「……うぅむ、ここ無駄なのじゃろうか……いや、そうなると3文増えて余計に無駄が出てきてしまうし……ではここか?いやそっちを削ってしまえば少し余分なのに削ってはいけない部分が出てきてしまうし……」
「黒音ー、そろそろ昼飯……何してるんだ?」
「ん?あぁ主様か……いやのう、魔法の術式の再確認をしておるんじゃがどうにも納得できんでしばらく改良をしようかと思案しておったのじゃ。しかし上手くいかんでどうしたものかと悩んでおったのじゃ。」
陽は辺り一面にばらまかれている紙の山を見て少しため息をついた。掃除をするのがとても捗りそうだという皮肉を考えながら。
「な、なんじゃ……この部屋は後で片付けるからそんな大きなため息つかないで欲しいのじゃが。し、しかたないじゃろ?久しぶりに魔法の整理をしようと思ってたら思いのほか捗ってしまっただけなんじゃ。」
「……はぁ、まぁいいけどさ。なら片付けし終わったらこっち来いよ?黒音だけ冷めた昼飯食わせたくないしな。」
「了解なのじゃ〜」
そう言って陽は部屋から出ていく。黒音は散らかった自身の部屋を見ながら軽くため息をついて、それから片付けを始めたのだった。
「……そう言えば……最近は主様が一人でおることが多い気がするのじゃ。妾達すらも離してると思うのじゃが?」
「……いや、そんなことないと思うけど……俺ずっとこの三人のうちの誰かといるような気がするんだけど。」
昼食後、ふと黒音が出した話題。それについて陽がそんなことは無いと答えを上げるが、月魅と陽鬼はどうだったかと思考し始める。
「……そう言えば、この前私と買い物に行った時は勝手にどこかに一人で行ったね。家にいる時もいつの間にか外に出てたりするし……」
「確かに。私の時もふらっとどこかに出かけては知らない間に戻ってきていたりしますもんね。橙が言ってましたよ『最近よく来てくれる』と。」
「……ほう、妾達……はともかくとして紫達にすら内緒にして橙に会いに行っておるのか?」
「いや、いやいやいや……ただ遊びに行ってるだけじゃないか。それで何か隠すようなことはないし言う必要もないだろ?」
陽が言っても陽鬼達はジト目で陽を見るだけだった。陽はどうしたものかと悩んだが、こればっかりは見て判断してもらうしかないという結論に落ち着いた。言葉で納得しないなら実際に見せるしかないからだ。
「はー……分かったよ。誰か1人……絶対に俺につかず離れずにいてくれればそれで満足するだろ?少なくとも今この場にいる三人の内の誰かなら他の二人も納得するだろうし……それでいいだろ?」
「……まぁ、それが一番だよね。手を出してないよね?とは思うけど陽が年下と遊んでるだけってなんか妙に信じられないというか……」
頭をポリポリ掻きながら陽鬼は若干陽から目を逸らす。陽鬼のその言い分にげんなりしながらため息をつく。
「何でだよ……」
「主様の周りにいて、なおかつこの家にいる異性の割合を考えたらそうなるじゃろうに……見た目幼女4じゃぞ、4。紫と藍という見るからに『大人の女性』がおるにも関わらず主様は幼女といる期間の方が長いんじゃ。それでも疑われないと言うのかの?『紫はよく外に出てるから〜』なんて言うのは通じないのじゃ。藍はよく家に残っておるからの。」
「うぐ……いや、それ以前に外に出たら俺が死ぬだろう、みたいな理由で紫が一緒に行ってきて、みたいな話になったんだよな?そしたら絶対的に多くなると思うんだけど。」
「主様、この1週間買い物以外で何をしたかちょっと話してみるのじゃ。」
黒音が言ったことに陽は軽く首を傾げたが、とりあえずここ一週間の記憶を掘り起こしてみる。
「……確か、昨日は買い物に言ったら人里で走り回ってるチルノを見たな。声かけられたからしばらく相手したのを覚えてる。それ以外はいつも通りだった。
一昨日は……そうだ、博麗神社で霊夢に霊力の使い方を教えてもらってる時にルーミアが来たんだ。食われそうになったけど飴玉持っててそれあげたら満足して帰っていったな。手持ちの飴全部取られたけど。それ以外はいつも通りだった。
三日前は……あ、これも博麗神社だ。確か初めて会う妖精の3人組にあったんだ。サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアって言ってたな。それ以外はいつも通りだった。
