艦これの世界にラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将が着任したようです。   作:アレグレット

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第七話 新たな戦力・・・いや、仲間が加わったな。

ラバウル鎮守府まであと数キロの近海にて――。

 

まだ初夏の陽光がきらめいている波間を敵の砲弾が切り裂き、目標に向けて飛んでいく。幸いそれは力を失って波間に着弾し、高い水柱を上げただけだったが、逃亡者たちにとってはそれは幾千幾万の敵弾のなかのほんの一発でしかなかった。

「二人とも!!頑張って!!あ、あと少しでラバウルだから!!あそこの鎮守府にたどり着けば、味方が、待っていてくれるんだから!!」

緑色の髪をポニーテールにした艦娘が同行する艦娘たちに声をかける。傍から見れば彼女は遅れがちの仲間に声をかけて励ましているように見えるが――。

 

実は彼女が最後尾なのだった。目だった負傷はないものの、艤装が損傷して思ったように航行できないようだ。

 

「夕張さん、頑張ってよ!!」

「早くしないと、敵に追いつかれちゃうよぉ!!」

 

と、連れの駆逐艦娘二人に言われているところを見ると、彼女が一番足がおそい様なのである。

「ま、待って!お、おいてかないでよぉ!!」

と、夕張が懸命に声を上げる。と、文月が慌てた様に声を上げると、皐月の袖を引っ張って、全速力で夕張に向かってきた。彼女の背後に戦艦2、重巡3、駆逐艦2、軽巡1、そして空母ヲ級が1隻、すぐ後ろにまで迫ってきているのを認識したからだ。有効射程ギリギリいっぱいに入ったか入らないかくらいであるが、グズグズしていればあっという間に追いつかれて、深海棲艦の仲間入りである。同行する皐月、文月の二人は懸命に取って返して、夕張の手を引っ張って敵の砲火の中を一目散に走り始めた。

「走ってぇ~~!!!」

文月が懸命に叫んでいる。

「も、もう駄目ぇ~~!!!」

夕張が喘ぎながら叫ぶ。

「あきらめないでよ~~!!で、でも、さすがにこれは不味いかも~~~誰か助けてぇ!!」

皐月が叫んだその時だ。

 

 

「艦載機の皆さん、用意はいい!?」

 

 

凛とした声が海上の彼方からこだました。正確に言えば、飛来してきた艦載機隊から発せられた声だった。

 

 

同時にベートーヴェン交響曲第七章第四楽章が艦載機隊から大音量で流れ始めたのである。ラインハルトが銀河英雄伝説の登場人物でそのものあることはまだ赤城たちには信じがたいものであったが、一応OVAなどを見て知っている赤城たちは会戦に際してテンションが上がる曲を選ぶことにしたのだった。

当初ラインハルトはこの手法を嫌った。一瞬の気の抜けようも許されない戦場に音楽を持ってくるとはどういう了見なのか、というラインハルトの言葉に、艦娘たちはこう言った。どうせ戦わなくてはならないのだから、できるだけこちらに有利な手をすべて打っておくべきだ、と。

「戦場で軍歌などを歌って士気を高めるのはよくあることです。それが士気の高揚につながるのであれば、それでいいではありませんか。」

という艦娘たちの意見にはラインハルトも沈黙せざるを得なかったのだ。だからといって、クラシックとはこれ如何に、とラインハルトは思わないでもなかったが、それ以上の追及はしなかった。

「ラインハルトさんには悪いけれど、やっぱりドーリア星域会戦のBGMがいいわ。なんといっても本格的な初陣の曲だもの。」

などという声が各所で上がったためなのである。

 

 

『フロイライン・アカギ!敵は空母を擁しているのだな!?制空権確保はフロイラインにしかできない。すべてはフロイラインの艦載機にかかっている。』

「はい!!制空権確保はお任せください!」

赤城が艦載機隊の後方にあって声をあげた。

『フロイライン・テンリュウ!!』

「おう!!」

『前方の友軍艦隊を収容後、合流して敵を迎え撃て!!』

既に陽動戦法は天龍たちの十八番となっていた。先の戦いではためらいを見せた天龍たちも、ラインハルトの真意を知ってからは積極的にこれを活用する姿勢を見せるようになっていたのである。

