俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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え、超人社会?ヒーロー?なんだそりゃっ!?

「・・・・・」

 

人、人、人・・・・・いや、人なのかと思う出で立ちの人が街中を闊歩している。辺りを見渡すと俺が知っている街並みとは違うが、建造物や道路に走る車は何ら変わりない。空気も空も、飛ぶ鳥も変わらない。しかし、俺だけ凄く違和感を覚えるのはどうしてだ?解せん・・・・・。

 

『主よ、一先ず情報収集を兼ねて散策してみては?』

 

(ん・・・・・確かに。そうするか)

 

内にいる家族の指摘され、その通りに動くことに決めた。

 

「さて、ここはどこなんだろうな」

 

一歩前に足を運んだ刹那だった。どこからともなく悲鳴が上がる。

 

「ヴィ、(ヴィラン)だぁっ!?」

 

「きゃああああああああっ!」

 

人々が何かに怯え、危機を察知して安全な方向へと逃げ惑う姿と光景に不思議と思い首を傾げて足を止める。

 

「ヴィラン?なんのことだ?」

 

『人間共の表情を察するに・・・・・敵ではないか?』

 

『未だに情報を掴めない状況でもう騒動の渦中の渦に飲み込まれたのか?』

 

『暇を感じさせませんねぇこの方は』

 

・・・・・俺が生まれた星の下って、若干嘆く俺の目の前に騒動の元凶らしき影が現れた。十字路の右側から体中に獣のような毛皮で覆い顔は獣そのもの、それが三人組で突っ込んでくる。どうやらあれがヴィランというらしい。というか、悪役の顔と雰囲気を纏っているし、今さっき銀行強盗をして来たとばかりに金の札束を入れた黒いバックを三つ片手で持っているから間違いないだろう。巻き添えはご免被ると建物の中にいる人達は遠巻きで眺めている様子と、不思議と何時ものことだとばかりに平然としている。・・・・・何でだ?

 

「兄貴っ!ガキがいるぜ!」

 

「警察やヒーローを脅す為に人質でもしてやろうかっ!」

 

「よーし!俺が捕まえてやらぁ!」

 

鋭い爪を生やす大きな手、その気になれば人体の肉を引き裂くこともできそうなそれが狂気を孕んで俺に迫って来た。

 

「おらっ!怪我したくなければ大人しく―――!」

 

「―――――」

 

殺すぞ―――。と敵に対して威圧、プレッシャーを与えた途端に敵の一人が顔を青褪め、脂汗を掻いては口から泡を吹きその場で倒れ込む。仲間の一人の突然な行動にもう二人の敵が目を張って怒声を飛ばした。

 

「なっ、お、おいっ!?」

 

「なんの"個性だ"!?相手はただのガキ一人―――!」

 

その途中でもう一人が瞬く間に氷の牢獄に閉じ込められた。俺の足先から走った氷の道に触れたからだ。

 

「て、てめぇっ!?」

 

仲間をやられた怒りに目が血走る最後の敵がバックを放り投げ襲いかかった。その猛威は猛獣のごとく。力のない並の人間だったら恐怖に身を萎縮するだろうが生憎・・・・・俺は違う。

 

「お前は丸コゲにしてやる」

 

「―――っ!?」

 

手の平から螺旋状に迸った燃え盛る炎にのみ込まれる敵。勝負はあっという間に決着がついた。

 

―――二分後。

 

「私が来た!・・・・・あれ?」

 

額を晒し、前髪に耳を彷彿させる金髪を逆立て、オールバックの筋骨隆々の男性が騒動となった現場に現れたが既に炎に焼かれて黒コゲと氷漬け、気絶してる三人の敵が一ヶ所に集められて野太い鎖でがんじがらめに捕縛されている様子と光景に不思議そうな面持ちで見つめた。警察おろか、同業者の影も形も見当たらない。野次馬が男性の登場に騒ぎ立つが男性にとっては目の前の敵を倒し、捕縛したのは誰なのか気になって仕方がない。

 

「ヘイ!そこの君、(ヴィラン)は誰が捕まえたのか分かるかい?」

 

「え、えっと・・・・・子供だという話ですが」

 

「子供?どんな子だったのかな?」

 

「長い赤髪に眼帯を付けていた一人の少年だったとか・・・・・すみません、それ以上は俺も詳しくは・・・・・」

 

「OK!教えてくれてどうもありがとう!」

 

と、情報を提供してくれた野次馬の一人に感謝の言葉を掛けながら三人組に近づく。

 

