「あっはっは!潰せ潰せぇ!ステージ1は人里だ!次は紅魔館、その次は白玉楼!全部のエリアを統一してやるよ!さぁ征服しようぜ!
……ま、具体的なことは何も考えてないけどな。征服した後とかどうすりゃいいかまだ悩んでるし……あぁそうだ、せっかく平行世界繋げられる能力得たんだし……」
喜んだかと思えば無表情になり、感情が読めない男。自身を月風陽と名乗るその男の容姿は、髪が黒いこと以外は確かに陽に瓜二つであった。
そんな彼の前に2人の女性が飛んでくる。聖白蓮と豊聡耳神子一派の2人であった。
「おやおや、仲違いしてるって話聞いてたけどあれ違うかったのかいお二人さん。こういう時は手を取り合うもんなんだね……で、他のメンバーは何してるのか?」
「……人里に現れた影の退治です。それよりも、私達は貴方の正体を━━━」
「けどダメだ、駄目駄目。ちゃんと俺に挑むなら城の入口から入ってこないと。俺今屋上だよ?外から飛んでくるなんて反則、帰れ。」
「「っ!?空を飛ぶのが、維持出来なく━━━」」
今の今まで浮遊して強襲を仕掛けていた2人だったが、突如その浮遊感を失って落下し始める。城の一番上からの落下、例えそれは妖怪であっても下手をすれば落下の衝撃でバラバラに砕けてもおかしくない程である。だが……
「……何も、怪我をしていない……?聖白蓮!そちらは無事か!?」
「は、はい……しかし、私は強化の魔法を使ってはいません……なのにどうしてこんな……」
「運命を操ったのさ!『二人が落ちても怪我しない』って運命にさ。俺は運命を操ることが出来るからな!」
「……それではまるで、レミリアさんのような……」
白蓮は、この偽物である陽に底知れない恐ろしさを感じながら城へと入っていく。
その様子を見て黒い陽はニコニコとしていた。自分の遊びに付き合ってくれる子供のように。
「……真っ暗、と思いきや意外と明るいのですね。そこらかしこに松明が焚かれているお陰でしょうか?
ま、その松明も火以外は白と同じく真っ黒ですが……」
「……とりあえず、早く行きましょう。上への階段を上っていけばいずれは……」
「……それにしても、まさか一晩でこれほどの城と軍勢を生み出すとは……本当にとんでもない人物だな、あの男は。
そうは思わないか聖白蓮……」
「え、えぇそうですね……」
白蓮は感じていた、豊聡耳神子から感じられるほんの僅かな恐れを。そして自分も同じような恐れを抱いてることに。
「……私達二人で勝てると思うか?」
「……他の人達を待っていられるほど時間はあるようには思えません。水蜜達が頑張ってくれているとはいえ……100の軍勢を止められるのには流石に無理があります。」
「維持でもやるしかない、という事か……ならば、この身を削らねばなるまいな。今から行われるのは弾幕ごっこではなく……本当の殺し合いだと再認識せねばなるまい。
さ、行くぞ。」
その言葉で自身らを激励した2人は階段を上っていく。恐れはあるが、しかしそれに怯んでばかりもいられないというのもまた事実である。自分を騙してでも勝ちを取りに行かねばならないのだ。
そして、暫く歩いた先に目標である男がいた。
「よくここまで来たな二人共!さぁこの世界をかけた戦いをしようじゃないか!」
「……御託はいらない、さっさと━━━」
「でもお前らみたいな雑魚一秒も要らないんだよねほんと。」
神子が喋ってる途中に台詞を被らせる黒い陽。そして、遮った時にはもう既に
その二人の様子を見ながら黒い陽はため息をついて二人を縄で縛り、まるで見せしめのようにそれを城の入口に吊るすのであった。
「次は誰が来るかな~……人里にはまだ猛者がいるが……さてさて、あの雑魚兵共を突破できるのやら……あいつらを倒せない限り、俺との勝負はまともな戦いにはならないだろうな。」
再び屋上に登ってから、黒い陽は何かを思い出したかのように手を鳴らす。
