東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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今回は白土の話です。


狼の領域

月風陽の旧友、黒空白土。

旧友と書いてはいるが、今は彼の命を狙う刺客のようなものでもあり敵対関係である。

その彼が、幻想郷ではない外の世界のとある場所で力を得るために、とある三人の少女を倒してその力を得た。

無論、その3人はれっきとした人外の存在であり、人間で言うところの『神狼』にあたる部類の者達でもある。

彼は手に入れた力を試そうと幻想郷に戻ろうとしている最中、とある一段に絡まれていた。

 

「貴様ァ!あのお方達をどこへやった!!」

 

「なんだ……?あー、てめぇらここの近くの村にいた奴らか。なるほど、妙に食いもんがあるわ祭壇は妙に綺麗だわの割にはあの狼共は周りにゴミを散らかしまくってるわで若干違和感があったんだ。

なるほど、テメェらがあいつらの世話焼きをしてたってことか…納得したぜ、そりゃあテメェらが祀る神様なんだからお世話しねぇといけねぇわな。」

 

「貴様、話を聞いているのか!?あまり調子に乗っていると痛い目を見るぞ!!」

 

「それはこっちの━━━」

 

そうだ、と白土はある提案を思いついた。折角新しい力を手に入れたんだからそれを行使して試してみるのも悪くない、と思い至ったのだ。

 

「お前らがあいつらよりつえぇかどうかは知らねぇが……いいだろう、相手してやるから来てみろよ。」

 

「くっ……お前みたいな人間に我ら崇高な部族が負けてたまるか!!」

 

そう言いながら周りを囲んだ者達が一斉に火や水や風などを発生させて襲いかかる。だが、そんな状態でも白土は上に飛ぶことで避けてスペルカードを使う。

 

「へっ……狼化[狩り尽くす猟犬]」

 

白土がスペル宣言をすると、白土の体から三つの光体が出てくる。そしてその一つ一つが白土の中に再度入り、白土はまるで狼男が満月に向かって吠えるかの如く高らかに雄叫びをあげる。

 

「ウオオオオオン!!」

 

「な、何だあの姿は……」

 

「ま、まさか……あのお方達を取り込んだと言うのか!?」

 

白土の姿は変わった。髪の色は茶色となりまるで狼の怪我であるかのように長くなる。耳も頭の上に移動し、まるで本物の狼男のような見た目になる。

爪も牙も伸び、相手を見るその目は敵対するものを見る目ではない、獲物を喰らわんとする捕食者の目になっていた。

 

「……新しいこいつらの能力……お前らで試させてもらうとしよう。」

 

「舐めるな!!」

 

再度、術を使い白土に攻撃をしかける者達。しかし、白土はその全ての攻撃を両手で触れて消していく。

 

「な、なぜ効かない!?常人ならば触れるだけでも致命傷になりかねないんだぞ!?」

 

「フェンリルの『喰らう程度の能力』だ。俺の両手で触れたものを体内にエネルギーとして蓄積させる。これで人間を喰らえばその全ての能力が俺にプラスされることになる。

ほら?お前らの技がそれで終わりなわけないだろう?もっと勢いよく来てみろよ。そうじゃないと張り合いがねぇ。」

 

「ならば!術ではなく技で挑めばいいだろう!!幾らその能力が強いとはいえ近くで素早い攻撃をすれば簡単に攻略できる!!」

 

そう言って別働隊が潜り込んでいたのか、白土の後ろから攻撃を仕掛ける。白土に目掛けて振り下ろされた槍、しかしその槍が捉えたものは白土ではなく1枚の白い紙切れだった。

 

「か、紙だと……!?バ、馬鹿な……あいつはどこに……」

 

「ここだ……よ!」

 

そして、白い紙切れから槍が飛び出してきて男の胸を穿った。そして、紙からもやが出てきたかと思えばそれがスグに白土の形を成した。

 

「ティンダロスの能力……『直角間を移動する程度の能力』直角のものならば俺はどんな物にでもその姿を隠すことが出来る。そして、直角があるならばどれほど距離が離れていようと俺は移動が可能だ。

そして俺自身の能力は改造する程度の能力。これで直角のものは作り放題だ。さぁどうする?手数で攻めるという案は悪くは無い━━━」

 

白土が喋っている時に、1発の銃声音が聞こえる。それは白土の胸を穿った銃弾を発砲した音であり、その一撃を受けた白土は地面にそのまま倒れた。

 

「……ふん、若造が調子に乗るからだ。術や技でダメなら……技術で攻めていけばいい話だ。」

 

