも言える存在の貴方が殺そうとするなんて思っても見ませんでした。」

 

ラウラ

「そ、それは!?」

 

クロエ

「最終的には貴方の機体の暴走で兄様は傷付きました。ですが、それ以前から貴方は兄様に敵意を剥き出しにしていましたよね?」

 

ラウラ

「うっ…その…通りです…」

 

 やっぱり知っていたのか…

 

クロエ

「兄様が貴方に何かしたんですか?貴方に敵意を向けられる様な事をされたんですか?」

 

ラウラ

「…それは………何も…していません…」

 

 …そうだ…アイツは私に何もしていない…

 …私が火ノ兄に敵意を持っていたのは教官が自分より火ノ兄が強いと言っていたからだ…

 …私はそれが認められずにアイツに一方的に因縁をつけていたんだ…

 

クロエ

「でしょうね。兄様は人の恨みを買う様な事もしますが意味も無く売る人ではありませんからね。…それにしても…随分迷惑な人ですね…貴方…」

 

ラウラ

「ううっ…」

 

クロエ

「まあ、貴方の行動のいくらかは千冬様が原因ですから、貴方だけを責めると言う事は私はしませんよ。」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「そう言えば…何故貴方は兄様の病室にいたんですか?寝込みを襲って仕返しをしようとしたのですか?」

 

ラウラ

「ち、違います!?」

 

クロエ

「え?違うんですか?貴方ならそのくらい平気でやると思いましたが?」

 

 …否定出来ない…

 

ラウラ

「…ただ私は…アイツに謝ろうと…」

 

クロエ

「謝る?」

 

ラウラ

「…はい…後…助けてくれたお礼も…」

 

クロエ

「お礼ですか?」

 

ラウラ

「は、はい…」

 

クロエ

「そうですか…セシリア様達は何と?」

 

ラウラ

「…火ノ兄が許すまで許さないと…火ノ兄が許せば自分達も許すと言いました…」

 

クロエ

「フフッ♪あの方達らしいですね♪…では私もそうしましょう。」

 

ラウラ

「え?」

 

クロエ

「兄様が貴方を許せば私も今回の件は許しましょう。あくまで今回の事ですが。」

 

 それはつまり…私達の関係に関しては別という事か…

 だが…それでも…

 

ラウラ

「…ありがとうございます…」

 

クロエ

「お礼を言うなら兄様に先に言ってください。もっとも私のせいで何時目を覚ますかまた分からなくなりましたが。」

 

ラウラ

「………はい…」

 

クロエ

「…まあ兄様なら貴方が反省しさえすれば笑って許すとは思いますが…(あの人は基本、超が付くほどお人好しで能天気な人ですからね)…では、兄様の事はこれでいいです。………後は…」

 

ラウラ

「………」

 

クロエ

「…私たち自身の事ですね…」

 

 いよいよか…だが…

 ………私は…この人とどうなりたいんだ?

 

 ~ラウラ Side out~

 

 

 

 ~クロエ Side~

 

 さて…どうしましょうか…

 兄様はあの時…

 

クロエ

「…犠牲になった姉妹は喜ばない…ですか…」

 

ラウラ

「…え?」

 

クロエ

「そうですね…確かに貴方を拒んだところで皆が帰って来る訳でも無いですし…ドイツの馬鹿共が捕まる訳でもありませんからね…それにあの国に対してはもうどうでもいいですし…」

 

 アレ?…そう考えるとなんだか…

 

クロエ

「………貴方を恨んでた自分が阿呆らしくなってきましたね…」

 

ラウラ

「へ?」

 

クロエ

「まさか兄様はそれに気付かせる為に?…いえ、アレはただのお説教ですね!うん!そうに違いありません!」

 

 取り合えず自己完結をする事にして…

 

ラウラ

「………」

 

 彼女との関係はどうしましょうか?

 

ラウラ

「………あ、あの…」

 

クロエ

「はい?」

 

ラウラ

「い、今仰った事は…その、本当なのですか?」

 

クロエ

「今、と言うのは?」

 

ラウラ

「だから…私を恨むのが阿呆らしいと言うのは…」

 

クロエ

「ええ、本当ですよ。何だかどうでもよくなってきました。ああでも貴方が兄様を傷付けた事に関しては許してませんよ。それとこれとは別問題ですから。」

 

ラウラ

「は、はい…」

 

クロエ

「ではどうでもよくなったので聞きますが…貴方は私をどうしたいんですか?」

 

ラウラ

「どうしたいか…」

 

クロエ

「私と家族になりたいですか?それとも自分の廃棄品を始末しますか?」

 

ラウラ

「し、始末なんて考えていません!!」

 

クロエ

「そうですか。」

 

 まあ仮にそのつもりだとしても彼女の実力では私は殺せませんけどね

 私も伊達に束様の助手と兄様の妹をやってはいません

 この1年の間に兄様に稽古をつけて貰っていますから下手な軍人には負けませんし、束様から頂いたISもあります…

 そう考えると………

 私は…家族に思われているんですね~…

 束様はISを…兄様は戦う術を…私に与えてくれた…

 私を…守る為に…

 私は…愛されているんですね~…

 