(一人は氷漬け・・・・・氷の『個性』、もう一人は見る限り炎の『個性』かな?しかし、たった一人で三人同時か・・・・・)

 

 

 

「・・・・・なんてこった。まさか、東京都だなんて・・・・・」

 

人に尋ね、駅前まで辿り着いた俺の目に映る駅名に驚きを禁じ得ない。どうして俺は東京都にいるのか、今でも理解できない。原因は分かっているが今問題なのは―――これから俺はどう動くべきかなのだ。

 

「ここは日本?だけど、妙に俺が知っている建造物と異なっているところがあるし、まさか異世界ってわけじゃねーよな。でも、さっきから人に見えて人に見えない連中が普通に街中を歩いているし一体全体どうなってんだ俺は。これはあれか?あの人のドッキリ作戦か何かか?俺は知らない内に手の中で踊らされているのか?だとしたらそれはそれで―――」

 

『・・・・・主、一人で考えないでください。怪しい者だと奇異な視線を向けられていますよ』

 

・・・・・その通りだった。ブツブツと動かしていた口を閉ざし、一先ず目的もないまま歩くことにするか。

 

「お前ら、俺はこれからどうすればいい?」

 

『状況の把握と情報収集が優先的に行うべきかと』

 

『『『以下同文』』』

 

うん、お前らは分かりやすくていいな。でも、やっぱりそうするしかないだろう。ならばやることはただ一つ―――。

 

「・・・・・本を読むか」

 

思い立ったら吉日。また人に尋ねて本屋に行こうかと考えて動いた俺はどうやら・・・・・騒動の渦中にまだいたようだ。何故なら―――駅の中で大爆発したからだ。やれやれ・・・・・見て見ぬ振りができじゃないか。俺もとんだお人好しだよまったく・・・・・。

 

―――私が来た!(byオールマイト)―――

 

「悲鳴と爆音を聞いて駆けつければこの有様かっ」

 

駅内から発生する黒煙は晴れることはない。中で火災が発生して二酸化炭素が充満している様子。まだ避難していない人達の救助をしなくてはならないと男性は果敢に駅の中に飛び込んではさっそく倒れている人を救いあげた。

 

「もう大丈夫だ。私が来た!」

 

それから次々と十分もしない内に駅内深い場所まで進んで救った人数は八人を超えた。とんぼ返りのように駅の外へと戻り負傷した人を安全な場所の空間へ置いてまた駅の中へと何度も繰り返し、救助を続けた男性が鉢合わせした。真紅の長髪に眼帯を付けた少年の両肩や脇に気絶している人達を見て直ぐに察した。

 

「少年!救助活動は素晴らしいが危険だから直ぐに外へ避難しなさい!」

 

「人助けをするのにそんなことできない。救える命をみすみす見捨てるようなこともできない。というか、そういうあんたも人のこと言えないだろ」

 

「私はヒーローだ!私の他にも直ぐにヒーローが来る―――って、ちょっと少年!人の話しは最後まで聞きなさい!」

 

救助した人達を駅の外へと置いてまだ火災が発生している駅内へとスタコラサッサと走っていく少年に叫ぶ男性も追いかける。この後、二人の行動によって負傷者は多数、死者は少数と結果に抑えることができた。その間、お互い相手の動きを観察し、興味を持つ。

 

(この少年の動き・・・・・慣れている?)

 

(この人・・・・・結構強いな)

 

ただ者ではないと察する二人の懸命な働きでをしている最中、警察や救急車、消防車。はたまたコスプレの趣味があるのでは?と思う大人達もがやってきて数時間後。空が朱に染まった頃になって救助活動は終えた。

 

「まったく、救助活動は私達大人に任せればいいのに君って少年は。もう今後危険な場所に入っちゃ駄目だよ」

 

「人を助けられるのに何もするなっての方がおかしいだろ。現に大勢救ったのに死者が出た。自慢したい訳じゃないけど俺もいなかったら死者はもっと出たかもしれないぞ」

 

「それはしょうがない。私も悔しいさ。罪のない人が事件に巻き込まれて死ぬことは遭ってならないことだからね。故に私はこれを糧に救えなかった人の何倍も救うことを心掛けている」

 

「あっそ」

 

少年が横に並べられている死者のもとへと歩み寄り、忽然と具現化した金色の杖が神々しい光を迸る。その光は少年の全身を包み、ある姿に変貌し放つ光が死体に降り注ぎ、全身に光のオーラが包まれるのを男性は目にした。

 

「・・・・・じゃ」

 

やることはやったと少年は男性に別れを告げ、悠然とした歩調でこの場を後にして一拍後。信じ難いことが起きた―――。

 

