IS世界を舞う剣刃   作:イナビカリ

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第090話:父の願い・娘の決意

 

 ~シャルル Side~

 

シャルル

「………時間だ…」

 

 僕は時計を見ながらそう呟いた…

 隣にいる一夏も頷いた

 僕はこれから父に連絡しようとしていた

 火ノ兄君から父の本心を確かめろと言われてどうすればいいか考えていたら一夏が織斑先生を経由して篠ノ之博士に父のスケジュールを調べてくれた

 そして今が父が一人でいる時間だった

 それを狙って父と話そうとしたんだ…

 でも…

 

シャルル

「………」

 

一夏

「…シャルル…」

 

 僕は中々電話を掛けられなかった

 父と話して、父も本妻と同じ考えかもしれないと思うと怖くて携帯のボタンを中々押せなかった

 

シャルル

「ううっ…」

 

 僕は震える指で番号を押していった

 そしてあと一つと言う所まで来たけど最後のボタンが押せなかった

 その時…

 

一夏

「大丈夫だ!!」

 

 一夏が僕の肩を叩いて励ましてくれた

 

一夏

「シャルル…俺は…火ノ兄の言う通り口先だけの男かもしれない…でも…今だけはお前を支える!どんな答えが来ても俺も一緒に受け止めてやる!!」

 

シャルル

「一夏…」

 

 一夏の励ましを聞いているといつの間にか体の震えが止まっていた

 

シャルル

「…ありがとう!!」

 

 そして僕は…最後のボタンを押した!

 それから少しすると…

 

 ガチャ!

 

「誰だね?」

 

 父に繋がった…

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~デュノア社長 Side~

 

デュノア社長

「………」

 

 久しぶりだな…こんなに落ち着いた時間は…

 いつもアイツか、アイツの息のかかった奴の目があったからな…

 いや、今も目はあるか…

 この社長室には無数の監視カメラと盗聴器が仕掛けられているからな…監視されている事に変わりはないか…

 だが…それでも今は周りに誰もいない…

 一人でいる事がこんなにも心の休まる瞬間とは皮肉なものだな…

 

デュノア社長

「…上手くいっているだろうか…」

 

 そして私はIS学園にスパイとして送り込んだ娘の事を考えていた

 本当はあの子にこんな事をさせたくなかったがアイツに逆らえない私にはどうしようもなかった

 だが、同時にこれはチャンスでもあった

 あの子だけでも解放させる僅かなチャンスが…しかし、その為にはシャルロット自身にも動いて貰わなければならない…

 何とかそれを伝える事が出来れば…

 クソッ!!既に下準備は出来ていると言うのに最後の一手が打てないとは…

 これほど歯がゆいとは…

 そんな事を考えていると…

 

 Prrrrr

 

デュノア社長

「ん?」

 

 突然私の携帯が鳴った

 私はどうせアイツからだろうと思い、うんざりしながら携帯の画面を見た

 

デュノア社長

「!?」

 

 だが相手はアイツじゃなかった…

 私は必死に声を抑えた

 何故なら相手は私が思い続けていた娘…シャルロットからだった

 私はすぐにでも出ようとしたがそれを抑えた

 色々と疑問が出て来たからだ…

 何故この時間にかけて来た…

 定期報告の時間では無い…

 しかもアイツがいない一人の時にかけて来た…

 まさか…狙って掛けて来たのか?

 そんな疑問が頭の中を駆け巡った

 だが、私はそんな考えをすぐに捨て去った

 何故ならこれは絶好の機会だ!!

 だが、この電話もあいつ等に盗聴されている筈…下手な事は言えない…

 ならば私に出来るのは上手くあの子をあそこに連絡するように誘導する事のみ!

 その為なら…あの子が解放される為なら…私は娘に軽蔑されても構わん!!

 意を決した私は電話に出た…

 

デュノア社長

「誰だね?」

 

 スマナイ…シャルロット…

 

 ~デュノア社長 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

デュノア社長

『誰だね?』

 

 …久しぶりに聞いた父の声はとても冷たかった…

 

シャルル

「シ、シャルロットです…」

 

デュノア社長

『ああ、『シャルル』か…』

 

 …シャルル…か…

 

デュノア社長

『こんな時間に何の用だ?定期報告の時間では無いぞ?』

 

シャルル

「お、お父さんと…少し話したくて…」

 

デュノア社長

『!?』

 

 ?…何だろ、今の反応?

