東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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今回はいろんな場面が行ったり来たりしています。


反転と紅魔

「……一本道だったはずなんだけどな。結局、どこで見失った……?」

 

陽は未だに人里で見かけた人物を探していた。しかし、一本道だったのに探しても探しても見つからないことを考えると、実は小傘やこころだったのでは?とも考えたが、2人はあの時に見かけた人物とは微妙に違いがあったのでその考えは即座に捨てていたのだった。

 

「……?なんか変だな。」

 

戻っている最中、陽は変な感覚に襲われていた。来た道を戻っているだけなのに何故か感じる違和感。まるで先程まで進んでいる状態のような感覚に、彼は囚われていた。戻っている筈なのに先に進んでいるという感覚が彼に違和感を抱かせていたのだ。そして、その違和感がなんなのかを深く考えようとして唐突に気配が後ろに現れたのだ。咄嗟に陽は後ろを向いていた。

 

「……っ!誰だ!」

 

「……ありゃりゃ、ついにバレちまったか。やっちまったよ(まぁいいさ)バレないようにしていたのにな(バレても問題ないからな)。」

 

「っ!?」

 

そして声の主の姿は陽の前から聞こえてきた。一瞬驚いて後ろに下がる陽だったが、気づけば()()()()()()()

 

「なっ……!?」

 

「別に驚くことじゃないだろ?お前だって似たようなスペルカードを使っているじゃないか。まぁ最も私の能力の方が反転させる精度は低いけどな(高いけどな)!」

 

目の前にいる少女は舌を出しながらまるで陽を挑発するかのような表情で煽ってくる少女。そして、陽は彼女の能力が反転させる能力だと気づいたが、それと同時に一輪が言っていたことも思い出していた。

 

「反転させる能力ってまさか……お前、鬼人正邪か!指名手配犯の!」

 

違うね(そうさ)私は天邪鬼の鬼人正邪じゃない(私こそが天邪鬼の鬼人正邪さ)!」

 

陽は彼女の喋り方のせいで一瞬戸惑ってしまったが、彼女が天邪鬼という妖怪であり、天邪鬼という言葉の意味を考えると、反対のことを言っているのだとすぐに気がついた。

 

「そうさ!私は今度こそ下克上をするのさ!弱いものが強いものの上に立って行われる世界!弱肉強食ならぬ強肉弱食!非常識こそが常識となり理性を持つ者は本能だけで行動し、理性を持たぬものは理性を持つ!力の強い妖怪ほど力が弱い妖怪に媚びていく!世界はそういう風に入れ替わるのさ!」

 

「……こりゃあ指名手配犯になるのも納得の危険思想……って事なんだろうな。こんな奴を放っておくわけには行かないな。」

 

「生まれながらの天邪鬼!ならば私が狙うのはいつまでも下克上さ!今の下克上が成功すればまた下克上!その下克上が成功すればまた下克上!私という天邪鬼の妖怪の特性は常に反転し続ける事だ!危険思想扱い上等!危険人物扱い上等!指名手配バッチコイ!なら私は弱いからこそお前に勝てる!全てを反転させる私の能力は私が一番弱いからこそ発揮される能力さ!」

 

そう言いながら正邪は多種多様のアイテムをどこからともなく持ち出す。その中には陽が見覚えのあるアイテムがいくつか混じっていたのだ。

 

「紫の傘に、文のカメラ……まだ見覚えのあるやつがちらほらあるな。」

 

「当たり前だ!私のアイテムコレクション、ルール無用で反則大歓迎の上で使う私のアイテムの数々プラス私の能力!さぁ私に負けることが出来るかな!?(勝つことが出来るかな)

 

そうして陽は、天邪鬼こと鬼人正邪と戦うことになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その頃紅魔館では既に門前で戦いが繰り広げられていた。紅魔館の門番である紅美鈴と黒空白土である。

 

「ふっ!」

 

「ぐっ……こいつ、なんて動きしやがる……!」

 

「貴方は能力に頼りすぎているんですよ……動きで見ている限り、どうやら手のひらで触れる事で発動する能力の様ですが、当たらなければどうということはありません。当たらないように避けながら、尚且つ強力な一撃を叩き込んでいけば問題ありません。」

 

「ちっ……たかが門番、されど門番か………なら……これならどうよ!!」

 

白土は大量の紙を投げて即座にその中に『直角間を移動する程度の能力』を使い入り込む。美鈴は紙を目くらましか何かと思い込んでいたため、入るのを阻止することが出来なかった。だが、ならば話は早いと言わんばかりに気を使って1枚1枚を破壊していった。

