東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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見てわかるとおりの場所に行きます。


紅き魔の館

「……最近、陽の様子がおかしい気がするんだけど……」

 

「貴方もそう思う? 守矢神社に行ってからというもの考え込んだりぼーっとしてたりする事が多い気がするのよね……」

 

「何か思うところがあるのではないのでしょうか……もしかしたら外の世界に戻りたくなってきた可能性も……」

 

守矢神社に行ってからはや数日。紫達の目に見えて陽の様子がかなりおかしい事に気付く。

ボーッとしてるのか料理をする時に同じ所に何度も包丁で切っていたり、虚空を見つめていたり、掃除をする時に同じところだけを何度も磨いていたり……数え切れないほどあるが、だいたいこんなところである。

 

「これから少しだけ紅魔館に行く予定なのだけど……この状態で連れて行けるのかしら……」

 

「景気付けに連れて行ってみてはどうでしょう? そうすれば気分転換になるのではないかと思います」

 

「……そう、ね。それなら彼も連れて三人で行くとしましょうか」

 

「はーい」

 

「それでは今日もまた、私がご飯を作って起きましょう。なるべく家を空ける訳にはいきませんから」

 

「そうね、また一人にさせてしまうけど頼むわね、藍」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━それで、前に頼んでいた事は可能かしら?」

 

「確か……牛、豚、鳥の増加輸入ね。そんなに数が減っちゃったの? かなり広いところで飼っていたんじゃなくて? それに各100匹をここに与えたはずなんだけど?」

 

「数自体は寧ろ倍以上に増えたわ。そこら辺はパチェが頑張ってくれたおかげね……それに人里で買い物する為の賃金をそれらの肉類を売りつける事で解消は出来るもの。

ただ……そうね、妖精メイド達の分も考えると後少なくとも10匹位は欲しいのよ。一応今でも回せてる事は回せているけどもう少し量を増やせれば、と考えてる事もあるのよ。

牛肉、豚肉、鳥肉の混合料理を出してしまっているからそれぞれ単品で出せるくらいには増やしたくて……まぁでも、別に今のままでも増やせている事には変わりないから直に数の問題も解決すると思うけど……妖精メイド達が『もっと肉食わせろ』って反発しているから……」

 

部屋の床、壁、天井、扉その全てが真紅に染まっている館、紅魔館。紫はそこで館の主であるレミリア・スカーレットと所謂『対談』をしていた。

要求は既に述べられていたが、簡潔に言えば『肉を増やせ』である。

 

「10匹なら出来ない事も無いけれど……そんなに急ぎで増やさなきゃいけないのかしら? 妖精メイド達の反発はそこまで逼迫しているの?」

 

「と言うよりもそもそも妖精という生き物自体が感情面に関してはかなり直情的だし無理矢理にでも抑えとかないとその場その場で簡単に爆発させちゃうのよ」

 

「あー……」

 

「あぁそれとこっちは頼みというよりはお願いに近いのだけれど……外の世界から肉の調理法が乗った書類があれば見つけてきてくれないかしら? 言い値で買うから」

 

レミリアの二つ目のお願いに紫を顔をしかめた。そもそも外の世界から本を持ってきたとしても材料が足りるかどうか分からないし使う材料がそもそもこの世界に無い可能性だってある。外の世界の本はこの世界にはあまり合わないから持ってきたところで━━━

 

「……あ、なら家の子に任せてみようと思うわ。食材庫の現状を把握したりいつも買ってるものを知って尚あの子は多分料理が出来ると思うから」

 

「その子って……いつもくっついてる式神の方じゃなさそうね。もしかしてあの人間の男? ずっと思ってたけど結構特殊よね、あの男。鬼を式神の様に従えているし強力な能力を二つも持っている。のにも関わらず空は飛べずに弾幕も撃てない。腕力も脚力も全て並の人間レベルの筈なのに……色々面白い子ね? そこに惹かれたのかしら?」

 

「そうね、そんなところよ。とりあえず陽が部屋に戻ってきてからこの事を話しましょうか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ陽、どこに行くつもりなの? 紫がこの館を散歩していいって言ったから今適当に歩いてるけどさー……あんまりにも無計画に歩いていると道に迷うよ?」

 

「……大丈夫、今は門番って人がいるところに向かってるから。別に勝手に帰るつもりじゃないから安心して」

 

「そ、そう……」

 

