東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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説明会です。説明回でもあります。


精霊とは一体

「精霊……ね。私も初めて見たわ」

 

「妖精とは違うんですか?」

 

「あぁ、妖精より上の存在……と聞いた事がある」

 

「そんな存在だったんだね……かなり凄い?」

 

「聞いてる感じだとそうだろうな」

 

紫、橙、藍、陽鬼、陽は精霊と聞いて各々の反応をしていた。パチュリー達はとりあえず精霊という種族を知らない陽達の為にちょっとした説明会を開く事になっていた。その説明会は魔理沙が面倒臭がって帰ってしまったがアリスとパチュリーはもとより説明能力に関して魔理沙は余り秀でていない事も知っているのでそこまで気にせずに帰らせた。

パチュリーに関しては魔理沙が持参していた本が全て魔理沙の言う『借りた』本だったのでそれを全て返却させた訳だが。

 

「さて……それじゃあ始めるとするわ。冊子なんていう便利なものは無いから話す内容だけをなんとか暗記してもらいたいところね。

まず……精霊というのは基本的には魔法使いと切っても切り離せないものよ。小悪魔みたいに契約するタイプじゃなくて魔法を使う場合に魔力を魔法に変換させて貰う一種の変換器の役割を果たしてくれるわ」

 

「変換器……しかし、ならそのお前の精霊はどこにいるんだ? 今まで何度か弾幕ごっこをしていたが私の目には見えなかったぞ?」

 

藍が聞いた疑問にパチュリーはどこから取り出したのか指差し棒で藍を指す。いきなり何の事か分からない藍は少し困惑していた。

 

「その疑問は最もよ。けど本来精霊というのは目に見えない存在なのよ。幾ら頭のいい貴方でも見えないものを見ようとする事は無理でしょうね。かく言う私も見た事は無かったのだけれど」

 

「となると本当に変換器なんだな……道具扱いされているのに妖精より上というのが若干信じられないな」

 

「少し語弊があるわね。確かに変換器とは言ったし契約もしないとは言ったけれど契約に似た事くらいはしているわ。

私達魔法使いは魔力を精霊に送り込む。彼らにとって魔力というのは摂取するものなのよ。摂取出来たなら後は出しても問題無いから魔力を吐き出す為にそれを魔法へと変換してくれる。そういう仕組みよ」

 

「はい! ちょっといいですか!」

 

藍とパチュリーが会話している時に橙が元気良く声を上げて、手も挙げる。声が結構大きか出たのもあってか頭の中を整理していた陽と不意打ちを食らったのかパチュリーが若干ビックリしていた。

 

「び、びっくりした……な、何よ」

 

「魔力は精霊のご飯なんですか? 話を聞いてるとそんな風に聞こえてきたました」

 

「そうね、ご飯みたいなものよ。基本的にはね」

 

そして、パチュリーのこの台詞に反応したのか紫が手を上げて質問をし始める。

 

「あなたさっきから『基本的には』って使ってるけど例外があるという事かしら? いえ、寧ろ例外を主張したい様にも聞こえるわね」

 

「えぇ、あなたの言うとおりよ八雲紫。私はとても例外を主張したい。と言うかそもそも私の知ってる限り精霊を介して魔法を発動しているのは魔理沙だけよ。アリスは元々精霊を必要としない魔力の糸だから根本から関係無い。私は精霊を介さずに直接魔力を魔法に変換しているわ。

……まぁ、自慢話はここまでにしておきましょうか。何故本来見えないはずの精霊である月魅という存在は認識出来る話をしなくちゃね」

 

随分と話の腰を折ってしまったと反省して、すぐさま切り替えたパチュリーは再度説明をし直す事にした。

 

「まず、本来見えない精霊が見える理由は色々推測があるけれど一番有力なのを言うわね。

まず、本来視認が可能な状態であるクローンロイドから変質したからじゃないかって推測が一番有力だと思うわ。生まれた時から見えないものなら生まれた時に見えているのなら当然見えるだろうし」

 

「まだちゃんとした確証がないけど……色々出した中ではこれが一番まともだったのよ」

 

「……つまり、月魅には本来の精霊の役割である変換器の力がない可能性があるって事か?」

 

「まぁそうなるわね。まぁ仮にあったとしても私の頭の中に月の力を使う魔法なんて無いのだからそもそも無くても問題無い気がするわね」

 

陽はずっと話を聞いて黙っている月魅をチラッと横目で見る。そもそも魔力が存在しないから魔法を陽は使えないのだが月魅はこの事をどう思っているのかが無性に気になった。

 

「……魔法への変換器の役割も無い、本来見えないはずなのに姿を視認できる……だったら何故私が精霊であると確信出来たのですか? ただ妖精の様でいてなおかつ変化できる種族というだけで決めた訳では無いのですよね?」

