活動報告にも上げましたが、とりあえず月曜までは何とか少しずつ投稿していきます。
続きが書ければ……の話ですが。
艦娘や食料が流れ着く浜辺を通り過ぎ、さらに奥へと向かうと岩礁になっている部分がある。
最初は専ら釣り専用の場所であったが、つい最近は別の目的でも来るようになった。
「提督ー!採ってきたよー」
「はふぅ、さすがこの辺の海は綺麗ね。透明度が違うわ!」
「お疲れ様、ゴーヤ、イムヤ。採ってきたものはこの袋に入れておいてくれ」
「はーい」
「この位私達にかかれば簡単簡単♪」
「2人のお蔭で料理の幅が広がったと間宮たちも喜んでいたよ。本当にありがとう」
「えへへ~♪」
「全く……ゴーヤは本当司令官にデレデレね……」
「……そう言うイムヤも顔が真っ赤でち」
「……っ!?うっさい!」
大樹に頭を撫でられながら、ゴーヤとイムヤがじゃれ合う。
そんな2人を眺めつつ、2人が採ってきたものに視線を向ける。
多めに持ってきた袋にこれでもかと詰め込まれたサザエやウニが、陽の光を浴びて輝いている。
そう、これが釣り以外にここへ来る事になった理由である。
イムヤとゴーヤ、正しくは伊168と伊58は共に潜水艦の艦娘である。
他の艦娘とは桁違いの低燃費さと、駆逐艦や軽巡などの一部の敵からしか攻撃を受けないという利点を生かして戦う艦種だという。
だがその利点も彼女達にとっては喜ばしい事ではなく、多くの鎮守府で彼女たち潜水艦を酷使した資材集めが行われているらしい。
ここに居るイムヤとゴーヤは同じ鎮守府所属で、多分に漏れずそういう酷い労働環境下に居たらしいのだが、積み重なった疲労で注意力が散漫となっていた所に敵の爆雷が炸裂し、気付いた時にはここに流れ着いていたとの事だ。
尚、現在も潜って食料を集めてもらっていたが、燃料が無いので艤装の力は使わず素潜りで採ってきてもらっている。
その為長時間潜っている事はできないが、これまた他の艦娘とは桁違いの潜水スキルを有効活用し、こうして食卓に華を添える手伝いをしてくれている。
本当は、元居た鎮守府での傷を癒す事に専念してほしかったのだが、彼女達も泳ぐこと自体はやはり好きなようで、趣味と実益を兼ねているとまで言われたら納得せざるを得ないだろう。
「司令官、もっと採ってきた方がいい?」
「ゴーヤたちはまだまだいけるよ!」
「いや、これ以上採っても持ち帰れないだろう。今日の所はこれで大丈夫だ」
「赤城さん達満足してくれるかな?」
「大丈夫だろう……大丈夫、彼女達を信じよう」
「それ多分ダメなフラグでち……」
そう呟きながら、2人は岩場へと上がってくる。
こういう場所でないとサザエやウニは採れないからな……砂浜は砂浜で潮干狩りでもすれば、アサリやシジミやハマグリなんかが採れるかもしれないが、そっちはまた今度でいいだろう。
「ああ、もしまだ泳ぎ足りないのなら自由にしてくれてもいいぞ。今まであまり好きに泳ぐ機会など無かっただろう?」
「うーん、でも今日はもういいかな。いつでも泳ぎに来れるしね!」
「うんうん!今は海で冷えた体を提督に暖めてもらう時間でち!」
そう言いながら腰のあたりに抱き付いてくるゴーヤ。
人付き合いの苦手な私とて男色の気があるわけではないのだから、できればこの過剰なスキンシップを控えてくれるとありがたいのだが……
とは言え体が冷え切っているのは本当のようで、僅かだがゴーヤの体が震えている。
やはり艦娘とはいえ艤装を使わなければ、普通の人間とあまり変わらないのかもしれない。
「ちょっとゴーヤ!司令官の服が濡れちゃうでしょ!」
「なに、少しくらい濡れても構わんさ。それよりも、2人こそ風邪ひかないようにな」
「そうでち!イムヤも提督にくっつくといいよ!」
「えっ、でも……」
「まあくっつかないなら、ゴーヤが独り占めするからいいけどねー♪」
「ぬぐぐ……えいっ!!」
「おっと」
「やっときたでち。イムヤは意気地が無いでちね」
「うるさいゴーヤ!」
「まあまあ、落ち着け2人とも。くっつかれたまま暴れられたら歩けんぞ」
何やらまたじゃれ合いを始めてしまった二人を眺めながら、ゆっくりと鎮守府へ歩みを進める。
はてさて、今日はこのサザエやウニでどんな料理ができるのだろうか?
最近徐々に充実してきた食事を密かに楽しみにしつつ、そんな事を考えるのだった。
◇
「ん?また誰か流れ着いているようだな」
「ほんとだ!提督、早く助けにいくでち!」
「わ、分かってるから引っ張らないでくれ、ゴーヤ」
「落ち着きなさいよもう……」
帰り際に浜辺付近を通ると、また1人漂着しているようだった。
とりあえず急いで鎮守府へ連れて帰ろうと近づくが、途中でゴーヤとイムヤが足を止め服の裾を引っ張る。
何事かと2人を見ると、2人は驚愕の表情を浮かべていた。
漂着している子に何が……と思いよく確認すると、確かに普通の艦娘とは違うようだった。
身体は小さく、身長は恐らく長波達よりももっと低いだろう。
それよりも目を引くのが、白粉でも塗ったのかと思う程白い肌と、その肌と同じくらい真っ白な髪だ。
今までに漂着した艦娘の中にも真っ白な髪を持つ子はいたが、肌は常人と同じ色をしていたはずだ。それに比べてこの子の白さは少し異常だ。
アルビノの肌を持つ人を見た事は無いが、こんな感じなのだろうか……?