「こ、これは・・・・・っ!?」

 

 

「くっ・・・・・流石に疲弊するか・・・・・」

 

朱に染まる空と街中、第三者からすればフラフラと動く俺を見てどこか危なっかしいだろう。事実、体力と魔力、精神力が極限にまで減って気を抜けばあっという間に意識を失いそうになる。何とか気を引き締めて堪えているが早くどこか休めれる場所を探さなきゃいけないな・・・・・。

 

『主、我らが現世に出て・・・・・』

 

「いや・・・・・もうそれどころじゃなくなった。―――早すぎだろ」

 

「私が来たぁっ!」

 

曲がり角からさっきの暑苦しい男性が大袈裟に現れた。やっぱりこの男、ただ者じゃないな・・・・・。

身体能力はサイラオーグと百代並かそれ以上じゃないか?

 

「少年!聞きたいことがあるが時間はいいかな?って、随分と辛そうな顔をしているじゃないか」

 

「・・・・・だったら、俺を放っておいてくれないか。いま、誰かと話す気分じゃないんだ」

 

「いや、残念ながら放っておくことはできないんだなこれが。死者を甦らせる『個性』を持っている君をさ」

 

「・・・・・『個性』?なんのことだ」

 

実際、個性は個性だろうと思うが、この男から発する個性の意味は俺と異なっているような気がする。

怪訝な心情で今にでも途切れそうな意識をつなぎ止めるのに精一杯だっていうのに面倒な・・・・・。

 

「一先ず、君は私が保護することに今決めたから。あ、保護者はいるかな?連絡したいのだがね」

 

「・・・・・生憎、保護者はいない。というか、あんたは俺のこと知らないのか?」

 

「君のこと?いーや、初対面の筈だがね」

 

・・・・・初対面?初めて会うにしても俺は結構知名度が高い方のはずだ。俺のこと知らないなんて小学生でも知っているか知っていないかぐらいだが・・・・・嫌な予感がするぜ。

 

「・・・・・いないのかい。ならば、丁度良い。そんな辛そうな顔をしている君をますます放っておけないからね。ここは素直に大人の言うことを聞くべきだよ少年」

 

「・・・・・俺の安全は保障されるわけじゃないだろ」

 

「するよ。私はオールマイトだ!敵じゃない限り手荒な真似はしないし手厚く歓迎するよ。もしも君が思っていた通りだったら、私を煮るなり焼くなりしたまえ」

 

「・・・・・」

 

自由にしていいというほど、対処ができる自信があるようだな・・・・・。・・・・・まあいい、安全が保障されるなら好都合だ。それに、色々と情報を聞きだしてやる。ここはどこで、どんな世界なのかを。

 

「分かった。あんたの指示に従おう。今の俺は戦うことすらままならないからな」

 

「OK!それじゃ―――」

 

ならば、もう寝よう。話しは起きてからでもできるだろうしな。―――そう思った途端、あっさりと意識を手放し眠りについた。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

 

「・・・・・」

 

「目が覚めたようだね?」

 

目覚めは普通だった。声を掛けた男の方へと首だけ振り向く。―――ん?

 

「・・・・・どちらさまですか?」

 

我が目を疑う。筋骨隆々の男ではなく、真逆の頬がかなり痩せこけ、背も小さい、覇気すら感じない枝みたいな人が俺の横にいたことで思わず問うてしまったが。

 

「私だよ、オールマイトだ」

 

「・・・・・」

 

瞬きをし、オールマイトと名乗る男性を食い入るように見つめた。・・・・・うん。

 

「まだ夢を見ていたようだな。―――寝よう」

 

「目の前の現実から逸らさない!本当に私だからね!」

 

一瞬で俺が知っているムキムキマッチョの男となった。流石にそれを見せつけられたら受け入れざるを得ない。

 

「どっちが・・・・・本当の姿?」

 

「訳があってね・・・・・この状態を維持するのに一日三時間しかできないのだよ」

 

そう言ってまた体が痩せこけた男と戻った。・・・・・こっちが本来の姿?それよか訳ってなんだろうな。

 

「まあ、私の事より君だ。急に倒れたが体の方は大丈夫かな?」

 

「・・・・・取り敢えず精神的にも肉体的にも疲労していただけだから問題は無い。で、ここはどこなんだ?」

 

「勿論、私の家だよ。君を運ぶのに少々苦労したけどね」

 