クロエ

「フフッ♪」

 

 そう思うと嬉しくなりますね♪

 

ラウラ

「?…あ、あの…」

 

クロエ

「ああすみません…思考がズレました…」

 

 さて、始末する気は無いと言いますが…

 

クロエ

「では家族になりたいんですか?」

 

ラウラ

「…それは…分かりません…ですが貴方に危害を加えるつもりはありません!それだけは断言出来ます!」

 

 フム…この眼は本気で言ってますね…

 

クロエ

「では暫くは現状維持にしましょうか?私もああは言いましたけど行き成り妹が出来たなんて言われてもすぐには受け入れられませんからね。」

 

 兄様はアッサリ受け入れてくれましたけど…

 私にはすぐには答えられませんよ…

 

クロエ

「それに私は貴方の存在自体は知っていましたが貴方がどういう人間かと言われたら…貴方は私の家族を逆恨みで傷つけた傍迷惑な人と認識してます…私達の出生は別にしてもそう簡単に受け入れられませんよ…」

 

ラウラ

「!?…そう、ですね…私は…そう思われる事をしてきたんですよね…」

 

クロエ

「はい、それに貴方は私の事を何も知らないでしょう?」

 

ラウラ

「…はい…」

 

クロエ

「ですからまずは少しずつお互いを知る事にしましょう。それに家族になるにしても兄様が貴方を許さなければそれも出来ませんからね。貴方にそのつもりがあればの話ですけど、それは別にしてもそのくらいしか今は出来ません。」

 

ラウラ

「…そうですね…」

 

クロエ

「では今日はこのくらいにしましょう。」

 

 まあこれが仲直りと言うのかは分かりませんが、蟠りが一つ消えたのは本当ですし、今はこれで良しとしましょう

 

クロエ

「それでは私はこれで失礼しますね。」

 

 …あ!そう言えば千冬様が預かって欲しい物があると言ってましたね

 帰る前に千冬様の所に行かないといけませんね

 

 ~クロエ Side out~

 

 

 

 ~ラウラ Side~

 

ラウラ

「………はぁ~…」

 

 あの人が帰って一人屋上に残った私は深い溜息を吐いた

 それがあの人との蟠りが一つ消えた事への喜びなのか…和解への先が長い事への不安から来たものなのか…私には分からなかった

 だが…

 

ラウラ

「…家族か…羨ましいな…」

 

 あの人と話しをして、そして先程の火ノ兄とあの人のやり取りを見てそう思った…

 同じ『ラウラ・ボーデヴィッヒ』として生まれながら完成品の私には家族はいない…

 だが失敗作として廃棄されたあの人には家族がいる…

 私の廃棄品として捨てられ篠ノ之の博士が拾ったのは偶然なんだろう

 でもあの人はそんな篠ノ之博士から名前を貰って育てて貰った

 そして火ノ兄と出会い兄妹になる事で家族を手に入れたんだ

 あの人は…人間だ…

 私の失敗作なんかじゃない…あの人は…人間なんだ!!

 だが…私は…違う!!

 今なら分かる…私は…ISを効率よく動かす為のパーツだったんだ!

 だから私のISに【VTシステム】が積まれていた

 私は所詮…使い捨ての部品だったんだ…

 

ラウラ

「…教官の言う通りだ…私はISに選ばれたと思って気取っていただけだ…」

 

 私はいつの間にか自己嫌悪に陥ってしまっていた

 私がそのまま悩んでいると教官に言われた事を思い出した

 

ラウラ

「…私になれ、か…もしかして教官は人間になれと言う意味も込めてああ言ってくれたんだろうか?」

 

 もしそうだとしたら…

 

ラウラ

「私も…なれるだろうか…部品ではない…ただの人間に…」

 

 私はいつの間にか教官に言われた言葉を勝手にそう解釈していた

 そしてこれからどうするか、どうなりたいかを考えた結果…

 

ラウラ

「私は…あの人の…クロエさんの妹になりたい!!」

 

 そう決めた!

 その為にもクロエさんにとっての良い妹にならねば!!

 

ラウラ

「…ん?」

 

 あ、そう言えば…

 

ラウラ

「そうだ!クロエさんの妹になるという事は火ノ兄の妹にもなる訳だ!!」

 

 そうか!私がクロエさんと姉妹になれば火ノ兄との3兄妹になるんだ!

 

ラウラ

「よし!!これからは心を入れ替えてあの2人の妹に相応しい人間になろう!!」

 

 …だがそうなると…

 

ラウラ

「あの2人を何と呼べばいいんだ?クロエさんは火ノ兄を兄様と呼んでいたが同じ呼び方は悪い気がするし…う~ん…」

 

 私は2人の呼び方を考えたがいい呼び方が思いつかなかった

 なので…

 

ラウラ

「…仕方無い…アイツに頼るか!」

 

 とりあえず部下の1人に相談する事にした

 

 ~ラウラ Side out~

 

 


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