「月炎[
「創造[全消しの
ぶつかり合う陽と黒い陽。陽は陽月の二重憑依を使い、青い炎をまとった刀を振り下ろそうとしたが、黒い陽の作り出した鉄扇により刀ごと炎を消されてしまった。
しかし、陽はふと思った。考えていた説が確信になったと感じ取っていた。
「今の攻撃……わざわざ封じる必要がなかったんじゃないのか!?お前は霊夢の能力のおかげで攻撃が当たらないと思っていたんだが!?」
「……分かって言ってるだろ?まぁいい、もっと能力が完全になったら能力すらも生み出せるこの能力……使いこなして見せてあげるからな。それまで震えて待ってやがれ。」
「震える前に……お前を倒す!!
「陽!そいつが今他の能力を使えないなら私も……!」
霊夢が『自分も戦う』と伝えようとしたが、その言葉は前に出てきた黒音と光によって遮られていた。
「……無駄じゃ、そもそもお主は霊力を消費しすぎている。そんなのでどうやって戦う気なのじゃ?
戦うにしても、一方的に攻撃を当てられるような状況を作られるというのに。息も上がって……しばらく休んでいた方が身のためじゃ。」
「けど……私は幻想郷の巫女なのよ。それに、あいつはお世辞にも強いとは言えない……まさか、短時間で強くなった……とか、戦っていけば戦うほど強くなるとか言わないでしょうね。
悪いけど、そういう非現実的なことは私あんまり好きじゃないのよ。」
「現実的なことが皆無であろう幻想郷で非現実的な事が嫌いとはよくわからんの……いいから、休んでおくのじゃ。
主様が押さえつけられているとはいえ向こうの……主様も妾達をいつ殺そうかと狙い続けておるのじゃからな。」
「……それだけじゃないでしょ?あんた達がここにいる理由は。」
黒音はチラッとだけ光に視線を向ける。光は言葉もなくただ頷き、黒音はため息をついて話し始める。
「……妾達では、もしかしたら足を引っ張るかもしれないと思ったのじゃ。無論、杞憂に終わったようにも思えるが……まだ分からんからの。妾が『闇』側のものである以上狂闇や光闇は使えないと判断したのじゃ。向こうが闇を操る可能性もあったしの。」
「……闇を扱う憑依は使えない、けどそうだとしても単体での憑依では火力が足りない。
陽月しか使える手はなかったってことなのね。」
「そういう事じゃの。そして妾達には━━━」
銃を即座に構えて魔力弾を放つ黒音、速射で矢を射る光。飛んできた衝撃波を打ち消し警戒をそのままに構えを解く。
「……こうやって飛んできた流れ弾を打ち消す事くらいじゃ。」
そう言って4人は陽を見る。
その中で、紫は陽に何かを言おうと思っていたが、何を言えばいいのか分からなくなりそのまま傍観するかなかった。
「……なぁ、お前はどこまで知った?知らないことなら教えてやれないわけでもないぞ?」
「何だ?同情されるのが嫌だったんじゃなかったのか?それとも……ただ不幸自慢をしたいだけか?」
「どうせなんで俺が現実世界に帰ったのか……そこら辺はわかってないだろ?細かいことは見てないだろうと予測したわけでな俺は。
いや、同情したら殺すことは変わりないがな。そうなると本当にただ不幸自慢がしたいんだろうな俺は。」
お互いに攻撃し、それを避けながら二人は会話していく。陽は、この勝負で黒い陽が殺せるとは思っていないし、実際問題殺す気でいっても殺せないだろう。
だからこその時間稼ぎ、死ぬ気で黒い陽を殺す気で攻撃していき、そして時間を稼ぐ。自分の中にいる創造主の天敵が作っているという力が出来上がるまでは時間を稼がねはならない。
「だったら聞く気は毛頭ない。わざわざ人の不幸自慢を聞かされた挙句同情したら殺すと来たもんだ。そんな理不尽な要求を飲むなっていう方が無理な話なんだよ。」
「なるほど、言いたいことは理解できるし納得もできる。けど俺は話す。お前に聞かせてその上で殺す。その後に陽鬼達を殺して霊夢を殺す。最終的には俺が負けるまで俺を殺そうとしてくる奴らは全員殺す。それが俺のやりたい事だ。」