申し訳ないとオールマイトに頭を垂らす俺は周囲に視線を向けた。高級感は溢れてないものの、広々とした空間に高い天井で壁に何らかのコスチュームが掛けられている。窓の外を見ればすっかり闇に支配されている。数時間も寝ていたのか俺は・・・・・。

 

「オールマイト、でいいんだよな?」

 

「そうだ。私がオールマイトだ。よろしくね、えーと」

 

「兵藤一誠だ」

 

「よろしく兵藤少年」

 

何か新しい呼ばれ方!新鮮を感じるがやっぱり俺のこと知らないみたいだ。どうなっているんだか、そして嫌な予感がしてしょうがないよ。

 

「さて、お互いの名前を知ったところで聞きたいことがある。保護者はいないとはどういうことかな?」

 

「言葉通り、いないものはいないんだよ。というか、俺も未だに困惑と当惑中なんだ」

 

「それはどういうことなのかな?」

 

「・・・・・言ったところで信じてくれなさそうだからいいや」

 

「Oh!なんて悲しいことだ、君を保護した私のこと信用して欲しいほどだ!」

 

いや、人柄はともかく話の内容が信用できないじゃないかってことなんだ。

 

「しかし、いきなり君の秘密まで語って欲しいとは言わないが私は君のことを知りたいんだ。未だ、世界中の人類史上誰も死者を蘇生する"個性"の持ち主は発覚、発見されていなかったからね」

 

「珍しいのか?その、"個性"で死者蘇生できることが」

 

「YES!当然じゃないか、事件や災害で死んだ者達を生き返らせる奇跡の"個性"!見たところリスクは高いが、死に至るほどまでではないようじゃないか。君ならヒーローになれるよ!」

 

ヒーロー・・・・・そう言えば獣人三人組もそんなこと言ってたな。ヒーローってあのヒーロー、だよな・・・・・?

 

「それよりも、保護者もいない中で今までどうやって生きていたんだい?その"個性"を発現したならばご両親も胸を張っていただろうに」

 

「・・・・・それはいま話せない。それよりも聞きたいことがあるんだ。この世界のことについて」

 

「この世界?」

 

不思議と首を傾げるオールマイト。頷く俺はオールマイトに対して色々と聞き出した。当然の常識だと反応をされたが・・・・・合点した。

 

『・・・・・まさか、こんなことが起きえるとは』

 

『ははは・・・・・有り得ない』

 

ああ・・・・・俺もそう思うさ。

 

『『「(なんで、異世界にいるんだっ!?)」』』

 

「超常」は「日常」に、「架空(ゆめ)」は「現実」に。それがこの世界であり世界総人口の約八割が何らかの特異体質である超人社会となっている異世界―――。

 

「兵藤少年・・・・・大丈夫か?」

 

「・・・・・何とか・・・・・」

 

そう答える俺だが内心は物凄く焦っている。駄目だ、これ。どうにかしないと・・・・・。

 

「・・・・・兵藤少年、ちょっとした提案があるのだがいいかね?」

 

「提案?」

 

「ああ、君のその力は人の為に役立つ。同時にその個性を狙う(ヴィラン)がいつか必ず現れ君を狙う。そこでだ。君、雄英に通ってみてみないか?」

 

「・・・・・雄英?」

 

新人ヒーロー育成の最高峰・雄英高等学校と後に軽く説明された。

 

「君はまだ成人してないようだし、その歳で暇を持て余すぐらいならヒーローとして生きる道も悪くない筈だ。どうかな?」

 

「・・・・・」

 

暇を持て余す。言い得てはいるが、俺は別にヒーローなんてなりたいとは思わないんだよなぁ・・・・・。それに俺はこの世界での身分証明書なんて物もないし、今更学園に通えるものなのか?

 

「そしてもう一つ!」

 

「まだあるんかい」

 

「私の養子となってみないか兵藤少年!」

 

「寝言は寝て言え」

 

いきなりなんだ養子になってみないかって。俺は住めれる環境があれば何だっていいんだ。養子なんて別に必要は感じないしなる理由もない。養子の提案を出したオールマイトに何らかの意図があるのか?

