「お?最近めっきり姿を見なくなった陽じゃないか……ってまた子供増やしたのか?人の恋愛観にケチ付けるつもりは無いが……あんまり幼女を泣かすもんじゃないぜ。」
「違うって……レミリアから預かった子だよ。匿ってほしいって言うから面倒見てあげることにしたんだよ。」
「なるほど、つまりレミリア……いや、これは紅魔館全員を手篭めにしてどこからか幼女を連れ去ってくるように頼んだ訳か……意外とプレイボーイな所があるわけだな……」
「だから……あぁもう、何か否定する気も失せてきた……」
「主様、流石に今のところは否定しておかないと紅魔館全員に有らぬ疑いを掛けられてしまうのじゃ。」
魔法の森。霧雨魔理沙、並びにアリス・マーガトロイドが自身の家を置いている場所である。
普通の人間でも入れるが、中心部分に近づけば近づくほど霧のようなものが濃く、魔法を嗜んでるものでないと中心部分に入るのはキツイとされている。
「で?本当はこの私に何の用だ?まぁ……そっちのチビが臨戦態勢な辺り大体の予想は付くけどな。
けど見た限りあんまり強く見えなさそうだぜ?いや、幻想郷でチビな奴は大抵舐めてかかると痛い目に遭うんだ。そして私に喧嘩を売りに来る……魔法でも嗜んでいるってところか?私に目をつけたところは評価してやるぜ。いずれ私は最高の魔法使いになる女だからな。」
頭がいいが自信過剰な所がどうにかならないのか、と陽は思っていた。しかし喧嘩を売りに来た、というのは少し語弊があるのだが似たようなことを今している時点であまり強くは言えなかった陽であった。
「うむ、簡単に言えば妾も魔法を使うのじゃがな?その相手として丁度いいのがお主だったのじゃ。他は戦う意志が基本的にないからのう。」
「成程、納得だ。アリスもパチュリーも全然戦おうとしないしなぁ……白蓮は頼んだら戦ってくれるとは思うがありゃあ魔法使いと言うか魔法拳闘士だな。ただの格闘家だぜありゃ。それで?お前の相棒はその銃二つでいいのか?見た感じ……私の八卦路と似たようなアイテムって訳だ。」
「分かってくれる人がいてくれて妾は嬉しいのじゃ。では、頼めるか?」
「御茶の子さいさい、この霧雨魔理沙様に任せとけ。陽と紫は観戦してるだけか?まぁ、私一人にさすがに三人相手はきついけどな。」
「えぇ、私達は観戦してるだけよ。その子をちょっと見てほしいだけなんだもの。」
魔理沙は『了解』と帽子を深く被りながらニヤリと笑いつつそう呟く。持っている箒に乗っかり、そのまま空を飛んで上から黒音達を見下ろす。
「さぁ!この私に勝つことが出来るかな?私の魔法はパワーと範囲が他3人より高いのが特徴だ!テクニックや数なんていうものは圧倒的なパワーには負けるのさ!」
魔理沙がそう言ったのを皮切りに黒音はどこに仕舞っていたのか、真っ黒な蝙蝠の様な羽を広げて魔理沙と同じ高さまで浮かぶ。
「はてさて?パワーがどれだけ高くても空ぶってしまえば終わりだと思うがの。それに、魔力を大放出するだけで勝てる程……弾幕ごっこやスペルカードルールは甘くないと思うがの。」
「残念、私は今までそれで勝ってきたんだ。手数がなんだ、テクニックがなんだ……それらすらもねじ伏せて、叩きつけて粉砕するのが私のパワーさ!さぁ、このパワーバカである私にパワーで勝つか?それともそれすらも上回る技術で勝つか!いざ勝負!」
魔理沙がそう言うと、魔理沙が前進しながら弾幕を放っていく。魔理沙らしい一直線の弾幕で黒音だけを狙っていく。
それに対し黒音は銃口に魔法陣を展開、そして1発1発を魔理沙の弾幕に当てて相殺していく。しかも、自分に当たりそうなものだけを的確に狙い撃っていく。
「上手い上手い!ならこれはどうだ?恋符[マスタースパーク]!」
魔理沙から極太のビームが放たれる。それに合わして黒音は身を翻して2丁の銃を構えて巨大な魔法陣を展開する。
「妾にはちゃんとパワーもあるのじゃ、技術面だけ伸ばしていくものと比べてるでない。
見せてやろう、魔力に溢れている吸血鬼の力をの。極雷符[レールキャノン]!」
「おぉ!?」
黒音の側からも魔法陣から強力なビームが放たれる。そして、しばらくビーム同士がぶつかり合い続けて霧散する。
「む…?魔理沙はどこに……」
「彗星[ブレイジングスター]!私はここだぜぇぇぇぇえええ!!」