だが、それでも完全に紙の直角を消せてはいなかった。それもその筈、この能力が『直角間限定』だとは誰も思わないからである。紙の中に入ったのなら尚更『紙の中に入る能力』だと勘違いしてしまう場合が多いだろう、美鈴もその類であった。

 

「くっ……何とも厄介な能力を……!」

 

逃れられても繰り出される一撃一撃。美鈴には打撃でのダメージは殆ど通ってないが、背中、頭上、足元……上下左右前後全ての方向から繰り出される攻撃のせいで美鈴の緊張が高まっているのである。気を集中して攻撃を避けようとしても、幾枚もある紙から出てくる攻撃をすべて避けれるわけではないのだ。

 

「しかし、弾幕程度なら━━━」

 

「━━━『弾幕程度なら耐えれる』って言うんだったら、弾幕レベルの物理を味わわせてやろうか?」

 

「えっ━━━」

 

瞬間、空中に浮かぶ紙から一斉に攻撃が放たれる。美鈴は一瞬呆気に取られてしまい、攻撃を受け流しきれずに打撃を食らって吹っ飛んでいってしまった。

 

「ぐっ……今、のは……」

 

「残念、俺の能力は一つだけじゃない。お前が言ったように手で触れることで発動する能力もあるし、さっきみたいに紙に隠れることも出来る能力もある。そんでもって………俺は自分を増やす能力もある。こんな風にな?」

 

そう言って白土がばらまいた紙の中から大量の白土が出てくる。美鈴は複数の能力持ちということだけは分かっていたが、まさか三つも能力があるとは気づかなかった自分に舌打ちをしていた。

 

「さて……俺はそろそろ行かせてもらうぜ。俺はこの中にいる尼僧と聖徳太子に用があるんでな。」

 

「くっ……そ……!」

 

美鈴が力を振り絞って立ち上がったその時、白土の目の前に一本の槍が突き刺さる。紅い紅い紅の槍だった。

 

「門番がお世話になったみたいだな。」

 

「てめぇ……レミリア・スカーレットか。門番がやられたからってことで紅魔館総出で俺を出迎えか?」

 

白土がわざとらしく両手を広げ、笑う。レミリアはそれをただじっと見ていた。だが、少し間が空いたところでゆっくりと口を開く。

 

「そうだな……害虫駆除、という名目でならある意味では紅魔館総出という所だろうな。美鈴が手を抜くとは思えない……まぁいい、残った私達3人でやるとしよう。咲夜!パチェ!」

 

レミリアがそう命令すると、白土の周りにナイフが突然現れる。それを認知した瞬間には既に白土の寸前まで迫っていた。

だが、白土はギリギリで紙の中に隠れてナイフをやり過ごし、別の紙から出てくる。

 

「くっ━━━」

 

「逃げられると思ってるのかしら?日符[ロイヤルフレア]」

 

しかし、避ける事を見透かしていたパチュリーがスペルカードを唱え、小悪魔がそれを援護する。咄嗟に出てきてしまったため、反応が遅れて白土はロイヤルフレアをまともに浴びてしまう。

 

「くそ………がぁ!」

 

何とか改造する程度の能力を使い、自分に燃え移った火を水に変えてかき消した。

 

「ほう……まだ能力を隠していたか。」

 

「お嬢様……!そいつは、今ので四つ目です……!」

 

息も絶え絶えになりながら美鈴がレミリアに助言する。軽く顎に手を当てて考え込むレミリア。レミリアは今来たばかりなので白土が見せた二つの能力しか分からないのだ。

 

「連れてきましたお嬢様。」

 

「すまんな、咲夜。とりあえず美鈴の回復力ならばすぐに復活するだろうからその間は私達で時間を稼いでおくことにしよう。その前に残り二つの能力も判明すれば倒すがな。」

 

そう言ってレミリアは再び槍を構える。空には紅い月、そしてレミリアの目と槍の紅さは、白土により強い警戒心を抱かせるほど恐ろしく美しかった。

 

「……神槍[スピア・ザ・グングニル]

私のお気に入りの技だ。スペルカードルールでは弱体化されているが、実際のこいつの強さを思い知らせてやろう。」

 

「は、そんな槍程度で俺がどうにかなると思ってんのかよ。何ならそれの偽物を出してやってもいいんだぜ?俺の能力だとそういうことが可能になるからな。」

 

「ふん……形だけの贋作を作られるより個別で偽物を作られた方がまだマシだ。偽物は、贋作以上に本物を超える可能性があるからな。

さぁ、やれるというのならやってみるがいい……紅魔を倒せるものなら倒して見せろ!」

 

