「お勉強タイムといくのじゃ。」
「……勉強?俺なにか覚えないといけないことあったっけ?」
「ふむ、そう言われるとお勉強とは少し違うのう……妾は
八雲邸。紫が珍しく仕事でいないため、丁度いいということで黒音がどこからかホワイトボードを持ってきて仁王立ちしていた。若干ドヤ顔なのが陽は少し気になったが、恐らく先生ぶりたいだけなのだろうとスルーを決め込むことにした。
「お喋り会と言っても……何を話し合うんだ?とりあえずその『主様』ってなんだ?」
「む?昨晩月魅から『名前をつけられたのなら主と敬え』と言われてのう……ならそうしようと思った訳じゃ!ただマスターと呼ぶのは何となく妾の癇に障るのでな、ならば『主様』でいこうかと思っての。
2重で敬っておるから別にいいじゃろう?」
「いやまぁ……別になんて呼んでくれても構わないんだけどさ。ただちょっと気になっただけで……気にせず続けてくれ。」
陽のその言葉を聞いて黒音は軽く頷いてからボードを叩く。何故叩いたのか3人は突っ込まないでおいた。
「まず!妾達がどういう存在か示さねばならぬからな!いわゆる自分がどういう妖怪でどういう存在なのか自己PRしてもらうのじゃ!」
「ノリノリだね……えーっと、その『じこぴーあーる』って言うのは自己紹介的なのでいいんだよね?」
「そうなのじゃ。とりあえず妾から説明させてもらうとするかの。
妾は黒音、この名は主である月風陽からもらった名前じゃ。まぁ名前に関しては主様以外は全員同じじゃし飛ばしても問題なさそうじゃな。
とりあえず言わせてもらうと……妾は吸血鬼じゃ。しかし所謂『弱点を克服した』タイプの吸血鬼でな。
妾は日の出ている時間に起き、月の登る時間に眠る……つまり他の者達と同じ生活を送る変わった吸血鬼とでも思ってくれれば良い。妾の事は『デイウォーカー』とでも呼んでくれれば良い。」
その時、部屋の襖が開かれて藍が現れる。4人は一斉に藍の方を見たが藍は気にせずいそいそと陽鬼の隣に座る。そして、手を上げる。
「な、何じゃ?」
「黒音が日の光を克服した……と言うよりは大丈夫な吸血鬼な事は分かった。ならば他の吸血鬼の弱点はどうなんだ?ニンニク、流水、聖水、十字架……それらに関してはやはりダメージは入るのか?」
「む?当然じゃ、妾は日の光に耐性があるだけで他の弱点に対しての耐性は皆無じゃ……じゃが、はっきり言わせてもらえばニンニクくらいなら匂いを我慢するだけでなんとかなるのじゃ。あれは妾達には匂いがキツすぎるのじゃ。
故に妾はペペロンチーノは食べられるのじゃ。因みにニンニクを食べられる者は『ガーリックイーター』と呼ばれ、流水を克服した者は長いので『RWベイザー』と呼ばれて聖水の場合は『HWベイザー』と呼ばれるのじゃ。十字架は『クロスウェアー』じゃな。」
吸血鬼なのにペペロンチーノを食べれるのか、と陽は少し呆れたが匂いを我慢するだけでいいのならそもそもそれは弱点なのか?という疑問がよぎっていた。
「なるほど、理解した。いきなり来て悪かったな、今から参加するけど続けてくれ。」
「そ、そうかの?ならば続けさせてもらうが……先ほども言った通り妾はデイウォーカーじゃ、そして……妾の武器はこの二丁拳銃じゃ。」
そう言って黒音は魔法陣を展開してそこに手を入れて銃を二つ取り出す。黒をベースにして、金色の模様が描かれている綺麗なデザインだと陽は感じていた。
「吸血鬼が銃とはな……中身はなんだ?まさか銀の弾丸でもないだろう?あれも吸血鬼の弱点みたいなものだからな。」
「当たり前じゃ、誰が好き好んで悪魔殺しの弾なぞ使うものか。銃とは言っても妾のこれは魔法の媒介じゃ。普通に魔法を使うのもいいのじゃが、銃という媒介を通すことで妾の魔法の威力を底上げできるのでな。『放つ』というイメージがあり、かつ手持ちで運べるものと言ったら銃に限るのじゃ。
これで何人ものヴァンパイアハンターを仕留めてきたものじゃ……無論、ヴァンパイアハンターの中でも極めつけで腐ったヤツら限定じゃがな。」