「……ほんと、今さっき言ったこととすぐに違うこと言うのなお前は。やりたいことなんてないって言ってたばかりだろうに。」
「人間ってのは言うことが逐一変わる生き物だ。だからやりたいことなんてないって言っていても内心あるかもしれないし本当にないかも知らない。またはその逆もありえるべきだ。」
内心、陽は『そこまで考えることを放棄するほど心が壊れているのか』と思ったのだが、そこを口に出すと見えない琴線に振れてしまって余計な事をしている状態になるかもと思い黙っていた。
ただでさえ先程から流れ弾が……もしくは狙って放っているのかわからないが、黒い陽の攻撃は黒音達のところに向かっているため、これ以上逆上させたくなかったのだ。
「……さぁて、じゃあもうちょっと複雑な攻撃に移ってみようか。お前はこれを受けて生きていられるかな?」
そう言った黒い陽の姿が一瞬で目の前から消えて、少し離れた場所に姿を現していた。
咲夜の時間移動、もしくは輝夜の能力で移動する時間を一瞬にしたのかと予想する。そして、もしその二つの内どちらかが当たっているとなると━━━
「……能力を作り始めたか。」
「正解も正解大正解!時間を止めてしまうと能力の作成も何故か止まってしまうからあんまり多様はできないし作るのにも少し時間がいるけど……問題ないな。
さて、俺はこれから好きな能力を好きなだけ作ってく訳だが……いやはや、一体俺が能力を作ってる間にお前が俺を殺せるのか?二重憑依程度でてると思ってるならお笑い草だぜ。」
「時間がかかるって言うならスグに倒してやらァ!!」
そう言って陽は弾幕を飛ばす。時を止めれる能力を得た黒い陽は、そのまま簡単に時を止めてゆっくりと、弾幕を回避していきながら近寄っていく。触れている間は触れているものも動いてしまうのがこの能力のネックなため、どうしようかと悩んだ結果、黒い陽は黙ったまま1本の槍を作り出してそれを陽目掛けて投げる。『絶対に相手の頭を貫く』という性質を持った槍。当たれば確実に死ぬ。そしてほぼゼロ距離に等しい所から投げているので避けることも不可能に近い。
そのまま黒い陽は離れていって時止めを解除する。
「━━━!」
陽の頭は潰れる。それを黒い陽は確認した……が、潰した陽は炎となって霧散した。
一瞬だけ今攻撃したのが分身で、本体は上にいるということに気が付かず、黒い陽は陽の上からの一撃に遅れて反応してしまったのだった。
「ぐっ……!?」
「とりあえず……一撃は入った!!」
追撃、追撃、追撃の雨あられ。炎で象られた腕と青い光で象られた腕が新たに陽に生成され、その腕自体にまるで意思があるかのように黒い陽を殴っていく。
「ふん……ドラァ!!」
吹っ飛ぶ前に胸ぐらを掴んでそのまま弧を描いて足場の屋根に叩きつける。少し大人しくなったのを見計らって、陽は炎の腕と光の腕の2本で黒い陽の体を押さえつけながら見下ろす。
「……何でここに来た?わざわざ平行世界を潰す理由も何も無いだろう?」
「……呼ばれたからだ。荒廃した世界、幻想郷を潰して……幻想郷の外の世界もほとんど壊滅させた。ビルを壊し、町を隆起させ、津波も起こした。
だがそこまでして潰しても俺の鬱憤は晴れなかった。
そんな時だ……空間に穴が空いたのは。何事かと気になって入ってみたら…いたんだよ、刀に貫かれ苦しんでいるマター・オブ・ホライズンがな。」
「……まさか……」
「お察しの通り……まぁ何があったのかのおおよそはわかった。食らった時に記憶も引き継いだからな。そこの記憶から教えてやるよ。
マター・オブ・ホライズンはお前に指し貫かれた後にその愚直なまでの感情で能力を進化させた。吸い取られていた能力が変貌した。
平行世界に穴を開ける……それが進化したアイツの能力だった。まぁその後俺が食ったから平行世界自体は俺も好き勝手に行けるようになったんだが……まぁ、俺が現れたのはお前に貫かれたマター・オブ・ホライズンが能力を進化させた後だ。
