Episode 1 見知らぬ場所、見知らぬ人
『おい!起きろ、おいっ!!』
誰かに呼ばれている。一体誰の声だろう?
何となく懐かしく感じる声だ・・・一体誰の声なんだ?
『・・・っ、起きろ、この屑が!!!』
・・・・・・って!!
「誰が屑だ!!?・・・・・あれ?」
ここはどこだ・・・?というか今の声、いつもの夢の奴か?
俺は何をしていたんだっけ・・・?確か、エステルが裏山でいなくなったって知って・・・・。
そこまで思い出してハッとする。そうだ、エステル!!エステルが黒い靄みたいなのに捕まって、手を掴んだ所で、そこからの記憶が全くない。
「んー・・・」
「! エステル!!?」
横を見たら、ぐっすり眠るエステルの姿があった。
何も怪我がないところを見ると、どうやら無事らしい。よかった・・・。
「・・・ここは、どこだ?」
辺りを見回すと、あちこち本が散らかっていたり、いろんなものが散乱していた。薄暗くてよく見えないが机とか、ランプのようなものも散らかっている。
後ろを振り向くと俺とエステルはどうやら本を枕にして寝かされていたようだ。
外からは大降りの雨の音が聞こえる。
「・・・・・どこだよ、ここ」
どうも、あの裏山の中ではないことは確からしいが、だとしてもなんで室内にいるんだ?しかも壁や床も何故か石製?だし。こんなところ、裏山にあったか?
「気がついた様だな」
「!!?」
突然声が聞こえ、俺は慌てて立ち上がって臨戦態勢をとる。
入り口と思われる扉を開けて現れたのは、アッシュによく似た赤い髪に、仮面をつけ、黒い衣服を纏った男だった。腰には剣がさしてあった。
「・・・誰だ?」
俺は警戒を解かずに聞いた。逆に男が聞いて来る。
「お前達こそ。何故外で倒れていた?」
「・・・外?」
「そうだ。あのままあそこにいたら『魔物』に食われていたぞ」
「ま、魔物?」
聞き覚えのある・・・といっても、現実味の無い言葉を出され、俺は疑問を浮かべる。
魔物?どういうことだ?
男は俺の様子に手を顎にあて、それから俺に近づいて来た。
「・・・な、何だよ?」
「ほら」
「え?」
ヒョイっと投げ渡されたのは水筒だった。
「のど、かわいているんじゃないか?」
「え?・・・あっ」
言われて気づく。確かにあれからずっと走りっぱなしだったし、正直のどが乾くのも気にせずに走っていたから気づかなかった。
「あ、ありがとな」
「どういたしまして」
俺は礼を言って、おそるおそる水筒の中を飲んだ。どうやら普通の水らしい、少しホッとした。
一口飲んで、俺は蓋を閉めて男に水筒を返した。
「え、えっと・・・お前が、俺達を中まで連れて来てくれたのか?」
「ああ」
「ここは、どこなんだ?俺、ここがどこだか全然分からなくって・・・」
「・・・俺もついさっきここへ来たばかりだ。ここは遺跡だということは分かるが」
「え、そーなの!!?」
おいおい、遺跡って無断に立ち入っていいものなのか・・・?と俺は思った。遺跡って許可なく立ち入っていいもんじゃないだろ?
「それより、ここがどこだか分からないというのは?」
「え?あ、えっとさ・・・信じられないかもしれないんだけど」
俺はこれまでの経緯を男に話した。黒い靄にエステルが連れ去られそうになったこと、俺はエステルを助けようとして手を掴んで、気がついたらここにいたこと全てを。
男は全てを聞くと、何か考え始め、手元にある何かのペンダントを見ていた。
ペンダントには何かの紋章が刻まれていて、綺麗な装飾がしてあった。なんというか、こいつのお守りみたいな奴か?
少したってから、男が言った。
「なるほど、おそらくお前は別の世界からここへ飛ばされて来たんだろう」
「・・・・・・・え?」
べ、別の世界?いきなり何言ってんだこいつ。
「ど、どういうことだ?」
「心当たりがないのも無理は無いだろう・・・お前の言っていた『光』とやらが、おそらくここへ連れて来たんだ」
「嘘だろ!!?じゃあここ日本じゃねえのか!!?」
「そういうことになるな」
というかそもそも地球じゃない可能性もあるっていうのか!!?嘘だろ!!
俺が信じられない様子でいると、男が近くにあった本を適当に開いて俺に見せて来た。
その本には見たことが無い文字が並べてある。
「見慣れない文字だろう?おそらく、この世界の人々が使う文字だ」
「・・・た、確かに全然知らない文字だ」
英語でもないし、中国語でもなさそうだ。どうやらこいつが言っていることは本当と見てもいいような気がする。
さっき魔物がいるって言ってたのも、別世界だったからか・・・。
これからどうするべきかな・・・下手に動くのも危険だしなぁ。
うーん、と考えていると男が言って来た。
「これからどうする?」
「いや・・・よく分からねえ」
「・・・とりあえずこの世界にも町があるはずだ。そこに立ち寄るといいだろう。俺が案内する」
「え!?」
男の言葉に俺は驚いた。
「い、いいのか!?」
「ああ。俺もちょうど町へ立ち寄るところだったからな」
「あ、ありがとな!!・・・そういえば名前、まだ聞いてねえよな」
俺が聞くと、男は少しためらうような素振りをして、それから言った。
「俺はテヌート・・・テヌートだ」
「テヌートか。俺は焰、深星焰って言うんだ。よろしくなっ」
「・・・ああ」
テヌートが頷く。すると、
「んー・・・ふあぁぁぁ」
「エステル!」
「・・・あれ?焰?」
エステルがようやく起きたようで、身体を起こす。
するとテヌートの方を見て、首を傾げた。
「・・・あれ?焰、いつ仮面なんてつけたんです?」
「いい加減しっかりしろ!!?」
なんでこいつと俺が間違えられるんだ!!?天然にも程があんだろ!!?
更新遅くなってすみませんでした!!(土下座
リアルの方で文化祭があったり、改めて流れを考えていたりと割と多忙だったんです、ごめんなさい。
予定よりも大分早く登場することになったテヌート。流れ的に言えばテヌートはもっと後の予定だったんですが焰とエステルのサポート役でもいいよな、ってことで急遽早めに登場することに。そのため彼の出番がグンッと増えたような気がします。
次回はなんとあの人との遭遇!?お楽しみに!