黒音は慣れた手つきで二つの銃をクルクルと回転させていく。そして時折ポージングを決めながらドヤ顔も決めていた。
「ふっふっふっ……因みに、妾には使い魔が二匹おるが……逃げるまでに魔力を使いすぎたのか今は呼び出せんのじゃ。」
「魔力を使いすぎたって……一体どれくらいの期間逃げていたんだ……」
「ざっと1000年ほどじゃな。何せ、妾は小さい頃に実家から逃げてきたんじゃ……そして気づけば体は成熟しとったからのう……主様に分かりやすく言うと見た目的には人間の5歳くらいの幼児が18程まで成長した感じじゃ。その間で妾は1000の誕生日を迎えておる。」
つまりレミリアやフランより年上なのか、と陽は理解していた。レミリアと同じくらいだと思っていたのが、実は倍以上の歳を取っていたとは陽には予想外ではあった。
「……にしてもよくそこまで長い間逃げきれていた、というか……そこまで追いかけてくる黒音の実家やヴァンパイアハンターが凄いというか……」
「ヴァンパイアハンターは西洋には結構いるみたいじゃからの。
まぁそんなことより妾の紹介じゃな……えーっと……他に何か言うことは……」
その時、藍がすっと手を上げる。何も言ってないのに手を挙げた藍を不思議に思いながらも黒音は藍を指名する。
「なんじゃ?藍よ。」
「お前の得意魔法って攻撃魔法なのか?昨日の様子を見る限りだとああやって子供に化けているものの真の姿を出させる魔法だと思っていたのだが。」
「あれは妾が『子供になる魔法』の術式を無理やり書き換えた物じゃ。魔力を温存するために小さいサイズになったまでは良かったのじゃが、元に戻らんくなってしまったのでな、とりあえずチャチャッと作ったのじゃ。」
黒音のその言葉に藍は呆れ半分驚き半分の表情をしていた。いや、陽も月魅もそれぞれ驚いていることには驚いていた。魔法のことが良くわかってないため藍よりも驚きが少ないが。
そして陽鬼はよく分からない、という表情になっていた。
「……動かない大図書館も驚きのあまりひっくり返りそうなことを言うんだな。」
「む?魔法の書き換えならいくらでも出来るのじゃ。寧ろ、自分の魔力に自身のある魔法使いは初心者向けの魔法だけで色んな相手と戦えることが出来るのじゃからな。
シンプルイズベスト、単純な力こそ最大の強さを誇る。ノーレッジ卿は単純高火力の魔法だけで戦える人物じゃから魔法を作ろうとせんのじゃろうな。
まぁ、単純に体力使う作業じゃから体力が無いせいで研究だけに留まってしまっているだけなのかもしれんのじゃがな。
とまぁ……こんなところかの?もっと何か知りたいことでもあれば後で個人的に教えてやるのじゃ。」
「えーっと……それじゃあ次は俺が行くか━━━」
そして、順番に陽、月魅、陽鬼と進んでいって今回のお喋り会は終了した。そして、個人的に魔法のことが気になった陽は黒音の部屋に行って魔法の基礎だけを教えてもらおうと思い、黒音の部屋に向かって行ったのだった。
「というわけで教えて欲しいんだが………」
「まぁできるかどうかは置いておいて、魔法の知識を蓄えようとするその心意気は妾は素直に嬉しいのじゃ、主様よ。」
そして、部屋に来るとなにやら紙を部屋中に貼り付けられている光景が陽の目に広がった。全てアルファベットで書かれている為、陽には何が書かれているか良く分からなかった。
「まぁ手っ取り早く説明するのじゃ。まず、魔法の構築には『何をしたいか』『それをどうしたいか』という制約の元、術式を詠唱するのじゃ。
例えば火を出して相手に放つ魔法だとすると『発火』『空中浮遊』『発射』の3工程が必要となるのじゃ。
この程度なら初心者でも可能じゃ、単純に魔法を使う時の特殊な言語を3つ並べれば完成なのじゃからな。これが水や風に置き換わっても大した違いは現れないんじゃ。その程度ならちょっと慣れてくれば口頭の無詠唱でも問題は無いからの。頭の中でイメージした方が口頭の詠唱より早いのじゃからの。」
