片腕を失った原因の事件から一週間後。予想よりも速い回復力のおかげで退院はできて久方ぶりの学校にやって来た。授業始まる直前だから教室の中は俺以外のクラスメートがいるだろう。扉をガラリと開け放ち中に入った矢先。
『兵藤っ!?』
「おはよう」
片腕が通ってない制服の袖が干物のように揺れる不格好な俺に凄い反応をしてくれる。
「おま、もう退院できたのかよ・・・・・」
「俺の回復力なめんな」
切島の言葉に一蹴してやって百の隣の席に着席する。それでも周りからの視線はまだ向けられ続ける。隣にいる百からもだ。
「一誠さん・・・・・」
「おはよう百」
挨拶をすれば彼女は・・・・・悲痛な表情を浮かべる。こっちはもう気にしていないのによ。
そう苦笑いする思いで席に着いた途端にチャイムが鳴り、少し遅れて相澤先生が入って来た。
俺を見るなり目を細めだす。
「兵藤・・・・・退院したのか」
「病院先の治療が良かったもので」
「片腕無しで授業を受けれるか?」
「ご心配なく。あーでも、救助訓練の授業は厳しい方かも。それ以外は問題ないだろうけど」
「・・・・・そうか」
俺がいても授業の妨げにはならないと判断してくれたのか、何時も通りのHRの時間を進めてくれた。
でもその後の授業は、筆を持つのは利き手ではないから文字を書くのに苦労する連続だった。
―――昼休み―――
「「―――っ」」
一佳と塩崎を昼食に誘った矢先、俺の腕を見るや否や目を見開き思考を停止した瞬間を見た。
「・・・・・その、腕っ」
「
「一誠が、
腫れ物を触れるかのように恐る恐る腕を伸ばしてきて隻腕と化した俺の肩に触れ改めて実感したようで、何でだろうか。彼女の目から雫が零れ落ちる。
「一誠・・・・・っ」
肩に顔を埋め、嗚咽を漏らしだす。俺のこと心配してくれているから泣いてくれるんだろう。でも、泣くお前をみたくないと片腕で背中に回し頭をポンポンと優しく触れる。そんな彼女に百達はバツ悪そうな表情を浮かべているのが尻目で見て分かった。
「ほら、あーん」
「待て、待て待てっ」
大食堂にて一目が多いこの場所で雛のように餌付けされまいと必死に足掻く事から食事が始まってしまった。
何でこうなった?
数分前に遡ってみようじゃないか。それは食堂へ向かう途中だった。
『一誠、何が食べるか決まってる?』
『・・・・・中華、麻婆豆腐かな』
『分かった。茨、一誠と一緒に席を確保してくれないか』
『わかりましたわ』
塩崎と一緒に席を見つけ、(心操の能力で席を譲ってもらった)その席で待っていると一佳達が注文した料理を持って確保した席に座った。麻婆豆腐セットを俺の前に置いてくれた一佳に感謝の言葉を述べ、百達と一緒に昼食をしたところで・・・・・。
『・・・・・一誠、片腕だけじゃ食べ辛くないか?』
『え?まあ、持つこともできないしな。でも―――』
俺の中では問題なく食べられるはずだったんだ。でも、一佳は俺から容器を取ってあろうことか・・・・・。
「ほら、あーん」
「待て、待て待てっ」
冒頭に戻る。俺はあまりの恥ずかしさに髪の色と同じ耳まで真っ赤になる。って、俺の顔色を見て意外そうに好奇な色を浮かぶ目で見ないでくれ百達っ。
「・・・・・それ、こんな大勢の生徒がいるところでやるもんじゃない。家でならともかく外でだと俺が恥ずかしく悶絶で死んでしまいそうになる」
「でも、食べれないぞ?」
「一佳・・・・・お前もここで俺からあーんされてどう思う」
「・・・・・」
俺からの問いをもしもそんなことされたら~と妄想をしたのか顔をほんのりと耳まで朱で染まる。
「別に・・・・・」
「ん?」
「・・・・・いいよ、別に。一誠さんなら・・・・・」
呼称にさんづけするほど、お前はそう望むかっ!というか、顔を俯いて蚊のが鳴いたような声と上目づかいで言う彼女は可愛いと不意打ちを食らったように思ってしまった。
「・・・・・塩崎、ヘルプ」
「あーんですわ」
「ジーザス、お前もっ・・・・・!・・・・・ええい、仕方がないなッ」
指を弾く俺の体が淡い光に包まれ小さくなり、最終的に子供の身長にまで縮んだ。
