ワンサマー・イン・スリープ・シグマ 作:シグマファン
「あっ……っ」
真の言葉に一夏は少し何も言えなくなる。何故なら、真は一夏がマモルと闘った事を指摘していた。真は一夏に一人で闘えと言ったがマモルと共に闘えとは言っていない。
現にマモルは上半身裸であり、それがマモルがモグラアマゾンに姿を変えた事を物語り、真やチームの面々から見れば、一夏とマモルは一緒に闘った事に気付く。
「答えろ一夏? お前は何故一人で闘わず、マモルと闘った?」
「そ、それは……」
「僕が悪いんだよ!!」
真が指摘し、一夏がどう答えればいいのかが判らず戸惑う中、マモルが叫ぶ。周りが一斉にマモルを見やると、マモルは身体を振るわせながら少し哀しそうに言葉を続ける。
「志藤さん、僕が悪いんだよ……一夏に怒らないで! 僕が一夏一人で心配だと思ったから、僕は変身したんだ!」
「……どういう事だ?」
真は真剣な表情と鋭い眼差をマモルへと向けながら問うと、マモルは訳を話始めた。
「僕は一夏を一人で闘わせせたくなかった……皆で闘う方がよかったーーなのに志藤さんは一夏に一人で闘えと言っても、僕は嫌だった! 僕は一夏を弟みたいに可愛がってるし、一夏が負けて死ぬのを見たくなかったんだよ!」
マモルは訳を述べる。が、その言葉の一つ一つはマモルの気持ちと一夏への思いの表れを感じさせている。
マモルは一夏を一人で闘わせたくない、出来るなら、二人で闘った方が効率が良いと思ったのだろう。
反面、マモルの話は小学生みたく幼稚な物だったがマモルの一夏を思う気持ちは誰にも負けていない。
そんなマモルを見た一也は少し笑いながら、マモルの頭をクシャクシャと掻く。
「そんなのは気にするなってマモちゃん、マコさんはチカちゃんに怒らないよ?」
「ほ、本当に?」
一也の言葉に、マモルは恐る恐る訊くと、一也はニコッと笑う。
「そうだよ~~マコさんは鬼のように怖いけど、チカちゃんの前では父親みたいに優しくなるから」
「っ、バ~~カ! 大体この馬鹿が乱入しなきゃ、一夏は怒られなかっただろうが? ったく、この馬鹿っ!」
一也がマモルを宥めるのと反対に、望は呆れを通りして怒りを覚えながら、マモルの尻を膝蹴りする。
ーー痛いっ!! ーー。マモルは悲鳴を上げるが竜介が呆れながら、望を止める。
「止めろって望、マモルは別に悪い事した訳じゃないだろ?」
「何言ってんだ大滝? 元はと言えばコイツのせいで一夏が怒られてんだろうが? コイツには少し痛い目見せなきゃ解らないからな?」
望はマモルを蹴ろうとしたが一也がマモルを背中に隠しながら、望を止める。勿論、竜介や淳も望を宥めるが望の怒りは収まらない。
しかし、望の言い分は正しいかも知れないが一也、竜介、淳の三人はマモルを護っている為、どちらが悪者かは判らない。
最も、原因はマモルにある為、何とも言えない。そんな彼等のやり取りを一夏はオロオロし、耕太は無言で見据える。
「ハア……」
チームのやり取りを見た真は頭を抱え呆れる。嫌、本当の事を言えば一夏を怒るべきなのに、マモルが乱入したのと、こんな事にはならなかっただろう。
しかし、自分が言い出した事である為、何とも言えないし、何より一夏を怒る気力が失せた。
一夏を怒ればマモルが自分を責め、泣いてしまうし。マモルを責めれば一夏は自分を責めるだろう。
真は頭を抱えながらも視線を耕太へと向ける。耕太は真の視線に気付くも何も言わず首を左右に振る。
「ったく……」
真は溜め息を吐くと、軽く手を叩きながら訊く。
「お前ら、此方見ろ」