「あぁ、パチュリーが偶に本を盗りに来た魔理沙相手に魔法を連続で使ってたけど一応あれも詠唱は必要なのか。」
「そういう事じゃ。」
軽く頷いた黒音だったが『ただし』と、念を押すように付け加えてから再び話し始める。
「これが複雑化してくると少し面倒になってくるんじゃ。例えば雷を出す魔法の場合は火と水の魔法を同時に使って水蒸気を作り出す。それに風の魔法を当てて雲を作る。その出来た雲を地の魔法で振動させて雷を発生させる。ここまで工程を踏んで、ようやく雷の魔法の『発電』が出来上がるのじゃ。
そして、これを相手に放つとなると先程説明した二工程を行わねばならぬ。」
「……あれ、でも雷の魔法ってパチュリーが前に試して撃ってたような記憶があるけど。口頭の詠唱無しで。」
「ノーレッジ卿は色々と規格外じゃからな。色々と幻想郷の事を調べたのじゃが幻想郷には魔法を使う者は四人いるらしいの。
人間の霧雨魔理沙、魔女のアリス・マーガトロイド、同じく魔女のパチュリー・ノーレッジ、尼僧の聖白蓮……まぁ、最後の1人はあまり使うこともないようじゃが。」
「その4人がどうしたんだ?」
そう聞くと黒音が何かを悩むかのように、顎に手を当てて唸り始める。そして、何かを思いついたのか一人で頷いて何かを納得しているようだった。
「自分の得意な魔法は詠唱無しでも使えるものなんじゃよ。主様だって得意料理を作る時に一々口に出して作り方を確認することは無いじゃろ?
それと同じでその四人も得意な魔法に関しては詠唱いらずなのじゃ。
妾はノーレッジ卿としか会ってないから他三人がどんな魔法を使うのかは知らないのじゃが。」
「あぁ、何となく理解出来た。要するに『体が覚えている』って奴だな。」
「そういう事じゃな。例え違う魔法だったとしても性質が自分の得意魔法と似たようなものならすぐ慣れて詠唱要らずになってしまう。
まぁそもそも幻想郷ではスペルカードというものが存在しているから、魔法もその中に入れていつでも発動できるからの、本当に便利なものじゃな。妾も魔法使い達と一戦交えてみたいものじゃ。」
黒音がそう言って陽が苦笑する。すると突然黒音の真上からスキマが開き紫がひょっこりと上半身を出す。
「それなら一戦交えてみる?」
「ぬ?どういう事じゃ?確かに妾は一戦交えてみたいとは言ったが……」
「幻想郷の住人は基本的に……スペルカードルールを作ったからなのかもしれないけれどこぞって争ったりすることが多いもの。魔理沙辺りなら喜んで受けてくれそうだからやってくればいいと思うわ。」
いざ戦ってみろ、と言われても反応に困ってしまっている黒音。そして、陽は一体黒音に何をやらせたいのか?と考え込む。聞いてもよかったが、もしかしたらただ本当に願いを叶えてあげたいと思ったなのかもしれないと思ってしまったため、あまり不用意なことを言うのは避けたくなってしまっていたのだ。
しかし、だからといって懐疑的にならないわけではない。黒音も陽も何故紫が突然こんなことを言うのか分からないのだ。
「……あー、別に何かを頼もうってことじゃないのよ?ただ魔理沙が腕試しなら丁度いいかもしれないと思ったのよ。
パチュリー・ノーレッジは動かない、聖白蓮は争いを好まない、アリス・マーガトロイドは基本人形を作ってる……だから魔理沙が適任と思ったのよ。」
「なるほど、理解したのじゃ。ならばその言葉に甘えさせてもらうとするかの。実際、人間の身で魔法を使うというのは少し興味深いのじゃ。」
「じゃあ行ってみましょうか。」
そう言って紫は一度床に降り立って、再度スキマを開き直した。そして意気揚々と黒音はスキマの中に入っていき、何となく心配になった陽も入って、最後に紫が入りスキマは閉じた。
「ねー、藍が塩が無くなったから換えが欲しいって……あれ?陽?」
後から陽鬼が部屋にやってきたが、既にいなくなった部屋を見てその後ずっと陽を探していたのはまた別の話である。
銃のイメージはBlack Catのトレインのが一番近いですね、イメージとしては。