「なるほど、それは確かに正論だ。しかしそれは一方で今のお前のように勝ちを確信させてしまう戦い方になるためにあまりオススメはできなさそうだ。」

 

その言葉と共に白土が出てきた紙から()()1()()()()()()。その異様な光景に周りの者達は流石に驚いていた。

 

「なっ……!?貴様は確かにそこで死んでいるはず……一体どうやって……分身……では無い、なら消えているはずなのに……!」

 

「困惑しているようなのでもう一つ教えてやろう。『増える程度の能力』だ。こいつはケルベロスの能力だな。自分の任意で数を増やせることが出来る。とは言っても……あいつはあいつ自身の特性上三人が限界、俺はあいつの特性とやらに引っかからないんで無限に増えることが出来る。

ま、その代わりこの能力の本来の使い方ができねぇのが痛いところだが。」

 

「くっ……!?撃てえ!撃てえ!!」

 

一人の男の叫びにより周りの者達が銃や術を白土に向けて放っていく。しかし、白土はその全てを喰らう程度の能力で吸収していく。

 

「さぁて……まだやるのか?これ以上俺とやり合うつもりなら……俺もお前らを殺らなくちゃあならなくなっちまうんだがよ。」

 

「あのお方達に手を出したお前を!この村の存在を知ったお前を逃がすわけにはいかん!!命に変えても討つ!」

 

「その心意気やよし……しかしだな、勇気と無謀は違う。俺を殺そうとすることは構わないが自分のことを客観的に見れないやつはこれから死んでいく。

ま、兵士としては特攻するのが正解なんだろうけどな……特攻出てきが倒せないなら無駄死になってしまう……それが理解出来ているのか?」

 

白土の言葉も聞こえず、一斉に白土に襲いかかる者達。それを見てもう話し合う必要は無いと悟った白土は、容赦を切り捨て殺し合いでのみ目の前の全ての者達と語らう事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、今更ながら俺の手は汚れたわけだが……気にしてはられねぇな。ライガの野郎に無理言ってここに連れてこさせてもらったんだ。あいつをぶっ殺すためにな。

例えそれで孤独になったとしても……杏奈が無事ならそれでいい。そのためならどんだけ屈辱的だろうと命令には従うし、命令した奴もいずれ殺す。それが今の俺の生き方だ。この力……いずれライガの野郎もぶち殺す。それまでにせいぜいあいつを弱らせれるくらいには強くなってくれよ……陽。」

 

そう言いながら白土はその場から離れる。白土が去った後にはただ大量の血の跡だけが残されていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……さぁて、どう見る?八蛇。」

 

「どうにもこうにも……今見た通り聞いた通り……黒空白土は反旗を翻す気満々だということだけは理解できる。どうする?人質を使うか?」

 

白土が去った場所にあった木の上、そこにはライガと八蛇が存在していた。

 

「いいや、あいつの目の前に人質は出さない。出せば瞬間奪い取られて終わりさ。あいつの能力は最早神でも苦戦するレベルだろうしな。あいつの能力はそれだけ未知数ってこった。」

 

「『改造する程度の能力』『喰らう程度の能力』『直角間を移動する程度の能力』『増える程度の能力』……一つは白土自身の、残り三つは神狼達から奪い取った物。

そしてそれらの能力は併用可能……中々困った能力を身につけさせたものだなライガ。飼い犬に手を噛まれるようなことがないようにしてもらわないとな。」

 

「飼い犬なんて可愛らしいものだったらいいがな……」

 

不敵な笑みを浮かべるライガのその顔は決して今の白土でさえも倒せる案があるという訳ではなく、ただ彼と戦う時が少しだけ楽しみと言ったような表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?なんだ?スペルカードが光って━━━」

 

しばらく歩いた時、神狼達を封じたスペルカードが光り出した。そして、その光が眩く光り輝いたかと思えば、目の前には彼が封じた3人の神狼達がいた。

 

「……え?な、何じゃ……?」

 

「……私達は、確かやつに……」

 

「ひぃっ!!目、目の前にいるぅ!!」

 

ケルベロスのそのひ弱な声を聞いて残りの2人も一瞬で警戒に走る。しかし、白土はそんな事は一切気にしていなかった。白土は今3人の首についている『首輪』に気になっていた。

 

「おい、お前らのその首につけてんのなんだ。」

 

「はぁ?何を………げげっ!?ほんとに何かついてるし!?うわっ!?フェーちゃんとダーちゃんの首にも付いてるよぉ!!何なのさぁ……この首輪……いいから外してくれよぉ。」

 

ケルベロスが行っている一人漫才を無視して白土はフェンリルとティンダロスに視線を向ける。

 

