ワンサマー・イン・スリープ・シグマ 作:シグマファン
深夜一時、ここは東京のとある場所にある廃れた倉庫。そこは数年前に人々から見捨てられ、今現在までの数年間、人々から忘れ去られる形でそのままにされていた。
倉庫内には、この倉庫の持ち主が置いていったであろう鉄パイプや鉄の板等が無造作に投げ捨てられ、中には埃を被った布やブルーシート等に覆い隠される様に被られている鉄の板が重なるように置かれているのを見受けられる。
辺りには空気の入れ換えが悪いのか、カビ臭い臭いと倉庫内にある金属独特の臭いと混ざりあっており、どんな臭いになっているのかは判らない。
強いて言うなら、汚いと言うよりも悪影響かつあまり嗅ぎたくもなく、吐き気を催す。それだけではなく、天井には蜘蛛の巣が幾つも見受けられる
しかし、ここは廃れた倉庫なのか、巷では心霊スポットと囁かれ、ネットでも話題になっている。否ーーそれは噂に過ぎないのと、それが人々が寄り付かない理由にもなっていた。
逆に言えば、この廃れた倉庫は倉庫自体の持ち主に見放され、噂により恐れられる存在にしか過ぎない。言わば廃れた倉庫自体が被害者であるのと、それを気にとめる者達はいないのも事実。
この廃れた倉庫は永遠に心霊スポットとして有名になるのか、それともそのまま誰にも必要とされないまま、自然に崩れ落ちるのを待つだけなのかは、誰にも判らない。
「シヤアァァァ…………ッ」
しかし、倉庫には人の気配がない訳ではなかった。倉庫には人ではない何かがいた。それは異様な姿であり、二本の触角や紫色の瞳、硬質の表皮が特徴的な蟻の化け物。
蟻の化け物は人目に付かないようにこの倉庫に隠れ住んでいた。人前に姿を晒せば何かをされるのも目に見えていた。それは一匹だけであるが近くには男性の死体が転がっていた。
男性は既に事切れているが内蔵等の臓器等があまり見受けられない。何故なら、その臓器は蟻の化け物に喰い千切られているからであった。
蟻の化け物はそれを美味しそうに貪っている。が、骨を噛み砕く音や人肉を喰いちぎる音が辺りに微かに木霊していた。それだけでなく、血の海も出来ており、倉庫内に恐怖を与え、この倉庫に入ったら生きて帰れない事をも意味している。
そして、蟻の化け物は男性の死体を喰っているが誰も、蟻の化け物の邪魔をする者は居ないーーこの倉庫が原因だろうがそれも蟻の化け物から見れば都合のいい場所にしかなかった。
蟻の化け物は此処で一生を過ごすつもりなのだろうかーー嫌、それは儚い夢に終わった。刹那、蟻の化け物は両手に持ってる肉片を食べるのを止め、顔を上げ、とある方角を見る。
そこは窓だった。窓は、この倉庫自体長年放置されているのか酷く汚れていて、窓の外の景色はよく見えない。が、蟻の化け物は何かに反応していた。
「シャァァ……!」
蟻の化け物は肉片を落とすと、立ち上がり、窓の方へと歩み寄る。昆虫独特の危惧か、この住処を脅かす存在なのかと警戒していた。
後者の方が強いだろうが蟻の化け物は窓の前に立つと、顔を窓の方へと近付ける。気配は感じるーー蟻の化け物は威嚇する。
蟻の化け物は、この倉庫に忍び込んでくるであろう侵入者を許さなかった。蟻特有の縄張り意識を駆り立てていた。
蟻の化け物は、この事態に落ち着きながらも、倉庫の外にいる何者かに警戒し続けていた。
一方、倉庫の外では一台のバイクが停まっており、近くには二人の二十歳にも満たない十代後半の青年達がいた。片方はさっぱりとした黒い髪に黒い瞳、童顔が特徴的な青年。もう片方は年下でありながらも大人びており、さっぱりとした黒い髪に黒い瞳が特徴的かつ、左目の方には眼帯を着けている。
服は上下が焦げ茶色かつ軍服に良く似ている。が、青年達は軍服を身に纏っているだけではない。童顔が特徴的な青年は兎も角、年下の青年は腰に、とあるベルトを巻いている。そのベルトは全身が黒く、中央には何かの生き物の顔を模しており、紫色の瞳にその下には、左右には白銀色のグリップがあった。
しかし、二人の青年は何故、こんな夜遅くまで起きているのだろうか。警官に見付かれば職務質問されるだろう。それに、この二人は倉庫に用があるが生憎、彼等はサバイバルゲームをしに来た訳ではない。
何故なら、この二人の目的は倉庫の中にいる蟻の化け物を駆逐しに来たからである……。
「倉庫にはアマゾンが一体だけだね、一夏」
童顔の青年は隣にいる、年下の青年に訊くと、年下の青年、一夏は無言で倉庫を睨みながら頷いたーー左手を腰に着けているベルトにあるグリップへと当てていた。
そして、このベルトは一夏青年にとって、多くの障害を生み出すと共に、一夏青年が成長する為に必要な存在。
そして今宵、倉庫内に血の雨が降り注ぐ。それは惨劇か、或いは悲劇なのかは、一夏や童顔の青年には知る由もなかった。知るとすれば、片方は普通の人間、もう片方は人間の姿をした化け物であり、それを知ってるのは一部の人間だけであった……。