東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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天満光

「……俺を襲ったのは、杏奈ちゃんを助けるため、なんだよな?」

 

「あぁ、その時はそれしか道がなかった。そしてお前に負けて俺は神狼達の力を手に入れることが出来た。その力を使いこなせるようになってから、ライガの野郎を食らった。」

 

鳴り響く金属音。お互いがぶつかり合い、言葉を交えていく。そのぶつかり合いを光は遠目から見続けていた。

そして、見ている内に気づけば隣に3人の人物が並んでいた。フェンリル、ケルベロス、そしてティンダロスである。

 

「……やはり、こうなっていたか。」

 

「しょうがないわよ、頭が冷えて協力する気になったとはいえ決着自体はついてないってごねるんだもの。けど喧嘩ふっかけたのは向こうの方みたいだけどねぇ~……な、何でそんなことをしたのか分らないですよぉ……」

 

「恐らくは……もやもやが向こうの方にもあったという事じゃな。

ま、これで協力する気になってくれるのなら安いもんじゃ。」

 

「……」

 

光は神狼達を一瞥しても話しかけることは無かった。向こうも、そうしているからそうした迄である。

お互い、必要以上の干渉はしないつもりだったのだ。

 

「……む?何やらあの二人の雰囲気がおかしくなってきているような……」

 

「え……?」

 

ティンダロスの言葉につられて光が目を凝らし、耳をすまして2人のことをよく観察し始める。

すると、ティンダロスの言う通りなにやら二人の様子がおかしなことになっていた。

 

「大体!てめぇが杏奈ちゃんをちゃんと見てたら防げた話じゃねぇのか!?大事だ大事だ言っておきながら攫われてたらどうしようもねぇだろうが!!このシスコンが!」

 

「うっせぇんだよ!!てめぇもてめぇで自分一人でなんもできねぇくせに一丁前に説教してんじゃねぇよ!周りの奴らの力借りなきゃ何も出来ねぇじゃねぇか!!このロリコンが!!」

 

「「誰がロリコン/シスコンだおらぁ!!」」

 

互いに互いを罵倒しながら武器を打ち付けていく陽と白土。彼らは互いに罵倒しながら武器を打ち付ける強さを変えていく。

 

「お前がもうちっと杏奈の方を向いていたら少なくともお前に頼ろうとしたはずだ!!お前は杏奈の心を踏みにじってんだよクソが!!

なぁにが世間にも自分にも興味が無い、だ!!バリバリ興味もってんじゃねぇか!!孤独ぶってんならぶっ潰すぞ!?このキメラ野郎が!!」

 

「お前の方こそわざわざ俺に協力を頼むくらいならもうちょっと態度ってもんを考えやがれ!!土下座すらしねぇで何を頼むって!?あぁ!?

さんざん殺しに来といて、いざ杏奈ちゃんの場所が分かったら『じゃあ協力しよう』だぁ!?お前は礼儀をもうちょっと理解しやがれ犬っころ!!」

 

「「てめぇにだけはその事を言われたくねぇわボケぇ!!」」

 

大声を出して斬り合う二人。そんな二人の様子を遠目から見ていた4人は呆れた様子で見ていた。

何とも馬鹿らしい、と言わんばかりの表情だった。

 

「……あの二人、仲がいいのか悪いのか全然わからないな。」

 

「仲の良さが変な封にこじれてしまったせいであんなふうになっておるのじゃろう。まぁつまり、仲自体はいいということじゃな。」

 

「素直じゃないってことね。全くしょうがないなぁあの二人は。あ、あれって本当にそういう類のものなんですかぁ…?」

 

光も、何かを言うことこそなかったが大体はフェンリル達と同じことを考えていた。お互いに即座に相手の事を罵倒するピンポイントな言葉を思いつくなんて早々ない。

なんだかんだ言っても2人は互いの事を理解し合っているんだな、と少しだけ笑みを浮かべながら考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……ま、まだ倒れねぇのかよ……」

 

「それはこっちのセリフだわ……しぶとすぎんだよ……」

 

そしてぶつかり始めてから数十分が経過していた。互いに息を荒らげながらフラフラの状態で未だに決着をつけようとして、戦い合おうとゆっくりと近づこうとしていた。

 

「そこまでなのじゃ、儂らが見ていなければ本当に永遠に争うつもりじゃったろお主達。」

 