叫び声をあげながら魔理沙が巨大な光を纏いながら突進してくる。しかも、回りに弾幕をばら撒きながら進んでいるので避けづらい弾幕となっている。
「物理!?……じゃが、ならばせめて周りの弾幕だけ排除して避けてやるのじゃ!!連炎符[シューティングフレイマー]!」
一瞬驚く黒音だったが、すぐさま体制を立て直すように別のスペルカードを唱える。
黒音が2丁銃で自分の真上に大量に魔法陣を展開する。展開された魔法陣の一つ一つから大量の炎が、まるで流星の様な軌跡を描きながら飛んでいき魔理沙の弾幕を一つ一つ潰していく。
「うおぉ!?効いてないけど超怖い!!けどこれが唯の直線起動を描く魔法だと思ったら大間違いだ!」
そう叫びながら魔理沙はそのままの高速の速度で不意に曲がり、まるで黒音の周りを囲むかのように動き続ける。気づけば黒音の周りにはブレイジングスターによって放たれている弾幕で囲まれていた。
「むっ!?」
負けじと黒音も自分の周りに魔法陣を展開して全てに対処していく。だが、弾幕に対応してるせいで魔理沙の姿を見失っていることに黒音は気づいていなかった。
「隙だらけだぜえええ!!」
「しまっ━━━」
そのまま魔理沙は黒音に突撃していく。しかし、魔理沙も魔理沙で気づいていなかった。ブレイジングスターの時に出る魔力の光は、ある程度の攻撃を弾いてくれるものではあるが、そこまで硬度が固くないこと。そして黒音のシューティングフレイマーの火力が魔理沙の予想よりも高かったこと。
「へ、あれ……!?」
お互いがお互いに気づかなかったせいで、魔理沙のブレイジングスターの光のオーラは解け、黒音はぶつかる直前まで気付かず……2人は激突した。
「いっでぇ!?」
「のじゃ!?」
そして2人とも落下してくる。陽は落ちてくる二人を何とか受け止めようと立ち上がるが紫は落ち着いた様子でスキマを二人の下に開く。そして、地面にスキマが出来たと思えば、上向きに発射された輪ゴムのように2人は少しだけ地面に出来たスキマから上に飛んでから地面に落ちた。
「いてて……助かったぜ紫……まさかブレイジングスターがゴリ押しされるとは……どんだけ展開してんだよ一枚のスペルカードを……」
「そのブレイジングスターとやらでゴリ押ししていたのは誰じゃ……流石に弾幕を囮にして自ら突貫してくる者なぞお主くらいじゃろうて……それに一枚のスペルカードで弾幕を出しまくってたのはお主も同じなのじゃ……」
痛がる二人の前に立つ紫。何か思うところでもあったのだろうか?と黒音と魔理沙は思ったのだが、いつまで経っても何も言わずにただ見下ろしてるだけの紫に魔理沙が業を煮やした。
「な、なんだよ!?こいつにぶつかったから怒ってんのか!?それともブレイジングスターで突撃した事がルール違反だとでも言うのか!?」
「そうじゃないわよ……ただ魔理沙……貴女、服所々焦げて素肌見えてるわよ。」
「え?あ、マジだ……全然気づかなかったぜ。」
紫のその言葉に一瞬驚いた陽だったが、焦げている部分は服の袖やルーズソックスの一部だったりと、そこまで目の毒になるようなものでもなかったので少しだけ安心していた。一応彼も男である。
「んじゃあちょっと服変えてくるぜ〜」
そう言って一旦家の中に戻っていく魔理沙。それを見送った後に紫が黒音に目線を合わせるようにしゃがむ。
「どうだったかしら?魔理沙との弾幕ごっこは。」
「ふむ、存外パワー極振りというのも捨てがたいということが理解できたのじゃ。こうなると他の魔法使い達とも戦って見たくなるがのう……」
「別に構わないけど満足に魔法で戦えるとしたらアリスくらいよ?聖白蓮は魔法で自分の力をあげて戦う所謂『物理魔法使い』って感じだし。」
「筋力増強というところか……魔法の使い方としては間違ってない筈なのに魔法使いとしては間違っているような気がするのがおかしな話じゃて……」
溜息をつきながら黒音は地面に腰を下ろす。一応陽の用意した椅子もあるのだが、それに座る気力すら無かったのか倒れ込むように座っていた。
「まぁ……今の時点で元々回復し切ってなかった魔力がすっからかんじゃから今日はもう何も出来ないのじゃがな……本当に疲れたのじゃー……」
「お疲れ様、黒音。そこまで疲れたのなら俺がおぶって帰ってやるから安心しとけ。」
