「……これでもないあれでもない」
「こっちかしら……小悪魔、種族関連の本ってどこにあったっけ?」
「種族関連ならE-23にあったはずですよ〜」
「あぁもうここから超遠いじゃない……」
「なら私が取るわよ、場所さえ教えてくれたらスキマを繋いで一瞬だし」
「では私がスキマの中に入っていきましょう」
紅魔館の大図書館にて、今陽達は月魅の体の状態を調べる為にここに来ていた。読み漁ってその内容を見付けては栞を挟んで1箇所に置いていっていた。
パチュリー、小悪魔、紫、藍、陽の5人が今は本を読み漁り続けていた。橙と陽鬼には内容が理解出来ないものが多かったので早々にダウンして外に出て美鈴と遊び始めていた。月魅もそうだったが本人が『学びたい』と言った事により小悪魔が集めてきたそういう本を手渡して探す事よりも学ばせる事を優先させてやっていたのだ。
「……もう10冊くらいは読んだと思うのになかなか終わらないな」
「そんな程度じゃ終わらないわよ、最低1人100冊は読まないとまともなものが見付からないと思うわ」
「……気が滅入りそうね。100冊なんて本1年でも読んでるかどうかしかないわ」
パチュリー以外のメンバーは既に疲労の色が見え始めている者もいた。そのせいもあってか段々と読む速度は落ちていっていた。
「……そう言えば前に来た時と形が変わってないか? 前はもうちょっと狭かった様な気がするけど……」
「前は魔法で部屋の中も形も幻を見せていたのよ。私が姿を隠していたんじゃなくて私ごと部屋の形を幻で上書きしていたから私の姿が見えてなかったのよ」
「……理解出来る様な出来ない様な……けど、とりあえずパチュリーの魔法が凄いって事だけは分かった」
そう言いながらも手は休めず調べるのを続けていく。最早読みながらこういう会話でもしておかないと全員黙ってしまって気が重くなると陽が感じていたのだ。
少し前まではそんなの気にする事は無かったと思って少しだけにやけていたが。
「けれどパチュリー様、流石に色々本を読んではしまっての繰り返しをしているせいでそろそろ何を読んだか分からなくなってきそうですよ?」
「あぁ、それに関しては全員にメモを取らせているから何も問題は無いわよ。読んだ本のタイトルを書いてるから流石に同じ本を読む事は無いでしょうね……けどこの部屋の本は確かに多いし疲労は確かに貯まるわね……もうちょっと調べれば分かるかしら……しょうがないわね、彼女達を呼ぶ事にしましょうか……」
「彼女……達?」
陽がパチュリーの言葉に少しだけ疑問を感じたがその疑問は直ぐに解消になる事になる。パチュリーは使い魔を2匹使って外に出たのを確認するとまた本を読み始めた。
「誰に連絡したんだ?」
「片方はあなたも知っているはずよ。もう片方は知らないわ」
それから数10分が経過してから。
「よー、パチュリー来たぜー
頼まれてた本一応持ってきたぞー」
「頼るなんて珍しいわね……あなたの性格から考えて誰かに頼るなんて珍しいのに」
「魔女の知り合いは貴方達しかいないもの……いえ、命蓮寺のところのも考えたけど面倒臭いからやめたわ」
「はは、パチュリーらしいぜ……お? 陽じゃねぇか久しぶりじゃん。子供出来たんだって? 紫との子供か?」
パチュリーが呼んできたのは霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイドの2人だった。魔理沙の方に関しては陽は面識があったがアリスの方は彼には見覚えがなかった。
「どう考えても違うでしょ……けどまぁ、人形と魔法の本以外の本を読むのもたまにはいいかもしれないわね。
……っと、初めましてかしら? 私はアリス・マーガトロイドよ。アリスとでも読んでちょうだい。誰も苗字で呼ばないから最近苗字で呼ばれると自分が呼ばれてるって気付きづらいわ……」
「まぁ使い魔に手紙もたせてたと思うけど……書いてあった子はこの子よ」
そう言いながらパチュリーは二人の前に月魅を呼び出して見させる。二人共首を捻ってはいるがいまいち分かってない様だった。
「確かにこれは……見ただけだと良く分からないわね。妖精っぽいのは確実だけど手紙に書いてある事が本当なら月を媒体にしてるんでしょ? なのにここまで弱るって事が無いと思うわ」