「そうなのです。ご主人様もそろそろ休んでほしいのです。」

 

そう言って光とティンダロスが止めに入る。2人はそこでようやく冷静な思考を取り戻したのか、ため息をついて倒れるかのようにどかっと座る。

 

「……はっきり言わせてもらう、あいつを足止めしたいんならもっと強くなった方がいいと思うぜ。少なくとも今の俺の互角張ってるようじゃ全く無意味だ。

せめて復活した瞬間に射殺すくらいの力がねぇとな。復活即相手を殺す……そのくらいしないとな……」

 

「……なぁ、殺しても復活するんだよな……そいつの能力だと……」

 

「……ん?あぁそうなるな……てめぇ、何する気だ?」

 

「なら……作り出せばいい……そいつを倒せる力を……」

 

陽はそう言って自分の即座に考えついた計画を話し始める。白土はその計画に乗り、その計画を開始するために二人はまず休むために一夜を開けることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私の力はそんな便利屋では無いのだがな……」

 

翌日、陽は光と共に人里の寺子屋に来ていた。その理由はただ単純、慧音に会うためであった。そして、その場には同じく慧音に用事があった稗田阿求もそこに居た。

 

「しかし……何故そんな事を頼むのですか?彼女の力は歴史を作って挟み込むことだけ……事実が増える訳では無いのですよ?」

 

「いや、歴史があるだけでいい……それを俺が真実に変えるからな。」

 

「……どういう事ですか?」

 

「……慧音には『あらゆる妖怪の力を吸い取る凄い力を持った妖刀』が存在していた、という事実と『その妖刀が昔稗田家に置いてあり記述もされていた』という歴史を作って欲しいんだ。

そして稗田家に置いてあるであろう記述された書物から俺がその妖刀を作り出す……それで、大丈夫だと思う。」

 

陽の提案に悩む慧音。この案を話す前に陽は白土のことなどを話してこの案を出した。しかし、そうであっても妖怪の力を吸い取る妖刀なんてものはこの幻想郷においてのバランスブレイカーとなってしまう可能性が高かった。そんなものを作ってしまえば下手をすれば悪用される可能性が限りなく高い。

なるべく、そんなものは作りたくなかったのだ。

 

「……どうしてもダメか?」

 

「……悪用される危険性、もあるが……何よりそんな強力な妖刀を手にしてまともな理性を保っていられるとは到底思えない。

それを考えてしまうと………どうしても首を立てに降ることは出来ない。そんな強い妖刀を作り出して扱えるものがいるという確証があるのなら……もう少し考える余地はあるが……」

 

「……そう、か……」

 

陽が諦めて戻ろうとした時、光が一歩前に出る。そして、何かを決意したような顔でこう告げる。

 

「……私ならば、その妖刀を扱えるかもしれないのです。私は天使なのです。なら、邪悪な妖刀であっても私自身の光があれば……大丈夫のはずなのです。」

 

「……本当に、いいんだな?」

 

「……大丈夫なのです。構わないのです。」

 

慧音は光のその顔を見て大きくため息をついた。未だに大きく不安が残っているが、ここまで決めたことを自分は大きく否定出来ないと思って仕方なく能力を使い始める。

 

「……もういいぞ。これで稗田家にその妖刀の記述が乗った書物が残されてるようになったはずだ。

しかしどこにあるかまでは分からないから、その辺は自分たちで探してくれ。」

 

「っ!ありがとう慧音!助かったよ!!」

 

「助かったのです!!」

 

お礼だけ言って陽達は出ていく。そして、阿求もまた軽くお辞儀をして陽たちのあとを追っていく。

慧音は、もし失敗したときの責任の取り方はどうしようか……と考えながらまたため息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、それがその妖刀なのね。

で、何でわざわざここで実験しようと思ったのかしら?」

 

博麗神社で陽と光は妖刀を持ちながら霊夢の前にいた。無論、説明自体は済ませていたが、何度もこうやって聞いてくるのだ。

 

「……いや、だから霊夢なら強力な結界を張れるからこの妖刀を試すことが出来るんだよって何度も言ってるじゃないか。

もう結界張ってくれてるのは有難いけど、こう嫌味みたいに何度も言われると本気で落ち込んでくるんだから。」

 