 

「その二つを見事に当てはめる事が出来るのは精霊だけよ。そもそも妖怪も妖精も自然の力を扱うけれど生物から派生したのが妖怪よ。自然の力を媒介にしてるんじゃなくて基本的には自身そのものが何かしらの生物の元になってるのよ。例外としては妖精が妖怪化した場合だけよ、あなたの場合そういう事も無いもの。

試しに手を水を掬う様な形にして手元に月があるイメージでもしてみなさい。あなたが精霊か妖精なら可能よ」

 

「月がある……イメージ……」

 

パチュリーの言われた通りに月魅は両手で水を掬う様な形にして目を閉じてじっとし始める。すると次第に月魅の手の上に青白く光り輝く丸い物体が現れる。

 

「ほらね、出来るものなのよ。妖精もそうだけど精神的依存が大きい種族は出来ないと思ったら出来ない事も何も考えずにやるかやる気いっぱいでやれば出来るものなのよ」

 

パチュリーの言葉の後にゆっくりと月魅は目を開ける。そして自身の作り出した物を見て少しだけ目を見開いていた。

そして少しだけ嬉しそうに微笑んでいる姿を見て陽は『良かったな』と内心呟いていた。

 

「さて……彼女の種族である精霊の説明はもう終わったけど……何か聞きたい事とかある人はいないかしら?」

 

パチュリーのその言葉にすっと紫が手を挙げる。挙げると思っていなかった人物からの挙手なのでパチュリーは一瞬驚いていたが聞きたい事があるというのであれば仕方が無いという事で一応聞いてみる事にした。

 

「何かしら? 貴方なら大体理解してくれていると思ってたのだけれど?」

 

「精霊のことに関しては理解出来たわ……ただ聞きたい事というより別で調べてほしい事があるのよ……ちょっと耳貸して……」

 

そう言って手招きした紫の近くまでパチュリーが寄っていく。パチュリーに耳打ちしているため恐らく他に聞かれたくない事ではあるため何か他の事をしようとしていた陽はそう言えばさっきから黙っている陽鬼が気になって隣の席へと目を向けたら既に陽鬼は小さな寝息を立てて眠っていたのだ。

 

「……いつから寝てたんだろ」

 

「説明が始まった辺りさ、自身にとって難しい単語が出てくると脳が思考放棄してしまうタイプなんだろう」

 

と、陽鬼の頭を撫でていたら後ろから藍が声をかける。藍の後ろには橙がいたがどうやら藍の尻尾を触るのに夢中になっているらしい。藍も特に気にした様子も無いが尻尾をかき混ぜる様に動かしているため恐らく遊んでやってるのだろうと陽は思っていた。

 

「でも……流石にこれは酷くないか?」

 

「前よりはマシさ。陽鬼にとってみたらこんな話は本当にチンプンカンプンだろうが前に勉強を教えた時は3分程度でダメだったが今回は+10秒は持っている方だ」

 

それはそこまで変わってないんじゃないか? と陽は思ったが苦笑しながら話しているのを見て恐らく藍自身も同じ事を考えているのだろうと感じ取れた。

 

「……ま、寝たならおぶって帰るとするか……そう言えば月魅は魔力を変換出来る能力が無いのならあの青白い玉は一体どうやって作ったんだ……?」

 

「あの玉は霊力よ」

 

月魅が喜んで未だにじっと見ている青白い玉の正体を考え始めたところでアリスが陽の正面へと座る。

 

「霊力? なんであの子に霊力が宿ってるんだ? 精霊だったら魔力を受け取って魔法を与えるんだから魔力じゃないのか?」

 

「その意見もごもっともだけど……受け取ってないから魔力の線は皆無ね。そうなると残りは妖力か霊力になるんだけど精霊には妖怪の妖の力は宿らないのよ。妖精なら妖力が宿るんだけどね? 

となると残っているのは霊力って事になるわ。多分霊夢にでも見せたら感じ取ってくれるんじゃないかしら? そういう事に関しての感性と勘が強いのが彼女だもの……」

 

「霊力……か」

 

「あと一つ魔力を持っている子を拾えばコンプリートよ。頑張りなさいな」

 

「子供が捨てられてる前提で話すなよ……流石にその言い方は悪意を感じるぞ?」

 

陽がそう言ってもアリスはそんなに気にした風でもなく顔を背けて一番近くにあったところから本を取り出して開いた。そして一切陽に視線を向けず読みながら返事を返す。

 

「あら、私は別に捨てられる前提で話してるつもりは無いわ。そもそも貴方が拾ったこの子達だって別に捨てられていた訳じゃ無いんでしょう? もし仮に捨てられていたんだったらそこは私が謝るわ」

 

