東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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デジャブ

「……今日はまさか2人で買い物だとはな。他のみんなって今日はどうしてたんだっけ?」

 

「……皆何かしらの用事があって家にいなかった、もしくは出られなかったのです。

陽鬼は博麗神社が一部壊れたので資材の持ち運びに行くと言ってましたし、月魅は何故か慧音に呼ばれて剣術指南……黒音は三魔女に混じって魔法トークをしに行ったのです。」

 

「……」

 

資材くらい自分で運べばいいんじゃないか、とか……剣術指南なら妖夢もいたけど用事が入ったから急遽呼ばれたのか、とか……陽には色々言いたいことがあったが、ともかく光との買い物をさっさと終わらせて家に帰るつもりでいた。

 

「……ご主人様、暑いのです。」

 

「ん?あぁちょっと待ってろ、さっさと終わらせて家で冷たいもんでも食わせてやるからな。」

 

そう言って陽と光は日光が射し続けて、その上蝉が鳴きわめく人里を闊歩していく。

陽は何か引っかかっていた。前にもこんなことをしたことがあるような気がしていたのだ。しかし、今はそれよりも買い物を終わらせることに集中していた為に、2人は大急ぎで買い物を終わらせようとしていたのであった。

 

「……」

 

「……ご主人様、さっきから何を考えているのです?どこか心ここにあらずと言った雰囲気にも見えるのです。

何か悩み事があるのだったら私にも教えて欲しいのです。可能な限り私もお手伝いするのです。」

 

「あ、いやそうじゃないんだ……ただな、なーんかこんなことを前にもしたような気がするんだよな。

こういう暑くて蝉の鳴き喚く日に他の皆は何か用事で居なくて俺と光だけが買い物をする、って感じのことが……」

 

「恐らく、夢か何かで私との買い物を見たか……他の誰かの時のがうっすら記憶に残っていてそれが私に置き換えられているかの二択だと思うのです。しかし、あんまり気にするものでもないと思うのです。」

 

「……夢、か……」

 

陽は恐らくは光の言う通りなのだろうと思った。そして、実際にそうなのだろうと思っていた。

だが、頭で納得出来ても心のモヤモヤが解消されることになかった。

 

「……ん?」

 

「どうしたのです?何かいいものを見つけたのです?」

 

「いや、そこに何か通ったような気がして……」

 

陽は、自分の横をなにかが横切ったような気がした。しかし、それが何なのかよくわからなかったために、無性に気になってしまった。

 

「……こっちに、行ったよな?」

 

「……まさか、その何か通った気がする……ってだけで何が通ったのかもわからないのに追うつもりなのです?」

 

「……なんでか知らないけど無性に気になってしまったんだよ、悪いけど5分くらい付き合ってくれないか?」

 

「しょうがないのです…本当に五分だけなのですよ。という訳で、さっさと追いに行くのです。」

 

光は率先して目の前を通った何かを追い始める。『なんだかんだ言って気になってるんじゃないか』と思ったが、陽は口に出さずに先行した光について行くかのように探し始めるのであった。

 

「……こっちの道、だよな?」

 

「なのです……どこまで行ってしまったのでしょう……これじゃあ追うことも出来なくなってしまうのです。」

 

「……っ!今いたぞ!」

 

「私にも見えたのです!さっさと追いに行くのです!!」

 

見えたら追う、見えたら追う……そんな感じの事を何度も続けていた。見失えば普通は興味を見失い、めんどくさくなって追うのをやめるはずである。それは陽も光も理解していた。

しかし、何故か追わなければならないと思っていた。

 

「……また見失ったか。なぁ光、どう思う?」

 

「……どう思う、とは?」

 

「……俺達はさっきからあの影を見失っては見つけて追いかけて、また見失っては見つけて追いかけて……その繰り返しを何度も何度もしている。だが、ここまで何度も同じことが起こってくるとこう思えるんだ……相手は俺たちのことを誘い込んでるんじゃないか、ってな……」

 

陽がそう言って光も軽く頷く。そしてまた、謎の影が陽達の前に現れてまたどこかへ去ろうと大急ぎで走り出す。

だが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「……ふっ!」

 