 

「まあ最後まで聞きなさい。兵藤少年、君は身分を証明できるものは無いだろう。必要な時に無いんじゃ困るのは君じゃないかなーって思うのだが実際はどうだ?」

 

「・・・・・」

 

痛い、ところを突くなぁ・・・・・っ。口を閉ざし、否定できず沈黙で肯定と受け取らせるしかない俺は渋々と小さく頷いた。

 

「どうして俺を養子なんて考えが出るのが不思議でしょうがない」

 

「HAHAHAHA!死者蘇生の"個性"を持つ君を守るためさ!君が敵(ヴィラン)の手中に収まっては元も子もないからね!」

 

「・・・・・俺、別に弱くないぞ」

 

「うん?君の個性は死者蘇生―――」

 

「個性だかなんだか知らないけど・・・・・外見だけで判断されちゃ困るってもんだ」

 

真紅の髪が金色に、頭上に金色の輪っか、左目の金目が翠色に変わり背中に六対十二枚の翼を生やす俺の姿にオールマイトは言葉を失ったように目を張り、驚愕の色を表情に浮かべて俺を見つめる。

 

「OK?」

 

「オ、オーケー・オールマイト・・・・・」

 

特異体質なら、俺自身とこの力でも"個性"として見受けられる・・・・・か。不思議な異世界だよここは。

 

「で、学歴もない俺をその雄英に編入できるのか?」

 

「かなり特殊だが、多分大丈夫だ。それに私も教師として務めるからね」

 

「ってことは、まだ教師じゃないんだな?教師の仕事分かる?」

 

「私はオールマイトだ。教師の仕事もお茶の子さいさいだよ!」

 

「・・・・・いや、ヒーローの育成もそうだけど、生徒とのコミュニケーションとか心のケアの仕方とかあんたが思っている以上に教師って大変で難しいんだ。そこんとこ分かってる?一度も教師をしたことが無いオールマイトさん」

 

ぐうの音もでないオールマイトがそこにいた。それに一日三時間しか維持できないその姿で教師が務まるのか怪しい。

 

「その姿は誰か知ってるのか?」

 

「極一部の人間が知っている。だから教師になってもなんら問題がないのだ」

 

ほほう・・・・・そうかそうか。それは・・・・・。邪な笑みを浮かべた俺はあることを考えた。

 

「―――よし、皆にバラそう!」

 

「ヤメなさい!」

 

鋭い突っ込みを貰ったところでオールマイトは疑問をぶつけてくる。

 

「君はどこか他の者達とは違うね。言っちゃあなんだが、私は結構有名なヒーローだけど。私のこと知らない風に接してくるのはどうしてだい」

 

ましてやこの世界のことを教えて欲しいまで言うなんてさ。そう言われて俺は当然の疑問だと思い、溜息混じりに答えた。

 

「知らないものは知らないのさ。それよりも養子の件だけど・・・・・受け入れるよ。今の俺は誰かに頼り助けてもらわないと生きていられない状況で状態だから」

 

「そうか。ならば明日にでも手続きをしなくてはな。今日はもう活動時間が過ぎて私が私であると弁護士が分からないからね」

 

後日。オールマイトに養子ができた!と新聞やTVでお茶の間に知られて、騒ぎが起きるのを俺はこの時までは愚かにも気づきもしなかった。オールマイトがそこまで有名であることも。

 

「ところで兵藤少年」

 

「うん?」

 

俺を呼ぶオールマイト。何故か照れくさそうに俺から視線を反らし、頬を掻く仕草をする。

 

「私は今でも独身でな。仮でも父親になったわけであるからして・・・・・ちょっと、『お父さん』とか『お父ちゃん』とかそう言われると思うと妙に緊張しちゃうんだこれが・・・・・うん」

 

・・・・・なんだろう、あの親バカ二人に似た匂いを感じるぞ。

 

「呼んで欲しくないなら普通に名前で呼ぶが」

 

「いや、是非とも呼んでくれ!なんなら『パパ』でもいいのだぞ!これは、私が生まれヒーロー活動して数十年以来人生初めてのことなのだからな!真心を込めて呼んで欲しい!」

 

・・・・・やっぱり、この人は親バカの性質があるぞ。

 

「・・・・・お義父さん」

 

「―――――っ」

 

気恥ずかしげに呼んであげるとオールマイトは・・・・・嬉しさのあまりか興奮してムキムキマッチョの姿に戻っては俺を抱き締めた。おい、大丈夫なのか。それとも自由自在なのか?

