ワンサマー・イン・スリープ・シグマ 作:シグマファン
「取り敢えず、俺が倉庫の中に入ってアマゾンを索敵するから、マモル兄ちゃんは此処で待ってて」
一夏とマモルは今、倉庫の中を出入り出来る扉の前にいた。扉は一夏やマモルよりも一回り大きく、開けるのも一苦労するくらいである。
一夏は優しい表情で扉に手を掛けながら、近くにいるマモルに言う。一方、マモルは心配そうに見据えていた。一夏はマモルに心配を掛けられている事に気付きながらも、扉を開けようとした。
「待って! やっぱりチームの皆を待とうよ!?」
マモルは我慢出来ず、一夏の肩を掴む。
「ま、マモル兄ちゃん、俺は大丈夫だから」
「大丈夫じゃないよ!! 一夏が一人だと危ないし、一夏は志藤さんに言われても、僕は心配だよ!」
マモルは自分の気持ちを一夏に言う。マモルから見れば一夏は家族であり、弟のような存在。一夏が一人で行く事を許さないでいた。それもその筈、マモルはさっきまで、一夏を一人で行かせるのには反対していた。
チームの皆を待とう、チームの皆となら怖くない、と。しかし、志藤の言う事は絶対であり、志藤は駆除班のリーダーであると同時に駆除班全員の命を背負っている。
一夏を一人で行かせるのも一夏が巣立ち出来る意味であるのと、彼が如何なる時でも自分で対処出来るかどうかを試している。
志藤の、義父の思いを無駄にしたくない。義父の強い気持ちを自分は応えてやりたい。一夏はそう思い、マモルにある事を言う。
「マモル兄ちゃん、俺はマモル兄ちゃんの気持ちは解るよ?」
「だったら……!」
「でも、それは義父さんは喜ばないよ?」
マモルが何かを言うも一夏は言葉を続ける意味で遮る。それを聞いたマモルは少し驚くも、一夏は言葉を続けていた。
「マモル兄ちゃん、俺は義父さんの気持ちに応えてやりたいんだーーそれに今すぐにでもアマゾンを倒さなきゃ、犠牲者は増える。それだけは避けたい」
「一夏……」
「マモル兄ちゃん、俺だって怖いよ、死ぬのは怖いーーでもアマゾンを倒さない限り、人々は怯えるーー犠牲者は後を絶たなくなる……それに俺は生きて帰ってくるーー俺は一人じゃない、マモル兄ちゃんや駆除班の皆もいるーーそれに」
一夏は腰に巻いてるバックルを愛しそうに手を触れる。
「こいつもいる……こいつはバックルだけど兵器……だけど兵器でありながらも俺の相棒」
一夏はバックルを、シグマを相棒と言う。シグマは一夏にとって相棒であり友達でもある。シグマはISを凌駕する兵器だが一夏はそれを兵器として悪用するつもりはなかった。
彼はシグマを人々を守る為に使おうとしていた。一夏なりの正義か、一夏なりの我が儘かは判らない。だが一夏は正義の味方になるつもりもない。
「シグマは俺にとって、俺の大切な相棒だーーシグマが一緒なら俺は怖くないーー負ける気もしない」
一夏は目を閉じると一夏は直ぐに目を開け、自分の気持ちをマモルに言った。
「シグマが一緒なら俺は大丈夫、それにマモル兄ちゃん、はい」
一夏は右手をマモルに突き出すーー小指だけを立たせていた。
「それは……」
「うん、指切りげんまんーー俺が生きて帰ってくる事を約束する為だよ? これならマモル兄ちゃんも納得するでしょう?」
「あっ……で、でも……う」
マモルは何も言えなくなると、人差し指だけを立たせた左手を突き出す。すると、一夏は右手の小指を、マモルは左手の小指を絡ませ合う。刹那、一夏は右手を、マモルは左手を軽く動かす。
「「指切りげんまん、嘘ついたら、針千本呑ーーます」」
一夏とマモルは約束しあう。それは二人にとってそれぞれの願いが込められていた。
一夏は生きて帰ってくる事を約束し、マモルは一夏が死なない事を約束する為でもあった。そして、二人はお互いに手を離れさせると、一夏はマモルに背を向け、力一杯扉を開ける。
扉は錆び付いていたのか開けるのも一苦労する。そんな一夏にマモルは手伝う形で手を貸すと、二人は力を合わせ扉を開けた。
錆び付いたような音が二人の耳に響く。しかし、扉が開いた事に変わりはない。二人は人一人分が入れるくらいにまで開ける。
「うあっ!?」
「うっ!?」
二人は鼻を押さえる。何故なら、倉庫内から酷い臭いが充満していたのである。それは二人の鼻にまで届き、溶け込む。
二人から見れば悪臭しか感じられないだろう。否ーーそれは倉庫自体が年月という時間により廃れた為に錆び付いたのか、或いはアリアマゾンが人々を喰らい尽くした為にも関わらず、微かに一部だけ人肉が残っておりそれが腐ったのが原因かは判らない。
だが倉庫内が悪臭で充満している事に変わりはない。二人は倉庫内を窺うも、倉庫内はとても暗く、中にアリアマゾンが何処で待ち伏せしているかは判らない。
二人は倉庫内を見て生唾を呑む。それは恐怖か、アリアマゾンを狩る為の生理現象かは判らない。嫌、前者や後者のどちらもそうとしか言えない。
「……良し、俺入るねーーマモル兄ちゃんは俺が義父さん達が来るまで、停めて置いたバイクの所で待っててね」
一夏はマモルにそう言うと、倉庫内に入る。倉庫内は臭いが一夏は我慢していた。
「一夏君……っ」
マモルは一夏を見て何も言えなくなり哀しそうに下唇を噛むと、扉を閉める。一人ではきつかったがマモルは何とか閉める。
本当はマモルも一緒に行きたかった。だが一夏が、一夏自身が義父と慕う志藤の思いを無駄にしたくないと言ったのである。マモルから見れば辛かったかも知れないがマモルは一夏を弟として見ていて、一夏に色んな事をも教えてもらった。
それに今はマモル自身は一夏の無事を祈る事しか出来なかった。そして、扉は完全に閉まり、その場にはマモルにしか居なかった。
「一夏君……絶対に狩ってね」
マモルは倉庫内にいる一夏を心配してそう言うが、それはとても小さく、倉庫内にいる一夏には聴こえなかった。が、マモルは志藤達が来るまでの間、一夏が停めて置いたバイクの方へと歩くーーそれはとても寂しい物だった……。
『アマゾン!』次回、一夏、変身!