漂流者の艦隊運営   作:アイノ

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回想編
第02話 ここはどこ?私は誰?


ざざーん、ざざーん……

目の前の砂浜で、波が寄せては返すを繰り返している。

 

 

顔を上げ、周囲の見慣れない風景をを見回しながら、私は途方に暮れていた。

それもそのはず。今より前の記憶がすっぽりと抜け落ちている上、気が付けば自分は砂浜に立っており、周りを見渡せば南国の島を彷彿とさせるような風景になっていた。

もちろん古典的な頬つねりも試してみたが、結果として得られたものは赤くなった頬とジンジンとした痛みだけだった。

 

 

「なんでか分からんが、ついに夢の中でも痛みを感じられるようになったか……」

 

 

そういう事であってくれと願いを込めた呟きは、しかし、痛み以外の五感に訴えかけてくる情報がそれを否定する。

燦々と照らす太陽、潮の香りを運んでくる風、太陽に焼かれて痛いほど熱された砂浜など。

これが疑似的なものだとすると、今日巷で騒がれているVR……だったか、そんな感じのものなど紙芝居同然と言っていいほどリアルだった。

 

 

「VRとか、そういうどうでもいい単語は覚えてるのか……」

 

 

そうなると、自分がどこまで覚えており、更にはどういう理由でここに立っているのかがまるで分からない。

とりあえず、情報の整理という名の記憶への旅へ身を投じる。

 

 

 

 

自身の名は「長谷川 大樹(はせがわ だいき)」

実家は、頭にドが3つくらい付きそうな田舎で、高校卒業まではそこで暮らしてた。

とりあえずここまでは覚えている。

大学進学と同時に上京し、ほどほどの成績を残して卒業。

その後ほどほどの会社に入社した……筈なのだが、この辺りから記憶が曖昧になっている。

そして最近の記憶が全くと言っていいほど無い。

これでは、ここへ来た方法や理由どころか帰るべき場所すら分からない……どうしたものか。

 

 

改めて周囲を見渡すも、船やヘリどころか建物1つ無い。

いや、よく見ると少し離れたところに1つだけ建物があったが、遠くから見る限りだと元々何の為の施設か分からない。

まあとりあえず、雨風が凌げる場所が見つかっただけマシだと思う事にする。

 

 

「あとは水と食料の確保か……あと、そもそもこの島自体はどの位の大きさなんだ?」

 

 

まだ無人島と決まったわけでは無いし、とりあえず日が高いうちに確認できることを探そう。

人が居れば、もしかすると私の事を知っている人が居るかもしれない。

心の奥でそう祈りつつ、探索を開始するのであった。

 

 

 

 

「はぁ……疲れた」

 

 

日がだいぶ傾いた頃、日中に見かけた建物の前まで戻ってきた彼はため息をつく。

手には数種類の木の実や果物、そして水が入っている2Lのペットボトルを持っていた。

 

 

探索して分かったことは、残念ながらここは無人島であり、大きさは東京ドーム……がどの位の大きさか分からないが、多分1~2個分くらいの小さな島だということだ。

四方は完全に海に囲まれ、遠くを見ても他の島や船は確認できなかった。

正に自然の牢獄と言っても過言ではない。

 

 

ただ、そう悪い話ばかりではなかった。

まずここは自然が豊かで、島の中央部分は多種多様な植物が生い茂る森になっている。

田舎育ちの彼にとっては自然の食物庫と言わんばかりに、食せる木の実や野草、果物だらけだった。

ただ、未だ火を起こせる準備が無いため、そのまま食せる木の実や果物だけ採取してきたわけだ。

また、森の中に湧き水が流れる場所があり、飲み水の確保もできた。

恐らくどこかから漂着したであろうペットボトルを道すがら拾っていたので、そこに水を汲んで持ち帰ってきた。

漂着物があったという事は、案外すぐそばを船が通る可能性もあることに気付き、少しだけ気分が上向いたのは言うまでもない。

 

 

とは言え未だ完全サバイバル状態な訳だが、いつまでも木の実ばかり食べている訳にはいかない。

とりあえず魚などを取る方法を考えたり、あとは近くをヘリや飛行機、船が通った時に漂流者がいる事を伝えられる術を考えなくては。

やるべき事は多々あれど、もう少しで日も暮れるので最後は寝床の確認を行おうと、日中に見かけた謎の建物に来たのだ。

 

 

建物は予想以上に大きく、部屋数も多かった。

中も当初の予想に反して、荒れ放題という程ではなかった。

もちろん埃はかなり積もってるし、放置された建物特有の汚れや匂いは見受けられる。

だがベッドや家具類は掃除さえすれば使えるし、ざっと見まわした限り窓が割れていたりする所も無い様だ。

少しだけ気味の悪さを感じつつもそんな事を言っている場合でも無いので、頭を振って余計な考えを振り払いながらイチジクに齧り付くのだった。

 

 

 

 

「とりあえずこんなもんか……」

 

 

建物内でもとりわけマシな部類の部屋を探し、ベッド周りだけ掃除を行う。

まだまだ匂いや汚れが気にはなるが、床や砂の上で寝るよりは体力も回復するだろう。

ただでさえ碌な食べ物が無いのだから、少しでも体力は温存すべきである。

 

 

「しかし、これからどうしたものか」

 

 

ベッドに体を投げ出しながら、今後の事について考える。

考えるが、分からないことだらけの現状で思いつくことなど何もないわけで。

とりあえず目先の目標は、『新しい情報が入るか、もしくは助けが来るまで何とか生き延びる』に満場一致で可決された。

満場一致も何も、自分1人しか居ないわけだが……。

 

 

歩き回ったせいか早くもウトウトし始め、まどろみに意識を手放そうとしている丁度その時、ドアの隙間から彼を見つめる視線が1つ。

マグカップ程の大きさしかないその視線の主は、彼が寝息を立て始めたことを確認するとそっと暗闇へと姿を消していった……

 

 

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