東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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ある意味前の続きです。


従者と巫女と庭師

「……あれ? 月魅、どこに行くんだ?」

 

「マスター……えぇ、ちょっと博麗神社に向かおうかと思いまして」

 

朝、陽が目を覚まして部屋に向かうと紫がスキマを開いてその中に月魅が入ろうとしているところを見つけてしまう。

何故月魅が博麗神社に行くのか分からない陽は紫に聞こうとするがどうやら口外してはいけないと言われているのかジェスチャーで口の前で指をバッテンにして喋れないと意思表示をしていた。

 

「あー……その、一応聞くけど何しに行くか聞きに行ってもいいか?」

 

「駄目です、これは幾らマスターでも今は聞かせる事は出来ません」

 

やはりそうか、と陽は分かってはいたが月魅にどう答えさせるべきか悩んでいたが仕方無い、という事で『お願い』をするのを止めた。

 

「月魅、いいから()()()()()()()()()()()()()()

 

『頼み事』ではなく『命令』という形で聞いてみることにした。こうするのは陽には少しキツかったがどこに出かけるのか聞いておかなければいつ、何かあった時に対処が遅れてしまうという事を陽は心配していたのだ。

 

「うっ……ズルイですよマスター、普段は命令なんてしない癖にこんな時に限って命令するなんて……」

 

「なんとでも言うがいいさ。お前の事を心配してるから聞いてるんだよ。だから教えてくれよ」

 

陽が命令しても月魅は珍しく目を泳がせて答えづらそうにしていた。こんな月魅は滅多に見られないと思った陽は自分が命令しても聞けないのかと悩んだがこれが通じないとなるとどうしたものかと頭を掻いた。

 

「……月魅、陽くらいには言ってもいいと思うのだけれど? 貴方の主なのだから言っても罰は当たらないし陽も心配してるから聞いてくるのよ?」

 

二人が少し気まずい空気になっていたのを見かねたのか紫が口を開いて月魅に話し掛ける。

月魅は少し悩んだ後に溜息を吐いて話し始める。

 

「……実は、博麗神社に行き霊力の修行をしようと思っていたんです。けれどマスターにそれを言ったら『怪我をして欲しくないから行くな』って言われて止められる様な気がして……」

 

「……はぁ、何だそういう事だったのか。確かに怪我はして欲しくないけど俺だって誰かの意見くらい汲み取れるぞ?

月魅は自分が修行しないといけないって思ってるんだから修行するんだろ? だったら俺はそれを尊重する、怪我しない様に気を付けて行ってこいって事くらい言えるさ」

 

「マスター……分かりました、行ってきます……!」

 

陽に後押しをされて月魅は満面の笑みでスキマに入っていく。しばらく紫はスキマを開いていたがそろそろいいかと思いスキマを閉じようとしたその時。

 

「んじゃあ俺も行ってくる」

 

「月魅の様子を見に行くためかしら? 貴方さっきの自分の言ってる事覚えているかしら?」

 

「誰も見に行かないとは言っていない……心配過ぎてヤバいんだよほんと……霊夢はあぁいう性格だけど手を抜く事は一切しないのは分かってるし……霊夢の強さの手加減抜きなんて月魅が怪我をしそうで心配で心配で……」

 

まるで父親みたいな事を言い出す陽に紫は苦笑していたが、実を言うと陽鬼もこっそり出かけていたがそれを今の陽に行ったら間違いなくどっちに行くか悩むんだろうなぁとも思っていた。

 

「……そう言えば陽鬼はどうしたんだ? 朝から見当たらないけど……まだ寝てるのか? まさか二人してどこかに出かける用事がある訳じゃ無いよな?」

 

そしてこれも気付かれてしまい紫は心の中で頭を抱えていた。下手な事を言えばすぐにそれが嘘だとバレてしまうのは目に見えているからだ。

そして紫はどういう嘘を付けばいいかすぐに思いついた。

 

「陽鬼も確かに出かけているわ、けどそれは買い物に行かせる為よ。人里のじゃなくて地底で欲しいものがあるから、って言ってたわよ? 地底なら同種の鬼である勇儀がいるから安心じゃないかしら?」

 

「地底、か……まぁ人里とかに、行かれるよりあそこの方がまだ安心……なのか? 妖怪ばっかりだしあそこって血の気の多い妖怪が多かった印象あるし……でも案外そういうところの方がいいの……か?」

 

地底と聞かされて物凄く悩んでいた陽だったが、買い物程度ならいいかと、何とか自分を納得させていた。

実際は地底には確かに行っているのだが何やら自分に合った武器とやらを探しに行っている事を紫は知っている。だが今言う訳にはいかないので嘘を吐いて黙っていた。

 