 

デュノア社長

『…こちらには無い。それに私は忙しい。下らない事で連絡などしてくるな。私が聞きたいのは【白式】のデータを手に入れたと言う報告だけだ。』

 

 …やっぱり…駄目みたいだな…

 

シャルル

「…そう…ですか…失礼しました…」

 

 僕はそう言って電話を切ろうとした

 でもその時…

 

デュノア社長

『ああ少し待て。』

 

 あの人が止めた

 何だろう?もう僕には用なんか無い筈だけど…

 

デュノア社長

『私に話があると言ったな?』

 

シャルル

「え?あ、はい…」

 

 もしかして話をする気になったのかな?

 

デュノア社長

『私は今言ったように忙しい。お前の任務について何か分からない事が出来たのなら丁度そっちに私の部下がいるから彼女に聞いて貰え。連絡先は後で送る。彼女が聞いても対処出来ない様なら改めて私に連絡しろ。』

 

シャルル

「…はい…」

 

 違った…

 

デュノア社長

『…ではこの後すぐに送る。』

 

 Pi!

 

 最後にそう言って電話を切られた…

 そしてすぐにさっき言ってた連絡先のメールが送られてきた

 僕は送られてきたメールをぼんやり見ていると…

 

一夏

「シャルル…大丈夫か?」

 

シャルル

「大丈夫…とは言えないね…」

 

一夏

「…だよな…」

 

 僕がこれからどうしようか考え始めると…

 

一夏

「なぁシャルル…今送られてきた連絡先に一度連絡してみないか?」

 

シャルル

「え?」

 

 一夏があの人から言われた人に連絡しようと言い出した

 

シャルル

「何で?」

 

一夏

「ああ、俺の気のせいかもしれないけどお前の親父さん…シャルルをそこに連絡させようとした感じに聞こえたんだよ…」

 

シャルル

「え…」

 

 そう言われると…そう思えるな…

 でも何故?

 僕は改めて送られたメールを見て…

 

シャルル

「…そうだね…一度連絡してみようか?」

 

 連絡する事にした

 僕は早速そこに電話をかけてみた

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

 シャルルは俺の提案の乗って親父さんから送られた場所に電話をかけた

 そして…

 

シャルル

「もしもし…」

 

『はい…どちら様ですか?』

 

 繋がるとシャルルはスピーカーに変えて俺にも聞こえる様にしてくれた

 そして聞こえて来たのは女性の声だった

 

シャルル

「あ、あの…僕…シャ、シャルロット・デュノアと言います…」

 

女性

『デュノア様ですか!?』

 

シャルル

「は、はい…そうです…」

 

 何だ?

 シャルルが連絡した事に凄く驚いてるみたいだけど…

 

女性

『行き成りで失礼ですが何故私に連絡を?』

 

シャルル

「父から…社長から…相談があるならココに連絡しろと言われて…」

 

女性

『…社長からココに連絡される様に言われたんですね?』

 

シャルル

「は、はい!そうです…」

 

女性

『少々お待ちください。』

 

 ?…妙に社長からってところを強調してる様な…気のせいかな?

 それから暫く待っていると…

 

女性

『お待たせしました!…お待ちしておりました…『シャルロットお嬢様』!!』

 

一夏&シャルル

「…え?」

 

 シャルロット…お嬢様!?

 

 ~一夏 Side out~

 

 

 

 ~シャルル Side~

 

シャルル

「あ、あの…今なんて…」

 

女性

『はい、お嬢様と呼びました。』

 

 お嬢様!?

 何で僕をそんな風に呼ぶの?

