東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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前世と平行世界

「えっとまず……どこから話したものかな……まず、元々あの本に書かれていた『創造主が作り出した創造主の天敵』というのは僕一人のことを指していたわけじゃない。

僕の他にも4人居たんだ。ちょうど僕を入れて5人。」

 

「……それで?その残りの4人はどこに行ったんだ?」

 

夢の中での話し合い。創造主を倒したとされる創造主の天敵、彼との会話を陽は行っていた。

 

「僕の中さ……まぁ何でそうなったかは、今から話すことに自然と入ってくるから……聞いてくれると助かる。」

 

陽はそう言われたのでじっと黙って彼の話を聞き始めた。その姿勢を軽く見て話してもいい、と思ったのか彼はウンウンと頷いてゆっくりと語るように話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━まず、僕らは5人組だった。創造主が作り上げたのが5人だったけど、それぞれ創造主が『これなら自分を倒せるかもしれない』と踏んだ五人の創造だった。

一人目が剛腕の怪力を持ち、荒ぶる炎で全ての敵を薙ぎ払わんとする鬼の男だった。口調が荒かったが仲間思いで情熱に溢れている男だった。しかし彼の猪突猛進さが仇となり、創造主には流れるようにぼこぼこにされていった。

敗れた後彼は何度も挑戦しようとしたが、守りたいもの……まぁ要するに女なんだけど、家族が出来ちゃったから戦いを止めた。

創造主は戦う気のなくなった鬼の男には興味を失くしたから新たな天敵を作り出した。今度は頭を使う刀使いの男、鬼の男はお世辞にも頭がいいとは言えなかったからね。ちゃんと作戦を立てる男を用意した。勿論、人外にしたよ?種族は精霊……自然の力を扱う種族そのものに武器を持たせた訳だ。

当然その男は限りなく強かった。創造主を例外として考えれば彼に勝てるのは地球上で鬼の男くらいだっただろう。

ただまぁ……精霊は本来目に見えないもの。幾ら目に見える精霊を作ったからってそんな矛盾がいつまでもまかり通るはずがない、世界のルールに縛られたせいで精霊の男は消えていった……いや、見えも触れも出来なくなった、と言うべきか。」

 

「待て待て待て、精霊って目に見えないのか?」

 

「へ?そうだけど?むしろ見えも触れも出来る存在なら精霊は妖怪、ましてや人間じゃ歯が立たないくらいに強いと思うよ、自分の相性のいい自然のものを司るのが精霊なんだから。世界はそういうのを許さなかった、だから精霊は見えも触れも出来ない存在なんだ。」

 

まるで当然のことのように喋る天敵、陽は『なら月魅はどういう存在なんだ?』と内心首をかしげていたが、それをなんとなく察した天敵は訂正し始める。

 

「君のお付きの一人にそう言えば精霊の子がいたね。確かにあの子は純正の精霊だ。けどね?不定形なものにしか宿らないはずの精霊が月という唯一無二の存在に宿るわけがないんだ。つまり、あの子は色々とエラーが起きている子なんだよ……まぁ、別に唐突に消えることはないだろうから安心するといいよ。

えーっとどこまで話したかな……そうそう、精霊の男がきえたという話だったね。

その後にまた創造主は存在を作った。死以外で消えることなく、なおかつ頭の周りも力もある存在……今度作ったのは吸血鬼さ、昼でも動けるね。こいつは欠点はなかった。創造主は胸が踊っていただろうね、だって知力も攻撃力も種族性も、今までで一番噛み合っていたのだから。そしてなんと言っても新たな魔法の図式を生み出せる……最早君達で言う『程度の能力』と言っても過言ではないそれを身につけていたんだ。

だからこそ見落としていたんだ、『性格』という要素を。彼は頭が良すぎるが故に諦めも早かった。創造主が一番強いと判断したからこそ戦うことを止め、降伏した。その後彼は創造主の興味から削がれたけど……まぁどこかの吸血鬼の屋敷に嫁いでそこの没落貴族を立て直すどころか完全に別の銘家として生まれ変わらせたくらいなんだけどね。」

 

「……実際、その吸血鬼は強かったのか?」

 