「これなら恥ずかしさも半減できる・・・・・」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「うん・・・・・?」
周囲から送られる視線の意味合いが変わったような・・・・・。百達を見上げて見回したら、ギョッと驚いたように目を丸くしていた。
「・・・・・兵藤、君なの?」
「おう。時の"個性"で子供に戻ることができるんだ実は逆も然りだけど」
「こ、"個性"か・・・・・ビックリした。いきなり体が縮むんだから」
「ふふふっ。驚いたか。因みにこの姿は幼少の頃の俺だ。眼帯は付けてなかった頃だけど」
「子供の頃の・・・・・」
そういうことだ。これならなんとか食べさせられても平気になるわけだ。だから―――ニヤリ。
「―――一佳おねーちゃん、あーん」
「―――っ!」
子供のようにおねだりをしてみた。その後、終始。一佳は顔を真っ赤にしながら俺に麻婆豆腐セットが無くなるまで食べさせてくれた。
「一佳さん、羨ましいですわっ・・・・・」
「私も、あんな風に頼られて・・・・・」
「だ、大丈夫。明日があるんから」
「・・・・・不覚、可愛いと思ってしまった」
なんか、聞こえてきたが気のせいにしておこう。
「そういえば、俺がいない間の一週間。何かあった?」
「何かあった、というより今から一週間後。雄英体育祭が行われますの」
「雄英、体育祭?」
なんだそれ?小首を傾げる俺は―――。
―――放課後―――
「・・・・・お前が知らないのも当然だったな」
相澤は体育祭について職員室にまで訪ねてきた一誠に説明をしていなかったことと、異世界から来た者として知らないのは無理もないと言った感じで傍に立つ一誠へ向き説明した。
「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの一つだ。かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。だが、世界の総人口の八割が"個性"という特殊能力を宿ってからは『普通の人間』の規模も人口も縮小し形骸化した。この超人社会となった世界、日本に於いて今、『かつてのオリンピック』に代わるのが雄英体育祭なんだ」
「へぇ」と興味津々に声を漏らす一誠を「本当に知らないんだな」と異世界からきた一誠に対して相澤は思った。
「オリンピックに代わるほど、世界も注目するのか?主に外国も」
「少なからず同じヒーローを育てる育成機関がある外国も注目する。だから日本のビッグイベントの一つなんだ」
「雄英の体育祭だから"個性"の使用も許されているんだろう?実際、どんな感じなの?」
「・・・・・質問を質問で返し、逆に聞くがお前の世界の体育祭はどんな感じだった?」
異世界の学校の行事、イベントの概要。どんな感じだったのかと問われる一誠は・・・・・。
「うーん・・・・・」
「は?」
言い辛そうではなく、あまり分からないと言った感じな反応に相澤は「知らないのか?」と思わずにはいられなかった。
「俺、体育祭に参加したのって二度しかないんだよな。しかもそれは高校二年生の時だ。それ以来ずっと学校に行かず世界中に旅をしていたんだ」
「・・・・・お前、どんな人生を過ごしていた」
「修行の旅をしていました。とある目的で」
あははー、と後頭部に手を回して朗らかに笑う一誠の過去は相澤では計りしれない凄まじい経験と体験をしていた。
「まあ、この世界の"個性"が宿る前の時代の学校の体育祭と大して変わらないことをしていたのは事実だな。―――なんなら、見させてあげようか?俺が通っていた異世界の学校の体育祭」
と、提案をする一誠に少なからず興味が湧いた相澤。すると、相澤の耳にガタガタと席から立ち上がる音が聞こえて未だに職員室にいる教師は―――不合理的な教師しかいないと内心溜息を零しながら思いだした。
「なになに?興味深いことを言うわね」
「異世界ノ話、我モ興味アル」
「ワオッ!俺も興味あるぜ!」
「君の世界にもヒーローはいますか?」
「僕も見てみたいです」
数人の男女の