陽鬼は内心少し不安になっていた。陽の表情が全く読めないからだ。ぼーっとしている様な何か考えている様な、心ここにあらずという表情ということ以外は分からないのだ。

だから自分が今陽の眼中にすら実は入ってないんじゃないかと思ってしまって心が痛くなってしまう。陽鬼自身にもなぜ痛くなるのかは分からないのだが。

 

「……き、綺麗な花壇だね。誰が手入れしてるのかな?」

 

「妖精メイド達じゃないかな。……あれが門番かな。なんか子供と遊んでるけど」

 

陽が言った方向を見るとそこには陽鬼と同じような背丈の妖怪達が門番と戯れていた。

 

「めーりーん!! こっちだってばー!」

 

「ま、待ってくださいよー! あ、足が滑る……」

 

「あはは! そーなのかー!」

 

「ち、チルノちゃん……流石に地面を凍らせるのはダメだよ……」

 

「む、虫の妖怪の僕に対してちょっと酷い仕打ちなんじゃないのかなこれ……!」

 

「夜雀にもなかなか厳しいんだけど……」

 

「……妖精が2人と虫の妖怪、鳥の妖怪……あと一人はちょっと分かんないけど……それとあの赤い髪の人が門番っぽいね。面倒見良い人なのかな?」

 

「かもな」

 

彼はとりあえずあそこにいる面子の中には『チルノ』『美鈴』という二人がいることがわかった。だが正確なメンバーは分からない為にとりあえずもう少し近くによって見る事にした。

 

「ん? ねぇ美鈴、知らない人間と鬼が手を繋いで館の方からやってきてるよ?」

 

「へ? ……あぁあれはお客様ですよ。八雲紫……さんの」

 

「へー、あいつ人間なんか飼ってるんだ……ちょっかいかけてやろ!! おーい!!」

 

「ち、チルノちゃん!?」

 

「あ、何か一人こっちきた」

 

陽はぼーっと向かってくるチルノを眺めている。まるでチルノの事なんて見えてないのかといわんばかりに。だがそれに気付く事が無いルノはそのまま陽の目の前に立って勝ち誇った様な顔をしていた。これから自分はこいつに勝つ、というのが分かりきっているかの様に。

 

「あたいと勝負しろ! あたいが勝ったらあたいの下僕にしてやる! まぁさいきょーのあたいに勝てるわけないと思うけどもしかしたら万が一にも勝てるかもしれないし? 一応あんたが勝ったらあたいがあんたの下僕になってやるよ! まぁ平等にしてやるためにもあたいは片手しか使わないってハンデを━━━」

 

「で?」

 

陽は長ったらしく延々と勝負に対する内容を語ってるチルノのセリフに割り込んでハッキリ一文字だけで返す。それに意表を突かれたチルノは一瞬呆気に取られたが再度説明をし直す。

 

「だ、だからさいきょーのあたいが両手を使うまでもないから片手だけで勝負をしてやろうと━━━」

 

「で?」

 

「だ、だから……その……」

 

「……」

 

「う……う……うわぁぁぁん!!」

 

陽の冷たい目線に晒されたチルノはそのプレッシャーに耐えきれなくなり泣きながら美鈴の元へと飛んでいく。この場にいた陽とチルノ以外の全員が呆気に取られていた。

陽鬼は陽がここまで他人に興味なさそうにするなんて、と思ったから。他はただの人間がチルノを言葉と態度だけで泣かせたから。という理由である。

 

「……貴方が門番の紅美鈴さん?」

 

「は、はい……あ、別にさん付けしなくてもいいですよ。さん付けされるのは妙にこそばゆい感じがするので。同じ理由で敬語も使わなくていいですよ」

 

「あぁそう……なぁ、メイド長とかここの主とか……どう思ってるんだ? それを聞きに来たんだ」

 

「咲夜さんやお嬢様をどう思っているか……?」

 

美鈴は随分変な質問をする人間だと思った。変な感情というものはこの館の全員に抱いている訳じゃ無い上に彼女にとっては主であるレミリア・スカーレットと直接的な主従の関係では無いのだ。

確かに主だと思ってはいるがおそらく目の前の人間はそんな答えじゃあ納得しないだろうと考えた美鈴はある一つの考えを喋る。

 

「そうですね……形は違えどこれもまた一つの『家族』だと思っています。主従の関係が前提とはいえ私もまた『紅魔館』という一つの家に住まわせてもらっている『家族』だと思っています。

勿論、咲夜さんやお嬢様もその例に漏れずに紅魔館の全員が家族の様なものなのです」

 

「……そう、か……あんたはそういう考えなんだな。ありがとう。

それじゃあ俺はこれで」

 