「任しておけ!!」

赤城に先行して走っていた天龍、曙、潮はたちまち夕張たち3人に追いつくと「早く逃げろ!」と退避方向を伝え、敵艦隊の正面斜め前に立ちふさがった。

『今だ!敵の注意を引き付けろ!ファイエル!!』

「は!?な、なんだって!?」

「ふぁ、ふぁいえる・・・?」

「ふぁ、うえる・・・?」

一瞬天龍たちの動きが止まった。撃て!の号令ならわかるが、「ファイエル!!」などとは聞いたことがないのである。ラインハルトも通信機の向こう側で艦娘たちの躊躇いを感じ取ったのか、すぐに指令を訂正した。

『何をしている!?・・・いや、私が悪かった。改めて指令する!主砲、斉射だ!』

「最初からそう言えよ!」

天龍が砲を構えてうち放したが、いささかタイミングが遅すぎた。たちまち水柱が天龍たちの前後左右を包み、砲煙と火煙があたりを覆う。

『砲撃しつつ、全速力で退却せよ!!敵の艦載機隊はフロイライン・アカギが阻止する!心配は無用だ!!』

「おう!!」

天龍たちは鼻っ先に砲撃を浴びせながら、味方艦載機の会敵地点にまで敵を翻弄しつつ誘導していった。前回同様戦力で勝る敵を誘い込む作戦に出たのだった。

「敵が分かれました!」

赤城が艦載機隊からの情報をラインハルトに報告し続けている。

「戦艦2、重巡2はそのまま直進!友軍艦隊を追尾継続中!重巡1、軽巡1、駆逐艦2、空母1は天龍さんたちを追尾し始めました!」

『よし!』

通信機の向こう側ではラインハルトが大きくうなずいた気配がした。予定通りというわけだ。

『よくやった!フロイライン・アカギ。卿の艦載機隊をもって、敵空母を総攻撃だ。他はフロイライン・テンリュウらにまかせよ。まずは全力を挙げて空母を叩け!!』

「はい!」

天龍が敵を誘導し、大きく弧を描くようにして鎮守府から遠ざけつつある。もちろん鼻っ先に砲撃を撃ち込みながらである。曙は追尾していたが、潮はコースを徐々に変えて敵艦隊の右側面につく動きを見せていた。これら戦況は観測専門の九七艦攻を通じて逐一ラインハルトに映像とともに報告されている。敵艦隊が2手に分かれた艦娘たちに注意を向けたその時だった。

『今だ!!』

ラインハルトの号令と同時に、赤城の放った艦載機隊が敵の死角から突撃したのである。

「一航戦の誇り、今こそ、見せつけます!」

赤城の号令と共に九七艦攻から放たれた雷撃がヲ級のどでっぱらを直撃した。閃光がきらめき、甲高い悲鳴と共にヲ級の姿が消えていた。敵は狼狽し、めったやたらに撃ちまくったが、その時には天龍、曙、潮がそれぞれの位置から魚雷を発射したのである。砲撃能力では重巡に劣るが、決定的な雷撃攻撃では軽巡、駆逐艦娘に分があった。九九艦爆の援護もあり、敵重巡は大破、軽巡は撃沈、駆逐艦も1隻が撃沈されている。これだけ損傷を与えれば、水雷戦隊でも十分すぎるほどに戦える。もう大丈夫だろう。

『フロイライン・アカギ。掃討作戦はフロイライン・テンリュウに任せろ。卿は艦載機隊を収容後、フロイライン・コンゴウらの支援に向かってほしい。もう間もなく会敵する頃だろう。』

「了解しました。天龍さん!」

「おう、此方は任せておけ!しっかり掃除するからよ!」

天龍が高らかに応えかえし、手を振った。任せておけというオーラが出ている。赤城はそれにうなずきかけ、水面をけってターンすると白波を蹴立てて全速力で夕張たちを追っていった。

 

 

* * * * *

その頃――。

 

「ヘ~イ!!提督ゥ~~!!こんなやり方は私たちbattle shipの戦い方にありまセ~ン!!」

金剛が我慢できないように叫んだ。

『静かにしろ!もう少しで敵が来るではないか!戦力で劣るわが方がいかにして犠牲を出さずに戦うか、その結果がこれだ!!フロイライン・コンゴウ!卿はいささかも恥じることはない!!』