本来の俺はその後で帰っている……何せ平行世界からの俺なんて俺は知らないからな。だから……俺が来たことでお前は俺にならなくて済んでるってわけだ。感謝しろよ?」
「……物は言いようだな。お前がなんで帰ろうとしたのかはどうでもいいが、勝手にこっちを巻き込まない欲しいもんだ。」
押さえつけられながらじっとし続ける黒い陽。いつでも怪しい動きをすれば殺すと言わんばかりに陽は黒い陽の喉元に刃を向けていた。
しかし、これでも恐らくは足りないと陽は思っていた。
「巻き込んだ?いやいや、俺はただ空間に開かれた穴に入っただけだぞ?それの何が悪いんだ?ここに来たのは結果論だ。けど目の前に幸せがあると考えたらどうしても潰したくなった……それだけの事だ。」
「まるで破壊神だな。そんないきあたりばったりにあちらこちらを破壊し尽くしても何も無いだろう。
お前はいったい何がしたい?」
「何度も言ってるだろう。そしてお前も気づいてるだろう。思想すら気まぐれ、気まぐれを起こすことすらも気まぐれ。
相手が理不尽だと思おうが運命だと思おうが関係ない、好意を向けてようが嫌悪を向けてようが関係ない、目に付いたものの対処を気まぐれで決める。殺そうが生かそうが無視しようがそれら全てが俺の気まぐれで出来てるんだよ。俺は気まぐれと理不尽の塊で出来てる男だ。避難したいならすればいい、だからといって理不尽を止めるかどうかは気まぐれだし例え止めたとしても気まぐれで理不尽になる。
悪だ正義だとそんな下らないものに縛られないのが俺だ。何がしたい?と聞いたな?『何もしたくない』と『何かをしたい』が同居しているんだよ俺は。
敢えていうなら俺は混沌だ。存在も、行う行動も。無限も零もない、ただ先の見えないという状況を表したい。それだけだ。まぁこれも気まぐれで言ったことだけどな!!アッハッハ!!」
黒い陽は楽しそうに笑いながら自分を話す。いや、それでも陽には平行世界の自分が理解出来ていなかった。ここまで混沌、何も考えていないようで考えている……しかしそれも気まぐれだと話す。
単純明快な明るさと一寸先の闇を内包している矛盾さ。平行世界という隔たりだけでここまで自分がわからなくなるものなのか、と陽は困惑していた。
「……お前は、やっぱり……!」
「ここで殺すか!?はははっ!言っただろ俺を殺すことは不可能だって!お前が調子に乗ってる間にどんどん俺の望む力が増えていくぞー!!」
「っ!!霊夢!!こいつさっさと封印するぞ!!霊力余ってるか!?」
「少しは回復したわよ!!やってみるけれど……できるか分からないわよ!!」
そして霊夢は陽の側により黒い陽に札を貼り付けていく。闇雲にではなく、ちゃんと陣を描きながら確実に封印するための。
だが、それでもまだ足りない。後ろで待機していた紫はそれを察して黒い陽の周りの空間の境界を歪めていく。歪めた空間ごと封印することで永遠に結界の淵に辿り着かせないためである。
「………」
必死に念じていく霊夢。そして未だに拘束を続けている陽。あともう少しで封印が完成する……そんな時だった。
「やばいやばい!このままだと完全に封印される!!
………なんてさ、はじめから言うわけがないんだよ。だって別に困ってたわけじゃないし……さっ!!」
一気に拘束を外し、歪みを戻し、封印を破壊する黒い陽。先程まで付いていた傷は既に完治しているどころか、あからさまに黒い陽は強化されていた。
「さぁて、気まぐれでやられて上げたけどさぁどうしてやろうかな!!怒るも怒らないも俺次第!さぁ自分の幸運に祈れ!!『死にたくない』『まだ生きていたい』ってな!!運が良ければ助かるかもしれないからな!!」
楽しそうに黒い陽は、品定めをしながら殺す標的を決めていく。
陽達は、それでもまだ諦めないという意思を持ち続けるのであった。