陽が長い話に辟易しながらも、彼に質問を向ける。天敵は変わらずマイペースに会話をしようとするが、彼の質問に対しては真面目に答えていた。

 

「強かったみたいだよ?まぁ実を言うとさっきの鬼の男と今の吸血鬼の話題は君の周りのお付きの先祖だったりするんだけどね。

だからこそ、彼女達の一族が滅びてしまったことは少し寂しかったね。あくまで……君が彼女達の夢を見ているその間だけ見させてもらっていたんだ。

そして最後……いや、創造主は4番目に天使を作り出した。全てを浄化する…そう、言えば闇すらも光に変えるくらいの天使を作り出した。だが残念な事に創造主は浄化できなかった。ただの純粋な戦闘欲……創造主はその殆どが無邪気だったから。

彼の弓矢の腕前は創造主を確実に何度も射抜いたのにも関わらず……だね。どんな闇も光に変える能力……弱点としては、悪意や殺意のないそれを白にすることは出来なかったということだ。その天使も創造主に見限られて天使のいる世界に送られたんだけどね。」

 

「……そして最後にあんたが作られた、と。あんたの能力は……あらゆるものを消す能力、矛盾と断定して対象のものを消す能力だったな?」

 

「あぁ、そうだよ。

けど惜しいね、僕がその能力を身につけたのはさっき説明した4人の力を吸収して生まれた力さ。僕自身の能力は創造主と同じ『ありとあらゆるものを創造する』力って奴さ。」

 

「……吸収して生まれた力?どういう事だよ。」

 

天敵がさらっと言い放った言葉が陽は頭に引っかかった。天敵の方も説明をし忘れていた……と言いたいのか、頭に手を置いて数秒悩んでから再び解説を始める。

 

「えーっとね……創造主は別に戦えないとわかったらすぐさま作ってたわけじゃないんだ。

大体数百年くらいかな?戦ってない時はどうやって新しいのを生み出すかを必死に考えていた。

で、僕が作られて時には最初の鬼も、吸血鬼も天使も既にかなり歳をとっていた。そして、『創造主に勝つためには自分たちの力も使え』と言われて僕はその力を受け継いだ。精霊の男の力は、吸血鬼にちょっと手助けしてもらって僕の体そのものに宿らせた……『吸収した』って言うのは、つまりそういう事さ。」

 

「……なるほど、よく分かったよ。

で、あんたはその4人の力を吸収して例の能力を使えるようになって……創造主を消した。だがあんた自身は結局どうなったんだ?自分の力で自分を消したのか?」

 

「うん、僕みたいなのが生き残ってしまっても世界に迷惑をかけると思ってたからね。

ただまぁ……存在そのものを消しても魂は消えなかったみたいでね……こうやって僕の魂が君の体にある以上、創造主の魂もまた転生してどこかの誰かに宿っている……という訳さ。

まぁ、その誰か……って言うのは君の事なんだけどね……陽。」

 

「……だったら、あのもう一人の俺にもあんたと創造主がいる……って事なのか?」

 

陽は素朴な疑問を天敵に問う。しかしその質問には答えづらいのか、目を逸らして頭をポリポリと掻くだけだった。

陽は答えるまでじっと天敵を見続けた。それに観念したのか、天敵も溜息をつきながら答えていくのだった。

 

「確かにいるよ……けど、君は今まで僕の姿を見ずに創造主の方だけを見ていた。じゃあなんで今は僕の方が出てきているか……その理由は分かるかい?」

 

「……いや、そんな質問を振られても……魂云々の話は俺にはさっぱりだ。答えようがない。」

 

「まぁそうだろうね……実際、僕も予想しか出来ていない。そもそも平行世界の同一人物が並び立つこと自体がないんだから当たり前だけどね。」

 

「その予想ってのはなんなんだよ。」

 

「……平行世界の君は、恐らく君の中にある創造主の魂を吸収したんだと思われる。触れてもいない、けれど平行世界の同一人物がいる時点で何が起こるかわかったもんじゃない。いるだけで創造主の魂を引き取っていったのかもしれない。

そして、君の方に僕が姿を現すことができるようになったのはその理屈の逆……つまり、平行世界の君から僕の魂が抜き出されて君の体に吸収された……ということだと思う。」

 