「だな、自然の力っちゃあ自然の力だが月なんてもんを力として使えるのは相当だと思うぜ? まぁそれ以前に妖精とはまた違う様な気もするんだけどな」
「……これは調べがいがありそうね」
多いかな帽子を一旦取って大きなテーブルに置いた後に帽子を置いた近くに座る魔理沙。アリスも一旦席に座って魔法で人形達に本を取らせに行く。
「アリスの魔法は人形を動かす事なのか……」
「弱そうに見えるでしょ? けどこの子達はこういう物を持ち運びする用の人形だからそう見えるだけよ。戦闘用の子達は一味違うんだから」
ふわふわと動く人形。確かにこの人形達はどう考えても戦闘には向かないだろうと思いながら陽は見ていた。
「とりあえずこの10冊から見てみましょ。人形達はジャンジャン運んでくるからさっさとしないとね」
「もっと人形達を出せば効率がいいのだけれど……まぁ私たち以外読み疲れてるしペースはそんなに上げない方がいいのね……」
「パチュリーが体力勝ちだなんて珍しいぜ。ま、そんな事よりさっさと調べようぜ。関連しそうな単語ってなんだろうな? 妖精、進化、退化、月と……こんなもんか?」
「そうね、一応妖怪と進化の関連する本もある程度はまとめてあるからお願いね」
「理解したぜ〜」
そう言って魔女3人組は本を読み始める。流石に本を読み慣れてるせいもあってか読む速度がかなり違うとだけ確信していた。
そもそも大図書館に置いてある本の大半が英語で書かれていて陽の読める日本語での本はそんなに置いていなかった。
「はい、疲れたのなら一度本から目を離して休憩するべきですよ。ずっと読んでると目を悪くしちゃいますからね……まぁパチュリー様は魔法である程度の視力矯正はしているので目を悪くされることはありませんが……」
少し休憩してると小悪魔が陽の目の前に紅茶を入れて少しのクッキーも用意する。紅茶を置かれるまで存在に気付かなかったので少しだけ陽は驚いたがすぐに小悪魔の言う通りに本を閉じて置いてから紅茶をゆっくり飲み始める。
「見付かりませんね……」
「確かに……けどまぁ、分からなくても調べなくちゃいけないし……辞書が手放せないのが痛いけど……と言うか辞書もあるのが驚きだ……」
「外から流れ着いたものもここに保管する時がありますからね。元々あった冊子数に比べれば一割程度ですが偶に咲夜さんや美鈴さんも使用するのであった方がいいんじゃないかとお嬢様が決めて下さったんです」
意外といい主をしていたという事に驚きながらもだからこそ慕われているのだろうという納得も感じていた陽。
紅茶で喉を潤しながら合間にクッキーを食べていく。
「にしても……いくら引き取った子とはいえ見ず知らずの子供にそこまで出来るのはどうしてですか?」
「……放っておけなかったというか、なんと言うか……目の前で倒れられて何故か助けないといけない、って気持ちになったんだ……前までの俺なら無関心で突き通してきたのに……」
その言葉に小悪魔は若干微笑んでいたが、陽はその表情が何か見通しているようなそんな表情に見えて少しだけ疑問符が浮かんだ。
「えっと……何でそんなにニコニコして……」
「貴方がいい人だったから……だったからですよ。人間って大体が妖怪を意味もなく恐れて、嫌ったりする種族です。明確な味方でいる内は安心していますが少しでも不安要素があるとすぐに変な噂が立って更にそれに尾ひれがついて人外を弾劾する……けど貴方にはそういうのが無い様にも見える。
元々自分以外のものに……いえ、自分すらも興味の対象に入ってない貴方だったからこそ簡単に垣根を超えられるんだと思いますよ。それでいい人と決めつけるのは私のエゴその物ですけどね。紅茶のお代わりいりますか?」
陽は無言で頷いて紅茶のお代わりを貰う。小悪魔が言った事を彼は疑問に感じていた。自分自身をそこまで過大評価してくれているのは嬉しく無い訳じゃないが、彼にとっては自分がそんな大層なものでは無いと考えているからだ。
確かに今の彼には人に好きも嫌いも無い、敵として戦っている白土も戦ってはいるが嫌いにまで発展してないのだ。だが牙を向いてくる以上戦わなければならないのだが。