「だったらお願いするのじゃあ〜……もう自分で歩ける気がせんのじゃ〜……」
そう言いながら黒音は地面にぶっ倒れる。流石に女の子にそんな体勢はさせちゃあいけないと感じた陽は抱き抱えてまるで赤子をあやす様に背中を撫でながらあやすようにする。
それで安心しきったのか黒音は充電が切れたかのようにすぐさま眠り始める。それを確認すると紫と一緒に苦笑し始める。
「おー、着替えてきた………ぜ?なんだ?そいつ寝たのか?やっぱりまだまだお子ちゃまってこった……やけに尊大な言葉遣いだが見た目通りの子供って訳だ。こうやって寝ている分には可愛いじゃないか。」
『黒音はレミリアよりも年上だ』と言おうと思ったが、存外今の見た目であの言葉遣いと今の状態を掛け合せると本当に子供に見えてしまうので反論がしづらかった陽だった。
「っと……そうだそうだ、このまま帰るだろ?なら紅魔館に寄ってパチュリーに本を返してきてくれないか?最近借りすぎてあいつ図書館罠だらけにしててさー、しょうがないから返してやろうってわけさ。」
「……いや、自分で返せよ……って思ったけど、まさか返そうとしたらそれよりも先にパチュリーが手を出してくるとかか?」
「いや?攻撃されるだろうな〜って思ってお前に返してきてもらおうと思っただけだ。そろそろ返さないとまずいからな。別に返さない訳じゃないのに何であそこまで喧嘩腰になるかねぇ。」
「……普段の自分の言動と行動を思い返してみたらいいんじゃないかしら。」
「すまんな、私は過去を振り返らない女なんだ。という訳でパチュリーにはこの薬もやっててくれ。ついこの間作った魔法薬だ、たまにはこうやって私の研究成果を見せてやらねぇと本当に本が借りられなくなっちまうからな。」
そう言って魔理沙は陽に本と瓶に入った薬を渡す。謎のピンク色で、若干発光している謎の液体に陽は少しだけ恐怖を感じたが、魔法使いには必要あるものなのだろうと薬には深く触れないでおくことにしたのだった。
「……まぁそれくらいならいいけれど……貴女、偶には話し合って借りるということを覚えた方がいいのではなくて?そろそろ動かない大図書館の胃に穴が空いてしまうわ。」
「それは一大事だ。けどそんな事があっても永琳に頼めばいいし……なんだかんだ言ってもあいつも楽しんでるぜ?存外、体力が無くて動けない自分が少しだけ嫌だと思ってんだろうね、その鬱憤晴らしが出来るのならいいもんじゃないか?」
「……はぁ、貴方って本当……まぁいいわ。この本と薬は彼女に届けてあげる。けどあんまり彼女に苦労をかけちゃダメよ?」
「へいへい、んじゃあ私は別の用事があるからこれで失礼してもらうぜ。急ぎの用って訳じゃないが、魔法薬の研究に必須なキノコをまた集め直さないといけないんでな。」
そう言って魔理沙は箒に乗って空を飛び始める。魔法薬とキノコの関係性を少しだけ問いただしてみたかった陽だったが、まずはパチュリーに薬と本を渡しに行かないといけないので紫に頼んでスキマを広げてそのまま陽は紅魔館へと向かったのだった。
「アリスアリスアリスー!」
そして、陽達が紅魔館に行ったその後の頃。魔理沙はアリスの元を訪ねていた。
「何よ……貴方がそんなに大声出してドアを叩き続けるなんて……割といつもの事ね。それで?今日はどうしたの?」
「いやよ、陽の所に新しい子供が出来てたらしくてよ!私に挑戦してきたから戦ったんだがびっくらこいた、魔法を使う上に私と相打ちで終わったよ。まぁ私もブレイジングスターで調子には乗ってたけどな。」
「とりあえずその言い方は語弊を招くから止めておきなさいよ……にしても、貴方が調子に乗っていたとはいえ相打ちねぇ……その子、どんな魔法使うのかしら?」
「火と雷……けどありゃあ他にも使える感じだぜ。パチュリーや白蓮の所に向かうとは思えないから次はお前のところに向かうかもしれないぞ?」
そう言う魔理沙の表情はまるで『面白いものを見つけた』という表情をしていた。アリスはそんな魔理沙の表情を見て、呆れ半分と魔理沙の言う『魔法を使う子』に興味が半分と分かれていた。
「……ま、そういう目的で来たのならそれ相応のおもてなしはさせてもらうかもしれないわね。魔女を舐めてもらっちゃ困るから。」
表情こそいつもと変わらなかったが、そう言うアリスは少しだけ期待を持っていたのだった。