真の言葉に耕太と一夏を除いた一也達が真を見やる。
「なんすかマコさん?」
一也が訊ねると、真はマモルに言った。
「マモル、仕方ないが一夏を責めない」
「えっ、ほ、本当に!?」
真の言葉にマモルは目を見開き訊ねると、真は再び頭を抱えながら頷く。
「ああ……一夏には怒らないし、マモルにも怒らない、それで良いか?」
真の言葉にマモルは「やったあぁぁ!」と嬉しそうに声を上げる。マモルから見れば嬉しいのと、一夏が真に責められない事も嬉しいのだろう。
そんなマモルを一也は「良かったねマモちゃん!」と共に喜び、望はマモルに呆れ舌打ちし、竜介と淳も一也同様、マモルと共に喜びを分かち合う。
耕太は無愛想だったが内心、嬉しそうであるがそれを表には出さなかった。
「あっ、義父さん、それで良いの?」
マモル達が喜ぶ中、一夏は真の言葉に納得してはいなかった。嫌、一夏は自分自身は罰を受けなければならないと思っていた。
が、それがチャラになった事に納得していないのと、それを義父である真に訊ねると、真は一夏に対し逆に指摘した。
「馬鹿が、別にお前が悪い訳じゃないーー何よりマモルが悪いがマモルの事を良く知りながらもそれを見落とした俺にも責任がある。何より、お前とマモルは兄弟のように仲が良いーーそれにお前とマモルは俺達チームには必要な戦力だ」
「必要な、戦力?」
「ああ、お前とマモルはアマゾンを狩るのには必要な戦力であるからだ」
「そうだよチカ」
真の言葉に納得したと言わんばかりか、一也が横槍を入れてくる。
「一也さん?」
一夏は視線を一也の方へと見ると、一也は一夏の元へと歩み寄り、一夏の肩に手を回す。
「チカちゃん、俺達はチームだし、マコさんはチカちゃんの義理のパパ、マコさんから見ればチカちゃんは義理とは言え、大切な息子が死ぬのは見たくないし、チカちゃんに怒ったのもマモちゃんと一緒に闘った事だけど、マモちゃんは自分が悪いと認識したし、マコさんもそれが解ったからチカちゃんが気に病む事じゃないんだよ?」
一也は一夏の肩に回している手で一夏の肩を叩く。一夏は「はぁ……」と戸惑う中、一也は真を見る。
「それで良いでしょマコさん? 悪いのはマモちゃんかも知れないけど、マモちゃんも反省しているからさ?」
「馬~~鹿っ、誰から見てもコイツが悪いだろ!」
望が再びマモルに蹴りを入れようとしたが竜介と淳がマモルを護り、望を落ち着かせる。
それを見た一也は「マモちゃん此方!」とマモルに此方に来るように促す。
マモルも望が怖いのか一也の元へと駆け寄ると怯えながら、一也と一夏の背中に隠れる。
「ったく……おいお前等、何時まで遊んでる! さっさと帰るぞ!」
真は彼等を見て怒りを覚えると彼等に命令する。一也は「ハ~イ」とからかい、望は舌打ちし、竜介は「ハイ」と言いながら頷き、淳と耕太は無言で頷き、マモルは「うん!」と頷く。
一方、一夏は頷きながらも視線を、手に持ってる腕輪へと向けていたが一夏の表情は何処か腑に落ちないように哀しい。
「どうした一夏?」
真は一夏の様子に気付き訊ねる。真だけではない、チームの面々も一夏の様子に気付く。
誰一人、一夏の様子を気にする中、マモルが訊ねる。
「どうしたの一夏? 腹が痛いの?」
「嫌違うよ……ただ」
一夏は哀しい笑みをマモルへと向けると、再び、手に持ってる腕輪を悲しそうに見つめる。
しかし、それは外からであり、一夏は内心、やるせない気持ちで一杯だった。
そしてそれは、一夏が手に持ってる腕輪が全てを明かす為の証拠でもあった。