光は光の矢を作り出し、弓を取り出して矢を放つ。天使の光から作られた光の矢は、普通の矢とは違い様々な効果を発揮する。例えば……影を射る事で相手の動きを完全に止める、等。

 

「っ!!」

 

矢に自身の影を射抜かれた謎の影は、身動きが取れないまま拘束される。よく見れば、影に見えていたのは黒いローブを身にまとって高速で動いていたからだと陽は気づいた。

 

「さて……その顔、とくと拝見させてもらうとするか……あんな動きをして俺たちを誘っていたんだ。何が目的か……すぐに吐かせてやる。」

 

そう言いながら陽は1歩ずつ近づいて、ローブを羽織った人物に近づく。そして、ローブに手をかけてその顔を拝見しようとした瞬間━━━

 

「……なっ……」

 

「き、消えた……?動けないはずなのに、どうやって私の矢から脱出を……!?」

 

姿は消えていた。陽に握られているのはローブだけ、その内側にはあると思われた中身が存在していなかった。

ローブ自体が動いていた、という線もありえない。そうであればこんな風に取れるわけがないからだ。

 

「……光の動きを止める矢からは逃げられないと思ってたんだけどな……何らかの方法で逃げ出せることが出来たって考えるべきか。」

 

「……動きは封じていたので、動くことなく発動させることが出来る能力……ということなのです?」

 

「あるいは、本体がなくて俺達が捉えたのはこのローブを式神のように扱っていたか、分身だったかのどちらかだ。

まぁどっちにしろ……俺たちから逃げたってことはまだバレたくないってことだな……こうなると暫く姿を現すことはないだろうな。よほど俺達をどこかに向かわせたかったみたいだが……」

 

陽は人気のない路地のさらに奥を見つめる。このまま向かうのは明らかに自殺行為、何よりあんな遠まわしな方法で誘い込もうとしていたのだ。なぜそんなことをしたのかまでは分からないが、深入りするべきではないと考えて陽は踵を返して光と共に元の道へと戻っていく。

 

「……さっきの奴か?それともまた別のやつか?」

 

「………」

 

だが、そうしようとした瞬間に目の前にまたローブを羽織った人物が現れる。

黙ったまま通せんぼをするローブの人物。陽も光も、横を通ったり上をジャンプして通ろうとしたりしようとしたが、ローブの人物は服を掴んだり抱きついたりして通せんぼをしてきていた。

 

「……何か、さっきのやつとはえらい違いだな……なぁ、俺達この先通りたいんだけど通ったらダメか?」

 

「っ!っ!!!」

 

首をブンブンと横に振って否定するローブの人物。やけに子どもっぽいようなその仕草に、陽は何かを感じ取っていた。

そして、抱きついてここから先に進ませないようにしようとしているローブの人物をそのまま担ぎ上げて外に出ようとし始める。

 

「もう正体とかどうでもいいから外に出してくれ。」

 

「っ!?」

 

「やけにオドオドしているのです……まぁでも、しょうがないのです。早く帰らなければならないのです。」

 

そのまま2人は表通りに向かって進み始める。進んでいる途中でローブから重みを感じなくなったので恐らくまた姿を消したのだろうと思った陽は気にせずにそのまま進んでいった。

 

「……また通せんぼかよ。」

 

「二度目ともなると最早ただただしつこいだけなのです。」

 

三度目のローブの人物の登場。ローブを着ているために分かりづらいが、身長は3人とも似たようなものだったので実は同一人物だったのではないかと陽は軽く疑ってしまっていた。だが、すぐにそれは勘違いだったと前言撤回することになった。

 

「っ!!」

 

「い、いきなりかよ!?」

 

突然、何かに切れたかのように弾幕を放ちながら襲いかかってくるローブの人物。

だが、弾幕が放たれてしまった時点で陽はある意味では負けてしまっていた。表通りに出ようとして通せんぼされた道、その位置から攻撃されたので当然反対側の裏路地の奥に進まないといけないはめになる。

 

「くそっ!誘導されていってるよなこれ完全に!しかも裏路地の奥の方に!!」

 