「人間の寿命なんてすぐ訪れます。だから人間は長く悩んでいるより簡単に切り分けられる様な考えを持っている方がいいと思いますよ。
70,80年は長いと思っていてもすぐに訪れてしまいますからね」
「そう、なのか………まぁそれ抜きにしても物事を簡単に決めれる様なそんな考え方を持った方がいいのはなんとなく理解出来るよ。
……さてと」
「休憩は終わりにしますか?」
「あぁ、すっかり休めたよ。お茶とクッキーが美味しかったから余計に一服出来た気がするよ」
「ふふ、なら良かったです。では何かあったら呼んで下さいね〜」
そう言った後、小悪魔はふよふよと飛びながらどこかへ向かう。パチュリーが読む用の本を取りに行ったのだろうか、と陽は考えたが、それよりも前に自分にはやるべき事があると考え直して読んでいる途中だった本を手に取って再度読み始める。
「にしても何せ元にする情報量が少な過ぎて何が正解か分からないな。何せ妖精っぽい事くらいしか分からんからな」
「魔理沙、口を開いている暇があるなら手と頭を動かしなさい」
「けど流石に今回は魔理沙の言う通りよ……それくらいしかないから探してもこんな感じで情報が溜まっていくだけだもの」
魔女3人組も少し難航している様で中々それらしき情報が見付からない。関係性の高い物なら幾つも見付かっているが全てが一つにまとめられるとは思っていない陽達だった。
「……いえ、待って。ちょっと私達深く考え過ぎていたのかもしれないわよ?」
「ん? どういう事だぜ?」
「よくよく考えてみれば元々の種族は別のものよ。けれど幾ら妖精っぽいと言っても他の種族から妖精になる事は無いわ。言ってしまえば自然の力をいくら受けてもそういう妖怪にしかならない訳よ。
けど逆に考えてみれば……『妖精っぽいもの』かつ『他種族から変化できる種族』に彼女は変わったって事にならないかしら?」
パチュリーのその言葉に魔理沙とアリスは納得した表情で頷いていた。かつ、二人共何か思い当たることがあるのか少しだけ思案顔になっていた。
「……あー、妖精っぽさと他種族への変化というのをバラバラで見てたからそりゃ集まらねぇな。そうか、確かにその絞り方をするとかなり絞れる……って言うか思い当たる種族が一つだけあるぜ? 私が思い違いをしてなかったら一つだけあるぜ」
「あら奇遇ね、私も思い付く種族が一つだけ有るわ。それが正解なのかどうかは分からないけど一つだけ思い付いているわ」
「あら、二人共そうなの? 実は私も思い付いていたのだけれど二人共思い付くとは思わなかったわ。多分私が一番先に思い付かないといけないのだけどね……折角だし合わせて言ってみましょうか。せーの、でね」
3人組の顔が少しだけにやけていた。同じ考えになっていると確信しているかの様な表情。だが三人の頭の中は自分の正しいと思っている答えに染まっているのだから。
「せーの━━━」
「「「精霊」」」
見事に3人の答えが合致していた。にんまりとしている魔理沙に三人の答えが合ったことにより自分の知識に確信をもてたアリス。そしていつも通りに本を読み続けているつもりだが自分の考えが正しいと確信して少し微笑んでるパチュリーの姿がそこにあった。
「だよな、やっぱりそうなるよな」
「妖精と似た性質を持っていてなおかつ変わる事が出来る存在……そう来たら更に自然の力の影響を受けやすい精霊というのにも納得がいくもの、当たり前よ」
「……という訳よ、陽。月魅はそのクローンロイドというものから精霊に生まれ変わっていたのよ。精霊なら寿命も長いし月というものを力の源にしている以上基本的には1000年でも2000年でも生きられるはずよ」
「精霊……か」
「まぁ今は少し力が落ちているから異例の妖精みたいなものだと思えばいいわ。本当にそれくらい落ちているもの」
陽は勉強している月魅を遠目で見ている。目線に気付いたのか月魅がパッと顔を上げて陽の方に向いて見つめ返している。陽は月魅に向かって手を振る。この事を月魅に報告しないといけないがまず精霊が良く分かってないので陽は月魅といっしょに聞く事にしたのであった。
精霊もオリジナル設定です。