「・・・・・誰だ?」
「不合理極まりない言動をする同僚だ」
「イレイザー、もう少しマシな自己紹介をしてもいいんじゃないの?」
無造作に伸ばしたっぽい黒髪に着ているのかいないのかわからないほどの極薄タイツとボンデーファッションで豊満な肢体を着飾っている女性に大きな四角い身体のとある某妖怪に似ている男性と一見不気味にも見える真黒な体に大きな白い歯の男。
「相澤先生、失礼極まりないことを言うけどこのお二人さん・・・・・本当に人間?」
「「人間です(ダ)」」
「・・・・・だ、そうだ」
「・・・・・」
完全に珍獣を見る目で人間ではない外見の二人の男子教師を受け入れ難いでいた。
「・・・・・駄目だ。やっぱり本当に異世界にいるんだと実感してしまうっ・・・・・」
「合理的に受け入れないと精神的に保てないぞ兵藤」
「だって、まだ妖怪の類なら分かるのに、外見だけでもう人間じゃないんだよ相澤先生。それなのに人間って、異世界から来た俺にとっては動揺するわっ」
「お前の常識は
頭を抱え、首を横に振るう一誠の心情を何となく察しながら溜息を吐いた。一誠がこの世界に来てから一年経ったが今でも驚いたり受け入れ難い物はある。
「うーん、異世界の人間からすれば認識も概念も違うみたいね。不思議を通り越して興味深々だわ」
「仕方がないですよそれは。僕達も逆の立場だったらきっとそう感じてしまうかもしれません」
「迷うぐらいならオールライブもして気分をハイ!になったほうがいいぜ!イエーイ!」
「いえ、先輩の場合は五月蠅くするだけかと」
「冷静ニ判断ト状況ヲ把握デキナケレバ」
五人のプロヒーローが仕事を中断して一誠に好奇心を抱いていることを露にも思わない一誠は、相澤に再度問うた。
「で、どうする?見たい?」
「・・・・・どうやって見せる気だ?」
「論より証拠、百聞は一見に如かずと見せることできる魔法で」
「・・・・・異世界の特殊能力か」
「そういうこと」
バッ!と一誠が足元に幾何学的な円陣、魔方陣を展開してみせた。
「こいつが魔法を媒介する魔方陣!魔法の源の魔力を宿している俺だからできる超常現象の一つだ!」
魔方陣から発する光に相澤達は一誠と包まれ視界が真っ白になって奪われる―――。
「ご覧あれ。異世界の体育祭を」
後にヒーロー達の感想は。
「・・・・・色々と凄かったわ」
「全員が全員、人間ではないなんて・・・・・」
「神ガ存在スル世界・・・・・」
「異世界でも人間がいると知れたことに感嘆しました」
「・・・・・あのリスナーが凄い理由を知った瞬間だった」
「言葉にできません。それほど彼の人生の一端を見ました」
―――私が来たよ!(by麗日)―――
「あ、兵藤君」
教室に戻ったらテケテケと麗日が近づいて来た他、ご丁寧に俺の鞄も持って来てくれて感謝の念を抱いた。
「相澤先生に何か聞いてきたの?」
「ああ、体育祭のことで。俺だけ聞いていなかったから改めて」
「そっか。兵藤君って飯田君みたいに真面目だねー」
「流石にあの変な手まではもう真似できないがな」
話しながら自身の心情を表現しているロボみたいな動きをする手のことを言って、麗日から鞄を貰い廊下へ出た。
「兵藤君がいない間、B組の拳藤さんと塩崎さんが兵藤君を訪ねてきたんだけど」
「俺がいないから帰ったか?」
「うん。でも、明日また来るって」
何か話でもあるのかな。・・・・・そういや、携帯のアドレスの交換してないな。
階段を降りながらそう思った俺はまだアドレスの交換をしていない一人に、隣にいる麗日に話しかけた。
「なぁ―――」
「兵藤君っ」
俺より声を大きく発し遮る彼女は真っ直ぐ顔を向けて来ては強い眼差しを向けてくる。彼女にしてはなんだか珍しく感じる。
「兵藤君、今夜の夕飯はどうするつもりなの?」
「どうするって、1人暮らしだから作ってくれる人がいなきゃ作らざるを得ないだろう?」
因みに今夜の夕飯は牛丼だ。
「じゃ、じゃあ・・・・・」
「?」と何か言いたげな彼女に疑問符を浮かべる。
「迷惑じゃなかったら、今日から兵藤君の家に泊まってもいいかな!?」
・・・・・・へっ?