「そうなのです!しかも何故か横路に逸れようとしたらいつの間にか追いつかれていて……分身か式神か、何かを使っているのは確実なのですが、それでも追い込まれていってることは変わらないのです!!」

 

「けど戦うにしてもここは狭すぎる!戦えばどれだけ被害が出るのかわかったもんじゃねえ!!」

 

「とりあえず今は走って逃げるのです!!」

 

陽達は走って逃げていく。そうでもしないと周りの民家を確実に壊しかねないからだ。

幸い相手も民家にぶつけないようにかなり数を少なくして弾幕を放っていたので、陽達が大声を出してる以外に大きな音はなっていなかった。そのせいで目立たない為に助けを呼んでも来なさそうなのが辛いところではあるが。

 

「後ろ!まだ追ってきてるよな!!」

 

「なのです!けど、もうすぐしたら恐らくは━━━」

 

光が言い切る前に、陽は刀を作り出して目の前から飛んできた攻撃を弾く。それと同時に、後ろから来ていたローブの人物は姿を消す。

光は攻撃が止んだことに少し安堵したが、すぐに目の前から現れた人物に驚きを隠せなかった。

 

「……あんな歓迎をしておいて、なんの用だ?白土。」

 

「……話がある。外に来い。安心しろ、別に襲いかかったりはしねぇよ。それだったら始めっからお前らを殺そうとするっての。」

 

白土は真面目な顔でそう言って歩き始める。とりあえず話し合いというのを信じることにした陽と光は、白土の後ろについて行く。

その間、白土の方からも陽達の方からも会話を振ることは無く黙ったまま人里の外に出た。

 

「……それで?話ってのは?」

 

「率直に言えば……お前以上に、殺らなければならない相手がいる。だが、そいつは死なないんだよ。

お前なら殺せる……とまでは言わねぇが、杏奈を取り戻すくらいの時間を稼いでもらいたい。この間ようやく見つけたんで、俺が探しに行くことにした。」

 

「待て待て待て、話が急すぎる。

どういう事なのか最初から説明してくれよ……いきなりむちゃくちゃ言われても分かんねぇっての。」

 

「……まず、杏奈がどこにいるのかが分かった。だが、探して連れて戻るには殺らないといけない相手がいる。だが、そいつは死なないんだよ。いくら殺しても結果的に死なない様になっている。

で、だ。杏奈の場所は俺しかわかんねぇからお前がそいつの相手をしろって言ってんだ。要するに杏奈を救うために囮になれ。」

 

「……」

 

陽はこの説明でようやく理解出来た。だが、他にも必要な情報が沢山あるというのに、決めるわけにはいかなかった。

 

「……そいつは、どんな能力を持ってるのかくらい教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

「……簡単に言えば世界の改変、過去現在未来って感じに時間軸を分けるとすれば、あいつは現在を変えることが出来る能力った考えればいい。

起こったことを無かったことにしてまた別の道を歩ませる……そんな能力だ。

俺があいつを何度も何度も殺したが、結局は復活し続けるだけだった。」

 

「世界の、改変……」

 

「あいつの能力は、一応はあいつ自身が操れてはいるが、あいつが死んだ瞬間に即座に独り歩きして能力者を復活させる。そしてその方法では二度と殺す事は出来ない。

だから、時間稼ぎをしろって言ってるんだ。」

 

「……」

 

陽は考えた。白土の言うことが本当だとしたら、そんなやつは確かに倒せない。だが、今まで殺そうとしていた自分に頼っている上に大事にしている妹をさらっていった奴をみすみす逃した、というのが微妙に信じられない要因となっていた。

 

「……そんなに信じられねぇか?」

 

「少なくとも、今まで俺のことを殺そうとしてきたやつを信用しろって言うのが無理な話だ。」

 

「……なら、どうやったら俺のことを信用する?」

 

「……一回戦え、それで決める。少なくとも、お前を信用するためにはお前に対するもやもやを払拭させないといけない。

だから……決着をここでつける。それでいいか?」

 

「……別に構いやしねぇよ。お前がそう望むならな……」

 

お互いが武器を構える。光は陽から離れた位置に移動して見守り始める。

そして、お互いがお互いに向かって突き進んでいき……武器のぶつかり合いとともに、戦いが始まった。

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