東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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天使と巫女

「……流石に、お互い無傷で殴り合うのも飽きてきたなぁ、ねぇそろそろ斬らせてよ?もしくは射らせて?」

 

「勝手に自分の脳内変換で都合のいいように変えんじゃないわよ。さっきからあんたは吹っ飛ばされっぱなしなの現在進行形で忘れていってるのかしら?

だとしたらあんたはいちばんアホな形態ってことになるわね。」

 

「アホじゃない、よ!!」

 

鍔迫り合いを行いつつ体術も入れながら戦っていく二人。しかし、霊夢の言う通り霊夢が時折陽を蹴り飛ばしたり殴り飛ばしていた。

しかしそのたびにすぐ起き上がって陽はそのまま切りかかってくる。まるでさっきまでの傷なんて初めからないと言わんばかりに。

 

「しつこいわねほんと……一回ぶち込んでやるわ……霊符[夢想封印]!」

 

夢想封印を使って霊夢は陽を吹き飛ばそうと画策する。しかし、陽はその瞬間に咄嗟に妖刀を投げ捨てて弓を構えてその場で回転しながら光の矢を放っていく。

 

「光天[絶対必中・シャイニングアローズ]!逆に全部撃ち落としてあげるよ!!」

 

そう言って夢想封印の弾幕一つ一つに光の矢を当てていく陽。そして、夢想封印を完全に無効化したどころか放った矢のすべてが霊夢に向かって飛んでくる。

 

「あぁもうめんどくさい……!」

 

霊夢は密度の濃い弾幕を放つ事でそれらの矢を打ち消す。夢想封印が打ち消されたばかりか、撃ち抜かれて自分が狙われるというのは霊夢を軽くイラつかせていた。

 

「おー、よく打ち消せたね。けど僕は他とは違って妖力も霊力も魔力も使わない超凄い天使様なんだよ!霊力は清らかな人間にしか使えないエネルギーみたいなものだしね!ほとんど上位互換の僕の光をどこまで耐えきれるかな〜?」

 

「……相性問題か、余計にめんどくさいわね。いつもの倍以上の量出さないと何も出来ないなんてのは、腹が立ってくる。」

 

「の割にはかなり落ち着いてるよね?ね!けどどれだけ考えても無駄だよ、僕がもっと強めに使ってしまえば何も出来ないってことになるんだからさ!!」

 

「それはどうかしらね?あんまり自分のことを過信しすぎて人間舐めてると……痛い目みるわよ。」

 

「それはどっちのセーリフかなー………でぇい!!」

 

地面に落ちていた刀を拾いつつ体を回転させて陽は霊夢にかかと落としを決める。霊夢はそれを防いで、陽の足を掴んで一気にぶん投げる。

陽は楽しそうに笑いながら刀を弓に載せてまるで矢で射るかのように構えて放つ。

 

「刀はそういう風に使うもんじゃ……無いわよ。」

 

霊夢は刀の直線的な動きを完全に見切り、最小限の動きで避ける。しかし、刀を射った瞬間に陽は既に近接戦闘をする準備が整っていたので、避けた瞬間に攻撃を当てようと動いていた。

 

「……だから舐めるなって言ってんのよ!」

 

「あぶなっ!?」

 

霊夢は避けただけでは無かった。咄嗟に妖刀を掴んで陽に峰打ちを当てるために動いていたのだ。

だが、陽はこれをギリギリで回避する。回避されたのを確認しながら霊夢は妖刀をすぐに遠くに投げ捨てる。

 

「……なるほど、あんなのを軽々と扱えるのは伊達に天使やってないわね。」

 

そう言って、軽く火傷している自分の手を見ながら霊夢は呟いた。ほんの一瞬で焼けているにも関わらず、一切火傷していない陽の手のひらを見て霊夢はため息をついていた。

 

「ふふーん、当たり前だよ。あの妖刀はまずどれだけ徳の高い人間でも扱えない、仙人ならまだチャンスはあるかな?程度。

天使でようやくその力を発揮することが出来るくらいなんだよ。妖刀の癖に普通の人間や妖怪が使ったら妖刀に飲まれてすぐに消えちゃう……意識も体も全部飲み込まれる、それだけ危険なんだよあの妖刀は。」

 

「全く……ほんとに正しいのだから腹が立つわね。後で叩き折ってやらないと。」

 

「触れた瞬間にそうなるのに、叩きおれるほど触れると思ってるの?もし本当に思ってるなら滑稽だ……ねっ!!」

 

