東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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結界の対策

「……撃ってくれると思いますカ?」

 

「だいぶギリギリを攻めてますからね……狙われ用が狙われまいが結局の所かなり危ういというのは理解しています。ですが、これくらい危険をおかさないとダメな相手というのも事実です。」

 

陽は結界の中にいた。だが白土の作り出した結界ではなく、月魅が作り出した上にゆっくりと向かって飛んでいく結界である。

今陽は、狂闇のスペカを使い黒音を纏っている状態である。そして、自身の体から大量の闇を吹き出させて結界内を闇でいっぱいいっぱいにしているのだ。

そして、同時に結界の維持のために月魅も結界の中に入っていた。

 

「ですが……このままだと撃たれる可能性の方が高いですネ。この闇を使えば一応体を守れるとは思いますガ。」

 

「結界を壊すことの出来る私もいますからいざとなれば斬撃でもとばして結界を無理やり壊しますよ。

それにもし撃たれてしまっても光と陽鬼がちゃんと見ていてくれるでしょうし。」

 

陽達の作戦はこうだ。

陽が黒音を纏って闇を吹き出す。その闇を囲うように結界を作り、陽と一緒に月魅が結界内に入ってゆっくりと浮上して行く。

そのまま迎撃されずに上までたどり着いた場合はそのまま結界を解除して月魅の攻撃で結界を解除。迎撃された場合は結界を解除して陽が全力て月魅を守りながらやはり月魅の攻撃で結界を解除。

どうしても無理そうなら合図を出して地上にいる光に弾幕を撃ち落としてもらって陽達は一旦離脱すると言う作戦である。

 

「……今回のこの大掛かりな結界、更には結界内の空間の歪み……かなりめんどくさい組み合わせをよく用意したものです。」

 

「それだけ全力で私達を潰そうとしているのですヨ。そうじゃないとここまで大掛かりなものは用意出来ませんヨ。」

 

陽達はゆっくりと上に上がっていく。気づかれないようにと祈りを込めながらただじっと待つ。

しかし、そんな祈りも無駄だったのか、結界内に振動が起こる。

 

「グッ!?やはり攻撃が来ましたカ!」

 

結界を解除して陽は月魅を抱きしめたまま高速で上に上がる。しかし、それも無駄だと言わんばかりに四方八方から弾幕が飛んできて陽はそれに直撃してしまう。

 

「ぐぅっ!」

 

「マスター!!」

 

「私のことは構わずにさっさと結界を解除してくださイ……サポートはこちらが全力で行いますのデ。」

 

「っ……はい!」

 

月魅は一瞬で大人化を済ませて一気に速度を上げて結界の天井部まで飛んでいく。その間に大量に放たれる弾幕を陽は一つ一つ的確に落としていく。

しかし、あまりにも多い弾幕の量を一人で落としきるのはかなりの負荷を伴っていた。

さらに━━━

 

「ここから先には行かせないわよ!通しちゃダメって言われたしねぇ……ご、ごめんなさいぃ!」

 

「落とさせてもらう!」

 

月魅の目の前に現れるケルベロスとフェンリル、突然現れた2人に驚いた月魅は一瞬だけ隙を見せてしまっていた。

 

「隙ありぃ。」

「ほらほら行くよ!!」

 

そしてケルベロスから現れるもう一人のケルベロス、気だるげに声を出しながら月魅の刀を弾いて蹴りを入れる。

それに追撃するかのように更に現れたもう一人のケルベロスが月魅に一撃を入れて落下速度を加速させる。

 

「月魅!!」

 

「よそ見をしている暇があるのか!!」

 

「チッ!!」

 

フェンリルの素手での一撃一撃を防がずに避け続ける陽。時折防ぐが、その度に盾がわりにしているマスケットは削れていく。

これが当たれば自分の体もどうなるかわかったものではない、とすぐに理解した。

しかし相手はフェンリルだけではない。

 

「私たちの事を!」

 

「忘れちゃ困るよ〜」

 

左右からの弾幕の押収。間に挟まれた陽はなす術なく弾幕の雨を受け続けていた。

 

「貴様の相手は私たち4人だ!!」

 

そう言いながら突っ込んでくるフェンリル、そしてフェンリルの後ろから上に上がり上から更に弾幕を降らせてくる三人目のフェンリル。

陽は堪らずに魔力を壊れかけのマスケットにありったけ注ぎ込む。既にボロボロとなったマスケット銃は爆散してその場にいた全員を吹っ飛ばした。

 