 

「お義父さん、父親らしく頑張っちゃうからね!」

 

「・・・・・おう」

 

でも・・・・・悪くないかな・・・・・こうして抱き締められるなら。

 

「・・・・・お互いの秘密を他言無用前提で教え合わないか?」

 

「いいのかい?言えない秘密だったら無理に言わなくてもいいのだぞ」

 

「俺の秘密は絶対に最初は信じてくれない方だから。信憑性もないし、この世界にとっちゃ俺も枠に入ってしまいそうになってるんだ。証拠と証明はできるからまだいいんだけど」

 

「わかった。君がそう言うなら聞かせてほしい。他言無用なら私も私自身の秘密を教える」

 

そしてこの日の夜。俺達だけしか知られていない秘密をお互い共有することとなった。互いが自身の秘密を教え相手を驚かせる秘密を。

 

―――俺が来た(by一誠)―――

 

「調子はどうだお義父さん」

 

「・・・・・いやはや、驚いた。まさか、死者蘇生だけでなくこれほどまでの回復力の個性まであったなんて。―――すっかり、怪我とその後遺症すら全盛期の私だった頃の体にまで治されたよ。おまけに十年ぐらい若返えされちゃった!」

 

「それはサービスだよ。それと死者蘇生できるぐらいの回復力があると道理さ。だけど、力の方は流石に無理だったか」

 

「気にしないでくれ。寧ろ、治癒の"個性"を持つ者でも不可能だったことを君が可能にしたんだ。感謝しているよ」

 

この世界に来てオールマイトと出会い早三日目の早朝。そして東京の某所にて上半身裸となって腹部を擦るオールマイトの言葉通り、治療の痕跡は完全に消えていて、俺には分からないがオールマイト自身の体調が快調らしい。吐血する気配もないというほどに。

 

「ワン・フォー・オール・・・・・蓄積して引き継がれていく"個性"ね。納得できる強さだよ」

 

「君の個性・・・・・いや、異世界の力もまた素晴らしいではないか。神から与えられた"個性"、様々な摩訶不思議な能力の総称―――『神器(セイクリッド・ギア)』!かっこいいじゃないか!Fantasy最高ー!」

 

無理言ってお願いしたオールマイトとのガチンコ対決。本当に強過ぎる。俺も本気でぶつからなきゃいけなかったほどに強過ぎるこのヒーロー。しかも全盛期の強さも知りたかったから若返らせるとコレだ。

 

「いやー、異世界って凄いね!君ほどの少年が私と本気で戦えるのだから感心を通り越して驚嘆!異世界の方が色々と凄いのかな?」

 

「まあ、神話に記されている神や種族と生物、道具まで色々と実在しているからそれ相応に強くなるんだろうな」

 

そしてこの世界にも俺に適用した『個性』を持つ強者達もいる可能性がある。・・・・・うーん、出会えたら勝負したいもんだ。今は目の前の最強ヒーローで大満足だ。―――曹操、お前もこの世界に来ていたらきっと驚いていただろうな。

 

「さて、そろそろヒーロー活動を始めなくてはな!良い朝運動もできたから体も温かい!」

 

「お義父さんがしなくても他のヒーローもいるじゃん。出番を取るようなものだけどいいの?」

 

「同じ同業者だ。救いを求める声が聞こえればヒーローが駆けつけるのは当然のこと。そこに誰が(ヴィラン)を倒して人を救ったかなんて二の次も三の次だよ」

 

「・・・・・」

 

「ヒーローは見返りを求めない、自己犠牲してまで他者を救うこそがヒーロー。(ヴィラン)の脅威と恐怖に怯える者の心も救ってやり笑顔を浮かばせるのもまたヒーローの在り方」

 

ヒーローとしての哲学を語り、ヒーローとしての生き方を・・・・・。

 

「私のお師匠からそう教えてもらった。それに共感して私もヒーローを目指したんだけどね」

 

俺に示してくれる。オールマイトが師匠の感銘を受けてヒーローに志したことを。

 

「・・・・・かっこいいなお義父さん」

 

「HAHAHA!君もヒーローになればかっこいいヒーローになれるさ!」

 

いや、俺がヒーローなんて・・・・・。

 

「それじゃ、私は行ってくるけど夕方になったらちゃんと帰ってくるんだぞ!」

 

「それ以降になるようだったら連絡するよ」

 

「うむ、では行ってくる!」

 

爆発的な超脚力であっという間に空の彼方へと吸い込まれるように遠ざかっていく超人ヒーローを見送った俺は、自分の道を進むことにした。―――暇潰しを兼ねた散策を。

 

 

「と、まあ、そういうわけでしてあの子を養子として引き取ったわけです。個性も希少中の希少―――。(ヴィラン)に捕まり悪用されない為にも保護目的で養子にしたのですが中々どうして、私と本気で戦える実力も備えているので正直心配はありませんでした」

 

一誠のことについて説明するオールマイトに人や見た目が人ではない者達が一堂に集まっていた。

 

「しかもあの子は信じ難いことに異世界から来たというのです。私自身も本当に信じられませんでしたが納得できることをしてもらったので信用しております」

 

「それは一体どんな方法で?」

 