何を思いついたのか黒い液体を体から排出した後にそれを城の屋根なり何なりに掛けていく。そんな作業をしている途中で、城に近づく影が二つあった。
「……満月は出ていないが、それでもやるべき事をするまでだ。」
「あんまり力を入れるでないぞ?どうやら……本当に一筋縄では行かない様じゃからのう……」
上白沢慧音、そして二ッ岩マミゾウの2人であった。2人は、人里の影達がある程度減った故に白蓮と神子の手助けをするためにここまで飛んできたのだった。
しかし、慧音達の目に城が見えてきたときその変化は起こった。城の屋根がところどころ開き、中から何かが出てきたのだ。慧音にはそれが何かわからなかったが、外の世界を経験してきているマミゾウならそれが何なのかすぐに理解ができた。
「っ!下に行け!撃ち落とされるぞ!!」
「えっ……」
マミゾウは注意しながらも慧音の腕を引っ張ってすぐに地面に向かって降り始める。それと同時に、城から出てきたものが慧音達を撃ち落とさんと何かを撃ってくる。
何とか一つも当たらずに降りれた2人、慧音はあれが何なのかがわからなかったが、マミゾウは何かを知っていると感じてマミゾウに向き直る。
「……今の、何なんだ?」
「……外の世界にある、いわゆる飛んでいるものを撃ち落とす兵器じゃ。対空砲火……まぁ、妖怪とはいえ人型のものに向けるものではないのう。」
「何のために、そんなものを……」
「大方、外から登ってこられないようにするためじゃろ。恐らく屋根だけでなく壁にもなにか仕掛けがしてあるとみて間違いないじゃろうな。
少し癪じゃが……言っていても始まらんし中から進んで行くとしよう。」
マミゾウがそう言って先を歩き始める。慧音はそれに付いて行く。だが、慧音は勝てるのかの不安に陥っていた。
そして、ある程度歩き始めたところで……先達を見つけた。
「……ふむ、白蓮と神子でさえもこうなる程か。余程のことがない限り二人がかりで負けることはないと思っておったが……」
「……わざわざ入口に吊るしてあるのは見せしめか……はたまた連れて帰れという事か……どちらにせよ、このままにはしておけないな……」
「とりあえず、一旦連れて帰るとするか……じゃが、この二人で勝てないとなると……幻想郷総出でないと……八雲紫は、どうしていたんじゃったか?」
「……この件には干渉しないか、はたまた別の問題が起きてしまっているか……真偽はこそ不明だが、未だ何もしないでいたはずだが……」
慧音のその言葉により少し考え込むマミゾウ。さすがに分が悪いと判断したのか、懐にしまっていた煙管を取り出してそれの煙を変化させて二人を縛っている縄を切り裂く。
「っと……とりあえず一旦戻るとするか。白蓮達から話を聞かねばならんしのう。」
慧音もマミゾウのその言葉に頷いて、二人は城に入ることなく一旦白蓮と神子を担いで人里に戻ることにした。
その行く末を、黒い陽がニコニコしながら見つめていたが、止めることがなかったというのが2人は心の片隅に引っかかっていたのであった。
「……ったく、めんどくさいわね……こいつら、残り何匹!?」
「あと5匹だぜ!けどその5匹めっちゃ強いぞ!」
「1人は剣を使う……なら、私の出番ですね。」
「ったく……次から次へと……!久々に竹林から出てきたらこれだ!!」
「例え強くても私達ならなんとかできますってほんと!!」
そして、慧音達が人里に戻っている最中では、影達は残り五体まで減らされていた。
しかし、倒していくにつれて後から出てくるもの程数が少ない代わりに強くなっていくせいで、人里にいる者達でもだんだんと歯が立たなくなっていっていた。
故に、後から来た博麗霊夢、霧雨魔理沙、魂魄妖夢、藤原妹紅、東風谷早苗の5人が相手することになったのだった。
「……私が奥の1匹を殴りに行くわほか四体は任せたわよ。」
「あ、おい霊夢!先に行っちまいやがった。
しょうがねぇし私らで対処するしかねぇか!けどさっさと倒して霊夢の相手を奪い取ってやるぜ!」