四日前は━━━」
「四日前は紅魔館に行ってる時にフランの部屋で2人きりで遊びに行ってたよね。五日前はレミリアに膝枕をして寝かせていたのを見たよ。」
「ちょ、陽鬼?」
思い出そうとしている陽に対して陽鬼は淡々と陽の代わりに質問に答えていく。陽鬼の姿を見て月魅も何か思うところがあったのか口を開き始める。
「六日前はチルノを探していた大妖精を見つけて買い物そっちのけでチルノの元まで一緒にいたんでしょうね、一緒に歩いてるところを発見しましたし。
そしてちょうど一週間前は紫の代わりに人里の様子を見てきてほしいと言われて見てきたらいつの間にか稗田阿九の家にお邪魔していたりと随分としていた訳ですが……」
「……で、主様……妾達が何じゃって?絶対的に……何じゃって?」
「……はい、ごめんなさい俺が悪かったです。」
謝ると同時に陽はこうも思っていた、『何で俺謝っているんだろう』と。しかし、このまま謝らないでいたら拗れるだろうとも思ってこれからは彼女達から離れないようにしようと心に決めるのであった。
「……何だか騒がしかったが……なにかしていたのか?」
「……ちょっと、絞られてた……って所かな。女の子って怒らせると怖いんだなってつくづく思ったよ……」
「そうだな、あんまりフラフラしている男は基本的に嫌われるだろう……が、そうやって怒られてるのならまだ愛されてるってことだろうさ。モテモテだな、お前は。」
家事をしながら軽い会話を交わす藍と陽。陽は納得出来ない、という表情をしていたが藍はそれを微笑ましく見ていた。
「しかしまぁ、なんだ……何故お前がモテるのかというのは少し疑問ではあるな。料理が上手いのと変なところで手先が器用……という所じゃないか?長所としては。言っておくが性格は初めから考慮してないぞ。」
「……いや、考慮されなかったから聞くわけじゃないけどさ。何で性格は除くんだ?」
「考え方によっていい面になったり悪い面になったりするものをお前は長所と呼べるのか?」
藍に質問されて陽は考える。確かに頑固な正確と言えば聞こえは悪いが、自分の考えを簡単に曲げない人といえば聞こえはいい。
逆に周りの人全員に優しくしているといえば聞こえはいいが、八方美人と言われてしまえば聞こえは悪くなる。人の考えによって+にも-にもなり得ることを果たして長所と呼べるのか、と聞かれればこれは確かに簡単にはYesと言えなくなるのだ。
「……うん、まぁそうだけど。協調性がある、とかならまだ……」
「自分の意見がない、流されやすいと言われればそれまでさ。まぁだから絶対に性格は当てにならないという訳では無いが……それを番人に通じる様な長所として扱うのはどうなんだって話なわけだ。どの性格もいい面と悪い面の二つがあるんだからな。」
「なるほど、そういう事か……こっちはもう終わったぞ。」
「そうか、助かったよ。何分ここも人が多くなったから手間がかかるかかる……とは言っても飯時の苦労の半分は陽鬼だがな。あの大食漢がいると作りがいがあるにはあるが買い物も一苦労だなぁ。」
そう言って微笑みながら陽を見る藍。見られてるとどうにも申し訳ない気分になり、陽は目を逸らしながら部屋を後にしたのだった。
「ただいまー……今陽の声がしたと思ったんだけど?」
「あ、おかえりなさい紫様。今彼と話してたところですよ、ここの家の私と紫様以外の女性に絞られた、という話がありまして少し性格の話をしていたんですよ。」
「あら、そうなの……そういえばあの3人よく愚痴ってるわよねぇ……他の女の子と一緒にいるって。しかも全員妖精だったり背丈が小さい子ばっかりだとか。」
「まぁ人助けのつもりなのでしょうけどね。助けてるのが異性の、しかも幼子だったりすれば確かに少し性癖を心配しそうなものですけどね。」
苦笑しながら藍はそう言う。しかし、藍が冗談半分で言った事を紫は真剣に考え始める。紫が考えてって返事しなかった事に少し嫌な予感を感じて、藍は紫の目線の正面に入る。
「紫様?どうなされましたか?」
「……藍、私って魅力ないのかしら?最近あまり陽が構ってくれてない気がするわ……」
