「……ぐ……はっ……!」
「そろそろお前らの力も尽きてきたんじゃないか?何せ、無尽蔵……とまでは言わないが、エネルギーが尽きそうになるたびに即座に補充されていく敵との戦いだもんな?」
「陽、紫…あんたら何か策はないの……?少なくとも、私にはないわよ……残念なことにね……」
翻弄される紫、霊夢、陽の3人。黒音も加わろうとしていたが、陽に止められて光だけが参戦していた。
しかし、光の矢も黒い陽には通じることなくやはり翻弄されることとなってしまった。
「……スキマが潰される以上、私も無いわ。ただ弾幕を撃つことだけしかできない。」
「無いわけじゃない………けど、それが行えるまでいつまで時間がかかるかわかったもんじゃない。」
「ならしばらくは……陽のためにせいぜい時間稼ぎをしなければならないみたいね。まぁ、それもいつまで保てるか心配なのだけれど。
お説教で時間を稼げたらどれだけいい事やら…」
苦笑しながら4人は上に浮いている黒い陽を見上げる。その黒い陽は三人をじっと見下ろしていたが、突然その体に鎧が組み立てられ始める。
黒いオーラを纏った全身を覆うように出来ていく鎧。
「……ふむ、案外鎧も悪くない。こうやって体や頭をすっぽり覆ってしまえば動きもぎこちなくなくなるもんなんだな。
……さて、じゃあ第2ラウンドいってみるか?」
そう言って鎧を纏った黒い陽は四人に向かって落ちてくると言わんばかりの速度で突っ込んでくる。
陽は落ち着いて小さくジャンプして、突っ込んで来た黒い陽の肩をがっしりと掴む。
「捉え、たァ!!」
『殺す気で挑んでようやく時間稼ぎ』と思うくらいに強い黒い陽。しかし、鎧を纏ったゆえにある弱点というのを陽は突くつもりだった。
それは、鎧と鎧との繋ぎ……要するに、兜と鎧の間にある隙間目掛けて刀を刺すつもりだったのだ。
鎧を着込んで油断しているからこそできる作戦、しかしその策はそもそも黒い陽の油断云々よりも以前の問題によって防がれることになる。
「このまま、首を……っ!?」
「ざぁんねん……俺のこの鎧は闇製なもんでね、一度着込んだら隙間を全部埋めるように闇が繋げちゃうもんでね?隙間が一切無くなるんだよ。あ、目のところ狙っても無駄だからな?そこも防がれてしまってるんだよ。まぁ鎧自体が俺の目みたいになってるから見る分には何も問題は無いんだけれどな。」
「ちっ……!ならもっと力強く……!」
「無駄無駄ァ!どんだけやっても貫けねぇよ!!例え山を吹き飛ばせるくらいの力があってもこの鎧は崩す事は絶対に不可能!!」
「ぐがっ!!」
大きく陽を蹴っ飛ばして、突っ込んできた勢いで地面まで落ちていく黒い陽。しかし、すぐに元の場所に戻ってきて陽達はこいつをどうやったら倒せるかというのを悩み始めていた。
「ジリ貧に持ち込むつもりは無いんだけどねぇ。案外君らが頑張るおかけでジリ貧にさせちゃったみたいでごめんね?」
「そうやって余裕こいていられんのも……今の内よ!!紫行くわよ!!私たち二人の結界をこいつにぶつける!!」
「分かってるわよ!!」
紫は境界を操る程度の能力で、霊夢は自分の札を使って黒い陽の周りに一瞬で結界を作っていく。
二重三重四重……段々とその結界は数を増していきさらに強固なものへとなっていく。
「ここまで重ねれば!紫!!」
「分かってるわよ!!」
大きなスキマを開いて、結界事そのままスキマによって空間と空間の狭間に落とす作戦。
最早残り少ない霊力と妖力と体力を一気に使う作業だったが、『絶対に成功させる』という意志が強い集中力を産み、即座に結界を展開、重ねていって一気にスキマに放り混んでいく。