「ぐぁっ!!」

 

「ちっ……無茶苦茶な戦法をとる……!」

 

「きゃっ!?」

 

「うわぁお。」

 

「ふえぇ!?」

 

飛ばされる5人、陽はそのダメージからか憑依が解除されて地上に落下を始める。

黒音は一瞬解除されたことに気づかなかったが、陽と共に自身が自由落下を始めると知るや否や羽を羽ばたかせて陽のところまで飛び始める。

 

「主様!主様目を覚ますのじゃ!このままだと地面に落ちてしまうぞ!!」

 

しかし、あまりにもダメージが大きかったのか陽は目を覚まさない。しかも落下しているに加えてフェンリル達が陽目掛けて飛んできていた。黒音は迎撃しようとする反面、陽を助けないといけないという思いに駆られてあまり迎撃が出来ないでいた。

 

「くっ……!」

 

「黒音、ここは私に任せてください。」

 

そう言いながら黒音の横を通り過ぎる銀の髪、それは刀による一閃でフェンリルを怯ませて隙を与えていた。

その隙を見逃さず、黒音は陽を抱き抱えるとそのままゆっくりと地面に下ろしていた。

 

「助かったのじゃ、月魅……」

 

「例には及びませんよ。それと、陽鬼達は弾幕が出ているところを処理するために向かっています、ですからこの4人の相手は…」

 

「妾たちが相手せねばならない……という事じゃな。ちいとばかりキツイがやるしかないの。」

 

黒音は2丁の銃を構えて、月魅は刀を構えて3人のケルベロスとフェンリルと対峙する。

しかし、あまりにも相性が悪いことには変わりない。3人のケルベロスは一人が3人に増えたのか、と勘違いするくらいのコンビネーションを誇っており、比較的手数の多い黒音でないと相手はできない。

対してケルベロスの戦い方は素手による戦闘なので、直感が働きやすい月魅ならば簡単に避けることが可能だろう、リーチの差もある。

だが、そんな事は向こうも分かっている事だった。逆に言えば、お互いの獲物を入れ替えれば有利な状況は逆転するということだ。

 

「アンタの相手は私達よ!!」

 

「では、私は貴様の相手といこうか吸血鬼!!」

 

「しまっ……!」

 

「くっ………!」

 

幾ら直感が働いても、息の合ったコンビネーションを披露するケルベロス達相手には通用しない。働く前に別の攻撃が待ち構えているからだ。

そして幾らリーチの差があるとは言っても、銃では近距離の間合いに持ち込まれた瞬間に後手後手に回りやすい。

しかも、人数での不利があるせいで相手に有利な相手を選ばされてしまうという状況も生まれている。

 

「くっ……ならば無理やりにでも……!」

 

「そんなこと私がさせるわけないだろう!」

 

フェンリルの喰らう程度の能力、掌で触れたものならば何であっても吸収してしまう能力。その力で魔力によって生成された弾丸はすべて食われてしまう。

まともな援護射撃もできやしない。

 

「ほらほらほら!自慢の直感とその刀で私達を斬ってみなさいよ!」

 

「とは言っても、斬ろうとすれば別の誰かが攻撃を仕掛けるだろうけどね……」

 

「よ、読みやすいんですぅ……刀の軌道とか、誰を攻撃しようとしているのかとか……」

 

「騒がしいですね本当に……!」

 

刀を振りかざそうとすれば3人の内の1人が、刀を動かせないように後ろから腕を掴み、もう1人がその瞬間に後ろから攻撃、後ろからの攻撃を防いだとしても前からの攻撃があって防ぎきれない。

武器こそ持っていないが、何よりも恐ろしい息の合った技の応酬が彼女達の武器だと月魅は認識していた。

 

「これは一筋縄では……」

 

「いきませんね……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、陽鬼達は迫り来る弾幕の雨を避け続けていた。

時には自分たちも弾幕を放ったりする事で迎撃したりしていたが、如何せん四方八方から飛んでくる弾幕はどこに撃っている本体がいるか分からないので疲弊していた。

 

「さ、さすがにきつい……光!どこから攻撃が来てるのかわかった?」

 

「先程も言いましたが、結界上部の四隅から満遍なく飛んできているのです。おそらくは何かしらの術によって結界外からの攻撃を行っているのでしょう。

やはり、そう簡単に行く話ではありませんか……」

 