「だからといって物理戦で私に勝てるって思わない事ね!!少なくとも、あんたじゃ私には勝てないわよ!!」

 

刀を取りに行こうとする陽を静止する霊夢。蹴り飛ばそうとすれば防がれ、反対に殴り飛ばされかけたのならそれを防いで反撃を入れる。

それの繰り返しである。一向に終わらない戦いにもなりかねない……と霊夢が思い始めたその時。

 

「およっ!?何この鎖!?」

 

「……その鎖はとんでもなく特別な鎖じゃ、作った妾も外せなくて困るくらいには頑丈で複雑なんじゃよ。」

 

突如地面から鎖が生えてきて、その鎖でがんじがらめにされる陽。そして、陽と対峙していた霊夢の後ろから声が聞こえてくる。

霊夢が後ろを見るとそこには見覚えのある三人の姿があった。

 

「黒音、陽鬼、月魅…紫にでも呼ばれたのかしら?じゃなかったらここが分かる、なんてこともなかったでしょうに。」

 

「全くもってその通りじゃ、突然紫に呼び出されたから何事かと思っとったのじゃが……妾達の知らぬ間にこんなことになっておったとはのう。」

 

「……話してるとこ悪いけどさ、僕にはこの程度の魔法じゃ……うおぉ!?」

 

「効かないのは分かっておるのじゃ。じゃが、鎖の追加もとい……魔力全開で鎖に魔力を付与させれば、チクチクとダメージくらいは与えられるじゃろうな。」

 

鎖に紫のオーラがまとわりついていく。それはがんじがらめにされている陽の体にも侵食してきていた。

 

「くっ……こんなのでぇ……!ぐっ……ま、また……ってか重い……!」

 

「ただの鎖じゃないからのう……魔力の塊も同然のそれは、絡まれば絡まるほど強度や重さ、魔力で与えられるダメージの多さが飛躍的に上がる仕組みなのじゃ……ま、その分消費量も飛躍的にで増えていくがのう。」

 

「吸血鬼如きが……!」

 

「うーむ……妾がただ日中歩けるだけのただの吸血鬼だと思われているのなら少しイラッとするのう。」

 

「……黒音、やり過ぎないでくださいよ?光もマスターにも責任はありませんから。」

 

やり過ぎないように黒音に注意を入れる月魅。黒音はちらっと月魅の方を見た後に顎に手を当てて考える素振りをしながら陽を注視しておく。

何とか抵抗して外そうとしているが、力を発揮しようとするたびに鎖をどんどん増やしていく。

 

「くっ……魔力なんかに負けるはずがないのに……」

 

「妾に対策がないとでも思うてか……いや、はじめから対策なんて必要なかったんじゃよ。

確かに霊夢……というよりは、霊力や魔力に妖力と言った力に対してお主の光の力は明確に天敵じゃ。

じゃがな……光は言わば絵の具の白の色、上から上から塗りつぶしていけば真っ白になってかき消せるじゃろうが、妖力や魔力の黒に近い色をした色を上から塗られると途端に弱くなる。

天敵でもあるが弱点でもある、お主の光はそういうものなのじゃ。」

 

「そんな、そんなことは無い!僕は、僕の光は負けるはずが……!」

 

「ちょっとばっかし熱い思いするけど……我慢してよね!」

 

陽鬼はそう叫んで篭手から炎の形を取った妖力を直接陽にぶつける。と言っても吹き飛ばす類のものではなく、妖力によって放射するかのような感じである。

 

「ぐ、がぁぁぁ!?」

 

「……紫に言われたとおりにしましたが、大丈夫でしょうか。」

 

「何よ、あんた達紫に何か秘策でも伝えられたわけ?」

 

「……うむ、魔力と妖力をぶつけて来い、とだけ言われたのじゃ。天敵じゃが弱点でもあるでな、じわじわとこれで体力を削れば主様の中にある妖力と魔力が反応して光と無理やり分離することが可能なようじゃ。」

 

霊夢は陽を見張りながら黒音と話す。霊力だけが今回本気で役に立たない力だと安易に言われて少しイラッとしたが、相性問題だけはどうしようもないのですぐに頭を切り替えることにした。

 

「無理やりって……こんな方法で分離したらあの子グレそうよね。根が純粋みたいなもんだからこんな嫌味な性格になるもか私嫌よ。

ちょっと饒舌になるくらいなら構わないけど。」

 