ラインハルトが不服そうな金剛を諭した。金剛にしてみれば無理もない。いかに劣勢であるとはいえ、戦艦が鎮守府近海の島の一つの洞窟に隠れて敵をピンポイントファイアーで狙い撃ちするというのだから。もう一人の夕立もラインハルトの指示により近くの洞窟に隠れている。

このあたりは洞窟が多い。そこを行き来しながら入れ代わり立ち代わり敵を狙撃し続けるという作戦なのである。

「ローエングラム提督さん、こんなの卑怯っぽくないの?」

夕立も何かきまりが悪そうに尋ねるが、ラインハルトの答えは「卿らはいささかも恥じることはないのだ!!」というその一点張りだった。

『戦力で劣る卿らが一騎当千の武者のように一騎打ちを挑もうというのか!?無駄な消耗は戦術的に愚策であると諸書籍でも戒めているところであり、断じて容認できない!』

と、ラインハルトが言い放った。そうまで言われては、二人ともそれ以上抗弁することもできず、ただじっと待っているほかなかった。

「う~ん、どうもこういうのは苦手ですネ~・・・。」

金剛が手持ち無沙汰そうに腕をさすりながら独り言を言う。洞窟に隠れてただ波しぶきの音を聞き続けていると、どうも戦闘中だというのに眠くなって仕方がない。おまけにジメジメするし、なんだか全身が痒くなってくるようでどうもいけない。

「ヘ~イ、提督――。」

『来たぞ!!』

ラインハルトの言葉が金剛の眠気を打ち破った。敵が近づいているから、小声であったが、その意気と意図は金剛には十分に伝わった。

『フロイライン・コンゴウ!敵艦隊速力18ノット、卿から見て2時方向から10時方向に友軍艦隊を追うようにして進んでいる。友軍艦隊が通過次第、卿の全力を挙げて敵戦艦を撃て!!』

「了解ネ!」

金剛も小声で答えた。と、悲鳴やら叱咤激励の声やらがにぎやかに聞こえ始めた。どうも必死に逃げているようでどこか間の抜けているような感じがする。その原因はすぐにわかった。

「て、手を離さないでよ!お、お、おいていかないでよぉ~~!!」

「夕張さん、しっかり!追いつかれちゃうよぉ!」

「大丈夫だよ!絶対手を離さないから!」

「あぁ、もう駄目~~・・・・。」

洞窟に隠れている金剛の目の前を二人の駆逐艦娘に手を引っ張ってもらいながら、夕張が走り抜けていくのが見えた。

「oh!!・・・夕張でしたカ。でも、待っていてネ!すぐに助けマ~ス!!」

一人うなずいた金剛はじっと待っていた。ほどなくして金属質の金切り声を上げながら深海棲艦が3人を追ってきた。獲物はもう手の中だと、深海棲艦たちは勝利の雄叫びらしきものを上げながら殺到していく。先頭の戦艦がその砲門を開いた。

「fire~~!!!」

洞窟の岩陰から小声で金剛が叫び、彼女の誇る35,6センチ連装主砲が火を噴いた。

「ギャァァァァ!!」

どでっぱらに被弾した深海棲艦は、一瞬何が起こったのかわからなかったに違いない。その訳が分からない状態のまま、直撃弾をクリティカルヒットで食らった戦艦ル級は大爆発を起こして海の底に沈んでいった。

 

深海棲艦たちはパニックに陥ったらしい。訳が分からず、右往左往しているところに、波しぶきを割って、魚雷が走ってきた。大音響と共に水柱が噴き上がり、多数の命中弾を受けた重巡リ級が破片をまき散らして沈んでいった。

 

残った戦艦ル級は慌てふためき、滅多やたらに主砲を撃ちまくりながら、逃げようとした。

「逃がしまセ~ン!!・・・・fire!!」

再び、小声で叫んだ金剛が主砲斉射した。敵が混乱し、さらに夕立の雷撃で恐慌状態に陥った合間に、別の地点に移動して、ル級を待ち伏せていたのである。

背後から次々と命中弾を受けた戦艦ル級は、なおも逃走を図ろうとする。

 

だが、前方から飛来してきた赤城の艦載機隊の爆弾によって、文字通り海の藻屑となっていったのだった。

 

 

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