「彼の記憶を見せてもらったのです。その記憶はこの世界では考えられない、想像もできない光景と出来事が多々見受けれました。―――極めつけはこれです」

 

自身の上着をまくりあげて、そこにあったはずの手術痕が綺麗さっぱり無くなっている個所を指摘した。

 

「ヒーローとしての活動限界は以前のままですがご覧の通り、彼の力によって私の体は完璧に治された上に十年も歳を若返ったのです。兵藤一誠と言う存在は私が思っている以上なほどに凄まじかった。彼がヒーローの道を進む気があるなら、卒業を待たずにして直ぐにプロヒーローになれます」

 

力説するオールマイトの話を真摯に耳を傾ける面々。

 

「ですから校長。どうか彼もこの学校に通わせてはくれませんか?異世界から来た十代なので学歴はないのですが、彼をヒーローとして育成したいです」

 

向ける視線の先に白い艶のある毛に覆われている動物―――学校の校長。オールマイトの提案と願いに周囲の面々はどうするか、校長の言葉を静かな姿勢で待っていると、右目に切り傷がある校長が口を開いた。

 

「君がそこまで言うなんて本当に珍しい。異世界から来たという話しは正直半信半疑だけど、死者蘇生と言う個性は確かに貴重で希少だ。分かった。君の要望に応じようじゃないか。ただし、今年は無理だけどいいかな?」

 

「はい、構いません。私の我儘を聞いて下さってありがとうございます」

 

「いいよいいよ、気にしないでくれオールマイト。(ヴィラン)の道へ進ませるわけにもいかないし、何よりも君の傷を治した子供だ。推薦でも一般の入試でもその子が望む方法で編入させよう」

 

あっさりと一誠の入学を許されたことで内心安堵で胸を撫で下ろしたい気分のオールマイトに校長が指を立てだした。

 

「そこで一つ、お願いがあるんだけどいいかな?」

 

「お願い、とは?」

 

「簡単さ。その子をここに招いて欲しいだけだ」

 

 

 

「・・・・・で、俺がここに来させられたってわけね」

 

「すまないね。君を校長が知りたがっているから断るわけにもいかないんだ」

 

「・・・・・この人(?)が校長・・・・・?」

 

「Yes!ネズミなのか犬なのか熊なのか隠してその正体は―――校長さ!」

 

(見た目がネズミっぽい・・・・・。)

 

言っちゃあダメかな、と俺が見下ろす人間もどきの動物が自分のことを「根津」と名乗った。

 

「君、オールマイトの養子となって変化はあるかな?」

 

「いや、大して何も。家族ができたぐらいしか」

 

「ヒーローになりたいと望んでいるかな?」

 

「・・・・・俺のこと聞いたンなら話が進めやすいけど、正直まだこの世界に来てなんも分かっちゃいない。だからヒーローになりたいかどうかなんて微妙なところかな。それに力がない人間でも、その人の為になれるヒーローならなれる筈だ。圧倒的な悪の前に勇ましく立ちはだかるヒーローみたいにさ。学校に通ってヒーローの資格を取らずとも誰でもその人のヒーローになりたい、その方かな個人的に」

 

俺の気持ちを校長に伝えると、何故かオールマイトと顔を見合わせた。学校に通いたいとは思わないし、話を聞けばフリーでもヒーロー活動ができるそうだし、俺もそれでいけるだろ。

 

「彼なりにヒーロー意識があるみたいだねオールマイト?(ヒソヒソ)」

 

「微妙と言いながらヒーローになれるという言う。これぞまさにツンデレと言うことですかな校長?(ヒソヒソ)」

 

・・・・・聞こえてんぞ。白けたジト目で二人に視線を送れば俺の視線に気づいたようであからさまな反応をする。

 

「ん、分かった!君がヒーローに対してどう考えたのか把握は出来たよ。―――だったら私から依頼と試験を受けて見ないかい?」

 

「依頼と・・・・・試験?」

 

「ああ、君を今すぐ学校に編入させることはできない。出来るとすれば来年さ。だから来年までの一年間。その間君からすればこの世界を知る意味も兼ねて全国を旅してきなよ。その間、全国で発生する事件を解決しながらね!」

 

・・・・・見聞を兼ねての全国一周旅行ってことか。全国には色んなヒーローもいるし、まあ悪くないか。

 

「試験と依頼は同時に含まれていると認識してもいいんだよな?」

 

「勿論さ。全国に旅する際必要な費用や道具はこちらで用意するよ」

 

「君は心おきなく全国を旅しなさい。そして全国を知り己を知りなさい」

 

何気にオールマイトも押している。いや、己を知れってもう知っているんだけど?

