平和の使者   作:おゆ

71 / 71
 
 
 決してこれは夢落ちではありません。
 もう一つのカロリーナの物語、「見つめる先には」そこへつながるエピローグ&プロローグです。



エピローグ&プロローグ  亡国の妹

 

 

 また、夢を見た。

 

 私は、昔から長い夢を見る癖がある。

 見る夢は二つある。

 一つは、二ホンという国に生まれ、平和のうちに過ごす夢だ。

 小学校も中学高校大学も、平凡に過ごす。

 それなりに楽しくそれなりにしんどいこともあった。

 平均にすれば、ほんのちょっぴり楽しいことが多いくらいだ。

 しかし、この夢にははっきりとした終わりがある。

 19歳より先が無いのだ!

 まるっきり唐突に生活が終わる。

 

 もう一つの夢は、私がカロリーナという名で呼ばれている。なぜか私の名が帝国風になってるのはどうしてだろう。

 そこでいろんなことを体験する。

 特に、軍を率いて艦隊指揮などをやり、そして勝ったりするのだ。

 気持ちがいい。

 私の願望が現れているのか。私にそんな願望があるのか。

 

 夢の最後、帝国と自由惑星同盟が平和に共存していく。

 そんな幸せな終わり方なのだ。

 この夢はあまりにリアルであり、単なる頭の中の作り物には思えない。もしかすると本当に誰かがそんな人生を歩いたのかもしれないほどに。この人生を私は知っている気がする。誰かに話せば一笑に付されるだろうが、私はそういう思いを捨てきれない。

 おかしいことだろうか。

 夢は覚めている時に振り返るから夢なのだ。

 夢を見ているときはそれが全て、誰がそれを本物でないと言えるだろう。

 

 夢が大事なのはリアルなだけのせいではない。その夢のおかげで知っていることがある。

 

 自由惑星同盟が危機にさらされることを。

 その危機をもたらすのが、私の大好きな兄であることを。

 これからのことを知っているという感触が切ない。

 変えたい。これを変えたい!

 どんなことをしてでも。兄と、私と、滅びゆく自由惑星同盟のために。

 

 

 

「キャロル、またなんか妄想?」

「学年一の天然さんに言われたくなーい」

 

 そう、自分の思いに捉われ、ついついぼんやりしてしまった私に話しかけてきたこの子がフレデリカ・グリーンヒル。

 女性士官学校の同期であり、私とは入学以来いちばんの仲良しなのだ。

 

 フレデリカの特徴はヘイゼルの瞳を持ち、少しタレ目の美人さん。しかしその能力は見かけよりもはるかに高い。常人に真似のできない正確な記憶力と計算の速さ、しかも見かけによらず体力もある。

 この女性士官学校では成績2番か3番、それより下に落ちたことがない。

 

 でも私は知っている。

 彼女は意外に抜けたところがあり、そのため料理や洗濯も生活に関わることはまるでダメだ。私が菓子作りが趣味なのと違って。お父さんが過保護でそういったことを全然させてもらえなかったためだと言っていた。

 しかも、彼女は男性の好みがはっきりしていて、「ぼさっとした、黒髪」ときている。おまけに「身長175cm」。

 当てはまる幸せ者の名を知っているのは私だけだ。

 私だけに教えてくれた。

 本当なら、好きな人をこちらも教えてあげるのが礼儀というものだろう。

 しかしそれができない。こちらは兄ばかり追ってここまで来たからだ。

 

「そうね、キャロルはお兄さん子、一人娘にはわからないわ」

 

 フレデリカに呆れられるしかない。

 

 

 そう、私の兄は鋭い知性を持ちながら、中身はロマンチスト。現実と合わないくらいの理想家肌。

 それがいいのだ。

 兄に憧れたせいで真似事をするように私は女性士官学校に入った。もう少しで卒業だ。

 

 兄の方はもう三年前に士官学校を卒業していた。

 しかも首席で。

 アンドリュー兄さんは私の誇りだ。

 追い付きたい。フレデリカには悪いが私だって頑張って学年成績一位は譲らない。

 