「……まぁいいわ、ならさっさと始めてちょうだい。その子だけじゃあ足りないかもしれないからあんたもいれたんだし。」

 

「分かったのです。」

 

霊夢の言葉により、鞘に入れた妖刀を引き抜こうと柄に手をかける光。その瞬間少しだけ体に違和感が来たが、それを気にすることなく更に刀を引き抜いていく。

 

「う、ぐ……!」

 

「……光、大丈夫か?」

 

「大丈夫、なのです……!ひ、ぐぐぐぐ……!」

 

くぐもった声を上げながら引き抜いていく光。しかしその顔は苦悶の表情であり、陽はそんな表情をしている光が心配になっていた。

 

「……頑張れ、光……」

 

陽は頭を一撫でして光を安心させようとしていた。だが、光はそれが気にならないほどにゆっくり、ゆっくりと引き抜いていっていた。

だが、引き抜いていけば引き抜いていくほどに妖刀の黒いオーラが光の体を蝕んでいっていた。

 

「……陽、あんたこれ以上続けさせても意味無いってわかってるのかしら?下手したらこの子、自分が引き出して言っている闇を浄化する自分の光で消えかねないわよ?」

 

「……いいや、光は出来る、俺はそう信じている。その為なら……光を手伝うためならなんだってしてやる。主だ何だ言われているけど、親みたいなもんだしな。」

 

「……親馬鹿ねぇ……なら、ちゃんと消えないように繋いでなさい。その事貴方をね。

私は変わりにこの結界を絶対に解除したりしないんだから。」

 

「頼むよ……」

 

陽は霊夢の方を見向きもせず、返事を返す。陽は光をずっと見つめて引き抜こうとしている手の上から、自分の手を置くだけで他は何もしなかった。『自分はここにいるぞ』という事だけを教える以外にこの行為には意味がなかった。

しかし、光にはこれだけで十分だったのか、少しだけほっとしたような顔つきになり引き抜く速度もほんの少しだけ早くなっていた。

 

「……行けるか……?」

 

『絶対に引き抜ける』と思い続けて陽は光での手をぎゅっと握りしめた。瞬間、陽の体にも妖刀の黒いオーラが侵食を始める。だが、陽は苦悶の表情も苦しげな声もあげることなく光の手伝いをしていた。

 

「ちょ、ちょっと!?あんた本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

霊夢の声が響く、しかし陽達にはその声は届いておらず見向きも返事もせずにただ結界の中で引き抜いていっていた。

 

「光、俺がそばにいてやるからな……だから安心しろ。お前が負けることないって俺は信じてるからな。」

 

その言葉の後、繋いだ手から最初は鈍く小さい……しかし段々と大きく光が輝き始める。

2人はそのことを気にしていなかったが、段々と大きくなる光に霊夢はぎょっと目を開いていた。

 

「な、何かあんたら光ってない!?ほ、本当に大丈夫━━━」

 

瞬間、とんでもない発光とともに霊夢の張った結界が破壊される。しかし、そんなのを気にする余裕は霊夢にはなく、目を腕で覆い、思いっきり目を瞑り、そして陽達のいる方向とは逆の方に咄嗟に向いてもなお眩しいと感じる光を耐え続けるのに必死だったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……な、何が起こったのかしら……」

 

霊夢は恐る恐る目を開ける。そして、陽達はどうなったのかと光で未だぼやけている自分の目で辺りを見回して……そこにいた人物に度肝を抜かれた。

 

「……だ、誰?」

 

「ん?誰って……見たらわかるでしょ?()()()()()()()

 

自身を月風陽と名乗る少年。背格好は確かに陽と同じくらいだったが、髪の色は白く、背中からは天使の羽が生えており、何より自分のことを僕と言っていたその人物が同一人物だとは到底思えなかった。

 

「……まさか、光との憑依……?天使に、なるのね……やっぱり……ってあんた、妖刀持って平気なの!?光ですらあんなに苦戦してたのに!」

 

「……ほんとだ!ちゃんと持ててる!?何でかわかんないけど扱えるならいいや!助かったよ霊夢!ありがとうね!!」

 

そう言って光を憑依させた陽は空を飛んで帰っていく。それを呆然と見ていた霊夢は、これはなんなんだと思いながらため息をついて家に戻っていくのであった。

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