東方月陽向:新規改訂   作:長之助

110 / 121
闇は終わらない

「……さて、次は貴方達の番ですよ。ツキカゼは駄目でしたからね。

貴方達はさっさと向こうに帰らせてまた経過を見るとしましょう……あぁでも、こられても迷惑ですから必要最低限の記憶だけ消すというのもありかも知れませんね。」

 

そう言いながら陽に近づいていくホライズン。陽は、何かないか何かないか……と考え続けていた。体が動かないこの状況では何も出来やしない、そう思いたくないのだ。

 

「……自分では何も手をくださないくせに一丁前に人の運命気取ってるなんて……想像を絶するアホなのですね、貴方は。」

 

「……今、なんと仰いました?」

 

ホライズンが、自分を馬鹿にした声の主に目線を向ける。いや、ホライズンだけではなく陽達も向けていた。なぜなら、喋った主は……光だったのだから。

 

「は?あなたのその腐りきった性格と腐りきった脳みそ……いや、それだと脳みそを持つ全生物に失礼なのですが……まぁとりあえずその昆虫どころか微生物に劣る頭で考えた方が良いのです。

まぁ微生物が完全上位種になってしまうくらいの下等な生物である貴方が、まともな思考を持つとは思えないのでもう1度、なるべくわかりやすく、発音と言葉を話してあげるのです。

貴方は、他人任せのくせに、自分の手柄だと、誇っている、クソみたいな、阿呆だと、言ったんですよ。」

 

「……ひか、光?どうした?」

 

ホライズンは起こることは無かった。というより、何故光がここまでの暴言を吐いているかの驚きの方が強かったからだ。

そしてそれは陽達も同じであり、陽は光に対してつい声をかけてしまっていた。光がこういう暴言を吐くのが信じられなかったからだ。

 

「どうもしてないのです。ただちょっとこの無駄に尊大な態度をしているこの男だか女だかわからない中途半端な奴が気に食わなかっただけなのです。」

 

「……主様と合体したせいか。」

 

「ど、どういうことだ黒音?俺と合体してこうなったってどういう事だ?」

 

「……光は天使じゃ、それが主様と合体することによって……しかも1度目の時はほぼ無理やり外したせいもあろうが……人間の黒い部分が移ってしまったのやもしれぬ。

正義感が殺意に変わり、悪意ある言葉が移ってしまった……という所じゃろう。人間と言ったが……正しくは、天気が持つことのない悪意、という所じゃのう……:」

 

陽は驚愕していた。憑依における陽鬼達相手に起こるデメリットというのがあるとは思っていなかったからだ。

ダメージはだいたい自分にかかり、せいぜい憑依中は自分の意思が優先されて陽が動かすことが出来る……そう思っていた。だが実際は、無理やり外されたとはいえ純粋だった光の心に清濁混ざった人間の心が移ってしまっていた、つまり憑依は自分と陽鬼達を溶けあわせてしまう危険性があるという事だ。

 

「……まぁ、少し驚きましたが……どうせ全員動けない身です。能力を使ったところで私に攻撃を当てられることは無い……貴方達が作り上げたあの妖刀もまた私の手にかかれば何も意味をなさない代物なのですから。」

 

「………だったら、試してみるか?」

 

そう言いながら陽は能力で妖刀を作り始める。しかし、手のひらから出現した瞬間に妖刀は消え去ってしまう。

しかし即座にまた作り出してはまた消し去ってしまう。

 

「……無駄だとわかりませんか?私の能力で貴方の妖刀がない事象へと書き換えているというのに。」

 

「……無駄?いやいや、お前の能力の弱点はこれでわかったよ……」

 

「私の能力の、弱点……?」

 

「お前の能力はある程度まで時間を戻し、そして本来ある歴史から別の道を歩ませる能力……けど、その能力は俺自身には通じてない……しかも、お前は一度使ったら戻した時間分の時間が経たないと能力を使うことは出来ない……」

 

「……それがどうかしましたか?能力を使えないからどうしたと言うんですか。」

 

陽はそのまま動けないながらも笑みをホライズンに向けていた。ホライズンは何か手があるのかと警戒心を強めていた。

 