「構ってくれないと言ってもせいぜい話す機会が少し減ったくらいじゃないですか?そもそも彼と紫様が出かけている時が綺麗に入れ替わるようになってきているからそうなれば自然と話す機会も減るでしょう。」
「あぁそういえばそうよね……久しぶりに彼と出かけてみようかしら。」
そう言ってブツブツ言いながら悩む紫を横目に藍も少し考え始める。自分の主が仕事三昧なのは元々だが、それでも今よりは少なかったし休める暇もあったはず、と。
ならば出来うる限り仕事は自分が引き受けて偶には休んでもらいたい、と。
「紫様、あの━━━」
「藍、貴方が何を考えているかなんとなく察しがついてるわよ?貴方にならある程度は任せられるけど……それなら初めから頼んでいるわ。今こうやって仕事仕事していられるのも自分で選んだ道だもの、仕事が多いなんて愚痴なんて吐かないわよ。あまりにもきつくない限りはね。」
「……ですが、たまの休日くらいとっても誰にも文句は言われないんじゃないですか?どれだけ仕事熱心な人でも休みくらい取りますよ。そもそも妖怪が人間のように働き詰めに動く、なんてことはそれこそ私の様な式神くらいのものですよ、たまには休んでください。」
「う、うぅーん……」
藍の気持ちや言いたい事は分かってはいるが、それでも妖怪の賢者としてはただの妖怪のようにゆったり過ごしているわけにはいかない、という気持ちもありどうするか悩んでいた。
しかし、藍がここまで言ってくれているのだし偶には休んでもいいかもしれないと思い直し、溜息をつきながら苦笑を藍に返した。
「分かったわ、今日はあの子と出かけてくるわ。その代わり今から今日の分の仕事を手伝わせることになっちゃうけど構わないかしら?」
「はい、問題ありません。私は紫様の補佐役ですから。」
藍は微笑みながら了承して紫が今日行うこれからの仕事の説明を受け始める。それを手頃な紙に書いて紫はそのまま藍をスキマで送り出す。それを確認した後、紫は陽を買い物に誘うために屋敷内を歩き始めたのだった。
「あ、紫おかえりー」
「あら、陽鬼……ねぇ陽見なかったかしら?この家にいると思うんだけれど。」
「陽なら黒音の部屋の片付けに行ってるよ。あんまりにも散らかしてたんだそうで今一緒に……というか月魅もまとめて一緒に片付けしてるよ。」
そう言って陽鬼は閉じられた黒音の部屋を見る。自身が片付けの手伝いをしても恐らく邪魔になるだけなので陽鬼だけは部屋の外に出ていたのだ。
「そう……いつごろ終わるとかわかるかしら?」
「後数10分くらいはかかりそうかなぁ、急ぎの用事だったら呼び出すけど?」
「いえ、いいわ……どうせしばらく休めるし此処で待っておくことにするわ。」
そう言って紫は陽鬼の隣に座ってじーっと待ち始める。しばらくしてくると、なにか大きな音がし始めたので陽鬼と紫は二人揃って気になり始めて襖を開けずにそのまま向こう側に声をかける。
「陽ー?なんかおっきい音が聞こえるんだけど何かあったのー?」
陽鬼が呼びかけるが返事はなく、音は更に大きくなる。気になった2人は、襖を開けて中を確認して見ることにした。
すると中では━━━
「どうじゃ主様、出来そうか?」
「あぁうん何とか……月魅、もう一本釘取って……」
「はい、どうぞ。」
陽がトンカチで何かを打ち付けている様子が伺えた。しかし、釘とトンカチで何かを作っているのだろうとは思っているが、陽の背中が邪魔で見えないのだ。
そうやってなんとか覗こうとしている2人に気づいた黒音が、軽く陽に言葉をかけてから紫達に近づいていった。
「ねぇねぇ黒音、あれ何作ってるの?」
「主様がな、妾が周りに散らかしておった紙を何個かのグループに分けてくれたのじゃ。それをそしてそれをファイルとやらにまとめてくれたのでな。今はそのファイルを入れてくれる本棚を作成してもらっているところじゃ。『自分の能力だと大きさや見た目を選べない』と言っておったので自身で作るということになったらしくての。材料だけ能力を使い後は自身で作成するとの事じゃ。」
黒音が説明してから紫はもう1度陽を見る。彼と一緒に出かけようと思っていたが、これは数10分どころかもう少し時間がかかるなと思った紫は苦笑しながら壁にもたれかかって彼を待つことにしたのであった。