麗日お茶子が一誠の家に泊まる理由はいくつかあるが一番要因なのは、恩人に対する罪悪感と私生活の不便を考慮。USJ奇襲事件の翌日、彼女は実家に連絡をした。その日に何が遭ったのか包み隠さず、恩人が自分を庇って腕を失ったことを伝えたのであった。
『父ちゃん、母ちゃん・・・・・私、兵藤君になにかしてやらへんかな』
罪悪感から来るお礼は落ち込んでいるお茶子を突き動かした。主に母親の一言で。
『じゃあ、兵藤君が許してもらえばお茶子が料理を振るまったらどうなん?一人暮らしやから一人じゃできないこともあるんやろ?お茶子がそこをカバーすんね』
と母の鶴の一声でお茶子は決心した。片腕だけではできないことを自分がするんだと。
「・・・・・そういうことか」
「うん、だから今日から私。兵藤君の為に料理を作ってあげるからね!それ以外でも!私、頑張るから!」
キッチンに立つエプロン姿で包丁を片手にやる気を見せる麗日へ内心苦笑いを浮かべながら「よろしく」と相槌を打った。
あの彼女の両親・・・・・とんでもないことを言うな。実の娘を知り合いとはいえ男の家に泊まらせるなんて。
「・・・・・麗日、俺のことは一誠って呼んでくれ。あまり兵藤って呼ばれるのは好きじゃないんだ」
「へ?そうなんだ?じゃあ、私のことも名前で呼んでね」
「了解」
お互いの名前を呼び合うまでの距離を自然に縮め、それを実感するようにお茶子と笑みを浮かべあう。
彼女が料理を作る姿を何時までも見ていると気恥ずかしそうにして初々しい反応をしてくれるから和む。
「手伝おうか?」
「ダメ!」
頑なに手伝わせなかったお茶子の手料理―――焼うどんはとても美味しかったと日記に記すことに決めた。
「にしても体育祭かぁ」
ごちそうさまと合掌しながらお茶子と体育祭について交わす。
「うん、優勝まで勝ち進めばプロヒーローの人達がスカウトしてくれる可能性があるから頑張り甲斐があるよっ」
「優勝を目指すならお茶子。お前自身強くならなきゃいけないんだが大丈夫か?」
俺自身、別に本気を出さずとも優勝は確実に狙える。でも、オリンピックに代わる体育祭で生徒の善し悪しが分かるものか今でも不思議に思う。
「うーん、かなり難しいかな。でも、一誠君は強いから優勝は確実だよね」
優勝間違いなし!と言ってくれるが・・・・・それは早とちりじゃないかな?