「それじゃあ様子を見に行ってくるよ」

 

「あ、ちょ、陽……行っちゃったわ。まったく……過保護なんだから」

 

有無を言わさずスキマの中に入り姿を消す陽。自分までついて行く訳にもいかないがなにぶん陽は月魅と違い空を飛ぶ事も弾幕を撃つ事も出来ない、気が気で仕方が無かった。誰かにやられるのでは? と。

しかし行く場所は博麗神社なので一応安心といえば安心ではあるがやはり気になるものは気になって仕方が無い紫。陽の心配と霊夢の信頼……どちらを天秤にかけるかと言えば━━━

 

「……霊夢なら、安心……よね。あの直感力と強さがあるなら……うん」

 

一応霊夢への信頼という事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほらほら、結界作るのはそんな簡単じゃないわよ」

 

博麗神社、ここで月魅は霊夢に結界を教えられていた。巫女である彼女の主な武器は札と結界だからだ。

しかし、いきなりやった事も無いものを作れと言うのは余程の才能が無いと無理な話であり、月魅には作る事が出来ないのだ。

 

「はぁはぁ……」

 

「……さっき来たばっかりのはずなのにもう始めてるのか」

 

そして、そんな月魅の様子を陽は茂みに隠れて見ていた。気になるとはいえ、修行の邪魔になるといけないと思っての行動だったがハッキリ言えば既に霊夢にはバレていた。

かといって気にしててもしょうがないので霊夢は見て見ぬ振りをしていたが。

 

「……」

 

霊夢は修行に来た月魅と隠れてついてきた陽を見てふと考える事があった。

どうして力のない主に従う事が出来るのか、と。いや、寧ろ彼らの関係性は紅魔館の主従とも、白玉楼の主従とも、永遠亭の主従とも、八雲の主と式神の様な関係性とも全て違うように感じ取っていた。

何故ここまで従えるのか、あまり物事に興味を持たない霊夢もこれには少し興味持っていた。

 

「ねぇ、一つだけいいかしら?」

 

「……? 何でしょうか……? どこか間違っていましたか?」

 

「いや、そういう訳じゃ無いけど……あんたって……いや、あんたとあの鬼の子もそうだけど……なんで自分よりも弱い主を守ろうとしてるわけ? いや、そもそもあんた達の関係は主と従者には見えないわ」

 

肩で息をしながら月魅は目を伏せる。主従の関係に見えないと言われても自分は陽の従者のつもりでいたからだ。しかし、よくよく考えれば陽鬼は陽の事を呼び捨てにしていた。

月魅はその事を無視していたが考えてみれば確かにあれはかなり主従の関係には見えない。恐らく自分だってそう思うはずだろう。

 

「……私はマスターの従者のつもりです。陽鬼もそのつもりなんでしょうけど彼女は……例え目上であっても絶対に敬語は使わずにまるで元来の友人であるかの様に話し掛けるのでしょう。

逆に私は誰にでも敬語を使います。陽鬼はいつもと同じ調子で、私はいつも誰かを敬う様に話している。それが主従に見えない証拠じゃないでしょうか」

 

「あー……ならそういう事にしておくわ。多分理由は別にありそうな気がするけれどそれ以上はアンタらが気付く事だしね。私には関係無いから。

ほら、早く結界完成させちゃいなさい」

 

そう言って霊夢は縁側に寝そべって月魅を観察し始める。これが修行と言えるようなものなのかは微妙だが霊夢はだらけているように見えてちゃんと月魅の事を見ているのだ。

それを理解している陽は密かに月魅の様子をじっと観察しているのであった。

 

「あれ……博麗神社に霊夢以外の誰かがいるなんて珍しい……」

 

「んー……? あら、妖夢じゃない。喧嘩なら幾らでも買ってあげるわよ? 私に負けて身ぐるみ剥がされたいなんて変わった趣味を持ってるわね」

 

「冗談、私はそこまで酔狂な事はしない。にしても……何故紫様に拾われていた男の従者がここにいるの?」

 

「あー、強くなりたいとかなんとか言って私に修行をつけて欲しいって頼んできたのよ」

 

煎餅を齧りながら霊夢はだるそうに答える。妖夢はまた珍しいものを見た、と言わんばかりに月魅の事を見ていた。

 

「……あれ、あんたこの子と会った事あったっけ?」

 

「前に一度だけ会ったことがあった。それで知っただけだからどんな子かまではよく知らなかったけど……刀を使うんだ……」

 