ふと我に返ったのか、2人が急に大きな声を上げる。
「なんで深海棲艦が!?」
「しかもこいつ北方棲姫でち!やばいでち!!」
「深海棲艦だと……!?しかし北方棲姫とは?」
「北方海域にいる深海棲艦……のボス的存在ね。北方棲姫っていうのはこっちの勝手な呼び方らしいけど……」
「見た目は小さいけど、強さは一級でち!」
そんな北方にいるはずの深海棲艦が、なぜこんな暑い地域の無人島へ?
そんな疑問が湧いたが、今一番気にするべきはそこではないだろう。
敵ならば今のうちに対処しておくべきか……しかし、パッと見は普通の少女であるこの子を手にかけるのは……
どう動くべきか悩んでいると、ふとゴーヤが何かに気付いたようだ。
「……あれ?そういえばこいつ艤装が無いでちね」
「そう言われると確かに……手負いってことかしら?」
「手負いという事は、近くで艦娘と戦争をしたという事だろうか?」
「ここがどこだか分からない以上、なんとも言えないわね……」
「そうか。せめて会話が可能ならば分かる事もあっただろうが……」
「可能だよ?北方棲姫は喋れるでち」
「む、そうなのか?」
「普通なら喋らないんだけど、一部の深海棲艦は喋れるの。そういう深海棲艦は名前に姫とか鬼とか付けられて差別化されてるわ」
「ならば話は早い、2人とも手を貸してくれ」
「手…って、もしかして連れて帰る気でちか!?」
「危ないわよ司令官!」
「艤装が見当たらないという事は、攻撃手段は無いはずだろう?それに、何故かこの子からは邪気を感じない。だから大丈夫だと思う」
「……あーもう!どうなっても知らないんだから!」
「やけくそでち!」
「ありがとう、2人とも」
何とか2人を説得すると、2人に貝の入った袋を手渡し、北方棲姫を抱き上げる。
北方棲姫は見た目の通り非常に軽く、これならば余裕で鎮守府まで連れていけるだろう。
隣でイムヤとゴーヤが「わっ、お姫様だっこだ……」「深海棲艦のくせにずるいでち……」と呟いていたが、大樹の耳には入っていなかった。
◇
「んで、結局そのまま連れて帰ってきたってわけか」
「あ、ああ。しかし長波、なぜ私は正座させられてるんだ?」
「当たり前だろ!あたしも優秀な提督を沢山見て来たけど、ここまでお人好しな提督は……いないぞ?」
そう言いながら、長波は大きなため息をついた。
北方棲姫を連れて帰ってきた後艦娘達には大層驚かれ、彼女を入渠ドックへ入れる頃には長波まで話が伝わっていたらしい。
唖然とする妖精に北方棲姫を託してドックから出ようとした所、笑顔で仁王立ちしている長波につかまってしまい、現在執務室で正座させられているという訳だ。
「いや、彼女に同情したわけでは無いぞ。何か有意義な話が聞けるかと思ってだな……」
「どうせ助けようかどうか迷った挙句、イムヤ達に会話できることを聞いたんだろ?そんでいい大義名分を見つけて今に至る……と」
「む……なぜ分かったんだ?」
「まだ日は浅いけど、あたしは提督の初期艦だぜ?わからいでか」
「そうか……」
ちょっとドヤ顔になっている長波を見つめつつも、考えることは北方棲姫の事である。
やはり入渠ドックへ入れてしまったのは失敗だっただろうか?
艤装が見当たらないとはいえ、ドックで回復したら復活している可能性もあるのだが……
「まあなんだ、話を聞くときは腕に自信のある子をボディガードに付けるから」
「当たり前だっつーの!……そんときゃあたしも同席させろよ?」
「ああ、分かった。心配してくれてありがとうな」
「べ、別に……初期艦だからな、仕方なくだよ。仕方なく」
「それでもありがとう。長波は優しいな」
「……ほっとけ」
珍しく頬を染めたレア長波を見つめながら、頭を撫でる大樹。
とは言いつつ、照れているのは分かっても理由までは分かっていない彼も大概である。
何となく頭を撫でていた手は、長波が恥ずかしさに耐えられなくなって暴れ出すまで、止まる事は無かった。
◇
「ン……ココハ?」
「目が覚めましたか?」
「ダレ……?」
「私はこの鎮守府の妖精です」
「チンジュフ……ッ!?」
「そう、貴方達と敵対していた人間と艦娘がいる所ですよ。尤も、ここは今正式な鎮守府ではありませんけどね」
「ナゼ……タスケタ?」
「それは提督に聞いてみないと何とも……少なくとも、拷問とかそういう事をする人じゃないので安心してください」
「……アッテミタイ、テイトクニ」
「分かりました。とりあえず目を覚ましたことを伝えます」
「……ウン」
そう言うと、妖精はどこかへ行ってしまった。
周りを見渡してみるが、他に誰かが監視している様子は無い。
なんて不用意なんだと思いつつ、北方棲姫は艤装を確認しようとした所でハッと気づく。
(ソウダ、ギソウハハカイサレタンダッタ……)
思わずため息をつくと、自分がこれからどうなるのかを考える。
拷問はしないと言っていたが、こちらは深海棲艦。しかも一部とはいえ、北方海域の深海棲艦達を束ねていた存在である。
いろいろと聞かれた挙句に沈められる、それが一番あり得る未来なのかもしれない。
「オネエ……チャン……」
そう呟く北方棲姫の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
かつて姉のように慕っていた存在を思い浮かべながら……
突然のほっぽちゃん襲来!
……タグに深海棲艦もいる事を追加しておいた方がいいのでしょうか?