「……うーん、弱い。弱すぎて欠伸が出るわ。まだマンガの方が楽しめそうだ。いや、言ってもそもそも根本が違うからどうしようもないか。」
そう言いながら黒い陽は手を一振りさせる。それだけで幾重数多に重ねられた結界を全て破壊し、そしてスキマからも逃れることが出来た。既に力の使い果たした霊夢と紫はそれで既にすっからかんになって立っていることもままならなくなったのか、膝をついてしまう。
首を鳴らして、実につまらなさそうな顔で二人を見下ろしてから陽の方に視線を向ける。
「……お前は俺を楽しませてくれるか?」
「お前が楽しめることは……俺が楽しめることでもあるんだろうよ……同じ俺だからな。」
「そうか、なら……楽しめる筈だな!!」
黒い陽は陽とぶつかり合う。力だけならば、霊夢や紫よりも高くなる二重憑依。しかし、戦っている相手はそれを知り尽くした自分自身。拳と刀という組み合わせを十全に理解しているもう一人の自分でもあるのだ。
故に、どれだけ力があろうとも素の力で超えられている上に戦い方を熟知されている以上、陽が二重憑依で黒い陽に勝てる確率は圧倒的に低い。
「くっ…!」
だから陽はずっと待っていた。自分の中にいる創造主の天敵が作ってくれている力を。
恐らく光闇でも勝てないと思わせられるほどの強さ。未だに本気を出しているのかどうか分からないが、しかしそれでも二重憑依では勝てないと痛感していた。
「でも、だから、だからこそ……! 死ぬ気でお前と戦ってやる!!」
「そうだ!もっと力を出せよ俺!!もっと俺を殺す気で来てくれ!!それら全てを俺がひねり潰してやるからよ!!お前が死ぬ気で殺す気になっている以上!俺ももっと潰したくなるんだから!!」
陽が刀を振り下ろし、黒い陽がそれを防いで叩き折る。陽が拳で殴りにかかれば、それに合わせて拳をぶつけて相殺しながらも、陽の腹に思い一撃を叩き込んで吹き飛ばす。
誰がどう見ても弄ばれている。そして陽自身もそれを理解している。だがそれでも陽は諦めなかった。
「はぁはぁ……絶対に……!とっておきだ、喰らいやがれ!!陽月[
陽の霊力と妖力が混ざり合い巨大な獣のオーラとなる。そして、刀は牙となり拳は爪となる。圧倒的な大きさと質量を持つその獣を見て黒い陽は満足げにニッコリと微笑んでいた。
「UGAAAAAAAAA!!」
「ははは!!なるほど!土壇場でそんなスペルカードを作り出したのな!楽しみだ!そのスペルカードがどんな力を持っているのかぜひ俺に見せてくれ!!ちゃんと真上から見下ろすように見下しながら潰してやるからよ!!」
爪を振り下ろす獣。その一撃は戦っていた城の屋根を破壊していく。闇で形成されている城の為、再生こそするもののしかしその攻撃力はさっきと全く違うものとなっていた。
「すげぇな!爪を一振りしただけで城の最上階が半壊してらァ!!そんなに強いスペルカードがあるならもっと早く出して欲しかったもんだぜ!!俺がもっと上から潰してやるのによ!」
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
黒い陽目掛けて爪を振り下ろし、牙を突き立てようとする獣。しかし黒い陽はそれを軽々と避けながらオーラの中にいる陽に攻撃を加えようとするが、直前でオーラから手足のようなものが生えて黒い陽に攻撃を仕掛けてこようとする一進一退の攻防になっていた。
「再生はするが痛いのは避けたい性分でな!!つうかどんだけ霊力と妖力が残ってやがったんだよ!!まだそんなけ動けるならもうちょっと本気も出せるだろうによ!!
