艦これの世界にラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将が着任したようです。 作:アレグレット
状況は極めて単純明快かつ深刻だった。ラバウル鎮守府前面海域に敵深海棲艦が押し寄せて来ていたのだ。
「状況は!?」
提督執務室――司令室――にいた赤城が偵察に出していた艦載機からの無電報告を聞き、それを書き取っていく。
「重巡1・・・軽巡2・・・駆逐艦3・・・・。それに戦艦2も!?」
赤城は愕然としたように額に手を当てた。こんな手薄の時に!ただでさえ人がいない時に!水上打撃艦隊がやってくるなんて!!
だが時は待ってはくれない。彼女は髪をかき上げると、すぐに構内アナウンスで指令した。
「全艦隊、出撃用意!!」
全艦隊といっても、今いる艦娘は赤城、金剛、天龍、曙、潮、夕立だけなのだ。この艦隊で戦艦2隻をはじめとする打撃艦隊を相手取るなど、不可能に近い。
それでも行かなくてはならない。ラバウル鎮守府を守りきるためにも、この鎮守府に着任予定の提督をお迎えするためにも。
司令室を飛び出した赤城は駆け足でドックへと急いだ。そこには全艦隊(といっても6人だが。)が集結し、彼女の指令を待っているはずだった。木製の廊下を走り、ややくたびれている階段を駆け下り、砂まじりの道路をドックへかけていく。赤城の息が上がった。それは鍛錬不足などでは決してなく、ある意味恐怖からかも知れなかった。恐怖と焦り。それは戦いには何よりも禁物なものだと赤城自身が悟っている要素だった。
前方に大きな建物が見えてきた。その入り口わきに艦娘たちが立っているのが見えたが、一人色違い・・・いや、場違いの人間がいる。
「ラインハルトさん!!」
周りの艦娘たちも、潮を除いては、どう接していいかわからないような顔をしていたが赤城の登場でほっとした顔になった。何しろ黒に銀の刺繍をあしらった服は確かに格好はいいのだが、提督のきている服にはないものだし、何より金髪の人間など今までになかった存在である。そもそも彼がいったい何者なのかも他の艦娘たちも、赤城を含めてわかっていないのだ。
「フロイライン・アカギ。敵が来ているそうだな。」
「はい。危ないですから、防空壕に避難していてください。私たちが敵を食い止めます。」
「どうやってだ?」
「えっ!?」
何か私は失言でもしたのかしら、と赤城は思った。目の前の金髪の青年の機嫌がにわかに悪くなったような気がしたからだ。
「どうやってだ、と聞いている。そのような慌てぶりでは、勝てる戦にも勝てんぞ。」
「おい、テメェなんなんだよさっきから!!早く出撃しねえと、やばいんだっつ~の!!」
軽巡洋艦の天龍が腰に手を当ててラインハルトをにらんだが、それに数倍する眼でにらみ返された。
「うろたえるな!!」
ラインハルトの一喝に艦娘たちが固まる。
「落ち着いて対処し、戦術に従って行動すれば、あんな敵ごときに後れを取るような卿らではない!!」
「あんな敵ごとき、ってアンタ知ってんの!?アイツらがどれだけ強いのかを!!この――。」
曙が「このクソ提督!!」と言いかけて口をつぐんだ。何しろラインハルトはまだ提督ではない。提督かどうかもわからないのだから、どう呼んでいいかわからないのだろう。
「私もこの3日間何もしなかったわけではない。いささか卿らの蔵書を読ませてもらった。奴らの性質は分っているつもりだ。それに卿らのもな。だからこそいう!卿らはあのような敵ごときに後れを取るものではない!!」
ラインハルトはゆっくりと艦娘たち6人を見渡した。するとどうも不思議なことに、ラインハルトが昔からこの鎮守府の提督だったかのようなそんな存在に見えてきたのだった。
「フロイライン・アカギ。通信機はあるか?」
「え!?あ、はい!司令室にあります。」
「全艦隊と連絡は取れるか?」
「取れます。」
「ならば、卿らは私の指示に従って動いてほしい。必ず、あの敵を粉砕できるように指示を出すと、約束する。必ずだ。」
ラインハルトの確信に満ちた言葉に艦娘たちは眼を見開いていた。
「おもしれえ。」
天龍が不意にニッと笑った。
「ラインハルトさんとやら、もし出来なかったら、どう責任を取ってくれるんだ?」
「どうせ卿等が死ねば、ここもやられる。その時は俺は卿等と運命を共にする。それだけだ。」
「よし!」
天龍が刀を握りしめた。
「わかった!!!アンタに任せてみる。」
「Hey!!天龍、いいのデスカ!?こんなこと初めてデ~ス!!」
金剛が驚いたように叫んだ。
「どうせ正面からぶつかっていっても勝ち目はねえんだ。勝ったとしても俺たちはどうなるかわからねえ。ならこの金髪に任してみてもいいんじゃねえかって思うんだ。」
「・・・・・・。」
一同は黙り込んだが、すぐにうなずき合った。何しろ時間がないのだ。
「わかりました。ラインハルトさん。指示をお願いします!」
赤城の言葉にうなずいたラインハルトは司令室に、艦娘たちはドックに、それぞれ走り去っていったのだった。