 

シャルル

「どうして僕を…」

 

女性

『貴方は社長のたった一人のご息女…それならばお嬢様と呼ぶのは当然ではありませんか。』

 

シャルル

「で、でもあの人は僕を…僕を…娘だなんて思ってない…」

 

女性

『…やはりそう思われておられたんですね…』

 

シャルル

「え?」

 

女性

『お嬢様…社長は貴方の事を一人の娘として愛しておられます。』

 

シャルル

「………え?」

 

 僕を…愛してる?

 

シャルル

「な、何を言ってるんですか!?」

 

女性

『そう思われるのは仕方がありません…ですが社長は常に貴方の事を想っています…』

 

シャルル

「で、でも…」

 

女性

『社長の貴方への態度の事を言いたいのでしょうがアレはワザとです。』

 

シャルル

「え?」

 

女性

『落ち着いて聞いて下さい…社長は………』

 

 そして女性は話してくれた…

 あの人の…父の本心を…

 父は火ノ兄君の言う通りやはり飾り物になっていた

 常に監視され、一人でいても監視カメラや盗聴器で行動を監視されていた

 つまり僕がさっき電話をした時も本妻達の耳があったという事…

 そんな父も僕と死んだお母さんにだけは本妻達が手を出さないようにしてくれていたそうなんだけど、母が死んだことをきっかけに僕を連れて来てしまった

 父は僕と親子として接すれば本妻が僕に何をするか分からないと考え、他人の様に接する事を決めたそうだ

 そして僕がIS学園にスパイとして送り込まれる事が決まった際、父は僕だけでも解放しようと考え、それを利用して僕を日本に『亡命』させようとした

 父は…火ノ兄君と同じ事を考えていたんだ…

 この女性はそんな父の命を受け、日本に転勤と言う形でやって来て、僕の亡命の為の手続きをしてくれていた

 しかも父は秘密裏に母のお墓も日本に移していたそうだ

 

シャルル

「…お、父…さん…」

 

女性

『お嬢様…社長を父と呼んで下さり…ありがとうございます…』

 

 僕が父と呼んだことを感謝した

 そうか…さっき電話した時に僕が『お父さん』と言った時の反応はこういう事だったんだ

 

女性

『………ではお嬢様…次の休みの日にこちらにお越しください。後はお嬢様のサインを頂ければ全て終わります。』

 

シャルル

「…はい…分かりました…」

 

女性

『では、お待ちしております。』

 

 Pi!

 

 電話を切ると…

 

シャルル

「うっ…ううっ…うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

 僕は隣にいた一夏の胸に飛び込んで大声で泣いた…

 僕を…お母さんを…愛してくれていた事が嬉しくて泣いた

 泣き続ける僕を一夏は何も言わずに背中を擦ってくれた

 

 ~シャルル Side out~

 

 

 

 ~一夏 Side~

 

シャルル

「ヒック…グスンッ…」

 

一夏

「もういいのか?」

 

シャルル

「グスッ…うん…ありがとう一夏…」

 

一夏

「気にすんな。」

 

 俺に出来る事って言ったらこれくらいだからな…

 それから暫くしてシャルルが落ち着くと…

 

シャルル

「…ねえ一夏?」

 

一夏

「ん?」

 

シャルル

「今日って大浴場使えたよね?」

 

一夏

「ああ、山田先生がそう言ってたな…」

 

 いきなりそんな事を言って来た

 気分を変える為に風呂に入りたいのか?

 それなら俺に聞く必要は無い筈だが…

 

シャルル

「じゃあ入ろ♪」

 

一夏

「ああ…え?」

 

 今なんて言った?

 今の言い方だと…

 

一夏

「なあシャルル?気のせいなら謝るけど、俺の耳には『一緒に入ろう』って聞こえたんだが?」

 

シャルル

「そう言ったんだよ♪」///

 

一夏

「いやいやいやいや!同年代の女子と風呂に入れる訳無いだろ!!」

 

 いきなり何言いだすんだ!

 千冬姉からも入学初日に注意されたんだぞ!

 バレたらどうなるか…

 

シャルル

「お礼に背中を流してあげるよ♪」///

 

一夏

「人の話を聞けぇぇぇっ!!」

 

 結局俺はそのままシャルルに大浴場まで引きずられて背中を流して貰ったのだった…

 

 ~一夏 Side out~

 


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