第01話 目覚めと2人の少女
「ん、んんっ……」
深い眠りの底にいた私の瞼を突き刺すのは、カーテンの隙間から差し込む朝日だった。
「……もう朝か」
差し込む光を浴び、徐々に覚醒してくる意識。
この時期に再び意識を手放そうものなら、次に目が覚めるのは何時になるか分からない為、すこぶる温かい布団の上で体を起こす。
……いやまて、幾ら何でも温かすぎないか?
現在、季節は秋真っ只中。
自身は寒さに強いと自負しているとはいえ、ここ最近の冷え込みはちょっと耐え難く、数日前に掛布団を追加こそしたがそれにしても温かい。
まぁ心当たりはあるんだが……と頭の中で呟きながら勢いよく布団を捲ると、そこには予想通りの2人が私の体を挟むようにして眠っていた。
「やはり嵐と萩風か。昨晩は雨風も強かったし、雷も鳴ってたし仕方ないか」
そう呟きながら、未だ眠ったままの2人の頭を撫でる。
うちの艦隊には他にも夜や雷が苦手な子もいるが、とりわけこの2人の夜嫌いは顕著である。
これは2人が実際に艦だった時、ベラ湾で共に夜に沈んでいることに由来するようだ。
そう、私の目の前でまだあどけなさの残る顔で寝ている2人は、純粋な人間ではない。それどころか、この建物―鎮守府―にいる純粋な人間は私のみだ。
彼女たちは「艦娘」と呼ばれる存在で、見た目こそ少女のようだが、人類共通の敵「深海棲艦」を撃退することができる唯一の存在……らしい。
何故、所々言葉を濁したのかは後に語るとして、とりあえず2人を起こすことにする。
手近な所に時計が無いが、太陽もだいぶ高くなっているようだし、そろそろいい時間だろう。
頭を撫でていた手で肩を軽く叩き、彼女達の覚醒を促す。
「嵐、萩風、もう朝だぞ」
「む……んん……まぶし」
「ふぁ……司令、おはようございまふ……」
「おはよう2人とも。とりあえず顔を洗って来たらどうかな?」
「うーい……」
「ふぁい~……」
放っておくとまた布団の中に戻りそうだったので、とりあえず洗顔を促す。
2人が洗面所に入ったのを見届けると、3つのカップを取り出してコーヒーの準備をする。
はて、砂糖は嵐が2個で萩風が1個でよかっただろうか。
私自身は無糖派の為、いざとなれば交換すれば良いと思い、準備を進めていく。
そうこうしているうちに、2人が洗面所から戻ってきた。
さすが女の子、短時間で寝癖までキッチリと直っている。
「ほれ、眠気覚ましのコーヒーだ。嵐が2個、萩風が1個でいいか?」
「おっ、さすが司令!砂糖の数まで完璧だ!」
「すいません、司令に準備させてしまって……」
「気にしないでくれ。どうせ自分も飲むんだし」
そう言いつつカップに口をつける。
香ばしい香りが鼻を抜けていき、カップを傾ければ口の中に爽やかな苦みが広がる。
甘いコーヒーも嫌いではないが、やはりこの苦みがないと物足りない。
「はふぅ……美味しいです」
「できれば俺はミルク入りが良かったけどなぁ~」
「もう、我がまま言わないの!砂糖が入ったコーヒーが飲めるだけでも運がいいのに……」
「確かになぁ……このコーヒーだって、いつまで飲めるか分からないし」
「……そうだな」
2人の会話に頷く私の顔は、恐らく仏頂面だっただろう。
一応断っておくと、生来人との接し方が下手な私ではあるが、流石に常時仏頂面というわけではない。
そんな表情にならざるを得ない事情があるのだ。
それはひとえに今の環境――私の記憶が無い事と、今いるこの場所がどこかの小島の忘れ去られた鎮守府であることに起因する。
ふと、どうしてこんな環境になったのかを思い返してみる。
目覚めの記憶と、彼女達との出会いを……
1話がえらく短いですが、こんな感じで投稿していきます。
調子が戻り次第、もう1つの小説も投稿していきます。