「さて、それはどうだろうな。意外と俺でも敵わない"個性"があるだろうし、俺は片腕を失って実力も何割か減っている。俺に勝てる確率も相手によっちゃあ増えているはずだ。だから油断はできないよ」
「・・・・・片腕無くて大丈夫なの?」
「はははっ。特に戦闘に関しては問題ないよ。というか、俺はそういう逆境を乗り越える度に強くなるんだ。雄英の教訓みたいな感じでな」
更に向こうへ=
「お茶子、お前も何かを目指しているなら強くならなくちゃいけないのは必然的だ。だから俺が鍛えてやろうか?あの修行空間の中でさ」
「一誠君が・・・・・私を?」
「ああ、知っているだろうけど俺は全国を旅して色んな
無論、これは強制じゃない。強くなりたいなら力になれるしアドバイスもできる。俺のただのお節介に過ぎない。
そう、彼女が強く有りたいと望むなら・・・・・俺はその望みを叶えるだけだ。
夕食を食べ終えれば、次は風呂だ。流石にここまで甲斐甲斐しく手伝うとは思えなかった俺だったが、
「せ、背中を洗う、ね?」
一糸纏わぬ体の前に片手で持っている布で膨らんだ胸を隠すお茶子がやってきた。
「・・・・・嫁入り前の体でよく入ってきたな。恥ずかしいだろうに」
「た、確かに恥ずかしいんけど。い、一誠君の為に頑張るって決めてるんよ」
何この健気な少女・・・・・可愛すぎる。
「これからも毎日、一緒にお風呂入って背中を流すからねっ」
毎日・・・・峰田だったらものすごく喜びそうな状況だぞこれ。
「じゃ、じゃあ・・・・・教わった通りに洗うからね?」
きっと介護の意味でだろうと彼女の献身的な気持ちを蔑にするわけにもいかず、俺は彼女の手によって―――。
「み、見ないでねっ」
・・・・・・見ないで?どうしてなんだ、と思ったその矢先。
―――ムニュッ。
背中にお湯とは別の人の温もりと柔らかい弾力が突然感じ始めたのだった。
―――翌日―――
「・・・・・麗日さん、具合悪いですの?」
「だ、大丈夫・・・・・"個性"を使ってるだけだから」
顔を青褪めながら一誠と教室に入ったお茶子を百が心配そうに声を掛けたところ"個性"による体調不良であることが判明。負荷が大きい自身を無重力にしている状態なのだと、どうして"個性"を使っているのか不思議そうに首を傾げ理由を知っていそうな一誠に訪ねることに。
「一誠さん。彼女はどうして体調が悪くなる上で"個性"を使っているのですの?」
「"個性"って身体機能の一つだろう?だから使い続けて酔いを慣らす意味も兼ねて一時的な常時"個性"の使用を課しているんだ。もう解除して良いぞ」
どうやら一誠がお茶子にそうさせているのだと淡い光が纏う手で彼女の背中に触れ、
「あー・・・・・・一誠君・・・・・温かくて酔いが無くなってくるよぉ~・・・・・」
彼女の体調不良を治したのだった。二人の様子に、百はどこか二人の距離が縮まったような気がしてならない。
「名前で呼び合うようになったのですね・・・・・?」
「俺がそう頼んだ。言っただろう?兵藤って呼ばれるのは好きじゃないって」
それをお茶子にも言ったのか、と察し疑問をさらにぶつけた。
「でも、どうして急にそんな事を?」
「ん、体育祭に向けての修行だ。お茶子の"個性"は接近戦型だからな。俺がアドバイスしながら鍛えることにしたんだ」
「修行・・・・・」
一誠に直々鍛えられる。オールマイトと繋がりがあり、このクラスの誰よりも事件や事故、
「あ、常闇。アップルパイ焼いたけど食べる?」
「いただく」
鳥のような頭と顔をしている常闇に小さな箱を手渡していた。受け取った本人もクールな顔をしている反面、どこか嬉しそうな雰囲気を纏っている。
「・・・・・片腕無くともよく作れるな」