 来年、宇宙歴794年に私たちは卒業するだろう。

 今、宇宙は帝国と同盟の戦いが近年にないほど激しくなってきている。ティアマトやヴァン=フリートが戦場になり、年中行事のように大規模な艦隊戦がある。

 

 私たちの卒業後はどうなるのか。

 自由惑星同盟軍では、女性ももちろん士官学校を出れば士官として入れるのだが、いいところ中佐止まりなのである。艦隊指揮どころか艦長にすらなれない。通常には補佐の副官職で過ごす。

 

 それでも私は頑張りたい。

 決して夢で見た筋書きになんかさせない。

 

 

 今、キャロライン・フォークの物語がここから始まる。

 

 

 

 

 




 
 
ここまで読んで頂いて、お気に召しましたら、是非カロリーナシリーズ第二弾をご覧ください。
同盟側キャラの奮闘です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

疲れも知らず(作者:おゆ)(原作:銀河英雄伝説)

 銀河英雄伝説は広大な世界観と魅力的なキャラで大変人気があります。本作品は珍しくフェザーンに転生者が誕生する物語です。先に発表された「平和の使者」と「見つめる先には」の続編としてそれらの末尾を飾るものになっています。その構成上、ぜひ前作をご覧頂いてからお読み下さい。オリジナル主人公ですが他のオリキャラは極少です。銀英伝使用についてのらいとすたっふルール201…


総合評価:1142/評価:6.68/完結:143話/更新日時:2021年08月01日(日) 16:00 小説情報

神様に「リリカルなのは『みたいな』世界に転生したい」って要望したら「幼女戦記」の世界に入った話。(作者:スレ主)(原作:幼女戦記)

「もし生まれ変わるなら、魔法少女リリカルなのは『みたいな』世界を! ついでにレイジングハート『みたいな』最高の相棒(AI)と、可愛い幼馴染もセットでお願いします!」▼死の間際、俺が神様に放った精一杯の強欲な願い。▼目覚めた俺の脳内(システム)に、聞き覚えのある凛とした声が響く。▼『……マスター。再起動を確認。……セットアップ、オールグリーン。……全力でサポー…


総合評価:27289/評価:8.66/連載:41話/更新日時:2026年07月30日(木) 12:29 小説情報

皇国の守護者・守原英康(作者:オシドリ)(原作:皇国の守護者)

自己中心的な性格で、内乱を企てて射殺された、良い所無しな守原英康に憑依した。▼※ハーメルンへ投稿中の「短編置き場」にて、2017年01月21日(土)~2020年05月31日(日)までに投稿された作品を分離、再投稿したものになります。 ▼「短編置き場」でお気に入り登録、感想、評価をくださった皆様には、再投稿となりますことをお詫び申し上げます。


総合評価:4527/評価:8.95/完結:6話/更新日時:2026年07月28日(火) 21:00 小説情報

​『逆襲のシャア』の総帥に憑依した元商社マン、アクシズを落とさず地球圏を支配する 〜静かに暮らしたいだけなのに、アナハイムと狂信者に神輿を担がれて逃げられない件〜(作者:なやむ)(原作:ガンダム)

「お願いだから、もうこれ以上俺(キャスバル)を神輿として担がないでくれ……!」▼目が覚めると、そこは宇宙世紀0090年代▼よりにもよって、グリプス戦役末期、ハマーン・カーンと一騎討ちに臨み、その後消息不明になっていた世紀のカリスマ、シャア・アズナブルーキャスバル・レム・ダイクンに憑依していた▼本物のシャアはすでに成仏してどこにもいない。残されたのは、ただ「早…


総合評価:13707/評価:8.78/完結:9話/更新日時:2026年07月28日(火) 18:00 小説情報

こちら銀河英雄伝説(作者:亀頭十三)(原作:銀河英雄伝説)

ラインハルトが「リョーツナッハのバカはどこだ!」ってなるお話です。


総合評価:8429/評価:8.84/完結:28話/更新日時:2026年08月06日(木) 20:23 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>