天敵の言った言葉に疑問を感じながらも、陽は納得はしていた。しかし、やはり疑問はある。『何故そういう風になってしまっているのか』ということである。

 

「……君の感じてる疑問、それを解決させるかどうかはわからない。

けど僕はこうも思っている。平行世界の君は戦闘を好むほどまで歪んでしまった。だから創造主の魂が向こうに行った。

こっちの君は平行世界の君ほど戦闘を好んでるわけじゃないから僕がこっちに来た……ということだと思うよ。」

 

「……つまり俺の中にはもう創造主の魂が無いのか?」

 

「恐らくはないだろう……だからこそ、君は強くなれなくなった。」

 

「……どう言う意味だよ。」

 

「君の中にあった創造主の魂……これが君が今まで使っていた憑依スペルを作るために必要だったんだ。

なにせ万物創造が可能な者の魂だ、自身に何らかの影響を及ぼすかもしれない。それが君が今まで憑依スペルを作れていた理由であり原因さ。まぁ、いなくなった事でほんの稀に起こっていた暴走の可能性も憑依スペルの後の不調も無くなったけどね。」

 

「……あれって、創造主の魂とやらが原因だったのか?」

 

「そうさ、戦闘狂……戦いだけを渇望している彼の魂は感情が昂り続けている陽化のスペルだと暴走しやすかったみたいだね。

ま、一長一短だと思っていた方がいいよ。悪いことといいことの両方が起こっているんだから。」

 

陽は天敵の言葉に妙な納得があった。太陽と月、昼と夜が混じりあったあの空間……あれは創造主が俺に見せていたある意味での幻覚だったのか、と。

 

「……ただ、僕なら1度だけ君の手助けをしてやることが出来る。」

 

「手助け?」

 

「言っただろう?僕の元々持っていた能力は創造主と同じものだ。それを使えれば……1枚だけ、君の力になるスペルカードを作り上げることが出来る。

太陽と月、闇と光……四つの要素を組み合わせた最強の四重憑依と言うべきか……僕ならそれを作り上げることが可能かもしれない。」

 

「……えらく曖昧だな?」

 

陽のその言葉に天敵は目を逸らして頭を掻く。苦笑いを浮かべながら言葉を濁し始めたので、陽は無性に不安になっていた。

 

「……その、ね?創造の能力がどこまで発揮できるかわからないんだよ。何せ使うのなんてとんでもなく前の話だったしさ。

まぁでも安心してよ、君が望めば……僕だって全力を尽くす。いや、絶対に創り上げてあげるよ。」

 

「……あんたがそういうのなら、俺は信じるけどさ……なぁ、あんた吸収して能力が変化した、って言ったな?それはもう一人の俺にも通じる話なんじゃないのか?」

 

「……そうだね、彼は短い間に大量の人間や妖怪を食らってそのすべてを吸収していってる。

僕がさっき説明した4人の力を吸収して新しい力を発現させたように、恐らく彼も……もう一人の君もまたその全ての能力がいずれくっついて新しい能力になる可能性だってある。

そして……恐らくその能力って言うのが……」

 

「━━━創造主と同じ能力だって、言いたいのか?」

 

陽の言葉に天敵は無言で頷く。思いつこうと思えば思いつけることではある。しかし、そうなれば完全な不死でありながら全てのありとあらゆるものを創造できる存在というのはなかなか厄介だと陽は思っていた。

 

「……恐らく、僕の矛盾の能力だって効かない可能性だってある。なにせ、一度した失敗を二度と犯さなかったのがあの人だ。都合よく、丁度いい道具や能力を作り出すことだってあるだろう。」

 

「……けど、もう一人の俺と同じように俺も……」

 

「……あぁ、僕の能力を君も使わないといけない。『矛盾を操る程度の能力』を。

だから……時間が来たら君の元に新しいスペルカードを届ける。矛盾を抱擁した矛盾を操る能力を持った姿を……」

 

そう言って視界は暗転した。陽は薄れゆく意識の中、せめて今の間だけでも勝てる可能性を模索しようと色々と考え始めるのであった。

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