「結界外に繋がってるんだったら4隅に攻撃を仕掛ければ向こうに飛んでいくんじゃないの?」

 

「貴方は他人に覗かれているのがバレていても尚覗き続ける人ですか?普通は覗かれているのがバレたら窓を閉じるなり壁の穴を塞ぐなりするでしょうに。」

 

「……例えが悪いけど、まぁなんとなく言いたいことはわかったよ。要するに無理ってことなんだね。」

 

弾幕の雨を掻い潜ってどうやって結界の向こうにいる者に一撃を与えるか、その方法を話し合う陽鬼と光。しかし、光は単純に攻撃を仕掛けた場合そこから攻撃をしなくするので全く意味をなさないということになってしまう。

 

「けど……なら一体どうやって結界の向こう側にいるやつにダメージを与えろって言うのさ……やっぱり月魅たちの加勢に回った方が良かったんじゃない?」

 

「……待ってください、今考えているところなのですから。」

 

俯きながら顔を顰めさせて真剣に考え込む光。しかしどう足掻いても攻撃される瞬間に入口を閉じられてしまうという問題点が残ってしまう。

それをどうにかして近づかないと今自分達に一切のしょうりつはないだろう。

 

「……壁上りでも出来ればまた話は変わってくるんだろうけどさあ……はぁ………」

 

「っ!陽鬼……もしかしたらその方法でいけるかもしれないのです。」

 

「え、ど、どこのこと?壁上りの件の事言ってるの?」

 

唐突に同意されて困惑する陽鬼。そして光の言っていることがいまいち理解できないまま、光に連れられて移動することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……陽!?ちょ、ちょっと大丈夫!?」

 

「……聞いてはいましたが、流石にダメージがでかかったんですね……まさかここまで目を覚まさないなんて……」

 

二人は一旦空に上がった後に、森の上を移動することで森の中の距離の歪みを回避して何とか陽のいる所まで辿り着いていた。

もちろん弾幕の雨を回避し続けるのが前提条件として存在しているのだが。

 

「……で光、陽のところまで来たけど結局陽に何をさせるつもりなの?わざわざここに来たんだから何かさせないといけない、って言うのは分かりきっているつもりなんだけどさ……」

 

「……ご主人様の能力を使って長いロープのようなものを作って貰うのです。そしてそれを使って結界の壁に向かって打ち出し、壁にくっついたのを確認できたらまた同じ事をして……その繰り返しをするのですよ。」

 

「……結界の壁に矢ってくっついたっけ。というかそもそも光ってそんな矢を何本も持ってるの?流石に結界にくっつくとは思えないんだけど……」

 

「普通ならば弾かれるのが当たり前なのです。しかし、あの結界を+として考えて、だったらマイナス要素のある霊力を込めることが出来れば0になろうとしてお互いがお互いを求め合うようになるのです。

ただ今のこの状況だとどう考えてもご主人様にほとんどを任せきりになるのがオチなのですが……」

 

陽鬼は光の説明で何となくは理解していた。だが作戦の根幹、中心軸には確実に陽が必要だと考えると無理があるのでは?という考えも出てきていた。

 

「だったらどうするのさ。陽が起きないとロープも作れないよ?そうなるともう本当にどうしようも無くなっちゃうわけだけど?」

 

「……だから今から無理矢理にでも起こそうと思ったのです。流石に今の状況でずっと寝かせておくわけにもいかないのです。私の主とはいえ、やれる時とやれない時のタイミングは守ってもらうのです……今は、やれる時になってもらうしかないのです。」

 

そう言って光は陽の頭を思いっきり殴る……が、幼女の腕力なんてハナからしれているので意味をなさなかった。

 

「どいて私が起こす!」

 

そう言いながら陽鬼は陽のもたれ掛かっている木に向かって思いっきりパンチを繰り出す。とんでもない轟音と共に、木は吹っ飛んで他の木を二、三本吹っ飛ばしながら飛んでいった。

 

「ゥ………な、なんだよ……」

 

「陽、今物凄い急いでるから……悪いんだけど今から光の言うこと全部やってね。」

 

轟音により目が覚めた陽は、一瞬今がどういう状況なのかを理解出来ていなかったが、陽鬼の台詞の後に光が説明したことである程度は納得していた。

 

「……まぁ、要するにロープ……それも長いヤツを出していけばいいんだな?よく分かったよ……ならやって見るとするか……」

 

そう言った陽達の目の前には結界が未だ顕在していたのだった。

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