「ああ。出来ることとできないことは確かにあるが、特に不便を感じてないんだこれが」
「そうか。今度、俺からも何か食べさせよう」
「お、そうか?それは楽しみだ。何でもいいからな。簡単な物でも」
常闇から離れ百の元へと戻る一誠に百が決心した表情で口を開きだした。
「一誠さん、折り入ってお願いがあります」
「おう?」
なんだ?と反応する一誠へ百はこう言った。
「私達の中で一番、場の経験と体験をしているあなたなら
百も体育祭に向けてもっと実力を身につけたい、そう思っての乞いに一誠は首を傾げる。
「言っておくが、俺は"個性"を伸ばすんじゃなくて"個性"を活かした戦闘スタイルを教える方だぞ?・・・・・あ、でも伸ばしているようなものか・・・・・?」
「どちらでも構いませんの。それで、どうでしょうか?お礼と言っては何ですが・・・・・一誠さんの食事を作りますわ。その片腕を失った原因は、私にもありますから・・・・・」
「・・・・・」
まだ気にして引きずっていたか。そんな思いを顔に浮かべる一誠は呆れが籠った息を零し、百の肩に手を置いた。
「ヒーローは体を張って何かを守る者なんだ。名声や金の為じゃない。本当に守りたい何かの為に、誰かの為に成し遂げたい人は無意識に体が動くんだ。俺は、誰かの為のヒーローで有りたい。私利私欲でヒーローになるやつなんて・・・・・そいつはヒーローという栄光と名誉を着飾ったただの贋物だ。ヒーローになる資格は無い。金を貰って人を助けるヒーローもヒーローじゃない。それはただのボランティアと何ら変わりないからな」
「―――っ」
金色の左目から窺える強い眼差し―――信念。その目に吸い込まれ逸らすことを忘れて食い入るように見つめている百は、ポンと肩を叩いて離れる一誠に了承の言葉を耳にした。
「別にいいぞ。ただ、泊まり込みになるけどどうするんだ?」
「・・・・・え、泊まり込み・・・・・?」
「だって、残り一週間しかないし休日の日曜を丸一日修行の時間に充てても一朝一夕以下だ。どうせ修行するならとことんした方がいいだろ?学校が終わって直家に戻ってすぐ俺の家に訪れるぐらいならいっそのこと俺の家に泊まって修行した方が合理的だ。まあ、今すぐ答えなくて良いから考えて。決まったら何時でも教えてくれ」
「分かりました・・・・・」
泊まり込みの修行。体育祭の優勝する為だと両親は了承してもらえるだろうかと少し懸念する。
「一誠、家で修行するって?」
長い耳たぶの先にプラグがある耳朗が二人の話しの会話に興味を持った様子で近寄った。
「あの凄い地下室の中で修行するのか?」
「興味あるのか?」
「まあ、目指すなら優勝だし。修行や特訓をしようにも派手に"個性"を使える場所って中々ないじゃん。だから一誠の地下室の修行部屋なら周りの迷惑を気にせずに使えるって思って」
「おっ、なんだ。兵藤の家で修行するってんなら俺も参加するぜ!」
勢い良く挙手をしながら主張する切島。
「目指せ体育祭優勝だ!兵藤相手なら結構強くなれそうな気がするしな!」
「ほほう、俺とタイマンを張るつもりか?強いぞ俺は」
切島は両腕を硬化させてガツンッ!と拳同士をぶつけあった。
「―――へっ、望むところだ!」
意気込みは良し。本格的な修業をしてどこまでその気持ちを抱き続けれるか見ものだな。
「で、今日来るのか?体育祭前日までの泊まり込みでもいいぞ」
「マジで?んじゃ、そうさせてもらうぜ」
「・・・・・ウチも、家族と話し合ってから行くことにする」
「俺も同伴させてもらう」
常闇も参加する意思表示をし、昼時では―――。
「一誠の家で修行?うん、私もしたい」
「私も」
一佳と塩崎も誘ったことで少なくない人数の集団が放課後、一誠の家に集結して修行に精を出すのであった。