「そうしてると本当に飼い犬みたいだな?フェン……そうだな、丁度いいし渾名つけるか。フェンリルはフェン、ティンダロスはティーン、ケルベロスは……」

 

「渾名なんて付けられたくないよぉ!でもこんな首輪付いてるってことは服従の証みたいなもんだし逆らえないよね。だからってそんな暴虐許せるわけないでしょう!!」

 

「……お前ほんと忙しいな。面倒臭いからひ弱な方はルー、諦め癖ある方はベー、なんか主人格っぽいのはスーって名前にしよう。三人合わせてルベスだな。」

 

そんなこと言って一人で三人分騒ぎ立ててるケルベロスに白土が視線を向けている最中に、後ろからフェンリルがゆっくりと静かに近づき、白土の頭を目掛けてその手を振り下ろす。

喰らう程度の能力を使ってその頭を消そうとしたのだ。しかし、フェンリルの手は途中で止まった。

 

「……いや、何してんのお前、そんな空中でぴったり止まって……」

 

「くっ……!?な、何故だ!!何故体が動かない!!」

 

「……まぁ、うん。その首輪のせいだろうな。別に俺が意図して付けたわけでもなければお前らがつけたとも考えづらい。となると……スペルカードの効果でお前らは俺に危害を加えることはできなくなってるってわけだ。もしかしたら完全服従出来てるかもしれねぇな。」

 

その言葉を聞いてからフェンリルは一度白土から離れて地面に降り立つ。どうやら敵対行動を取らなければ動かなくなる、なんて事が無くなるのだろうと白土と神狼達は理解していた。

 

「……何故、儂達なのじゃ。お主の強さなら別に儂達でなくとも別の神級の者を屠っていけばよかったのではないか?」

 

唐突にティンダロスのティーンが口を開く。ティーンのその質問にルベス達やフェーもティーンの方に視線を向けた。

 

「単純な話さ。とある情報提供者……今のところ俺を顎で使ってる奴らだが、そいつらに渡された情報で一番お前らが俺と能力の相性がいいと思っただけだ。

それ以外の理由が何か必要か?」

 

「っ……儂らはお主の道具では無い!」

 

ティーンが叫ぶ。しかし、それでも白土は表情一つ変えることはなく。淡々と口を動かした。

 

「だが負けた。負けた以上はしばらくは俺の言うことを聞いてもらわにゃあならない。なぁに……お前達にとっても申し分のない相手だ。

お前ら……神と伝説の蛇相手にするかもしれねぇんだぞ?それでも俺について行かねぇって言えるか?」

 

「……ふん、そんなものお主1人で戦えばよかろう。儂らには関係の無い話だ。そこまでして戦いたいのならまた別のヤツを使うのだな。」

 

「あらら〜、ここまで言ってもまだ戦わないって言うのか。お前ら神狼とか名ばかりのただの犬っコロだな。首輪なんて付けてるからもう確定だな、こりゃあ。」

 

「……なんじゃと?」

 

白土の言ったことに眉間に皺を寄せて反応するティーン。それに対して白土は『引っかかった』と内心でティーンのことを嘲笑い、そして他2匹は『落ち着け』と止めようとするが、ティーンの睨みで軽く怯んでいた。

 

「なにか文句でも?お前らが神と伝説の蛇倒したらそれはそれは伝説になれるだろうな?お前らの力も俺を超えるくらいに強くなれるかもしれない。神狼とは言え伝説の生物は基本的には崇められれば崇められるほど強くなれる。もっと強くなりたいとか思わんのか?」

 

「……なるほど。」

 

妙に納得し始めるティーン。彼女の考えとしては、その神と蛇を倒せれば確かに今よりももっと崇められる。崇められれば崇められる程その力は強大になっていくのだとすればいずれ白土の支配から抜け出せるかもしれない。

そう考えれば今はこの男に従っておくのも悪くない、とさえ思えてきたのだ。完全に乗せられている、ということにはティーンだけが気づいていなかった。

 

「……いいじゃろう、ならば儂らがお主を殺せるまで儂らはお主に従うとしよう。」

 

「ダーちゃんちょっと落ち着いてよぉ!!でも実際言ってることは正論なんだよね。正論だったとしてもこんな男に従うのなんて嫌よ!!」

 

「……だが、今だけはそうしてないといけない。諦めよう、ケルベロス。」

 

フェーの言葉にルベス達も黙った。

こうして、白土の元に3人の神狼が集まった。お互いがお互いを利用して自分の目的だけを達成するために。




ティンダロスのティーン、フェンリルのフェー、ケルベロスのルー、ベー、スーの5人が追加されました。
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