 

「・・・・・了解。そうさせてもらうよ」

 

こうして俺は、異世界での全国一周の旅をすることとなった。出会いと別れが繰り返す青春の物語(ストーリー)の一ページが記される。

 

 

更に三日が経った頃に俺はオールマイトに出迎えをされている。まだ日が昇っていない早朝の五時、駅の支柱の陰に隠れるように立つオールマイトから色んなものが詰まったバックやキャリーケースを受け取る。駅の中には人はまばらで俺達の存在に気付いてもいない。そんな中で俺はこれから旅立とうとしている。

 

「さて、せっかく息子ができた矢先に全国を旅することになってしまったな」

 

「毎日メールや電話をするよ。状況報告を兼ねてね」

 

「うむ、来年まで息災でいてくれよ?それとこれもだ」

 

二枚のカードを手渡される。カードを見れば『個性』行使の限定許可書&ヒーロー活動認可資格(仮免)と身分証明書。

 

「これって・・・・・」

 

「うん、君はこの世界に来てまだ間もない。君の『神器(セイクリッド・ギア)』は私達からすれば『個性』と認識されちゃうからどうしても必要になる。だから警察沙汰になってもそれを見せればなんとかなるだろう。だから思いっきり事件解決しなさい」

 

やっぱ、過剰な力を制する為の規則とその概念はあったか。でも、これは有り難い。俺の知らないところでこんな大切な物を発行してくれたんだ。家宝並みに大切にしなくちゃと、そう思っているとオールマイトの大きな手が差し出される。

 

「色んなヒーロー達を見て、勉強して学ぶといい一誠」

 

「・・・・・うん」

 

その手を掴み、固く握手する。

 

「まず最初にどこへ行く?」

 

「ちょっと確かめたいことがあるから神奈川に行くつもりだ」

 

「そうか、君が納得できる結果になるといいね」

 

「・・・・・そうだな」

 

そんな結果、なるとは思わないけどこの目で確かめたい。異世界でもあるんじゃないかって淡い期待感を抱いてしまう。

 

「一誠、ここだけの話だけどね」

 

「うん?」

 

「私の個性のことを知って何となく分かっていると思う。引き継がれる個性だと。だから私が私の個性を受け継ぐ者を何時か探し求めているんじゃないかってことをさ」

 

ああ、そのことか。何人もの努力によって築かれた身体能力などの『力』を蓄積する個性と、個性を譲渡する個性の、2つが融合した個性。オールマイト曰く、聖火の如く受け継がれてきた『力の結晶』。

 

「君が良ければ私の個性―――」

 

「待った」

 

手で制止、俺は首を横に振った。

 

「オールマイトの意志を受け継ぐのは悪くないけど俺はいつか異世界に帰るつもりだ。だから、異世界に帰るからお義父さんの個性を引き継ぐことができない。そういうのは純粋にお義父さんを尊敬し、感銘を受けてヒーローを目指している力のない子供の方がいいと思う」

 

「一誠・・・・・」

 

「ごめん、お義父さんの気持ちを受けたいけど俺には難しい。決定的に元の世界に帰れないって証明がされたら喜んで引き継ぐことができるんだけど・・・・・」

 

バツ悪そうに謝罪をした俺は鍛えられた大きな腕の中に抱き絞められた。力強く逞しい胸に抱えられた。

 

「いや、私も考えが浅かった。そうだったな。君は異世界から来たんだ。帰れるなら帰りたいのは当然のことだ。―――すまなかった」

 

「・・・・・・うん、だから別の方法でお義父さんの力を受け継ぐことにした」

 

ん?と離れて不思議そうに首を傾げるオールマイトへ俺は正直に答えた。

 

「俺の個性の中に相手の能力をコピーする能力があるんだ。所謂複製ってやつ。だから、これから全国へ旅する俺はお義父さんが救えない人の分まで救うよ」

 

手を今度は俺から改めてオールマイトに伸ばした。

 

「だからお義父さんの個性をコピーさせてくれないか?」

 

「・・・・・」

 

真っ直ぐオールマイトの目を見つめ、差し出し続ける俺の手を一拍遅れたが力強く躊躇もなく掴んでくれた。

 

「私からの選別だと思い、受けとってくれ一誠」

 

男らしく歯を覗かせる笑みを浮かべたオールマイトに感謝の念を抱いた。別の形で引き継ぐ俺に個性をコピーさせてくれたことに。

 

「コピーした個性は本物に負けないほど昇華してみせるよ。―――強奪」

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