「お前がもし、妖刀を作り出す前まで戻したら……どうなるんだろうな……?お前はそれがわかっているから刀を俺がここで能力で作り出したところまでしか戻さないんじゃないのか?」

 

ホライズンは答えなかった。代わりに、無言で陽達の下に扉を作った。だがその前に陽は妖刀を更に作り上げていた。

ホライズンは能力を使う、使ったために扉が閉じるところまで戻る。先程よりもほんの少し長い時間が出来たので今度は3本作り出す事が出来た。ホライズンはさらに消す。だが今度は4本作り出す。

 

「……しつこいですよ、いい加減諦めたらどうですか?動けないのに攻撃ができるわけがないじゃないですか。

まさか作り出すだけで当てられるとでも思ってるんですか?」

 

「そのまさかをさっきから消していってるお前はどうなんだ?怯えてんだろ?この妖刀が掠りでもしたらどうなるか分からないから。

作り出した瞬間反射的に消している。ツキカゼが動きを止めているのに動いてしまったからもしかして俺も動くのではないか?ってな。お前はそう思ってんだよ……俺には化け物みたいな回復力があるからな……しかもツキカゼのあの剣みたいに自分の支配下に置いてあるものがないから余計に、だ。

じゃなかったらここまで消すはずがないだろうよ。」

 

「……挑発の手には乗りませんよ。

貴方は私に能力を使わせたいのでしょう?しかもかなり前まで戻させたい……それくらいお見通しですよ。だから私はこうやってちまちまと出した妖刀を消し続けます。」

 

言い合っている間にも創造と消失の繰り返しは続いていく。しかし、ホライズンが消せば消すほど陽もまた創造に創造を重ねていく。

刀が自分の足に近寄ったら避ける。一定の距離を保ちながら妖刀に絶対当たらないように離れていく。

 

「……本当に、無駄ですよ?この空間は個人によってその広さが違う。私が極端に大きいと思えば極端に大きい空間になり、私が極端に小さいと思えば極端に小さくなるような空間になる。

つまり、私がこの空間を無限大だと思っていればいるほどその大きさは不変で変わらないものとなる。いつまで続けても無駄ですよ、当たりっこない。例え億出したとしても、私はその分の距離を離れるだけです。」

 

「億で無理なら兆、兆で無理なら京を出すまでさ。この空間だと餓死も何もすることは無いみたいだしな。

だったら心が壊れるまでやってやるさ。」

 

「……無駄だと分かっていながら、そんなことをする意味がわかりませんね。

もういいです、例え当たったとしても貴方達を落としてしまえば済むだけの話ですから。この空間に来ようとしても事象を操ってしまえば━━━」

 

そう言いながらホライズンは陽達の下に扉を作って落とそうとする。刀が当たることはなく、陽達はそのまま落下していく。

だが、見たのだ。ホライズンは、陽が笑っているのを見たのだ。

それはほんの一瞬、空間内で動けなくされていた陽達は空間外に排出される。その瞬間、体が動くことが出来るようになり……そこから一瞬だった。

 

「聖光[降臨天使]!」

 

光を纏い弓を取り出す陽。そして構えて射ろうとしていたのは妖刀妖殺であった。

そして、そのままホライズンに向かって妖刀が射られる。扉が閉じるギリギリ、何とか通り抜けた妖刀はホライズンに向かって飛んでいき……そのままホライズンの胸へと突き刺さる。

 

「ざまぁみろ……焦って俺達を落とそうとしたのは間違いだったな……」

 

その言葉だけを残して扉は閉じられる。陽はスグに憑依が解けてしまっていたが、扉が閉じられたのを確認すると、『ようやく一段落ついた』と動けるようになった陽鬼達に支えられながら地面に降りてゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……抜け、無い……!」

 

ホライズンは1人、空間内で妖刀を抜こうと必死になっていた。だが幾ら力を込めても抜けることは無かった。それどころか、力を入れれば入れるほど妖刀が力をつい吸い取っていた。

 

「こんな、こんな簡単に……まさか私が……私よりも劣る奴らに……くっ……能力も、吸い取られて……使えない……!まだ、まだだ……私はもっと、もっと生きていたい……」

 