そう言われて少しだけ陽は考えた。陽鬼は捨てられたのではなく自身の生まれ育った村から脱走した。月魅は今は忘れている様なので今は不明だ。確かに捨てられた訳では無いがアリスの物言いにはやはり悪意を感じて少しだけ彼女に対する対応を考え始めていると横から魔理沙がやって来て何やらニヤニヤしながらアリスの方を見ていた。

 

「アリスぅ〜正直に言えよ〜

別に魔力がある子を拾えば本当にコンプリートするだなんて思ってないだろ? 大方内心は『貴方は優しいから例え誰かが捨てられていても必ず拾って育ててくれる! だって貴方は子育てが上手ってこと私は知ってるもの! 私はそう信じているわッ!!』とか考えてんだろ〜?」

 

「ぶっ!? あ、貴方何言ってるのよ魔理沙!! 別に私はそんなこと思ってないし考えても無いわ!! というか子育てが上手って何よ!!」

 

そしてそのままアリスと魔理沙での言い合いがその場で始まった。とは言ってもアリスが言った文句を魔理沙はのらりくらりとかわしているので言い合いというよりアリスが一方的に文句を言っているだけなのだが。

その言い合いを見てて陽は魔法使いというのは変な奴が多いのだろうかと思った事である。

 

「……とりあえず、あの2人は置いておいてもう帰らないかしら? 私たちがここに来た理由は月魅がどんな種族か調べるためだしそのやりたい事は達成されたわ。

これ以上いても無意味よ」

 

ぼーっと眺めていると紫が横から声をかけて陽の後ろでスキマを開く。確かに用事はもう無いので帰ろうとして寝ている陽鬼を担ぐ陽。

そういえば、と陽は先ほど紫がパチュリーに何を話していたか気になったので近くによって話し掛ける。

 

「さっきパチュリーと何話してたんだ? 耳打ちする程だし言いたくないならいいけど」

 

しかし紫は聞いてもうんうんと唸ってばかりで言いづらそうにしていたのを察した陽は詮索されるとまずい事なのだろうと思って月魅と手を繋ぎ陽鬼を抱えて紫達よりも先にスキマの中を歩いていく。

ある程度離れたところでボソリと紫は呟く。

 

「……『妖怪が人間に憑依する条件』だなんて馬鹿正直には言いづらいわね」

 

「ですがそれとなく伝えてた方が良かった気もしますけどね」

 

「……藍、今の聞いてたの?」

 

紫の後ろから3歩半後ろに藍は立っていた。橙は疲れて寝てしまっているのか藍におんぶされていたが。

 

「聞いてたも何も私は妖狐とはいえ狐ですよ? ある程度離れたところの音なら大抵聞き逃す事はありませんよ。まぁ先ほどのひそひそ話は聞き取れませんでしたが」

 

「……そう、でも今聞いたことはあの子達には内緒よ。例え結果を彼女からどう伝えられ様とも絶対にあの子達には言わない事、いいわね?」

 

「仰せのままに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と……八雲紫も面倒くさい事を頼んでくれたわね」

 

「ん? 紫に何か頼まれたのか? あいつが頼み事するなんて珍しいな……そんでもってそれを受けるパチュリーも珍しい。今日は珍しい事だらけだ」

 

「それで? 彼女からは何を頼まれたの?」

 

八雲家が紅魔館を去ってから数分後、アリスと魔理沙はまだ残っていたのだがパチュリーに呼ばれたので三人ひとつのテーブルを囲んで座っていた。

 

「……妖怪が人間に憑依する原理、かしらね」

 

「……は? 『妖怪』が? 生霊とか悪霊とかが人間や妖怪に憑依するんじゃなくて『妖怪』が『人間』に? あいつも随分良く分からん事を調べさせ様とするもんだな」

 

「けど意味が無い事を調べさせ様とする女でも無いわ……だからこそ、それを調べる為に色々な視点から調べたくて今この場で私が頼んでいるのよ……何せ何がどうなってるのかすらも彼女が分かってないんだからね」

 

疑問符を浮かべていた魔理沙だったが不意に箒を使って少し高めの本棚のところまで箒を飛ばす。

 

「魔理沙? 何してるの?」

 

「とりあえずいろんな本で調べてみようと思ってな! もしかしたら伝記や歴史本にも何かあるかもしれないし調べてみる価値はあると思うぜ!?」

 

魔理沙がそう言って片っ端から本をとって戻ってくる。そして魔理沙のその言葉にパチュリーはしばらく考えた後、気合を入れる為か手を叩きパンッと乾いた音を鳴らしてから椅子から立ち上がる。

 

「魔理沙の言う通りね、さっさと調べ終えてあの女に調査報告を叩きつけてあげましょうか……待ってなさいよ、この無理難題レベルの謎なんて簡単に解いてみせるんだから……これでも魔女なのよ、私は」

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