「良かったじゃない、刀仲間が増えて。

あ、どうせならあの子に刀の稽古付けてあげなさいよ。あの子刀を使い始めたのつい最近らしいわよ」

 

「つい最近……なるほど、それなら型が我流のそれなのは納得したけど……というか、刀を使って結界を展開させようとしてるの?」

 

「あー、本来なら札を使わないといけないけどどうせならあの子には面白い結界の展開のさせ方を覚えさせてもいいんじゃないかと思ってね。

投擲に関してはセンスあるっぽいけどそもそも使える霊力が少ないみたいだから刀にしたわ」

 

「ふーん……」

 

妖夢は一旦黙って視線を月魅に戻した。そして数分してから霊夢に再び戻して口を開く。

 

「本音は?」

 

「流石にこれ以上似た様なヤツが増えるのは勘弁。唯でさえ早苗と色々比べられてるのにこれ以上比べられる対象が増えたら溜まったもんじゃないわ」

 

心の中で密かに『強さ以外基本負けてるよなぁ』と思いながら月魅の方に視線を戻すと、札が妖夢の頬に向かって飛んできた。

 

「あんた今すっごい失礼な事考えたでしょ、罰としてそれ貼り付けていなさい。しばらく剥がれないからいい笑いのネタになるわよ」

 

「ちょ、これは洒落にならないから……あれ? あの子棒立ちになってない?」

 

「え?」

 

妖夢に言われて霊夢も月魅に視線を戻す。確かに言う通り月魅は棒立ちになっていた。

しかし、見た感じ疲れて休んでいるとかじゃなく何やらブツブツ小言を呟きながら棒立ちになっていた為何かあったのかと霊夢は少し心配した。

だが、茂みの奥に隠れている陽が出てきていないという事はまだ大丈夫なのだろうと思い動こうとした霊夢もそのまま寝転がった体勢のままになった。

 

「あれ、行かないの?」

 

「茂みの奥にいるあの子の主がバレるの承知で出てこないってことは大丈夫って事でしょ。彼かなりの親バカみたいだしね……バレるのが嫌だから出て来ないなんて事も無いでしょうし」

 

「なるほど……でもあの子さっきから何を喋ってるのか……」

 

「そんなの知ったこっちゃ━━━」

 

「霊夢、ちょっといいですか? 結界を作って欲しいんですが」

 

『そんなの知ったこっちゃない』と言いかけた霊夢のセリフを遮って月魅が声を出す。

別段断る理由も無かったので適当に月魅の目の前に人が一人分入りそうな結界を作る。馬鹿みたいに力が強かったら壊せる程度の結界だが一般人並の腕力しかない月魅には腕力では破壊不可能である。

さて、一体どうやって破壊するのかと霊夢は思って観察していたが━━━

 

「……はっ……!」

 

月魅は鞘から刀を居合斬りの要領で抜き、結界に一閃の斬撃を与える。

しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……おおっ? え、何今の……妖夢、あんた今のちゃんと見てた? 私が見た分だとどう見ても結界を斬った様にしか見えなかったんだけど」

 

「……確かに結界を斬ってたけど……なんだろ、斬る寸前に刀に変な半透明のものが付いてた様な……そうそう、丁度霊夢の作ったあの結界みたいなのが刀の形になってくっついてた感じ」

 

妖夢の言った事を頭の中で考える霊夢。自分の結界の様なものが刀に纏わり付いてるという部分がよく分からない為よく考える。

そしてふとある一つの結論に辿り着く。

 

「……まさか、他の結界と同調する結界でも作ったって言うの?」

 

「それだけじゃ無いですよ……『これ』は飛ばす事も出来ます」

 

他の結界と同調する結界を作ったという事実は霊夢を驚かせた。しかし、それを飛ばせるという事はその結界が飛んでくるという事である。

まさか結界作りを教えていたつもりが結界キラーになってしまうなんて……と霊夢は思ったが飛ばしてどうなるのか、とふと思ってしまう。

 

「じゃあ私が相手をしましょう。同じ剣士同士霊夢とは別の視点を感じ取れるでしょうし」

 

そして霊夢が何かを喋るよりも先に妖夢が背中に背負った刀、白楼剣を抜く。最早試し撃ちをさせてやろうという者の顔で無く完全に同種の者と戦いたいという顔になっている事は霊夢は敢えて突っ込まないでおいた。

そして、それを茂みで見ながら陽はふと思っていた。

『陽鬼は大丈夫だろうか』と━━━




月魅が新技を覚えましたね。原作ゲーム的に言うのであれば結界のように展開するスペルを全貫通する弾幕という事でしょうかね。
飛ばせて結界貫通持ちの技となれば
後編は陽鬼側の話となります。
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