力が抜けていくホライズン。切に願った、もっと長く生きて人を観察し続けようと。

ただ自分の下にいる者達を確認したいという欲だけがすぐに吸収されるはずだったホライズンの能力を一欠片残していた。その一欠片が……()()()

 

「……っ!?な、何故あなたがまたここに……私の、死にざまを、確認しに━━━」

 

突如現れた男は倒れているホライズンの頭を踏み潰した。そして、自分が通ってきていた黒い穴がそれで消えたのを確認していた。

 

「ふーん……なるほど、事象を操る程度の能力は、『平行世界をつなげる程度の能力』になったわけだ。これは能力の進化か、なるほどそういうことも起こりうるってわけだ。

結局……二度もこいつの最後を見ることになっちまうなんて思いもよらなかったな……ん?」

 

男はホライズンの死体を見て疑問点が浮かんできた。能力の殆どを妖刀に吸収されているにも関わらずいつの間にか肉体は再生していたのだ。だが、ただ再生しただけで生きているとは到底言えないものになっているが。

 

「……そういえば結局こいつの能力だけ吸収し忘れていたんだよな。よーし!じゃあこの妖刀叩きおって吸収してやるか!能力コレクターとしてな!

……ん?いや俺別に能力コレクターとかじゃなかったな。まぁいいや、なんかに使えそうだし奪っとくか。結局吸われた方も進化したのかどうか微妙だし……まぁいいや貰っとこ。」

 

そう言って男は妖刀を抜いてからそれでホライズンを切り裂く。残っていた最後の欠片がそれで吸収され、ホライズンの姿は完全に消えてしまう。

それを確認した後に、手から黒い液体のように蠢く何かを操り、その何かがまるで口のように裂けて開くと、妖刀を飲み込んで再び男の体に戻ってしまう。

 

「……ふむ、相手を傷つけるだけで力を奪える能力……いらねぇなこれ。食っちまったもんはしょうがねぇけど。」

 

妖刀に吸収されたホライズンの能力以外にも男は妖刀の能力を吸収していた。

だが、渋い顔をした後に微妙そうだと分かって取らなきゃよかった、と溜息を付いていた。

 

「うーん……ま、とりあえず試してみるか。折角来たんだしここの幻想郷はどれほど強いのか……俺が試してやろう。」

 

そういった男の服から先程の黒い液体のようなものがまるで滝のように排出される。

しかしそれはいくつかの塊に分裂した後に人の形を取り始める。だが、人型と言うだけであって誰かを模しているということも何も無い。ただ、のっぺりとした影だけが生み出されていた。

 

「うーん……軽く100体作ったけどとりあえずその内50体はそのままのありのままの姿でいさせてー……残った内の30体をちょっとだけ強くしてー……更に15体を━━━」

 

男は影を見ながら次々と新たな姿に変えていく。まるでそれは自分好みの軍隊を作っていくかのような、まるで積み木を得た子供が自分の想像力で自分の好きなものを作っていくかのような、そんな無邪気な表情で不気味なものを作り上げていた。

 

「……よし、残った残り一体をいちばん強くしよう。これで完璧、減ったら好きなように増やせるしいいかな。

んー、そうなると城もほしいな城も。そうするとどこに建てようかな……確か八雲邸がここでー、よし、丁度対角線上に建てよう!さしずめ、勇者八雲一向と言ったところかな?んじゃま、異変起こしてみますか!

あ、待って城の設計図組み立ててから━━━」

 

男は無邪気な顔で残酷なことを考えていく。何がいいのか悪いのか、というが前提にすらないと言っても過言ではないのだ。

 

「……よし、ならこの設計で行くか!すぐに終わるし……やるぞー!」

 

男は無邪気な声を出しながら()()()()()()。そして幻想郷に出てから影を作り出した時のように、黒い液体のようなものを使って一瞬で城を作り上げていった。

そして、作り上げたその翌日……男は幻想郷に宣戦布告をした。

 

「幻想郷を今から支配する!全ては俺の思うがまま!俺と俺の兵達に勝てるものがいればかかってこい!まず狙うのは人里だ!

俺を讃えろ人間どもよ!俺を恐れろ人外共よ!新たな幻想郷の支配者はこの俺……()()()()!」

 

その宣告の後、月風陽を名乗る男の手によって幻想郷が進軍されていくのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。