世の中というのは人によって楽しくあるものだったりつまらなかったりするものである。何かに付けて理由を付けて楽しいとかつまらないとか……そう言うのを口にする。
本当につまらないと心の底から思っているんだったら口にする前に行動する、って言ってる人もかなり多いと思う。けど世の中には決してどうしようもないことが存在する。
「…………ただいま」
家に帰っても死んでいる訳では無いのに帰ってこない返事。そしてラップをかけてテーブルに置きっ放しになっている朝御飯だったもの。これが俺の夕食だ。
朝飯が夕食になり、夕食が朝飯になる。たまに昼飯が夕食になったりもするけど基本的にこのスパイラルで進んでいる。今日も今日とて電子レンジであっためるだけの作業を淡々とこなす。
両親は仕事で滅多に帰ってこない。最後に顔を見たのはいつだったかも覚えていない。連絡は基本メールでしている。祖父母とはあったことないけど小さい頃に母親が『私達は駆け落ち同然で逃げて来た』とか言ってた様な気がする。
携帯はいつの間にかテーブルの上に置かれてた。元から両親のメアドが入っていたがこれを使う時は無かった。いや、せいぜい『教科書代置いといてくれ』とか言えば置いててくれた。
お小遣いも月一で1万円程くれた。といっても渡す日はランダムだが。
「…………」
夢も無い、希望も無い、かと言って絶望している訳でもなければツラい現実だけを見ている訳じゃない。子が追うのは親の背中とはよく言うが追う時期に親がいないのならその子供には夢がなくなるのではないか。俺がその例だ。
親がなんの仕事をしているかさっぱりだ。だが気にもならないしそんな事を聞いても返事が返ってこないのは分かってる。必要最低限以外の連絡以外全く返事をくれなくなった。
「……このまま消えても案外気にしないでくれるのかもな」
はっきり言って存在感が薄い。学校に来ても俺の事を気に掛けてくれる奴は物好きなのが2人だけだ。その2人も最近見なくなった。死んだとかは聞いてないけどどっかに行ったらしい。どうにも家で凄い事件が起きたみたいでどこかに逃げたとかなんとか言われてるけど……俺もそうしてみようかな。特に何も起きてないけど家出をしてみよう。
誰にも愛されず、気にされず、関わる事の無い生活を続けるなら……今の俺の関係者から俺の記憶全部すっぽり抜け落ちても構わないから……
「……どこか、遠い遠い場所に━━━」
本人が強くそう望んだのなら、世界の誰からも忘れさられたのなら、幻想の様にその存在は幻想の国へと向かう事になるだろう。賢者が作った小さくも自然豊かな世界。
存在が幻想の様な者達が中心となって回っている人情豊かな世界。
「━━━あら、こんなところに人間がいるなんて…………」
「……え、え?」
気づけば彼はとある女性の目の前で尻餅をついていた。先程までいた自宅とは違い木製のフローリングなどではなく柔らかい土の上に尻餅をついており、誰もいない自宅とは違い目の前には麗しい女性が扇子を広げて口を隠し自分を物珍しそうに見ていた。
「……私は……八雲紫と言うのだけれど…………貴方、名前は?」
「…………つ、
「そう……ねぇ、私達と一緒に住まないかしら?」
「っ!?」
これは彼の物語。幻想の郷へと降り立った彼が八雲と一緒に彼自身を創る物語。可能性の限界を無くす物語。
しかし同時に、自身を改造するかのごとく書き換えられその薄い存在を喰らわれるかもしれない物語。もしくは感情を押し殺して自身の存在を殺し続けてきた彼が一つの事象により変えていく物語になるのかもしれない。
例えどのような物語になろうとも、彼は進んでいくだろう。幻想の地にて。
主人公の能力やその他諸々はもう少し後です。