「へぇ、あんまり喋ったことないはずだけと霊夢って光のこと気に入ってたんだ。ちょっと意外かも。『どんなこと言っても反応が薄い』とか言って苦手な性格かと思ってたよ。」

 

「心外ね、私はむしろ静かなこの方が好きよ。いっつもうるさいヤツばっか神社に集まるんだもの。

光みたいな静かな子と一緒に縁側でお茶飲みながらまったりしたいのよ私は。魔理沙とかアリスとか紫とか……みんな騒がしいのよ。」

 

表面上は和やかに会話しているが、実際は未だ戦闘態勢を取りながら陽が光と分離するまでを待っている状況だった。

確実な方法ではない、と全員が理解していた。故に鎖を破壊されて無理やり突破される危険性が分離するまで残っている以上、続けるしかなかったのた。

 

「……ぐ、が……」

 

頭を垂れてぐったりとする陽。しばらくすると体が光り出して陽と光が反発する磁石のように吹っ飛んで気絶したまま地面を転がっていった。それを見届けて魔力を使いすぎた黒音に、同じように妖力を使い切った陽鬼が揃ってその場に倒れ込む。

 

「マスター!大丈夫ですか!?」

 

「月魅、落ち着きなさい……ただ眠ってるだけよ。二人共ね。まぁ……なんとか元に戻った……ってところね。とりあえずあの地面に差しっぱなしで放置している妖刀はどうしようかしら。」

 

「流石に……放置でいいじゃろう。もしくは今壊すか、じゃな。主様の能力ならあの刀が1回作られた時点で複製は可能なんじゃ……恐らくもと元々あの刀を作ったのも主様の能力じゃろうしな。」

 

「そうね……なら、壊しましょうか。」

 

そういった直後に霊夢は弾幕を放って妖刀を叩き折る。それを見届けた後は適当に地面に埋めてそして光達を連れていきながら博麗神社まで行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、戻ってきたか全員……おい、持ってた刀はどうしたんだ?俺が見た時はこいつはまだ持っていたはずだが。」

 

「壊したわよ。作ったのは陽の能力だから、一度ものがあれば複製できるんでしょ?なら全く問題ないじゃない。

持ち歩くのも危険なもの、複製が可能なら余計に壊さない理由はないわ。」

 

「……いや、それはそうなんだが……まぁいいか。とりあえずそいつら目覚めるまで何も出来ねぇな……で、なんで残り3人のチビ助共がいる。」

 

白土が神社に戻ってきた霊夢達を軽く見渡し、そして陽鬼達がなぜいるのかに疑問を覚えて霊夢に質問を投げかける。だが、霊夢は既に陽達を寝かせるために神社の中に入っていたため聞こえていなかった。

 

「……それはこっちのセリフだよ。どうしてここにいるの?陽を罠にはめて何がしたいの?」

 

「罠って……いや、いい。別段お前らに弁解をするほどでもねぇしな。お前らとわざわざ協力姿勢取らなくても陽とだけ協力してりゃあいいしな。」

 

「……今ここであなたを切ってもいいんですよ?この距離ならどんな防ぎ方をしようとあなたに一撃は与えられます。」

 

「別にそれでもいいがよ……今、ここで、俺と殺し合いしたいってんならやめておけ。博麗霊夢に目をつけられたくなけりゃあ、黙ってじっとしている事だな。」

 

「……」

 

白土の言葉に渋々と抜きかけていた刀を鞘に収める月魅。陽鬼も戦闘態勢を取っていたが、姿勢だけは解いて篭手はそのまま装着していた。

黒音も銃を構えていたが、構えを解いていつでも速射できるようにトリガーの内側に指を入れていた。

 

「……それで、本当に何でこんなところにいるの。陽と何かするのはなんとなく分かったけど、一体何をさせるつもりなの、陽に。」

 

「簡単だ、アイツには囮をやってもらうつもりだ。俺が妹を助けてる間にあいつは厄介なやつの足止めを頼んでいる。

戦闘能力こそないがその能力そのものが厄介なやつだからな……そうなると面倒な奴の見張りをさせてる、と言っても過言ではないな。」

 

「……まぁ、いいよ。ちゃんと協力するかどうかは陽が決めることだし。私達はそれについて行くだけだから。」

 

そう言って陽鬼は博麗神社の奥を見る。4人はしばらくお互いを睨み合いながら陽が戻るのを待つのであった。

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