そう言って魔理沙は銃を持つ影と戦い始める。妖夢は剣を扱う影と、妹紅は小さな鎌を両手に1本ずつ持った影と、早苗は素早く動き回る影とそれぞれ対峙していた。
「……あの四体はあいつらに任せて……私はこの明らかに大物そうなこいつを相手しましょうかね。」
そして、霊夢が対峙しているのはまるで鎧を着込んだ鎧武者のような姿をした影だった。
明らかにあの四体以上の強さを持っていると把握した霊夢は、そのまま先手を打とうと攻めていく。
「片手に火縄銃、片手に刀……対処出来ないわけじゃないけど、あの火縄銃が見た目を模しているだけのもので、別段面倒臭い装填を挟まないものなのだとしたら……考えるだけで嫌になるわ。」
霊夢はチラッと後ろの方を見る。4体の影とそれぞれ戦ってる魔理沙達の姿を確認して再度鎧武者に向き直る。
鎧武者は霊夢を眺めているだけで特に自分から攻めてこようとはしてこなかった。
「……ま、弾幕ごっこの範疇超えてるみたいだし……私もそれを無視して戦えるのなら楽で助かるわ。
見た感じ……あんたらみたいな影は中に人がいるわけでもないみたいだし……殺す気でかかれるわ……!何分、相手を殺さないようにする戦いっていうのは私の信条だけれど……初めから一方的な暴力を奮っている輩に対して私はちゃんと怒れる女でも……あるのよ!」
そう言って霊夢は一瞬で間合いを詰めて鎧武者に蹴りを入れる。当たっているはずなのに、全く怯まないせいで霊夢は舌打ちをしていた。ダメージがそもそも入っていないのか、入っているがそういう仕様なのか分からないからだ。
「……ニンゲン、ホロボス……」
「あんた喋れるのね……!ふん!」
向けてきた火縄銃をとっさに蹴りこんで銃口をずらして銃弾が自分の体に当たるのを防ぐ霊夢。本気の本気を出さないと長引いて面倒臭いことになると思った彼女は夢想転生を発動させ、一気に攻めていくことにしたのであった。
「……陽、あの城を作った自分の事をあなただと言い張っているものに心当たりはないの?」
「あったらこんなに悩んでいない……いや、きっかけらしいのは思い当たる事があるけど……それが直接な関係があるとは思えない。」
「……マター・オブ・ホライズン……その人物を、貴方の妖刀で切った後に彼が出てきた。確かに、こう言えば直接的な関係があるようにも聞こえるけど……けど、ならなぜ出てきたのかが分からなくなるわよ?その人物の能力は事象を操る事だけ……特定の人物を増やす能力では無いはずだもの。」
八雲邸に戻ってきていた陽達。紫と共に話し合いをしていたものの、もう一人の陽がどこから来た誰かなのか全くわからないでいた。
だが、少なくとも幻想郷に仇なす存在である以上は戦える人物は総出で戦わないといけない、という状況になりつつあるのをこの場にいる全員がうっすらと感じ取っていた。
「……とりあえず人里に向かった方が良さそうね。今あそこが狙われているって話だもの。
陽はここに残ってなさい……私が言った方が手っ取り早いわ。」
「お、俺も行くぞ!?そもそもあの俺は……もしかしたら俺が原因で出てきたのかもしれないじゃないか!」
「だからこそよ。もし貴方ともう一人の貴方を合わせてしまったら、何が起こるかわかったもんじゃないのよ。
だからこそ様子を見るために私が行くのよ……大丈夫よ、藍と橙の2人も連れて行くから何の問題もないわ。」
そう言って紫はスキマを広げて中に入っていく。それに続いて藍も入り、スキマは即座に閉じられる。
陽は自分も行きたかったが、紫の言うことも最もだと感じてしまったので体を動かす気になれなかった。
「……ならせめて……今休める間に体を休めないと……」
そう言って陽は体を寝転がらせる。未だホライズンとツキカゼと戦った疲労が抜け切ってないのだ。
そして、寝転びながら陽は考える。『白土は無事にやれることをやり終えたのだろうか』と。