……まぁ、ここまで遊んで大体の力加減はわかったから何とかなるかな。ぶっちゃけまだまだ俺の足元には及ばないしな。」
そう言って再び突っ込んでいく黒い陽。だがさっきまでと違うのはどれだけ妨害されようとも気にせずにただただ突っ込んでいくことだった。
オーラの中にいる陽本体に攻撃を仕掛けようとする黒い陽、陽はそれを見てオーラを使ってオーラの手足を新たに生やして迎撃しようとするが、全て避けられるか潰されるかしてしまい、近づくことを許してしまったのだった。
「ほぉら俺の言った通り潰せた、っと。」
そう言いながらオーラの中に入りこみ、陽に攻撃を仕掛ける黒い陽。咄嗟に獣のオーラを解除して、陽は黒い陽の一撃をギリギリでガードすることで何とかダメージを最小限に収めることが出来たが、それでも吹き飛ばされて屋根に叩きつけられていた。
「ぐはっ……」
「何か時間稼ぎでもしてたのか?やけにつっかかってきていたしよ。別に俺はどうでもよかったんだが、やけに死ぬ気で突っ込んできたかと思えば違うかったりもする。
何がしてぇのかって考えてたら思いついたわけよ。時間稼ぎって手をな?まぁ何にせよ、その時間稼ぎのために死んでくれてどうも無駄死にありがとうございますってな!!」
手に槍を作り出しながら黒い陽は陽の側まで近寄る。そして、そのまま陽の心臓目掛けて突き刺すように振り下ろす。
しかし、その槍が届くことは決してなかった。壊されていたからだ、刺す目標であった陽本人に。
「……まだそんな体力が残ってたのか。」
「……いや、残っちゃあいないさ。無理やり、そして無理くり……意地でもやらなきゃいけない時があったから、俺はその意地を貫き通した迄だよ…黒音!悪かったな戦わせなくて!!皆で……行くぞ!」
「っ!!のじゃ!!」
「何もさせねぇよ!!なにかするその前に黒音の闇を操って俺に取り込んでやる!!」
「遅い!!お前を倒すこれが俺の切り札だ!!四属[陽月光闇]!」
作り上げられたスペルカード。憑依スペルは陽月はそのままに、光と黒音を白い光と黒い闇のオーラとなったその二つを更に取り込む。
「な、何故だ……俺は闇を操れるはずだろ!?能力も生み出している、なんで、なんで……」
「……それが演技なのか本気で言っているのかはわからないが、少なくともお前の想定外であることは間違いないようだ。
確かにお前は強いよ。色んなもの作り出して、色んなやつの能力を使えて……けどな。お前にとってはそれら全てが甘えになってんだよ。」
「…まぁいいや、お前がとんな力を手にしようが俺には関係ない……その仰々しい姿もお前のものなんだろ?」
赤と青に黒や白、4色の色が散りばめられた長髪。頭からは鬼のような角が生えていて、背中からは吸血鬼のような羽と天使の羽が2対生えていた。
鬼、精霊、吸血鬼、天使……そして人間。太陽と月と光と闇。四つの種族に四つの力、全てが混ざりあっている今の陽こそ、創造主の天敵が作り上げたスペルカードである。
「あぁ……間に合ってよかった……さぁ、こいつの力を見せてやるよ……その前にお前は消えてしまうだろうけどな……お前の存在は━━━」
「
「「
その言葉の後、黒い陽が持っていた万物創造で生み出した全てのものは消え去った。
だが、陽も陽で驚きの表情になりながら黒い陽の方を見ていた。
「……何で、お前も……!?」
「……いや、いやいやいや、お前は俺で俺はお前だ。俺が万物創造の力があるという事はお前も俺も読んだ『創造主』の話の中に出てくる『天敵』とやらも本当にいたんじゃないか?
そう考えれたら後は簡単だ、そいつが矛盾を操る能力を持っているのならその前に俺はそれを生み出して消すだけだと。
ただなぁ……あんまり知らない能力な上に物質としてすら存在してないものを作ろうってんだから思いのほか時間がかかっちまったよ……おかげで俺は万物創造の力を失い、お前は矛盾を操る能力を失った。」
「……いや、俺はお前の存在の消去を願った。なのに何故お前が存在しきれている!?」
「簡単な話よ、そっちは運命回避だ。運命を操って、お前が能力をミスするようにしたのさ。まぁ、ちょっとでも違う能力だった場合俺は跡形もなく消えていたから危ない賭けだったけどな。いやはや、『俺の存在を消そうとして間違えて能力の一つを消す』ってやっといて良かったぜ。『俺を殺す』とか『俺の能力をすべて消す』とか言われてた詰んでたのなんのってな。」
陽は軽く舌打ちをしていた。自分自身とはいえ、自分の動きを予測されたのがかなり腹立たしかったからだ。
「さて……単純な力勝負と行こうか……俺。」
そして、二人の月風陽の対決も……間近に迫っているのだった。