そして、レミリアのその叫びと共に白土はレミリア達に突っ込んでいったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊夢!いるかしら!?」

 

「いるわよ、何の用かしら?」

 

少し時間は遡り、紫が周りに助けを求めようとスキマを使い別の場所に飛んで各地の者達に手助けを求めていた頃。

 

「人里で大規模の火災が起きたのよ。貴方にはその犯人を……恐らくは鬼人正邪の捕獲、もしくは退治を依頼するわ。」

 

「……恐らくは、って事は確証はないのかしら?まぁ打ち出の小槌が向こうにないし、私の物達には何も被害が起きていない辺り人里限定で、って感じみたいだけれど。」

 

「けれど、道具達の反乱というのは本当のことかもしれないわ。出来れば向かってほしいのだけれど……どうしたの?」

 

霊夢は紫が喋っている時にふと考え込むような仕草を取った。霊夢は紫の質問には答えずじっと考えて、しばらくしてから顔を上げた。

 

「ねぇ……それって本当に鬼人正邪が起こしたことなの?アイツにしてはちょっと粗雑な感じもするんだけれど……」

 

「……ただ火災を起こすだけ、っていうのは確かに考えづらいかもしれないけれど……実際に人里で火災は起きて……ねぇ、それって巫女の勘?」

 

「まぁ……うん、勘でしかないんだけれど……仮にこの騒動を起こしたのが鬼人正邪だとしても……()()()()()()()()()()()()。そんな気がするわ。」

 

「……仮に鬼人正邪の後ろに誰かがいるとして……だとしたらその目的は何なのかしら。」

 

紫のその問いに答えられるものは誰もいない。仮に誰が後ろにいたとしてもその答えは分からないからだ。

 

「……とりあえず、私は他に当たれそうな者達に声をかけて回ってみるわ。魔理沙やアリスなら手伝ってくれるでしょうし。」

 

「そうね、私もとりあえず人里に向かうことにするわ。」

 

そう言って紫は次の場所へと向かう。そして霊夢はそのまま飛んで人里に向かうことにした。

そして、紫はスキマで次のところに向かいながら今回のこの事件、一体黒幕は誰で、何のためにこんなことをしているのか……それをずっと考えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時間は今に戻る。

 

「弱い弱い!まさか私より弱い人間がいたとはな!いや?私の能力を受け付けないくらい弱いのかもな!!流石の私の能力でも0はひっくり返せないしな!」

 

「ぐっ……!」

 

陽は鬼人正邪に翻弄されていた。天地の逆転、重力の反転、左右反転、前後反転、正邪は陽の周りのものをひたすらに反転させていっていた。

 

「これだよこれこれ!私の能力は反転!ならその反転の能力なら認識をひっくり返すことだって簡単に行えるのになぁ!私の力が!足りない!せいでッッ!!あー憎い憎い!力を持つものがそら憎い!だったら自分より弱いものを作るしかねぇってわけだ!!」

 

ここまで来て陽は何か変な違和感を感じていた。鬼人正邪という人物が下克上を狙っているのは知っているが、ここまで強い者にコンプレックスを抱くような人物なのかと。

やけに強さの差や弱さを憎むよう言動。まるで全てのものに嫉妬して、その嫉妬の対象より上に立つ事で愉悦感を味わっている、そんな感覚を陽は感じていた。だからこそ━━━

 

「お前……そんな強い能力を持っておきながらそういう小物っぽいことしかしてないから未だに大物になれないんじゃないのか?」

 

「……なんだと?」

 

陽は彼女を挑発した。能力が脅威ならその能力を使わせないようにすればいい、逆上しやすい性格なら挑発すれば本気で能力を使うか、使わないようになるほどブチ切れるかの二択だと陽は思っていたからだ。

 

「確かに強い能力だが、使い手が小物みたいな考え方しかできないからこうなってるんだろう。実際、本当に強いやつってのはお前みたいに力だけを行使してそれで優越感に浸るほど愚かじゃないさ。」

 

「私が愚かだって言いたいのか?」

 

「だからそう言っているだろう?下克上を考えることは悪くないさ、だがその考えているような理由がしょうもなさすぎるって話をしているんだよ!!能力がないと戦えないような雑魚に対してお前は優越感に浸ってるだけの雑魚で小物だ!」

 

「てめぇ………言わせておけば………いいよやってやんよ!私が能力を使わなくても強いってことを見せてやる!」

 

『引っかかった』

陽はそう思いながら正邪との戦いを、また始めたのであった。




まだ続きます
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