「は、はい……?」

 

そしてそのまま陽は陽鬼を連れて館の中へと戻っていく。今の質問だけが彼がここに来た理由だった。それが果たされた以上今の彼にとっては既にここにいる理由なんて微塵もない、さっさと次の場所へ向かうだけなのだ。

 

「よ、陽…………」

 

陽鬼の心配する声は陽には届いてなかった。今の彼は次の目的地である『大図書館』へ向かう事だけしか頭になかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……広いな、それに高い。流石に大図書館って言われるだけはあるところだ」

 

「こんなにたくさんの本なんて見てるだけで眠くなってきちゃうよ……」

 

「それなら帰ったら? 私の本を読む邪魔をしないで頂戴。ここにはお菓子もお茶も愉快に話せるお喋り上手な人も誰もいないから来たところで意味は無いわよ。

いるとすれば侵入者にうるさい魔女とそれと契約している小悪魔しかいないわ」

 

入ってきた瞬間に響いてくる声。恐らくはこの部屋の主同然の『パチュリー・ノーレッジ』が魔法を使って話し掛けているのだと二人は悟った。

 

「別にお菓子もお茶も愉快に話せるお喋り上手な人も望んでない、俺がここに来たのはちょっとだけ尋ねたい事があったからだ。聞こえてるのなら本を読みながらだろうがなんだろうが出来るはずだ。さっきみたいに俺に話し掛けてきてたしな」

 

「……時間を取らせないのなら一つだけなら質問を許すわ」

 

「なら丁度いい。紅魔館の主レミリア・スカーレットやメイド長十六夜咲夜、門番の紅美鈴……その人達の事をどう考えている?」

 

「……私のところにこれたら教えてあげるわ。安心しなさい、魔法で邪魔とかはしないから」

 

それ以降声は聞こえなくなった。恐らくは今の質問の答えは会わない限り教えてくれないだろうという事と、考える時間を作る為の二つの理由を意図的に隠す為に言った事だろうと陽は確信した。

そうと決まれば探してやろうと陽鬼の手を引っ張って大図書館を突き進んでいく。魔法で邪魔をしないとは言ったが他の妨害はするつもりなのだろうかと予測したが、五分ほど歩いても特に何ら問題はなかったため本当に妨害行為をするつもりは無いのだろうと妨害の事は考えるのをやめた。

 

「……ねぇ陽、さっきの門番と言い今回の事といい何してるの? それに『ここの人達をどう思うか』なんて質問する理由が良く分からないんだけど……そろそろ話してくれてもいいんじゃないの?」

 

「……ここの館の主従関係を結んでる人達は本当にそれだけで結ばれてるのかと思ってな。

美鈴はここの人達を『家族』って言った、もしそれが他の人達も似たような意見だったらここも『家族の関係』という事になる。血の繋がりのない家族という事になるんだ……」

 

陽鬼はそれ以上陽に、追求する事が出来なかった。何故ならその時の陽には少しだけ負の要素が感じ取れてしまったからだ。それ故にそれ以上踏み込んでしまったら何か大変な事になりそうな気がした陽鬼は踏み込む事が出来なかった。

 

「……そ、それで目星はついてるの? よく見えないくらい遠いのに闇雲に歩いたところで日が暮れちゃうよ?」

 

「……初めに扉に入った時にこの扉のすぐ側の左側には本棚があった。つまりここの入口は部屋の一番左側にあるという事になる。それでいるとしたら恐らくは部屋の中心だろうしならある程度まっすぐ歩いてだいたい目測で真ん中さえ当たれば後は直角で曲がればいい。縦か横さえ分かれば直進するだけで済むからな」

 

「へぇ……」

 

返事こそ返してはいるが陽鬼もよく分かっていない。しかしそんな事を気にしている暇が無い陽はそのまま突き進んでいく。

しかし本当に広い、歩きながらあまりにも広いこの図書館を目の前にして陽は考えていた。『魔法で大きくしているのではないか』と。そうでないとあまりにも広さにばらつきがある様にも思えたからだ。つくづくこの幻想郷という所は何でもありなのだと彼は実感させられていた。

 

「さて……絶対に見つけてやるぞ、魔女さんよ」

 

「……そう、だね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この館にいる人物達をどう思っているか……ね、人間にしては面白い質問をしてくれるわね……さて、私は彼の質問に対してどう答えてやりましょうか……」

 

図書館のとある一角には紫色の服を着た少女が椅子にもたれかかって本を読んでいた。




後編に続きます。
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